1,800円以上の注文で送料無料

噛みあわない会話と、ある過去について の商品レビュー

3.8

361件のお客様レビュー

  1. 5つ

    65

  2. 4つ

    151

  3. 3つ

    98

  4. 2つ

    12

  5. 1つ

    4

レビューを投稿

2022/11/27

悪意のない言葉だと思っていても、それが矢のように刺さり傷つけていること。無自覚な悪意の言葉の怖さが感じられた。

Posted byブクログ

2022/11/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

短編集。凄く凄く面白かった。私の中では今のところ、辻村深月のナンバーワンだ。 心理描写が本当に的確。過去の自分を責められている気持ちになり、心がザワつく。 1 ナベちゃんのヨメ この話は普通だった。話としては面白かったが、こういう状況に何度も巡り合ったことがあるわけではなく、ナベちゃん的な人が身近にいたわけではなかったから、むしろ微笑ましく思えた。ナベちゃん自身が幸せを感じて、それを関係ない他人が、たとえ過去、友人であっても、邪魔する必要はないし、共依存から救ってあげたいと思うほどナベちゃんを強く想っているのではないのだから。 2 パッとしない子 これは怖かった。書き方として美穂の感情に沿っていくことになると思うが、それでも過去に自分が担当したことのある子に対して「パッとしない子」と言うことには違和感を感じた。 しかし、佑も自分の記憶が全て正しく美穂は加害者だから全て都合の悪いことを忘れているに違いないという態度にはやはり違和感を持つ。4「早穂とゆかり」でも想うのだが、今現在、力を持っている芸能人、メディアに露出が多いなどが強者であり、強者の持つ記憶が全て正しいこととされてしまうように思えるのだ。美穂の「そんなに悪いことした?」「繊細すぎて付き合ってられない」は本音だと思う。 教師だって人間だし、保健室にズルして行っているように見える晴也は好きではなかっただろう。けれども晴也の当時抱えている問題をしっかり家族として向き合っていたら美穂は違う感情を晴也に向けていたかもしれないし、そもそも忘れがたい生徒だったはず。「繊細ヤクザ」という言葉があるが、それに近い者を感じる。加害者、被害者の両方に記憶の改ざんは起こるもの、両方において。美穂は決して佑の記憶の改ざんを正すことはできない。たとえ卒業アルバムか何かで運動会の門の年代が美穂の記憶通りだったと証明できたとしても、決してそれが佑だったということにはならないから。晴也の死を美穂が知らなかったのは晴也の両親がそのようにしたのだろうし、周囲が佑家族の意向を知っていたからなのだろう。自分が好きで相手も好きだった関係でなければ、連絡など取らない方がいい。「早穂とゆかり」でもそう思った。 3 ママ・はは これも怖かった。 ダブルバインドかダブルスタンダードか分からないけれど、母の頭の中にしか正解がない。しかし、これもスミちゃんの話だけでしか、ないのだ。写真の話もそう。本当には何が起こったの?それはもうきっと誰にも分からないのかもしれない。 電話の向こうにスミちゃんの「ママ」はいるのか? 家庭内のルールに厳しかったスミちゃんの「はは」は本当にいたのか? 4 早穂とゆかり 怖い。でもこれは早穂も悪い。何故わざわざ好意的な関係を結んでいなかったと自覚がある人間と会おうとするかな。相手が有名人になったからって。 「仲良くなかったから」でおしまいにすればいいのに。 ゆかりは凄いと思う。自己分析をしたのだ。徹底的に。辛かっただろう、不安定で、嫌われ者で、嘘つきな自分を認めることは。 早穂は子ども時代の、たった数年間の関係にとらわれて、それを数十年経った今でも変わってないと思っていた。 現在のゆかりが早穂にしたことは、とても感じが悪い。イジメと言っていいだろう。でも早穂も格下に見ていたゆかりに対して隙があったのだ。 もっとビジネスライクにすれば良かったのに。それかもっと思い出話をする友として連絡すれば良かったのに。中途半端なことをすると酷い目にあう。 しかし、これもやはり、「パッとしない子」と同じ強者だから出来ること。強者にならなければ、モヤモヤを抱えたまま終わっていくのだろう。 子ども時代の関係性から抜け出せないとそちらの方がイタい人間になる。 昔こんな人間だった、といっても、今もそうだ、とは言えない。嫌な思いをさせられた、でももうそれを言っても、たとえ立証できたとしても、どうにもならない。今もなお、そんな昔のことを言って自分の時間を無駄にして何になるだろう。吹聴したら、こっちがイタい人間だ。嫌だったことがあるなら、それを許さなくてもいい、ずっと嫌いなままでもいい、関わらないのだから。良好な関係を結ぶなら、昔嫌だったことを忘れず、人間として自分を嫌うことのない行動をとるしかないのではないか。

Posted byブクログ

2022/11/11

けっきょく誰しも自分の都合のいいように言ったこと、やったことを解釈してるっていうのをまざまざと突きつけられる短編集。自分が当然そう考えるからって相手も同じ当然を持っているとは限らない。 心臓がキュッとなって苦しくなる感じがありました。 受け取り方によってどうにでも解釈しようがあっ...

けっきょく誰しも自分の都合のいいように言ったこと、やったことを解釈してるっていうのをまざまざと突きつけられる短編集。自分が当然そう考えるからって相手も同じ当然を持っているとは限らない。 心臓がキュッとなって苦しくなる感じがありました。 受け取り方によってどうにでも解釈しようがあって、この短編たちの延長線上に『傲慢と善良』が書かれたのではないかなと思った。 4編の共通テーマは無意識のマウントかな。無意識に人にランクをつけてしまうことに心当たりしかない。容姿がいいこと、有名になること、仕事で成功すること・・・それが絶対的に正しく、人より優れていると思ってしまうのはなんでなんだろう。 自己肯定のためなら事実なんていくらでもねじ曲がる。正しいか正しくないかなんて関係ない。自分にとって都合がいいように記憶は改ざんされてしまう。

Posted byブクログ

2022/11/04

ドキリと共感の嵐! 自分の置かれている立場によって、同じことでも180度違う出来事になる。 自分の鈍感さ、デリカシーのなさは無自覚に鋭い刃となって相手を突き刺す。 悪気なかった…の残酷さを痛感する作品。 辻村さんの鋭さってなんなんでしょう! 凄すぎます。 ここまで鋭く感じ取って...

ドキリと共感の嵐! 自分の置かれている立場によって、同じことでも180度違う出来事になる。 自分の鈍感さ、デリカシーのなさは無自覚に鋭い刃となって相手を突き刺す。 悪気なかった…の残酷さを痛感する作品。 辻村さんの鋭さってなんなんでしょう! 凄すぎます。 ここまで鋭く感じ取ってしまう方は自分の血と肉を注ぐように作品を生み出すのでしょうか、達観して冷静に書けるのでしょうか… いつも凄すぎて生み出す辻村さんという方に想いを寄せてしまいます。

Posted byブクログ

2022/10/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読む前から、「怖い」というレビューを目にしていたので、警戒していたのだけれど、本当に怖かった・・・。 4つのお話が収録されているので、以下、それぞれの感想を。 ナベちゃんのヨメ:これは、怖いなというより、いやー、すごいなーと思った。何がすごいって辻村さんの人間(関係)観察力。観察しているのか、自分の内側から出てくるのか知らないけど、参りました、と思う。あるあるなんです!ナベちゃんと女子たちの関係って。悪気なくそうなっちゃう関係ってあるある。悪気が全面に出てはないけど、女子たちみんなナベちゃんを下に見てた。誰もナベちゃんを自分の一番にはしなかった。うまいな~、この辺の微妙な関係を文章に、お話にするなんて。ナベちゃんのヨメ、「怖っ、大丈夫かね、この人」と思うけど、二人の関係を周りがどうこう言うのもおかしなもので。自分に害がないなら、そう、ただナベちゃんという都合のよかった男友達を女子たちみんなが失っただけ。 パっとしない子:これは怖かった。もちろんホラーとかサスペンスとかと違った意味で。人間の、なんというか、心の奥底の人を憎む気持ちの引きずり方、執着の仕方が怖かった。佑の主張を読んでいるときは、「そりゃ、先生、いかんわ」と思うけど、先生の心情を読むと「確かに、そんなに悪いことしてないよね」と思ったり。どっちもわかるような、でもどっちの主張にも違和感があるようなスッキリしないまま読み続けた。確かに、若かりし頃の佐藤先生の無自覚の態度、言葉の刃って、酷い。先生がそんなだったというのは、敏感な子、繊細な子には辛い。それでも先生だって人間なんだから、生徒みんなにいつも平等な態度、ともいかない。「繊細すぎてついていけない」という本音にも頷いてしまう。でも、教師だからこそ、そこを汲み取ってあげて欲しいとも思う。佑と先生の主張や記憶は、まさに嚙み合わない。私はやはり最終的に佑が怖い、と思った。昔を引きずり、自分の記憶が全て正しいと思い込み、もしかしたら相手はこうだったんじゃ、みたいな譲歩もいっさいなく、自分の言いたいことだけ言って、それこそ、言葉の刃でガンガン切り込んで、この憎しみに異様に執着しているように感じられて、怖かった。自分だけスッキリした気持ちで帰っていったかと思うと、モヤモヤした。うーん、仕返しとはいえ、こんなにも人を傷つけていいのかなぁと思うと佑の人間性にもぞっとした。 ママ・はは:これは少し不思議なお話だった。母親の絶対的価値観を押し付けられた子どもは・・・。この母親、家庭は極端だとしても、家庭って、本当にそれぞれで、それこそ虐待ではなくても、親の支配力が強すぎると子どもはとても苦しいだろうと想像できる。自分の価値観を子どもに押し付けないようにしよう、と思った。 早穂とゆかり:2つ目のお話を読んでいるから、もう、嫌な予感満載で読み進めることになった。会ったらダメだって~と思いながら。やっぱり怖かった。有名人になった同級生の過去のイタイ姿をそのまま引きずって、何ならまだ自分が上と思っているような早穂もイタイと思ったけれど、ゆかりの仕打ちは早穂が「いじめ」と思ってもしょうがないようなやり方だった気がする。結局、過去にこだわり過ぎているのが怖い。2つ目のお話もそうだけど、自分の中でどうにかこうにか折り合いをつけられずにいると、こんなにも暴力的な会話で相手を傷つけるんだなーと。うぅ、怖かった。 久々に、「誰かとこの本について今すぐ話したい!」と思った本だった。というのも、こうやって長々書いた感想と全然違う感想意見も聞けそうだと思ったから。 辻村深月さんの力を十分に感じられる作品でした。

Posted byブクログ

2022/10/27

心がざわざわする本でした。 どんな出来事も受け取り方は人の数だけあって、どのように記憶されるかも人それぞれ。 小学校2年生で自分はかわいくないということを悟り、初めて痩せたいと思いました。 学生時代クラスの中心メンバーにはなれなくて、そんな自分が嫌で、勉強しかできないから頑張...

心がざわざわする本でした。 どんな出来事も受け取り方は人の数だけあって、どのように記憶されるかも人それぞれ。 小学校2年生で自分はかわいくないということを悟り、初めて痩せたいと思いました。 学生時代クラスの中心メンバーにはなれなくて、そんな自分が嫌で、勉強しかできないから頑張りました。 それが逆効果だったりもするのですがね。 人から言われた嫌な言葉は忘れられません。 下品なネタについていけない私の反応を楽しんでいた子たちのことは、今でも地元に帰ると夢にみます。 そんなことを言う私も、きっと知らず知らずのうち人を傷つけてきたのだと思います。 誰も傷つけないなんて綺麗事ですが、相手のことを思いやる気持ちを持てる人でいたいですね。 あと、みんなに理解されなくても幸せだと思えたら、それで良いんだと思いました。

Posted byブクログ

2022/10/25

辻村さんの心理描写は本当にすごい。帯の「救われるか後悔するかはあなた次第。」という言葉、ほとんどの人がゾッとしたり、過去の自分を思い返すんじゃないかなぁ。子供の頃にこの本を読んで内容を理解できていたらよかったけど、残念ながら難しいんだろうな。

Posted byブクログ

2022/10/06

4つの短編集。どれもすごく面白かった。 過去の自分の発言が、その後の自分を苦しめるのが、現実の自分にもありそうなことでドキッとしてしまった。 この先の発言に気をつけようと感じた。 もっと早く出会いたかったです。

Posted byブクログ

2022/09/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

無意識とか、無自覚とか。 「パッとしない子」と、「早穂とゆかり」は特に構造が似たお話で、こういうことって正直あるあるだと思う。 申し訳ないけれど、教員って本当にたくさんの生徒を受け持って、自分に都合のいいことばかり記憶に残っていると思う。そうじゃないと辛い。 でもその陰に傷ついた生徒や、許せないと思う保護者もいる、かもしれない。若い時を振り返ると特にそう思う。教師も必死だったことなんて言い訳にならないけど。誰かにとって最高の先生は、誰かにとって最悪の先生だったりする。 友達関係だってきっと似たようなものだ。同じ思い出を共有しているようで、違う記憶を持ってる。 現実ではわざわざその認識の違いを突きつけられるようなことはほとんどないだけ。 こんなことあったら怖すぎる。通り過ぎてしまうものだからこそ、みんな都合よく記憶を書き換えたりして、なんとか生きていけるんじゃないのかな。でもこれも、傷つけてきた側の都合の良い言い分なのかな。

Posted byブクログ

2022/09/19

だめだ、私もスクールカーストは反省してるからグサグサ来た。過去の同級生の顔が浮かんだ。 着物の話だけなぜかホラーだった。

Posted byブクログ