そろそろ左派は〈経済〉を語ろう の商品レビュー
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《Summary》 大雑把にいうと左派による左派自省の書。 現在の左派(日本でいうと旧民主党系・共産党系)は、経済について語られることなく、イデオロギーの戦いに終始しているということを、左派自身で反省し改善するための方策を中心に記載している。 面白いのは下記の4極の差異と比較を通じて、日本の左派として取るべき道を記載している。 ①. ブレグジットに揺れ動くUK ②. ドイツを中心とした緊縮財政のEU ③. 極右/立つグローバルに舵を切ったUS ④. 右派的な政治スタンスを取りつつ金融緩和を続けるJP 結論としては、右派左派というイデオロギーで思考を分断するのではなく、"経済"を物事の中心に据え置いて政治的な判断を行うことが良いと(まぁ当たり前のことを延々語っていたが) ケインズ経済学/新古典経済学を軸に記載しているので、割と理解しやすい内容かなと。 《Topic》 面白いのは、著者は左派だけど、左派のダメなところを指摘すると、左派の周りの方々から右派扱いされる…という、面白い現象が起きている。 回り回って、左派的な人が、「現政権は良いんじゃね?」という事を立証してしまっている事が、読んでいて面白かった。 《Forecast》 ただ、イデオロギーに関係なく日本の経済状況は、東京オリンピックを境に冷え込むことは見えているとの事。数年後を見越して準備しておいたほうがいい。
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専門の異なる3氏の鼎談で、主に欧州の政治、社会から日本のそれを分析しつつ、「左派」に対する提言が行われています。以下、要約です。 <ネタバレあり> 若者をして「『ビッグになろう』と考えたらあかんのかな」と言わしめる左派主導の脱成長的な風潮。左派はアイデンティティポリティクスや文化の問題に耽溺し、「下部構造」を忘れてしまったのではないか。 一方、欧州ではドイツあるいはECB主導の緊縮政策に対し反緊縮(緩和的な金融政策と積極的な財政支出)を唱える左派(一部右派)が勃興。例えば英国では、2015年に労働党党首として強硬左派、”オールド・レイバー”のコービン党首が選出され、2年後の総選挙で善戦。かかる左派は、第2次大戦直後に勃興し70年代に行き詰まった”レフト1.0”、その反省の上に立ち90年代に隆盛を迎えるも貧困に対処できなかった”レフト2.0”の思想を乗り越える、”レフト3.0”と言えるもの。 ”レフト3.0”は、”レフト2.0”がもたらしたマイノリティによる多数派の抑圧から脱し、”労働者”全体を復権させることを目指し、金融緩和と”大きな政府”(財政出動)を通じた経済成長、雇用拡大がその政策の目玉となる。一周して”レフト1.0”に戻った感もあるが、現代的にジェンダーやマイノリティの問題も取り込んでいるもの。 このような欧州の状況を踏まえると、日本はどう評価されるか。まずアベノミクスについて。3氏は、アベノミクス≠ネオリベ政策と評価する。金融緩和と財政支出の組み合わせであるから。これに対し左派は緊縮主義的に批判する。欧州の状況と比べると”ねじれ”が存在。アベノミクスにも第2の矢=財政支出が不十分という問題があるが、(旧)民主党政権下と比べ明らかに安定している安倍政権下の経済を前にしては、「きちんとした経済政策を出していかないと、いつまでたっても有権者の支持を得ることはできない」(176ページ)。「『ご飯をたべたい』という、民衆として普通、当たり前の願いを拒否したり、侮蔑したりしていては、左派は信頼を得られない」(216ページ)。そのため「コンクリートから人へ」の実装、消費増税反対・反緊縮を訴えるべき。 (上記では端折っていますが、ブレイディみかこ氏のあげる欧州、特にイギリスの人の生き方、考え方の例がいちいち魅力的でした。是非入手してお読み下さい。) 以上が要約。経済政策だけ見れば3氏が左派に期待する理由は薄い訳ですが、そこはやはり”リベラル”(ただしこれも多義的)な社会を守るため、野党に期待せざるを得ない訳であります。 選挙を通じた民主主義政体を採っている以上、いつでも政権交代可能な緊張感のある状況が望ましいと思いますが、失業こそしなかったものの私も(旧)民主党政権下では経済的に苦労させられました。当時の主要メンバーが各所で生き残っている野党の状況をみると野党に票を投じることについては躊躇させられます。
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経済運営で何とかいっている安倍政権。ただ、消費増税圧力に抗うことは難しく、東京五輪後の景気後退に対処できないとの予測は明快。では、対抗勢力は何をすべきなのか――という一考に値する内容。
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左派が語るべき経済のあり方を学ぼうとすると期待外れ。そういう話題になると不思議と話がそれて、断片的にしか把握できない。対談本に書いてする必要があったかなーとも思う。対談をもとにもうすこしまとまりのある構成をとれたのではないか。反緊縮ってとこやケインズ的に需要を作り出すべきってあた...
左派が語るべき経済のあり方を学ぼうとすると期待外れ。そういう話題になると不思議と話がそれて、断片的にしか把握できない。対談本に書いてする必要があったかなーとも思う。対談をもとにもうすこしまとまりのある構成をとれたのではないか。反緊縮ってとこやケインズ的に需要を作り出すべきってあたりかな、せいぜい把握できたのは。需要が不足していたというのはアベノミクスによろしくという本でも学んでいたため、すとんと腹に落ちた。 左派が経済を語る必要性を啓蒙するための本としては、優れている。左派思想史としても鋭い分析が随所にある見られ、目を開かされる。過去の左派の思想へのツッコミは的確だし、新たな時代の左派像にも共感する。 地に足つけて金の話をしようや、という当たり前のことに改めて気づかせてくれる良書。
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うーん、俺Leftだから、当然反緊縮だよ? 弱者だからこそ保護が必要だと思う側だ。 だから、この本でいうLeft1.0的なことを、この本で言う「日本型リベラル」が主張してないとも、ましてや緊縮を主張してるとも思ってないんだけど、 いわゆる「フツーの人たち」がLeftを批判してい...
うーん、俺Leftだから、当然反緊縮だよ? 弱者だからこそ保護が必要だと思う側だ。 だから、この本でいうLeft1.0的なことを、この本で言う「日本型リベラル」が主張してないとも、ましてや緊縮を主張してるとも思ってないんだけど、 いわゆる「フツーの人たち」がLeftを批判している文脈が理解できたのは良かった。 Leftは緊縮を主張してると思われてるんだな。そりゃ排斥されるわ。 ぼくとしては「安倍政権はセイの法則だよりで、金融で反緊縮してるけど、効くわけがない。使う人間に直接分配しなきゃ、需要は喚起できない。成熟社会で、供給が需要を生む筈ないだろ?」ってこと また(若干の違和感はあるけど)右派は人々を左右に分けて区別し、Leftは上下に分けて区別をしてる。というのも、なんとなくわかった。 この本の主張は「もう安倍政権はこのまま完全雇用まで走り抜けるから、Leftは出る幕ないね」というもので、ぼくもトキすでに遅し。と覚悟せざるを得なかった。
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