人間の未来AIの未来 の商品レビュー
さくっと読めて、面白い。 山中さん、羽生さんの仕事の取り組み方、世の中の捉え方の温度感が心地よかった。 この10年後くらいにまた対談してほしい。
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お二人の対談を通して、iPS細胞・将棋・AIに関する最新の知見がわかりやすくスーッと入ってくる。読みやすくて知的好奇心を喚起される、とてもコストパフォーマンスのいい本。 羽生さんは、将棋以外の分野に関しても非常に博識であることに驚く。もともと、常日頃から勉強を怠らない方なのか、...
お二人の対談を通して、iPS細胞・将棋・AIに関する最新の知見がわかりやすくスーッと入ってくる。読みやすくて知的好奇心を喚起される、とてもコストパフォーマンスのいい本。 羽生さんは、将棋以外の分野に関しても非常に博識であることに驚く。もともと、常日頃から勉強を怠らない方なのか、この対談のために相当準備されたのか。棋士としてだけではなく、人間としても高まろうという意識が垣間見えて感嘆。 AIに関しては、「人類はどうやって共存するか」ということが今後のテーマなんだろうが、羽生さんの話から、「暗黙知」とか「意外性」とか、その辺りにヒントがありそうだと思った。 藤井聡太さんは羽生さんから見ても驚異的な人である、ということも知った。棋士の世界はとても奥深くて大いに興味をそそられる。 iPS細胞は、治験も始まっているそうなので、とにかく早く実用化してほしい、ということに尽きる。救われる人がたくさんいる。 「情報は収集するだけではダメで、それを自分のなかでどう吸収して役立てるかが重要である」というのは、色んなデジタルデトックスの本に散々書いてあったことだが、羽生さんも全く同じことを言っていた。
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ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中先生と、将棋の永世七冠の羽生善治さんによる対談。 AIが将棋や研究に与える影響から始まり、未来社会の絵姿まで、話題は多方面に及びます。 羽生さんが、藤井聡太七段のことをどう捉えているのかも披露されて、興味深くよみました。 ▼羽生さんのAI観...
ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中先生と、将棋の永世七冠の羽生善治さんによる対談。 AIが将棋や研究に与える影響から始まり、未来社会の絵姿まで、話題は多方面に及びます。 羽生さんが、藤井聡太七段のことをどう捉えているのかも披露されて、興味深くよみました。 ▼羽生さんのAI観。 人間は、連続性・一貫性に美しさを感じるけれど、AIはその場の最適解を求めることしかしない。それが違和感につながっているが、AIの指した手が将棋の戦法を変えた例もある。人間の美意識が将棋の可能性を狭めているのかもしれない。一方で、AIを絶対視するのは危険。AIは人間に比べて間違える可能性が少ないというだけ。ディープラーニングで何層にもわたって検討する結果、思考プロセスがブラックボックス化している。プロセスを説明できるようにならないと、人間社会に完全に受け入れられる可能性は低いのではないか。 ▼山中先生の独創を生み出す3つの方法 いいアイデアだと思っても大概は他の人がすでに考えていることが多い。人と違うことをやろうと思ったら、3つの方法しかない。 一つ目はアインシュタインのようにすごい天才。二つ目は、人がそう考えるだろうことを自分も思いついたとき、まず実験してみる。予想通りの結果がでればそれはうれしいけれど、結果が予想と違うときが問題。自然は考えているよりはるかに複雑で、実験という形で問いかけると、思いもよらない答えを返してくれる。この時がチャンス。三つ目は、他人も自分も、あったらいいけど無理だろうと考えていることに挑戦する。私は天才じゃないので、二つ目と三つ目にしぼってやってきた。特に二つ目を重視してきた。 ▼羽生さんの将棋に臨む姿勢 将棋も何度かイノベーションを経てきた。棋譜のデータベース化、将棋ソフト、今回のAI。技術の流れに取り残されないためには、これまで得た知識を捨てる勇気がいる。ベテランになるとなかなか捨てられないが、若手は先入観なしに新手を考案できる。これまでの知識が思考の邪魔になりうるということを肝に銘じないといけない。 比類ない実績をあげながら、今なお最前線で走り続けるお二人のお話には説得力がありました。 羽生さんには、棋士どうしが局面検討をしているとき、たちどころに過去の同一局面の実戦例をいくつも指摘したという伝説があります。それほどの勉強量、記憶量があってなお、「捨てる」ことを強調される。学び続けること、謙虚であることの大切さを教えていただきました。
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2018.12.19読了 AIと人間を話題とした、山中教授と将棋の羽生さんの対談。 どちらの本も読んだことがあるが、本書はそのよいところが両方表れていて参考になる。 羽生さんは「大局観」の話が特に参考になった。対局で最初に使うのは「直感」。 それに基づいて「読み」つまり...
2018.12.19読了 AIと人間を話題とした、山中教授と将棋の羽生さんの対談。 どちらの本も読んだことがあるが、本書はそのよいところが両方表れていて参考になる。 羽生さんは「大局観」の話が特に参考になった。対局で最初に使うのは「直感」。 それに基づいて「読み」つまり未来をシミュレーションする。さらに「大局観」を用いて、最初から最後までの流れを読む。 将棋の世界もネットで様々な定石が見られ、「情報」が重要になってくるが、情報が多すぎるために「いかに捨てるか」が重要であることは同じであるようだ。インプットばかりでなく、それを整理する作業等が将棋では「ひらめき」につながる側面もあるようだ。 そうして得られた情報の「量」がたまってくると「質」に転化する。自分なりに取捨選択して、情報を栄養素のように吸収するということだ。 一方、山中教授はiPS細胞の説明がとても分かりやすいが、他に印象に残ったのは「教育」「研究」に関する意見。日本の教育はいわば「大学入試」が目標に置かれていて、そこからどうはみ出さないようにするか(はみ出さず高得点が出せる子がいい子、と評価されがち)という点に重点が置かれている。そのため、日本の研究者は「教科書を理解しなさい」という道を通ってきて、突然研究の世界で「教科書に書いていないことをやりなさい」と方向転換を強いられる。 アメリカは高校生まではスポーツなど様々な経験を積んで、大学で一生懸命勉強をする。なので、アメリカでは創造的な意見が生まれやすい素地があるという。 この違いあってか、「阿倍野の犬実験」すなわち、アメリカで行われた研究が日本でも通用するか、また日本の中の阿倍野でも通用するかといった、「アメリカ人のマネ」の研究が多くなってしまう(短期間で成果を上げないといけないシステムがこれに拍車をかける)。 なるほど。自分は科学分野ではないが、そういう研究が日本では多いように思える。 他にも、話はAI管理社会、永遠の生命やゲノム編集、AIによって死んだ人と話ができる「バーチャルおじいちゃんに相談」など、様々な話題に広がる。 読んでいても面白いし、お二人の本を一括で読んだように、沢山の教訓が得られる良書である。
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面白い対談であった。大きな仕事をし、大きな成果を上げている二人には、似たところがある。突出した偉人は、他人とは違うことをやってきている。社会の多様性の重要性を改めて認識した。 「(ゲノム編集技術)「クリスパー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)」という新しい技術が開発されて...
面白い対談であった。大きな仕事をし、大きな成果を上げている二人には、似たところがある。突出した偉人は、他人とは違うことをやってきている。社会の多様性の重要性を改めて認識した。 「(ゲノム編集技術)「クリスパー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)」という新しい技術が開発されて、その精度の高さと簡易さから一気に汎用性のある技術となりました。根底にあるクリスパーと呼ばれる遺伝子配列を発見したのは、九州大学の石野良純先生です」p109 「十代のころはみんな、粗削りなところがあるんですよ。でも藤井さんにはそういったところがまったく見当たりません。すごく完成されています。連勝中、対局の中ではっきり不利になって危なかったと見えた局面は数えるほどで、ほとんどは圧勝です。これはものすごいことです(羽生)」p122 「四段になろうと思ったら、最低限の定跡やセオリーを身に着ける必要があり、それを習得するにはけっこう時間がかかるんです。すべて押さえるまでに二十歳くらいになっておかしくありません。ところが藤井さんは十四歳でほとんどすべてに対応しています。これは驚くべきことで、もうセンスが抜群にいいとしか言いようがありません」p123 「先端技術の開発で、基礎研究の成果から実用化・製品化するまでに「死の谷」と呼ばれる資金的なボトルネックがあります。日本では今まで大学発の優れた研究が多かったのですが、その「死の谷」を乗り越えられず、実用化段階でアメリカに先を越されてしまったケースが少なくありません。ゲノム情報を読み取るシーケンスの技術も、もともとは日本の会社が先陣を切っていたんです」p190 「脳以外は、超大金持ちがお金にモノを言わせて臓器や細胞などの移植を続ければ、理論的には更新できます」p204
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二人の会話を読んでいると、今のところはまだ人間はAIを制御できており、AIが人間を超えてくるのはまだ先のように感じた。しかし話していたように、近年AIの進歩は目覚ましく、数年後も想像できないようなスピードで進化しているためいずれ人間の役割が問われる時代が来ることも確かである。現段...
二人の会話を読んでいると、今のところはまだ人間はAIを制御できており、AIが人間を超えてくるのはまだ先のように感じた。しかし話していたように、近年AIの進歩は目覚ましく、数年後も想像できないようなスピードで進化しているためいずれ人間の役割が問われる時代が来ることも確かである。現段階ではAIは「優秀な部下の一人」であり、それを利用するか否かは人間が決めるところと言っていた。AIは確率論的には正しいデータを持ってくるかもしれないが、人間は必ずしも確率に縛られた決断をするというわけでもない。AIから見れば無謀とも思えることに挑んでいき、時にはデータ通り失敗することもある。しかし時にはAIにも予想できなかった結果が起きることもあるだろう。そこに夢やロマンをかけて挑戦していくという点が感情を持った人間と持っていないAIとの違いかもしれない。
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山中さんも羽生さんも圧倒的な業績を残しているすごい人なのにユーモア茶目っ気たっぷりでいい人そう。そういう点に本物の知性を感じるが故に皆が尊敬の念を持つのだろうと思う。そこはAIには当分超えられない壁なのかもしれない。直感・ひらめき・勘は言葉では説明できないモヤモヤした感覚という点...
山中さんも羽生さんも圧倒的な業績を残しているすごい人なのにユーモア茶目っ気たっぷりでいい人そう。そういう点に本物の知性を感じるが故に皆が尊敬の念を持つのだろうと思う。そこはAIには当分超えられない壁なのかもしれない。直感・ひらめき・勘は言葉では説明できないモヤモヤした感覚という点で共感しているのも興味深かった。
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ジャンルは異なりますが、それぞれのジャンルで超一流のお二人がAIをテーマに語りつくした一冊。 一般論として、一流の専門家の方は、専門の領域での知識は当然のことながら専門外の領域でも実にいろいろなことをご存知であるというようなことをどこかで聞いたことがあるのですが、今回のお二人はま...
ジャンルは異なりますが、それぞれのジャンルで超一流のお二人がAIをテーマに語りつくした一冊。 一般論として、一流の専門家の方は、専門の領域での知識は当然のことながら専門外の領域でも実にいろいろなことをご存知であるというようなことをどこかで聞いたことがあるのですが、今回のお二人はまさにそのケースが該当していると感じました。 そんなお二人がAIを切り口にして語りつくす様子は、上質なジャズのセッションを聞いているような印象でした。 付箋は20枚付きました。
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羽生先生は将棋とAIの専門家として、山中教授はiPS細胞の専門家としての対談。 どちらもそうなんだけど、相手が語っているの時にする質問が鋭く、例えがとてもわかりやすい。 「失敗を怖れずに」「なんでも挑戦を」とはよく言われ、実際間違いを恐れず新しいことに挑戦してきたから羽生さん...
羽生先生は将棋とAIの専門家として、山中教授はiPS細胞の専門家としての対談。 どちらもそうなんだけど、相手が語っているの時にする質問が鋭く、例えがとてもわかりやすい。 「失敗を怖れずに」「なんでも挑戦を」とはよく言われ、実際間違いを恐れず新しいことに挑戦してきたから羽生さんは48歳でもトップ棋士なんだけど、本当に実践してきたことはすごく困難が伴うことだったと思います。 将棋の棋戦はほとんどトーナメントで、一回負ければもうタイトルには届かない中で、うまくいくかわからないけど試してみようと決断し続けるのは並大抵ではできないのではないでしょうか。
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人間の未来 AIの未来 羽生善治 山中伸弥 2018年2月13日第1刷発行 2018年7月10日読了。 将棋界のスーパースターであり最強棋士である羽生善治とiPS細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授による対談本。 世界を代表する二大知性による今後の世の中について...
人間の未来 AIの未来 羽生善治 山中伸弥 2018年2月13日第1刷発行 2018年7月10日読了。 将棋界のスーパースターであり最強棋士である羽生善治とiPS細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授による対談本。 世界を代表する二大知性による今後の世の中について語った本。 対談本なので読みやすい。 ・ヒトゲノム・プロジェクト 月に人類を送り込む「アポロ計画」に成功したアメリカが次に挑んだ一大プロジェクトが1990年初頭から始まった「ヒトゲノム・プロジェクト」 1人の人間に30億塩基対あるゲノムを完全解読しようとした計画。 ちなみに、世界各国で研究して2003年に計画は完了。生命科学の分野で起きた「ブレイクスルー」。この解読により全く違う生命科学の研究段階に入ったとのこと。 今ではコンピュータの進化もあって、ゲノム計画で10年かかったことが今では1日で出来てしまう。 ただ、30億の塩基対の情報は手に入ったけども、問題はその意味が分からないこと。 「今まで知らなかった言語の百科事典が手に入ったけども、何が書いてあるか分からない」というのが現状らしい。 ・直感、読み、大局観 羽生さんの将棋に対する有名な考え方。 一手3通りのパターンを読んでも、それを10手先まで進めると3の10乗=6万通り近くになりすぐに数の爆発にぶち当たる。 実戦ではそんなことは出来ないので、経験から手を絞り、ある程度読んで、最後にそれまでの試合の流れを見て次の戦略を考えるというもの。 この辺は羽生さんの「決断力」「大局観」「直感力」に詳しい。 ・教科書を否定する 日本は正解を求められ、鍛える教育にある。だから、正しい情報が先にあってそれに回答できるか出来ないか。 対談では「もっと、自分がやったことがないとか、経験したことがないとか、そういう羅針盤が利かない状況に身を置くことが大事」とその状況下で対応するのが新しいアイデアや発想を広げるのではないか。 変に知識が入っていると、先入観が先立ってしまう。無知ゆえに挑戦できるという強みもある。 「知らない」というのも見方を変えれば1つの武器なのかも知れないとおもった。 なお、羽生さんが「だからと言っていきなりシリアに行きますとか、向こう見ずはダメと」短絡的に捉えないで欲しいし、伝えるのが難しい。 ちなみに、山中伸弥教授は学生時代サボってたため、ゲノムの基本が抜けた状態で教壇に立たなくてはいけなくて苦労したとの話も。 ・「阿倍野の犬実験」 研究分野における、落とし穴的思考。 アメリカで世界初の実験論文を見て、それを日本でも試したら同じ結果が得られた。それをまた、ちょっとだけ条件を変えてやってみたらやっぱり同じ結果が得られたという、実は模倣の模倣をしてしまっていることを指す言葉。 中々、面白い事例だった。 ・アメリカ政権における生命科学研究姿勢の違い 共和党:キリスト教原理主義を背景に、進化論をまともに信じない党員や支持者も少なくない。どちらかと言うと、科学をあまり重視しない。 欧米では科学の背景に宗教がある模様。 対談本でサクッと読みやすい本でした。
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