1,800円以上の注文で送料無料

不死身の特攻兵 の商品レビュー

4.3

159件のお客様レビュー

  1. 5つ

    65

  2. 4つ

    64

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2018/10/21

まず、特攻で何度も帰ってきた人がいることに驚きました。 テレビや歴史の授業で戦争の話を聞き、特攻について知った気になっていたが、それは、「命令した側」や「命令を見ていた側」の話。 実際に特攻を「命令された側」の人の話は知らなかったことに気づきました。 私がこの本で感じたのは、...

まず、特攻で何度も帰ってきた人がいることに驚きました。 テレビや歴史の授業で戦争の話を聞き、特攻について知った気になっていたが、それは、「命令した側」や「命令を見ていた側」の話。 実際に特攻を「命令された側」の人の話は知らなかったことに気づきました。 私がこの本で感じたのは、特攻自体の愚かさよりも、理論ではなく精神論に傾く日本の組織、人の命を消耗品にする不条理さえ美化させてしまう「世間」、「空気」に恐ろしさを感じました。 この「世間」「空気」は現代日本にも残っていると思います。日本の組織が陥りやすい教訓として忘れてはいけないと思いました。

Posted byブクログ

2018/10/16

いやぁ、あの戦時中、特攻を命じられておきながら、9回も生還したと言うのは凄い。飛行機の操縦技量もさることながら、“人”としての心、精神面が強かったに違いない。 特攻に行っておきながら生還すると言う事は、当時の軍の常識では考えられないことであり、本書中にも記載があるが、その後の司...

いやぁ、あの戦時中、特攻を命じられておきながら、9回も生還したと言うのは凄い。飛行機の操縦技量もさることながら、“人”としての心、精神面が強かったに違いない。 特攻に行っておきながら生還すると言う事は、当時の軍の常識では考えられないことであり、本書中にも記載があるが、その後の司令部上層部からの扱いは、厳しくなる一方であるものの、そう言う厳しい扱いにもへこたれず、ある意味飄々と生き抜いている事は、心が強いと言わざるを得ない。 また、激しく合意するのは、終盤に書かれている夏の高校野球の事。特に今年(2018年)は、尋常ではない厚さであったにも関わらず、炎天下で試合を続行したことは、正に本書に記載のある「命令するもの」「命令されるもの」の関係である。 本書で書かれている佐々木氏は、既に亡くなっている。彼の行ったことを風化させず語り継いでいく事は、そして、未だに戦時中と同じ様な行動様式から抜け切れていない今の日本にとって、自らの頭で必要な事はなんであるかと考えるために、重要な視点であると思う。

Posted byブクログ

2018/10/15

戦後世代の我々に戦争責任はない。と言う人は多い。そのことの是非は置く。私は著者が、最終章につい書いてしまったこの様な文章に、どう対応すべきか皆さんに問いたい。 僕は毎年、夏になると、「いったいいつまで、真夏の炎天下で甲子園の高校野球は続くんだろう」と思います。地方予選の時から、...

戦後世代の我々に戦争責任はない。と言う人は多い。そのことの是非は置く。私は著者が、最終章につい書いてしまったこの様な文章に、どう対応すべきか皆さんに問いたい。 僕は毎年、夏になると、「いったいいつまで、真夏の炎天下で甲子園の高校野球は続くんだろう」と思います。地方予選の時から、熱中症で何人も倒れ、脱水症状で救急搬送されても、真夏の試合は続きます。(略)こう書くと「純真な高校球児の努力をバカにするのか!」とか「大切な甲子園大会を冒涜するのか!」と叫ぶ人がいます。僕は「命令された側」の高校球児を尊敬し、感動します。もちろん、大変だなあと同情しますが、けなしたり悪口を言うつもりはまったくありません。問題にしたいのは「命令した側」です。ですが、怒る人は、「命令した側」と「命令された側」を混同するのです。「命令した側」への批判を、「命令された側」への攻撃と思うのです。その構図は、「特攻隊」の時とまったく同じです。(略)けれどいつものように、炎天下の試合は続きます。甲子園大会は所与のものだからです。昼の12時から3時までは試合を休止しようとか、ナイターをスケジュールに入れようとするとか、そもそも真夏を外して秋にしようとか、そういう提案を主催者側がしているという話を僕は聞いたことがありません。大人達は、誰も言い出さないまま、若者達に命令するのです。それもまた、とても、特攻隊の構図と似ていると感じます。(284p) 1人の華々しい「死人」が出るまで、私達は「黙認」するのだろうか?その時になって、初めて私たちは自らのことを棚に上げて責任論を叫ぶのだろうか? 現代に続いている「構図」が、あまりにも多い。 日大アメリカンフットボール問題は、まさしく「命令された」志願者が特攻した若者の問題だった。 似たような他の問題でもそうだ。「命令した側」は、未だ政府の頂点やNo.2含めて「そんなことは言っていない」と言い逃れる。いや、言い逃れた。それが可能になった。可能にする社会の構図がそのまま温存されているからである。 9回も「嫌だ」と、行動に示した佐々木友次さんはヒーローである。けれども、最後にニヤリと笑って散っていった「永遠の0」のような映画化の予算はつかないだろう。それが現在の日本社会の民度だからである。 2018年10月読了

Posted byブクログ

2018/10/14

特攻兵ものなので「永遠のゼロ」のような内容かと思ったが、こちらは実際に存在していた人の話。死ぬ直前に本人にインタビュー出来たのは出来すぎのようでもあるがリアリティが伝わってきた。途中から日本人論のようになってきたが、共感できたところもあった。

Posted byブクログ

2018/10/09

劇団演出家の鴻上氏による、ノンフィクション。とてもよく構成されており、文章もうまい。何より、著者のやさしさがにじみ出ている。特攻隊関連の本は何冊も読んできたが、最近書かれた本書、とてもよかった。 なぜ今、特攻隊の本を出すのかという理由は、戦争体験者とくに特攻関連の体験者が老化し亡...

劇団演出家の鴻上氏による、ノンフィクション。とてもよく構成されており、文章もうまい。何より、著者のやさしさがにじみ出ている。特攻隊関連の本は何冊も読んできたが、最近書かれた本書、とてもよかった。 なぜ今、特攻隊の本を出すのかという理由は、戦争体験者とくに特攻関連の体験者が老化し亡くなっており、感情的に議論をする人がいなくなってきたから、冷静に議論できるからとのこと。本書は、9回命令を受けて特攻兵として出撃し、9回生還した佐々木氏のことを著者が知ったことがきっかけで書かれた。執筆の時点で偶然にも佐々木氏が生存しており、本人から直接体験を語ってもらえたそうだ。 軍隊の上官の命令は絶対であり、たとえ飛行機の故障が原因で戻ってきたとしても、不名誉なこととされた。佐々木氏は2回も新聞に死亡が報じられ、存在を隠すために暗殺すら計画されたが、優秀な飛行士の彼は攻撃の目的は爆撃で沈没させることであり、死ぬこと自体ではないとの信念を持ち続けた。何度も生還するのは、突撃することに劣らない勇気を要する。 著者の綿密な調査に裏付けされており、理性的に描かれている。著者は毎週テレビに出演しているが、これだけの内容を責任を持って書くとは、どれだけ多忙な生活をしているのだろう。読みやすかったし、感動した。

Posted byブクログ

2018/09/05

佐々木さんの話もさることながら、最後の方で鴻上さんが書いているリーダー論が考えさせられる。 精神論で戦争した東條英機も最低だけど、残念ながら彼は独裁者ですらないんだよね。ただの小心者の役人なんだ。背景には、そういう輩が出世する組織の土壌があり、その精神論を賛美した新聞があり、そう...

佐々木さんの話もさることながら、最後の方で鴻上さんが書いているリーダー論が考えさせられる。 精神論で戦争した東條英機も最低だけど、残念ながら彼は独裁者ですらないんだよね。ただの小心者の役人なんだ。背景には、そういう輩が出世する組織の土壌があり、その精神論を賛美した新聞があり、そういう新聞を争って購入した市民がいるんだよね。今だに解説者は、「最後は気持ちです。」「気持ちで負けてます。」とか平気で言うし、役所の課長や会社員の部長クラスにも、「責任は俺が取る」って言えないですぐに上にお伺いをたてるリーダーばかり増えてる。市民革命で自由を勝ち取ってないこの国はいつまた「いつか来た道」へ戻っていくかわからないよ。

Posted byブクログ

2018/09/04

何回も出撃して生還した特攻兵、佐々木友次さんの、インタビューとノンフィクション。 「命令を受けた側」の特攻兵のリアルな心境と、強い信念を持つ佐々木さんの気持ちが伝わってきます。 「命令した側」の上官の、部下を殺す事が目的のような命令には、あきれてしまいました。

Posted byブクログ

2018/09/02

なぜか、どうしてか。 事実と照らし合わせながら、いろいろな切り口で、「なぜ」を考え、論理的に解釈していくところに、歴史から学ぶことの大切さを感じました。 戦争責任は、命令した側に大きな比重があると思ってましたが、それを動かしたのは、その他大勢でもあるというのが衝撃的でした。一...

なぜか、どうしてか。 事実と照らし合わせながら、いろいろな切り口で、「なぜ」を考え、論理的に解釈していくところに、歴史から学ぶことの大切さを感じました。 戦争責任は、命令した側に大きな比重があると思ってましたが、それを動かしたのは、その他大勢でもあるというのが衝撃的でした。一人一人は、埋もれている傍観者ではなく、間違った方向に動かしてしまいかねない一つでもあるということです。 戦争を問うことで、社会の諸問題にも視点を当てていかなくてはいけないということを痛感させられました。

Posted byブクログ

2018/09/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

9回出撃命令が出て、9回生還した「不死身」の特攻兵・佐々木友次さん。 佐々木さんを支えたものは、生来の負けん気、日露戦争から生還した父親の言葉など、精神的な強さや拠り所だけでなく、パイロットとしての技能の高さはもちろん、爆弾を機体から外して投下できるよう、軍の命令に背いて改造をお願いした、岩本隊長の存在が大きいと思う。 この本は、特攻を「命令した側」「命令された側」それぞれの視点から書かれていることと、特攻に向き合ったひとたちの証言から書かれていて、新しい発見が多かった。 特攻のリアル、佐々木さんへのインタビューが綴られた後、日本人を「世間」「集団我」から分析したり、南スーダンへの自衛隊派遣と「命令する側」が関連づけられていたりと、最後の章も興味深かった。 全体を通して大満足の一冊だが、著者の一部文章表現(接続詞に「なので」を使用するところ)が妙に気になってしまい、☆4つ。

Posted byブクログ

2022/09/06

特攻という無謀な戦法を成り立たせたのは日本の「同調圧力の強さ」と「自尊心の低さ」であり、鴻上氏はこれを日本の宿痾と呼ぶ。 ‪「忖度して○○する」に残る特攻の精神 鴻上尚史さん:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASL8J54C9L8...

特攻という無謀な戦法を成り立たせたのは日本の「同調圧力の強さ」と「自尊心の低さ」であり、鴻上氏はこれを日本の宿痾と呼ぶ。 ‪「忖度して○○する」に残る特攻の精神 鴻上尚史さん:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASL8J54C9L8JUPQJ006.html‬ ‪帰国子女の娘がクラスで浮いた存在に… 鴻上尚史が答えた戦略とは? https://dot.asahi.com/dot/2018081000019.html‬ 先の戦争を振り返るというよりも、現在まで通じる「宿痾」として(むしろ「呪い」という言葉すら連想される)、特攻とは何だったのかを考えるために読みたい。

Posted byブクログ