光の犬 の商品レビュー
冒頭の一文に惹かれて購入。北海道の一家の歴史、人と犬と家族を淡々と描いている。静かな中にも起こる人生のうねり、行きつ戻りつする時間の流れにいつの間にか引き込まれて、一気に読んでしまった。感動とはまた違う、じわっとした波紋が心に広がる一冊。言葉にするのが難しい…。
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ポップに北海道犬の話だと書かれていたので読み出したが、サブストーリーで描かれるだけでメインではなく残念。もっとあったかくて天気の良い時期に若い人が読んでたらまた違った読了感だったんだと思われる。上手いですし、テンポよく最後までスルリといけました。北海道東、枝留の添島一家の人々を中...
ポップに北海道犬の話だと書かれていたので読み出したが、サブストーリーで描かれるだけでメインではなく残念。もっとあったかくて天気の良い時期に若い人が読んでたらまた違った読了感だったんだと思われる。上手いですし、テンポよく最後までスルリといけました。北海道東、枝留の添島一家の人々を中心に関係者が死んでいく物語。リアルに凹みます。助産婦だった祖母の話をもっと読みたいモヤモヤした。メットでの短い旅行の件だけは知っている場所なので印象にのこったが、バンダービルドさんが出てくるところで、ンなわけあるかい、と現実感が霧散(あはは)、まぁ、あるかもしれんけどねぇ。結局どうなったんやろか、と思う箇所多く微妙にスッキリしないまま流れていくが、だいたいリアルライフも結局どうなったんかよくわからんままに忘れされれてよくわからんようになって死んでいくんかと。ネコイラズ中毒死、凍死、死産、心筋梗塞、誤嚥性肺炎、軟部肉腫が身体中に転移、レビー小体型認知症、アルツハイマー、老老介護に介護の末に一人残される還暦老人。どれが一番ましかなぁ、とか、考えさせられた。
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※このレビューにはネタバレを含みます
北海道東部の架空の町枝留(えだる)。そこに根付いた添島家親子孫三代の、明治期から現在にいたるまでのそれぞれの人生の断片を描き出す物語。 章の途中でも語りの目線が変わったり、時代も行きつ戻りつで慣れるまでなかなか大変だった。大きな事件が起こるでもなく、貫くテーマがあるわけでもない。 でも、結局人生ってこんな何気ない毎日の積み重ねなんだと人生50年も過ぎた今だからこそ、実感をもってわかるのかもしれない。 急がず、じっくりこの物語の世界に身を置いて、大切に惜しむように読んでいった。ところどころに現れる、人生の真実を言い当てるような言葉に心を震わせながら、光の中で、闇の中で添島家の一員になったような気持ちで読み進んだ。 特に、始の姉の歩が愛おしくてたまらなかった。 歩の生き方、愛、無念を思うとき涙が出そうになる。 そうして全てを読み終わったとき、こみあげてくる得も言われぬ感動に言葉もなく、レビューさえ書けず、そっと表紙を眺めてため息をついた。 あ~私はこの作家が好きだ。「火山のふもとで」に続いて良作を読ませてもらった。
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北海道・道東の薄荷産業で栄えた町・枝留に暮らす添島家。大正・昭和・平成の三代にわたる一家と、そこに関わる人々の「生」を描く。 主たる軸は昭和の高度成長期に育つ姉の歩と弟の始。二人からすると祖父母・父母・伯母・叔母となる人々と、二人に関わる枝留の教会の息子。そして、添島家で飼われて...
北海道・道東の薄荷産業で栄えた町・枝留に暮らす添島家。大正・昭和・平成の三代にわたる一家と、そこに関わる人々の「生」を描く。 主たる軸は昭和の高度成長期に育つ姉の歩と弟の始。二人からすると祖父母・父母・伯母・叔母となる人々と、二人に関わる枝留の教会の息子。そして、添島家で飼われている北海道犬。時代や場面は、自由に三世代を、姉を、弟を行き来する。そして、そこに寄り添う北海道犬。昭和のある家族の歴史を様々な角度から描きながら、平成の現代の家族の姿を描き出している。 それぞれの人が、自分の意思をきちんと持って死をを迎えていた時代から、自らの意思とは違う形で終末に向かっていく現代の「生」を考えさせる。
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★2017年12月3日読了『光の犬』松家仁之(まついえまさし)著 評価A それ程期待もせずに新刊の本棚から借りた作品。まだ4作目とは言いながら、今後も良い作品を期待したい作家に出会えて幸せな気分である。 北海道東部の枝留(えだる)という架空の街を出身とする添島家3代の物語。 内...
★2017年12月3日読了『光の犬』松家仁之(まついえまさし)著 評価A それ程期待もせずに新刊の本棚から借りた作品。まだ4作目とは言いながら、今後も良い作品を期待したい作家に出会えて幸せな気分である。 北海道東部の枝留(えだる)という架空の街を出身とする添島家3代の物語。 内容的には、地味なごく普通の家族の祖父母(添島眞蔵、よね)からその子ら(1男3女 一枝、眞二郎、恵美子、智世)そして、長男眞二郎の子(長女歩、長男始)までの家族の物語。テレビドラマの北の家族を文学にして、もっとドライで地味にした感じという読後感? サスペンスがあるわけでもなく、一家隆盛、没落というわけでもない。ただ、読むうちに、日々の出来事が、他人事ではなく、自分たちの家族にも起きている、感じていることがさりげなく丁寧に表現されているところが、この物語の優れているところだと感じる。 特に、孫世代となる添島歩と始は、私と同じ60年代生まれであることから、彼らの育った時代感は、ほぼ私の世代と同じものが表現されている。ものでいえば、コンポーネントステレオ、ビートルズ、ニューヨーク、ジャズ、そして個人的には天文台に勤めた孫の歩の話の中に出てくる米国ウィルソン山天文台のエドウィン・ハッブルの逸話。 読んでいて思わず膝を打って「そーだったよねー!」と言いたくなる場面も数多かった。 物語の最終盤、次々と子世代の4兄弟、姉妹が人生を終えていく様は、いまのそして今後の日本人が多かれ少なかれ直面する厳しい局面も比較的明るめに描かれる。 実は、物語の最初に出てくる「消失点」だけが、なかなか何を言いたいのかが分からず?ずーっと引っかかっていたが、最後に謎解きが明かされる。 また、時々出てくる松家氏独特の言い回しと表現は、感心させられた。たとえば、釣りに関しては『釣竿と糸と針のさきにあつめられた意識から流れでて時計のとまった無心の場所に吸いとられて消えていく。(省略)眞二郎は釣りに、魚を釣ることのおもしろさを超えて、自分の失われる感覚を求めていたのかもしれない。』 私自身、母から後年、貴方が高校生の時は、何を考えているのかさっぱり分からない時があった。と言われたことがありました。まさに同様の表現が、この物語にも出てきました。『息子が何を考えているのかわからなくなったのは中学生のころからだ。顔を見ても覗き込んだ湖面の底には警戒を怠らず敏捷に泳ぐ魚もいなければ、水流にそよぐ藻や水藻もない。ただぼんやりと水がある。』 そーか、母にはそういう風にしか、見えなかったのかと今頃理解できた。(苦笑)
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