光の犬 の商品レビュー
なかなか上質な作品でした。北海道の架空の町 枝留(エダル)に暮らした三代に亘る家族の静かな時の流れが淡々と語られています。誰かが何かがどの犬が目立つと言うことがないような設定ですが、それでも三世代目の姉弟のうち とりわけ姉の歩の人生が印象深い作品でした。伏線になっている基督教や...
なかなか上質な作品でした。北海道の架空の町 枝留(エダル)に暮らした三代に亘る家族の静かな時の流れが淡々と語られています。誰かが何かがどの犬が目立つと言うことがないような設定ですが、それでも三世代目の姉弟のうち とりわけ姉の歩の人生が印象深い作品でした。伏線になっている基督教や天文学は作者の思い入れが大きいのでしょうかね? 今なら四世代に亘る暮らしも多い時代だから この物語にシンクロする読者も多いのではないでしょうか(笑) 長生きが必ずしも良いとは思えないけど。私自身は自然体が望ましい。
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言葉で読ませる作品、久しぶり。 時代も行ったり来たり、章の中での視点も行ったり来たりしながら進んでいく物語。でも、だから余計に一人一人が引き立つ。時代とか、上下とかそういうフィルターを通さずに「個」が見える。家族だって、一族だって、個の集まりだ。 そんなそれぞれの想いや景色が織り...
言葉で読ませる作品、久しぶり。 時代も行ったり来たり、章の中での視点も行ったり来たりしながら進んでいく物語。でも、だから余計に一人一人が引き立つ。時代とか、上下とかそういうフィルターを通さずに「個」が見える。家族だって、一族だって、個の集まりだ。 そんなそれぞれの想いや景色が織り上げられたような作品だった。
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ストーリーは複雑ではないが、場面場面の切り替えも多く、やや専門的な説明が多方面にわたっているので、初めは戸惑う。しかし、誠実な文章が盛りだくさんな内容にもかかわらず読みやすく、初めての作家だったけど好感がもてた。 行きつ戻りつが最初面食らったが、読み進むうちに慣れ、例えば父親の...
ストーリーは複雑ではないが、場面場面の切り替えも多く、やや専門的な説明が多方面にわたっているので、初めは戸惑う。しかし、誠実な文章が盛りだくさんな内容にもかかわらず読みやすく、初めての作家だったけど好感がもてた。 行きつ戻りつが最初面食らったが、読み進むうちに慣れ、例えば父親の釣りの趣味、北海道犬、天文、キリスト教、書物の歴史などなどの、むしろ読み手の知識がためされるように思った。 近年文学の中に知識を矯めるような、あるいは微に入り細を穿つような、文学は詩歌、叙情、思想、哲学、歴史だけではないというような作品に出会う。 明治から平成に至る北海道を中心に暮らした三代の家族物語。光を当てられるのがその一族それぞれのひとであって、ひとりの人物が主人公ではないというのも、人間それぞれの普遍をみつけ、描こうとしているように思う。日常に起こったり遭遇したり行動することのあくなき探求をしずしずとなさっている。
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北海道に住む3世代の家族を描く群像劇。 薄荷工場の役員だった祖父と家族の世話より助産婦の仕事に励む祖母。 小心者の父親と小さな不満に満ちた専業主婦の母、そして隣接する家に住む三人の個性的な叔母たち。 利発で美人の姉、そして人に対して消極的な弟。 そしてその家に飼われる4代の北海道...
北海道に住む3世代の家族を描く群像劇。 薄荷工場の役員だった祖父と家族の世話より助産婦の仕事に励む祖母。 小心者の父親と小さな不満に満ちた専業主婦の母、そして隣接する家に住む三人の個性的な叔母たち。 利発で美人の姉、そして人に対して消極的な弟。 そしてその家に飼われる4代の北海道犬。 それぞれの個が強く、どこか親密さに欠ける家族です。 時間は前後に飛び回り、語り手も次々に変えながらそれぞれの人生が描かれます。 最初はどこに進むか見えなくて読みづらい。 大きな事件が起こる訳ではありません。 ただ静かに淡々とそれぞれの人生、生と死が語られて行きます。 読み進めているうちに、どういうものか物語が実体化し質量を持ってくるのです。 普通の小説なら精々のところ映像化(2D)レベルなのですが、次元がもう一つ高い感じです。凄いですね。 終盤には痴呆・介護・終末医療など社会的テーマも多く語られます。でも、それが物語の主題の様には思えません。 著者はむしろ、このような小説手法/表現を確かめて居るような気がします。
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添島始に関わる人々の人生を描いた壮大な物語だが,北海道の枝留がベースとなっている.助産婦だった祖母のよねの話から始まるが,一枝,眞二郎,恵美子,智世が生まれ,眞二郎と登代子が結婚し歩と始が誕生する.歩はよねが取り上げだ.姉の歩は牧師の息子の工藤一惟と仲良しになったが,札幌の大学に...
添島始に関わる人々の人生を描いた壮大な物語だが,北海道の枝留がベースとなっている.助産婦だった祖母のよねの話から始まるが,一枝,眞二郎,恵美子,智世が生まれ,眞二郎と登代子が結婚し歩と始が誕生する.歩はよねが取り上げだ.姉の歩は牧師の息子の工藤一惟と仲良しになったが,札幌の大学に進学した.歩は癌で若くして死ぬが,一惟が執り行った終油の秘蹟の場面が泣ける.それぞれの場面に北海道犬のイヨ,エス,ジロ,ハルが登場して,話を繋ぎ止めている感じで,それが題名に繋がったのかなと感じた.
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北海道に暮らす添島家、一族三代の物語。 一番若い世代の歩と始、姉弟の父親が飼う北海道犬のエピソードも読みどころのひとつ。 歩の同級生で父親が牧師の工藤一惟と 彼の友人・石川毅も優しく照らし 物語をより奥深いものにしている。 歩と一惟の恋愛は、好きとか嫌いなどの 範疇を超え、神々し...
北海道に暮らす添島家、一族三代の物語。 一番若い世代の歩と始、姉弟の父親が飼う北海道犬のエピソードも読みどころのひとつ。 歩の同級生で父親が牧師の工藤一惟と 彼の友人・石川毅も優しく照らし 物語をより奥深いものにしている。 歩と一惟の恋愛は、好きとか嫌いなどの 範疇を超え、神々しささえ感じる。 二人のエピソードが一番好き。 今回も、松家さんにやられた。 心にぽっかりと穴が開いてしまったようだ。
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北海道の田舎町に暮らす添島家。祖父母、父母、父の3人の姉弟、孫世代になる姉妹、9人で構成される。そして、添島家を見守る代々の北海道犬たち。添島家の9人と、彼らに関わる人達が主人公となり紡がれる、様々な時代の様々な瞬間は、決してドラマになるようなストーリーが隠されているわけではない...
北海道の田舎町に暮らす添島家。祖父母、父母、父の3人の姉弟、孫世代になる姉妹、9人で構成される。そして、添島家を見守る代々の北海道犬たち。添島家の9人と、彼らに関わる人達が主人公となり紡がれる、様々な時代の様々な瞬間は、決してドラマになるようなストーリーが隠されているわけではない。にもかかわらず、ページをめくるたび、各主人公たちの息遣い、感情といったものが時にジワリと滲み出し、時に鮮烈で心を揺さぶられる。この作家さんの作品を読むのはまだ3作目だけど、今回もかの文章の魅力にとりつかれた。心地よい余韻に浸りつつ読了。
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良質な本に出会えた時の幸福感を味わう事ができる本だった、読んで良かった。 静かな文体で淡々としているものの、一家3世代のそれぞれの人物の視点から描かれ、時空も切り替わるのでどんどんこの本の世界に入れる。登場人物達ゆえか、それから熱を感じない文体からか、とても冷え冷えとした空気が...
良質な本に出会えた時の幸福感を味わう事ができる本だった、読んで良かった。 静かな文体で淡々としているものの、一家3世代のそれぞれの人物の視点から描かれ、時空も切り替わるのでどんどんこの本の世界に入れる。登場人物達ゆえか、それから熱を感じない文体からか、とても冷え冷えとした空気が物語から流れて来て、それに包まれるような感じで読み進めた。きっとこれは人が生きて行く中での切なさ、やるせなさを感じさせる小説なんだな・・と予感しながら。 歩の死は冒頭にそれらしいものが出てくるから予見はできてもそれでも驚く。そして最後の一椎とのかかわり。納得はいかないが、これで良かったのかな、とも。涙が出た。 タイトルに出て来る北海道犬の登場のさせ方も効果的。光を背にする母子の北海道犬のシーンは、この物語の雰囲気にぴったりはまって強く印象に残った。 この一家は途絶えてしまう。その過程を長く、ゆっくり読者の感情を道連れにしながら読ませてくれる本だった。
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すごくみっしりと密度の高い詰まった作品という感じがした。少し読み辛いと感じながら読んだけれど、読み終わってみると、色々なシーンや印象が心の底に溜まっていて、これからふとした時に浮かんできそうだなと思う。
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北海道,枝留,産婆の祖母,薄荷工場の役員の祖父,独身の叔母3人,北海道犬を育てるのが生きがいの父,専業主婦の母,真っ直ぐな姉歩と家族の最後を看るために戻った始.一族の三代にわたる歴史をあちこち寄リ道したり,忘れていたことを手繰り寄せたり,また語り手を変えて想いを伝えたりと,大河が...
北海道,枝留,産婆の祖母,薄荷工場の役員の祖父,独身の叔母3人,北海道犬を育てるのが生きがいの父,専業主婦の母,真っ直ぐな姉歩と家族の最後を看るために戻った始.一族の三代にわたる歴史をあちこち寄リ道したり,忘れていたことを手繰り寄せたり,また語り手を変えて想いを伝えたりと,大河がたゆたうようなおおらかで死と誕生が自然とそこにある物語だった.
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