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忘れられた巨人 の商品レビュー

4

140件のお客様レビュー

  1. 5つ

    28

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    17

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

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2020/12/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

長編ではあるが、視点が主人公である老夫婦だけでなく、他の人物にも切り替わることによって、意外と読みやすい。 また、アーサー王亡き後のブリテン島、そこで記憶をなくす霧に覆われた幻想的な世界観。何ともワクワクする。 さて、この忘れられた巨人と言うのは誰のことか。 私は、記憶のことではないかと思った… クエリグと言う雌竜の吐く息が、人々の記憶を失わせる霧となって、いいことも悪いことも忘れさせていく… 確かに忘れていた方がいいこともあるし、忘れたいこともある。 だけど、全てをわすれてしまうのは…何とも寂しいことである。 それが、霧で覆われた島の風景と被り、何とも物寂しく感じた。

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2020/11/23

まるでドラクエのよう。記憶を取り戻すための旅。息子に会いに行く旅。 不思議な世界観で、淡々と進んでいく。主人公が老夫婦であるからだろうか。 過去の記憶とどう向き合い対処するのか、と考えさせられる。人が生きていく上では自分に都合の良い記憶が残れば幸せに生きていけそう。しかし、国家に...

まるでドラクエのよう。記憶を取り戻すための旅。息子に会いに行く旅。 不思議な世界観で、淡々と進んでいく。主人公が老夫婦であるからだろうか。 過去の記憶とどう向き合い対処するのか、と考えさせられる。人が生きていく上では自分に都合の良い記憶が残れば幸せに生きていけそう。しかし、国家にとっては歴史は消せない。都合が悪いことも良いことも。だから為政者は評価や修正を試みる。そこで新たな対立が生まれる。 個人レベルと国家(集団)レベルでは、向き合い方が変わるのだ。

Posted byブクログ

2020/11/22

2015年発刊。「わたしを離さないで」以来、著者10年ぶりの長編小説。 カズオ・イシグロさんの小説ははじめて。 ノーベル文学賞のレベルの高さに畏れ入る。 オーディブルで聴いたのだが、なかなか頭に情景が浮かんでこない。もやっとしたままファンタジーの世界が続く。 健忘の霧に包ま...

2015年発刊。「わたしを離さないで」以来、著者10年ぶりの長編小説。 カズオ・イシグロさんの小説ははじめて。 ノーベル文学賞のレベルの高さに畏れ入る。 オーディブルで聴いたのだが、なかなか頭に情景が浮かんでこない。もやっとしたままファンタジーの世界が続く。 健忘の霧に包まれた世界で失われた記憶を取り戻そうとする物語。 失われた記憶を取り戻した後、世界はどう見えるのか? ブリトン人とサクソン人の関係は、某国と某国の関係によく似ていると思った。 世界には残念な直視できない歴史がある。 そして、それは愛する人との間にも。 考えさせられるなー。 静かだが残酷なラストシーンが圧倒的な余韻を残す。 ああ、ベアトリス!

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2020/10/13

アーサー王亡き後、ブリテン島ではブリトン人とサクソン人が平和に共存していた。しかし、いつしか島は竜が吐く忘却の霧に覆われ、人びとはほんの一時間前のことすらも思い出すことが困難に。そんな中、ブリトン人のアクセルとベアトリス夫婦は、存在さえ忘れかけていた息子との再会を目指し旅に出る。...

アーサー王亡き後、ブリテン島ではブリトン人とサクソン人が平和に共存していた。しかし、いつしか島は竜が吐く忘却の霧に覆われ、人びとはほんの一時間前のことすらも思い出すことが困難に。そんな中、ブリトン人のアクセルとベアトリス夫婦は、存在さえ忘れかけていた息子との再会を目指し旅に出る。道中、隣国からやってきたサクソン人の戦士ウィスタン、竜に噛まれた少年エドウィン、かつて円卓の騎士と呼ばれたアーサー王の甥・老ガウェインらと出会い、少しずつ過去の記憶を取り戻しはじめた老夫婦の旅の終着点とは。 一人称小説の利点を完璧に活かしていた『日の名残り』『わたしを離さないで』と異なり、本作は三人称。視点人物もコロコロと入れ替わる。全員矛盾したことを言い、ウィスタンを除いて記憶も曖昧なので、信頼できる人は誰もいない。 私が好きだったのはガウェインおじいちゃん。円卓の騎士も今は昔、愛馬ともども年老いたガウェインは、中世の騎士を現代的な目で眺めるとドン・キホーテになってしまうという典型のようなキャラクター。大仰でプライドが高く、カルヴィーノの『不在の騎士』のアドルールフォにも似ているのだが、実は戦時中のPTSDに悩まされながらも生き残りとしての矜持を持ち続けようとしていることが長い独り言を通じてわかってくる。『日の名残り』の言い訳おじいちゃんことスティーブンスもなんだかんだ好きなので、私はイシグロの書くおじいちゃんが好きなのかもしれない。 妖精や死の島、竜などが登場し、全体の筆致も寓話的なのだが、中世キリスト教修道士の腐りきった欺瞞性と、彼らを罠にはめるウィスタンの作戦部分だけは冒険歴史小説然としていて面白かった。サクソン人の遺跡を用途もわからずブリトン人が使い潰しているさまもテーマに関わる重要なモチーフで、小説としては塔に火を放つ場面がクライマックスだと思う。 この作品は、過去作と同じく〈忘却〉をテーマに、夫婦関係とかつての敵対関係を重ね合わせ、都合の悪い記憶を忘れることで手にするつかの間の平和の是非を問うてくる。アクセルとベアトリスは記憶をなくしたからこそお互いを思いやることができたが、それが忘却のためではなく、本当に心から許し合った結果であればもっと良かったのかもしれない。だが、ウィスタンとガウェインが互いの誇りを尊重して一対一の正々堂々とした一戦を交わすことができたのは、偽りとはいえ戦争のない平和な時代ゆえだろう。キャラクターの中では唯一ベアトリスだけが本心を語らない。アクセルは「わが最愛のお姫様」と呼べるうちに別れがきて幸福だったとも言えるだろうが、ベアトリスにとってはどうだったのか。〈忘却〉の両義性は人間の業そのものとも言えるなぁと思わされる、静かなファンタジーだった。

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2020/07/23

メタファーに包まれた物語。 どことなく村上春樹的なもの、を感じる。 なにか本質的なことを描いているような気もするし、 そんなことは無いのかもしれない。

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2020/07/01

しっとりとした雰囲気で文章が連なっている感じが好き。ファンタジーと思って読んだけど、どこかファンタジーとは違った幻想的な印象を受けた。文章が心の奥底で響く感じが味わえた。

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2020/06/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

古のイギリスがテーマの物語。 忘れられた巨人とは何か? 民族や国家の営みにおける光と影が老夫婦の旅路で明らかになっていきます。 ここで掲げるテーマは普遍的で今もなお起き続けていること。 老夫婦は何とか向き合い旅の終わりを迎えていきますが答えを出すのは難しい。 でも、そういうことも含めて一人一人が乗り越えて行かねば明るい未来は開かれないということかなぁ。

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2020/05/03

カズオ・イシグロさんの『私を離さないで』、『日の名残り』を、読んだことがあり購読。 アクセルとベアトリス、2人の老夫婦が息子に会う為に旅をしていく話だが、物語の途中でその他の登場人物にも視点が切り替わり進んでいく。 カズオ・イシグロさんの描く世界観、読んだ後に切ないような感情...

カズオ・イシグロさんの『私を離さないで』、『日の名残り』を、読んだことがあり購読。 アクセルとベアトリス、2人の老夫婦が息子に会う為に旅をしていく話だが、物語の途中でその他の登場人物にも視点が切り替わり進んでいく。 カズオ・イシグロさんの描く世界観、読んだ後に切ないような感情を残してくれるところが好きだがこちらの作品も同じように世界観に没頭させてくれ、感情を与えてくれた。 他の作品も含めて物語を読みたいという気持ちにさせれくれる。

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2020/04/26

はじめてのイシグロカズオさん 背景がわからずなかなか難しいところもあったか、覚えていることがいいのかどうか、考えさせられるものであった

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2020/03/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

★★★2020年3月★★★ 読み終わってからしばらく経つが、感想を書こうと思う。 この話は6世紀ごろのイギリスを背景にしている。サクソン人(移民)とブリトン人(土着)が住んでおり ちょっとした諍いのことなど忘れて、共存している。 「忘却」 そう、人々は忘却の霧に包まれているのだ。 だから、少し前まで殺し合いをしていたことも忘れて共存できるのだ。しかし、人々が忘却の霧から解放されたら? この物語は、ある老夫婦が家を出て行った息子を求めて旅に出るところから始まる。やがて屈強の戦士や、傷を負った少年に出会い、「忘却の霧」の真相を知る。 竜を倒せば「忘却の霧」が晴れると知ったとき 「記憶を取り戻すのが怖い」 そう感じてしまうのもよくわかる気がした。 サマーセット・モームが『月と六ペンス』の中で 「慈悲深い忘却がすべての傷を洗い流す」的なことを書いていたが、それもそうだだよな、と思う。

Posted byブクログ