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忘れられた巨人 の商品レビュー

4

140件のお客様レビュー

  1. 5つ

    28

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    17

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    0

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2021/12/02

冒頭100ページくらいの物語の始まり方がすごく好き 少し前の記憶を忘れてしまう人々。 そのことに気付いた老夫婦が、かつて村を出た息子のことを思い出し旅に出る物語。 忘れた記憶を取り戻したいけれど、思い出してしまったら今の愛し合っている2人の関係も、平和な世界も変わってしまうか...

冒頭100ページくらいの物語の始まり方がすごく好き 少し前の記憶を忘れてしまう人々。 そのことに気付いた老夫婦が、かつて村を出た息子のことを思い出し旅に出る物語。 忘れた記憶を取り戻したいけれど、思い出してしまったら今の愛し合っている2人の関係も、平和な世界も変わってしまうかもしれない。 地に足ついたファンタジー。

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2021/11/17

読み終わった後に、色々考えさせられる本。 ファンタジーだけど、なぜか現実っぽい読み心地。 過去の不仲を忘れて一緒に生きることと、過去の憎しみを知りながら共存すること、どちらを選択すべきか考えた。 話のテンポは、それぞれの登場人物の視点による章別になっていたりするので、読んで...

読み終わった後に、色々考えさせられる本。 ファンタジーだけど、なぜか現実っぽい読み心地。 過去の不仲を忘れて一緒に生きることと、過去の憎しみを知りながら共存すること、どちらを選択すべきか考えた。 話のテンポは、それぞれの登場人物の視点による章別になっていたりするので、読んでるページ分量からの感覚よりも、物語が遅く進む。数日分の冒険を読み進んだと思っていたら、物語の中ではたった半日しか経ってなかったり。それがまた不思議な感覚を与えてくれた。 ともかく、話の流れがいまいちよく理解できてない気がして、もっと知りたくなって読み進めるうちに辞められなくなって、一気に読んでしまった。 話全体の輪郭はぼやけている気がするのに、後味に大きな影を残していった感じ。他人に説明しにくいけど、学んだものは大きいと思う。

Posted byブクログ

2021/11/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ファンタジーだけど、重要なのは話の筋ではなく、記憶とは何かについてだと思った。 愛や憎しみの記憶に向き合うことの大切さ。 国家の記憶は後世に残すべきか。否か。 ブリトン人の間に長くいすぎたのかもしれないという最後のウィスタンのセリフはとても哀しげだった。 そんな戦士にこれから鍛練を受けるエドウィンは何を選択するのだろうか。 忘れられた巨人の復活によるその後、来るべき世はどうなるのか。この先の展開を作者から委ねられているような気がした。

Posted byブクログ

2021/10/26

巣穴のような洞窟で村を形成し、その中で暮らしていた老夫婦。つつがない生活を営んでいたものの、時折感じる違和感が...つい最近起きた出来事でも、村人に話すと全然覚えてないと言う。老夫婦二人の間でも会話が噛み合わなくなることがしばしば。 そんな中で夫婦は違う土地で暮らしている息子の...

巣穴のような洞窟で村を形成し、その中で暮らしていた老夫婦。つつがない生活を営んでいたものの、時折感じる違和感が...つい最近起きた出来事でも、村人に話すと全然覚えてないと言う。老夫婦二人の間でも会話が噛み合わなくなることがしばしば。 そんな中で夫婦は違う土地で暮らしている息子のところに行こうと旅を決意し、村を出る。外は鬼が跋扈していたり、危険が伴うし、件の謎の記憶障害により、道のりも定かではない中なんとか次の村へ。 鬼より強いサクソン人の戦士(老夫婦はブリトン人)、鬼に噛まれた青年、アーサー王の甥、ガウェイン卿たちと出会いながら行動を共にするようになる。旅をしていく中で謎の記憶障害の原因も明らかになり、クエリグという竜を倒すという歯車に飲まれていく。竜を倒した先には何が待っているのか? ファンタジーとしても面白かったけど、この物語のメタファーとなっている問題も良かった。その問題を「記憶障害」という装置で話を展開させていくのがすごく良い。その意味がわかった時にため息が出る。アーサー王の話とか、サクソン人、ブリトン人の話とかあらかじめ教養とし備わっている状態で読んだら更に楽しめたんだろうな。と思った。

Posted byブクログ

2021/09/29

冒頭から静粛に淡々と物語が進む。謎めかしい事象が語られる中、老夫婦が息子に会う為の旅物語。 宗教的にも民族的にも知識が少ない私には、難解だった。 謎は謎ではなく忘れられた事実。解明されるのではなく思い出すしか無い。いや、忘れてしまう方が良いのかという命題。 そこに、巨人として暗喩...

冒頭から静粛に淡々と物語が進む。謎めかしい事象が語られる中、老夫婦が息子に会う為の旅物語。 宗教的にも民族的にも知識が少ない私には、難解だった。 謎は謎ではなく忘れられた事実。解明されるのではなく思い出すしか無い。いや、忘れてしまう方が良いのかという命題。 そこに、巨人として暗喩されたものがあるのだとは思うのだが。

Posted byブクログ

2021/09/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

カズオ・イシグロさんの作品は初めて読んだのですが、想像以上に読みやすくて驚きました。 息子に会いにいく旅に出る老夫婦の物語なのですが、2人の愛の深さをやりとりの端々から感じることができ、とても暖かい気持ちになりました。 2人の旅がどのように終了するのかが気になって、時間を忘れて夢中に読み進めてしまいました。

Posted byブクログ

2021/08/22

もし記憶が故意に失わされてるとして、かつての記憶が楽しいものばかりではなく、とてつもなく辛いものも含まれているとしたら。記憶がないことによって、本来憎み合うはずの相手と幸せに暮らせているとしたら。それでも楽しい記憶のため全てを取り戻したいか…。 何の前知識もなく前半を少し読み進め...

もし記憶が故意に失わされてるとして、かつての記憶が楽しいものばかりではなく、とてつもなく辛いものも含まれているとしたら。記憶がないことによって、本来憎み合うはずの相手と幸せに暮らせているとしたら。それでも楽しい記憶のため全てを取り戻したいか…。 何の前知識もなく前半を少し読み進めたときに、記憶が曖昧になっている老夫婦がただ息子に会うため旅に出る話かと思い、その間のやりとりもめっちゃ退屈で一旦挫折しかけましたが、カズオイシグロさんのは以前2冊読んでいてどちらも途中から面白くなったので、頑張って読み進めました!でもその際に調べて、この物語の背景にあるアーサー王の時代のマーリンやら何やらをサクッと読んで薄い知識だけ入れときました。 そしたら、そこからは面白かった(*^^*)。ファンタジー小説ともいえるしミステリー要素もあるし、アクセルとベアトリスの旅が進むにつれ次第に明らかになっていく事実にそうだったのかーと。 なぜ記憶の忘却があったのか、巨人、アクセル、ガウェインの正体云々。 だけどラストはどう捉えたらいいんでしょうか

Posted byブクログ

2021/08/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

カズオイシグロ、初読。 アーサー王より少し後の時代の物語で、中世の叙事詩のよう。特にガウェインの語りは芝居がかってて、雰囲気を盛り上げてくれる。 人々の記憶が保てなくなってる世界の謎を解くための冒険譚のようでいて、罪と赦しを問う物語でもある。 ラスト、アクセルがベアトリスと生きる道を選んだのかどうかは読む側に委ねられていて、そこに、読む側の人生観が反映される気がする。 私はアクセルは、ベアトリスとは行かないと思った。自分を赦せなくて。 読む時期によって、多分感じる結末は違うんだろう。

Posted byブクログ

2021/08/02

和解のために必要なのは、それと知らずにもたらされる忘却なのではないか? 仕立ては剣と魔法の世界。竜あり、騎士あり、戦士あり。けれど、やっぱりそこはカズオ・イシグロ。人間存在の要石のところを揺さぶってくる。 上記の問いかけは、極めて現代的(パレスチナとイスラエル、日本と東アジア諸...

和解のために必要なのは、それと知らずにもたらされる忘却なのではないか? 仕立ては剣と魔法の世界。竜あり、騎士あり、戦士あり。けれど、やっぱりそこはカズオ・イシグロ。人間存在の要石のところを揺さぶってくる。 上記の問いかけは、極めて現代的(パレスチナとイスラエル、日本と東アジア諸国、ツチとフツetc.etc)でありながら、同時におそらく有史以前からの宿題でもあることを改めて思わされる。しかも、その問いかけは国と国、民族と民族の間だけに投げかけられるものでもない。夫婦、親子といった、最小サイズの人間関係さえ、上記の問いを免れない。 記憶は、幸せのよすがであることは、疑いがない。けれど、諍いの種でもあり、諍いの記憶自体が今の幸せの足枷にもなる。では、忘れてしまえば幸せか?リセットボタンを押して?アカウントを削除して??データを更にして??? そうかもしれない。知的負荷は受け止めるにも限度があるから。負の記憶を正気で背負い続けられる人はそんなに多くない。戦後、戦争経験を正面から語れた人は一体何人いる?被災経験については?離婚経験は?家族の離散については? 記憶が人間を人間にしている。その記憶自体が人間を苦しめもする。とするならば、あの人たちがとった策は、思いやりという名のパターナリズムと言うほかないのだろうか? 「水に流す」「手打ちにする」という言葉がまかり通ることのない世界を、「アイデンティティ」という奇妙に硬い殻を背負って、しかも正気で生きることの難しさをずっしりと感じさせられた。

Posted byブクログ

2021/07/26

息子に会うため旅をする老夫婦の話。道中で、人々の「記憶」を奪ってきた竜退治に向かう。隠されていた過去にこそ真実があり、それにどう向き合うべきかというテーマがこの小説の骨格となっている。ファンタジー小説ではあるが、カズオ・イシグロの重厚な文体によって神話のような重みのある雰囲気が醸...

息子に会うため旅をする老夫婦の話。道中で、人々の「記憶」を奪ってきた竜退治に向かう。隠されていた過去にこそ真実があり、それにどう向き合うべきかというテーマがこの小説の骨格となっている。ファンタジー小説ではあるが、カズオ・イシグロの重厚な文体によって神話のような重みのある雰囲気が醸し出されている。また、主人公が老夫婦だけあって、幅広い層に馴染みそうな作品であった。展開がよく練られている上に、非常に読みやすいため、長編小説ではあるものの、ワクワクしながら最後まで読めた。

Posted byブクログ