風神雷神 風の章 の商品レビュー
一芸に秀でた人は時に、"○○馬鹿"と呼ばれることがある。 一つの事しか視界に入らないのだ。 京の扇屋「俵屋(たわらや)」の大旦那・仁三郎は、跡継ぎたる息子がいない。 ある日、本家の末息子・伊年を養子として連れて来た。 何時間でも飽きずに絵を描き続ける集中力、長...
一芸に秀でた人は時に、"○○馬鹿"と呼ばれることがある。 一つの事しか視界に入らないのだ。 京の扇屋「俵屋(たわらや)」の大旦那・仁三郎は、跡継ぎたる息子がいない。 ある日、本家の末息子・伊年を養子として連れて来た。 何時間でも飽きずに絵を描き続ける集中力、長じるうちには、扇に図案を配するセンスが目利きの客に喜ばれるようになった。 しかし、絵を描く以外はぼんやりとして、とても商家の若旦那としてやって行けそうに無い。 一番番頭の喜助は行く末を案じるが、大旦那は自分の見立て通りであったと喜ぶばかり。 戦国の世が終わりかけ、解放されたエネルギーが、文化や芸能に向かう時期だった。 出雲阿国との不思議な縁、平家納経の修復作業、本阿弥光悦とのめぐり合いを通じ、伊年の世界は徐々に開かれていく。 友人、角倉与一が印刷所を起こしたことから、本阿弥光悦の書、紙屋宗二の料紙、俵屋伊年の下絵の三位一体の芸術が大人気を博し、伊年は次第に家業の扇の仕事からは遠ざかる。 しかし、光悦とのコラボレーションは、絡み合い、刺激し合いながら独りではたどり着けなかった芸術の高みへと伊年を押し上げてくれるものであった。 仁三郎が見出し、光悦が花開かせた、伊年の才能と言ってもいい。 彼にとっては無くてはならない出会いだったのだ。 だが、やがて邯鄲の夢から醒める時が来た。
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慶長3年3月15日。エンペラーウェザーに恵まれた、真言宗派の古刹、伏見醍醐寺。後に言う「醍醐の花見」の華やかな冒頭から一転。 俵屋宗達って、翁屋の跡取に養子に入ったんか。ぼーっとしてたんか。ふーん。 出雲阿国との出会いもなんか尻切れトンボだし、冴えないボンだけど、光悦との平家納経修理から豊国大明神臨時祭、角倉与一プロデュースの嵯峨本のくだりはほとばしる才気溢れる人達が入り乱れて、圧巻。
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久しぶりの柳広司さんの作品で今までと全く異なる赴きであり、少し不安があったが杞憂であった。京都の気だるいような空気が文章から感じられる。
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京都の俵屋の後継ぎとして養子となった伊年は、いつもぼやっとし、先行きが不安視されます。 しかし彼の才能は日に日に開花し、俵屋の扇は評判を増していきます。 その後彼の描いた絵は、本阿弥光悦の興味を惹く出来となります。 光悦との出会いから、さらなる深みへと進みます。 謎に満ちた俵屋宗...
京都の俵屋の後継ぎとして養子となった伊年は、いつもぼやっとし、先行きが不安視されます。 しかし彼の才能は日に日に開花し、俵屋の扇は評判を増していきます。 その後彼の描いた絵は、本阿弥光悦の興味を惹く出来となります。 光悦との出会いから、さらなる深みへと進みます。 謎に満ちた俵屋宗達の前半生です。 興味深いです。
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最近文化ものとでもいうのか、そういうのが流行ってると思うんだけど、ジョーカーゲームの著書が俵屋宗達の小説書いてる。ぼんやりした他所から連れてこられた養子の伊年。出雲阿国や角倉了以の息子なんかも出てくる。本阿弥光悦の誘いを断るところまで。
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扇屋「俵屋」の養子となった伊年。俵屋の扇は日に日に評判を上げ、伊年は「平家納経」の修理を任され…。「ジョーカー・ゲーム」の著者が、世界が憧れた謎の絵師・俵屋宗達を描く! 主人公の俵屋宗達に本阿弥光悦や出雲阿国といった同時代の有名人を絡めた興味深い物語が展開する。連載モノだけに重...
扇屋「俵屋」の養子となった伊年。俵屋の扇は日に日に評判を上げ、伊年は「平家納経」の修理を任され…。「ジョーカー・ゲーム」の著者が、世界が憧れた謎の絵師・俵屋宗達を描く! 主人公の俵屋宗達に本阿弥光悦や出雲阿国といった同時代の有名人を絡めた興味深い物語が展開する。連載モノだけに重複があるが、それも気にならない。柳広司の新境地だろうか。 (B)
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まさしく、絵と書による相互作用(セッション)だ。 プロフェッショナル×プロフェッショナル×プロフェッショナル×プロフェッショナル それぞれの領分でそれぞれが最高の仕事をすると、それはもう素晴らしいものになるよね
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俵屋宗達の「風神雷神図屏風」には数年前の国立博物館で尾形光琳のものと同時に展示している展覧会を見て以来痺れてしまっています。乱暴な印象として琳派って括られているけど光琳がデザインなのに対して宗達はアート、みたいに受け取りました。たまたま美大で教員をしている友人との宗達の創造性につ...
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」には数年前の国立博物館で尾形光琳のものと同時に展示している展覧会を見て以来痺れてしまっています。乱暴な印象として琳派って括られているけど光琳がデザインなのに対して宗達はアート、みたいに受け取りました。たまたま美大で教員をしている友人との宗達の創造性についての議論になり、その圧倒的アートの天才は本阿弥光悦からの脱却を図りたかったのだ!との私見を聞いたばかりで、この本を手にしました。上巻はなんかそんな感じの展開…さてさて、いざ下巻!
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風神雷神図屏風で有名な絵師、俵屋宗達さんのお話。 評伝と小説の間くらいの書き方ですかな。 柳さんの文章読みやすいし、面白いからどっちでもいいけどね! 琳派ってのがまず普通じゃなくて、気になる存在じゃないですか。その成り立ちがこんなに楽しく理解できるなんてステキだ。 宗達さんも天才...
風神雷神図屏風で有名な絵師、俵屋宗達さんのお話。 評伝と小説の間くらいの書き方ですかな。 柳さんの文章読みやすいし、面白いからどっちでもいいけどね! 琳派ってのがまず普通じゃなくて、気になる存在じゃないですか。その成り立ちがこんなに楽しく理解できるなんてステキだ。 宗達さんも天才肌なのに謙虚な好青年に描かれててかわいいけど、本阿弥光悦さんが寛容で茶目っ気のあるナイスミドルで萌える。何と若者の才能の育て方の上手いことよ。 下巻・雷の章が図書館の予約待ちなのだ……早くこないかなー。
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俵屋宗達の生涯を描いた話。上巻。 絵に対する集中力が尋常ではないところを見込まれて扇屋「俵屋」の養子になった伊年。時代は秀吉の晩年から徳川幕府の初期、南蛮貿易で輸入された異国の品々や出雲阿国の踊りなど、さまざまな意匠を取り入れて新たな芸術を切り開いてゆく。 平家納経の修繕、本阿弥...
俵屋宗達の生涯を描いた話。上巻。 絵に対する集中力が尋常ではないところを見込まれて扇屋「俵屋」の養子になった伊年。時代は秀吉の晩年から徳川幕府の初期、南蛮貿易で輸入された異国の品々や出雲阿国の踊りなど、さまざまな意匠を取り入れて新たな芸術を切り開いてゆく。 平家納経の修繕、本阿弥光悦と嵯峨本の制作など一つ一つ難関を乗り越えてステップアップしてゆく伊年が読みどころ。絵だけではなく、当時の文化全般も面白い。下巻が楽しみ。
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