ゲームの王国(下) の商品レビュー
上巻からは打って変わった展開。結局 誰が主人公だったのかよくわからなかった。 SF成分は少なめな気がする。
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正直前半と後半は異なるテーマが走っていて、賛否が分かれてるようですが、後半も私は好きです。脳科学に基づく新しいゲーム。今後、小川さんの作品は追い続けることが決まりました。
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39:ポル・ポト、クメール・ルージュ時代の不安定なカンボジアで、潔癖すぎる少年と聡明すぎる少女が出会う。汚職、賄賂、不正に満ちた政治に憤る二人は「ゲーム」のルールを正しく定めるべくそれぞれの道を歩むが。 ……というわけで、不正を正すためには権力が必要、権力を手にするためには不正な...
39:ポル・ポト、クメール・ルージュ時代の不安定なカンボジアで、潔癖すぎる少年と聡明すぎる少女が出会う。汚職、賄賂、不正に満ちた政治に憤る二人は「ゲーム」のルールを正しく定めるべくそれぞれの道を歩むが。 ……というわけで、不正を正すためには権力が必要、権力を手にするためには不正な手段を取らざるを得ない状況で、多数の正義を選ぼうと手を汚したソリヤと、何かしら方法があるのではと考え続け、結果として待つばかりだったムイタックがプレイする「ゲームの王国」。読み始めたときは戸惑ったものの、輪ゴムや泥、鉄板などの「トンデモ」たち、アドゥやノイなど無残に死んでゆく市井の人々の目を通して描かれる歴史と時間は面白いの一言に尽きます。 作中に登場する「人生」というシンプルなゲームが奥深い……。
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今までに読んだことのない小説。 その面白さと、戸惑いを同時に感じた読書体験でした。 上巻の、ヒリヒリした緊張感が持続する感じとは異なり、抽象的なルール、ゲーム描写を軸に物語が進行していきます。それについていくのが精一杯で、「読んでいて自分の中に湧き上がる感情を楽しむ」という感覚...
今までに読んだことのない小説。 その面白さと、戸惑いを同時に感じた読書体験でした。 上巻の、ヒリヒリした緊張感が持続する感じとは異なり、抽象的なルール、ゲーム描写を軸に物語が進行していきます。それについていくのが精一杯で、「読んでいて自分の中に湧き上がる感情を楽しむ」という感覚を、上巻の時ほど味わうことはできませんでした。 独特の文章が展開する中で、僕が面白いと感じた部分は、「人が人に興味を持つ瞬間」が描かれているところです。 物語に登場する興味深い人物たちが、どのようにして出会い、結びついていくのか。そのきっかけとなる瞬間が描かれているのです。人と人とが引かれ合っていく様子に、ワクワクしました。 感情やゲームに関しての科学的・理系的な描写に加えて、登場人物たちの出会いを描写する文系的な要素が合わさる。SFというくくりで語られる物語としては当たり前のことかもしれませんが、そのバランスの絶妙さが、この本の魅力のひとつなのだと思いました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
正しいルールが機能する幸せな世界「ゲームの王国」を実現するために、正しいルールを制定し守らせることができる力を得ようとするソリヤが、そのためにやむなく悪いこともし、人の命も奪い見殺しにする。ここはすごく、読んでいて確かにわかるのだけれど、つらい。でもわかる。そもそも上に立つ人間は、何かを守るために、何かを切り捨てる決断もするものだから。100人を救うためには1人を見殺しにし、あきらめ、殺す、のは実際ある選択だろう。ただ非常に大きな国レベルの将来の国民を守るために、あまりに多くの人の死の上に立ってしまったソリヤは、たとえ別の結末を迎えトップに立ったとしても、耐えていけるのか?。 一方ムイタックは「人生や世界をゲームだと考えるのはゲームの価値を落とす行為」と考え、勝っても負けても楽しめるゲームを考えるが。自分と相いれないソリヤの考え、自分の家族を奪ったソリヤの許せない行動を憎みながらも、ソリヤの行動の理由を考え続ける。「どうして」との問いが、心理学への興味であり、脳波測定の研究になったのだろう。そして(彼女は)「絶望を糧に、国家を変えようと努力していたのかもしれない」「自分にも嘘をついて」「(理想を実現することは)可能だろうか」(自分は)「不可能だとだと思っていたので、逃げ出すことにした」「世界のことなど気にかけず、自分の世界を作ることに集中そればいい」と考えていたムイタックは、ゲームを通じてもう一度自分の人生の記憶を強く追体験し、人生の意味を問い直したのではないか。 この話の中では「記憶」の重要性が非常に高い。私を形作っているものは「記憶」だと思う。今現在の私の心や意思や気持ちは過去の膨大な「記憶」の積み重ねで作られる。だから「記憶」を失うことはとても恐ろしい。自分が確かだと思っている記憶が改ざんされていたら?自分が自分の意思だと思っていることが介入によるもので、それに全く気が付けないとしたら?人は何をもって自分を規定するのか? 「ゲームの王国」の脳波ゲームでも、人の記憶を誘導し修正し上書きさせられるようでもあったので(それは強制ではなく、自分の意思下でとはなっているけれど)、その機能は人の考えを読み取れること以上に、恐ろしい外には出せない、大変な機能なと思ったのだが、あまりそういう方向には進まず、記憶の追体験がメインであった。そういう意味では、この小説はムイタックとソリヤの恋愛小説であったのかもしれない。
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上巻から時が流れて、2000年代~2020年代の話です。カンボジアでは、まだ根の深い問題がありました。 ソリヤは、ずっと“正義と公正が永久に続くような社会を作”るために、“自分の人生を捧げると決め”(p99)て生きていました。けれど、正しいことをするため、権力を持つために、正し...
上巻から時が流れて、2000年代~2020年代の話です。カンボジアでは、まだ根の深い問題がありました。 ソリヤは、ずっと“正義と公正が永久に続くような社会を作”るために、“自分の人生を捧げると決め”(p99)て生きていました。けれど、正しいことをするため、権力を持つために、正しくないことをしてきていました。 ムイタックは、教授となり、脳波について研究していました。そして、彼は脳波を使ったブラクション・ゲームを作りました。 ムイタックにとって、ソリヤは“親の仇で、友人の仇で、人生の敵(p335)”でした。それでも、ソリヤにゲームで負けた記憶が、ムイタックを世界に繋ぎとめていたのでした。 そして、彼らは再び、ゲームで戦います。 戦いながら、ムイタックは、ソリヤと“もう一度ゲームがしたかった”、ソリヤは“生きる意味そのものだった”(p344)のだと気付きます。 過酷な環境で生きながら、尊い記憶を持ち続けた少年と少女の運命の物語、SFの枠にとどまらない作品でした。
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この小説を「SF」と括ってしまうのはある種出版社の怠慢のような気がする。かといってではどういう括り方ができるかと問われると困ってしまうのであるが…。これこそが「SF」の懐の広さなのかもしれない。 「ゲームの王国」とは、それぞれの心の持ち方であり、「大切なものは結局、いつものように...
この小説を「SF」と括ってしまうのはある種出版社の怠慢のような気がする。かといってではどういう括り方ができるかと問われると困ってしまうのであるが…。これこそが「SF」の懐の広さなのかもしれない。 「ゲームの王国」とは、それぞれの心の持ち方であり、「大切なものは結局、いつものように自らの足元にある」と言うことなのだろうか? この物語は消して過去のカンボジアの話ではなく数年先のこの国の話のことなのかもしれない。
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カンボジアを舞台にした近未来小説の下巻。 上巻から30年後の現代から近未来のカンボジアの物語でした。 上巻の村中虐殺という衝撃のラストを受けて、その後に死んだ者もいるのですが、生き残った主人公たちとその次世代の話がうまくつながっていました。 登場人物紹介が下巻からのとなっていて、時々誰だったっけとなったので、上巻の登場人物も紹介しておいてほしかったです。 また、下巻の登場人物で、日本人NPO、村長の娘など出てきただけでその後が回収されていないので、続編もありかな?と思ってしまいました。 後半の後半でこの物語が主人公二人の愛憎物語であることがわかり、それで他の登場人物については放りっぱなしになったのかと納得しました。 いずれにしても、掘り出し物の名作だったと思います。
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これは評価が分かれる本でしょう。上巻は息詰まるようなポルポト政権下の人々の生活と争い。下巻は近未来のSF。すごい本です。面白いです。ただ、下巻の展開が上巻ではヒントもないので、裏切られたように感じる読者もいるのではないでしょうか。もちろん、ヒントがないからこそ、面白いというのもあ...
これは評価が分かれる本でしょう。上巻は息詰まるようなポルポト政権下の人々の生活と争い。下巻は近未来のSF。すごい本です。面白いです。ただ、下巻の展開が上巻ではヒントもないので、裏切られたように感じる読者もいるのではないでしょうか。もちろん、ヒントがないからこそ、面白いというのもあるのですが。 ゲームの王国、そのタイトルがふさわしい物語でした。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ポル・ポト時代のカンボジアの話と、カンボジアの近未来の物語。 皆上巻の方が面白いというレビューをよく見るが、SF小説という観点からすれば下巻もかなり面白かったと思う。 上巻は架空の登場人物と実在の歴史上の人物を絡め、当時カンボジアがどんな国であったかをわかりやすく考えさせられる描かれ方で誰しも面白いと感じる構成だろう。 下巻は上巻の登場人物たちが大人になってからを描く近未来の設定で、ポル・ポト政権を批判していた人物が未来で政権を取ろうと動き、ポル・ポト政権と自分がやろうとする政治とのジレンマの物語と、それを批判する人たちがゲームにより世界を変えられるかを提言する物語とが絡み合う話でこれがとても面白い。 テーマとしては本当に面白く、今ではゲームが人の生活に密接に繋がっているので、これが政治を含め世界全体が変わって行く可能性もあるのでは、と思わせられる内容ではないかと思う。 また登場人物たちに特殊能力を持った人たちが多々出てきて、これが全くかっこ良くなくてある意味親近感も湧いて面白かった。
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