幻夏 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
シリーズ2冊目。 私は、一作目の方が好きだけど、この作品もなかなかテンポが良くて面白く読める。 冤罪の話し…実際にはこんな物語は無いのだろいうけど、人が人を裁く限りこの様な事があり得るのだろう… そして、司法も完璧じゃない事を教えてくれる…この物語の中での言葉に唸った。。。 「捜査官は自分の筋読み通りの容疑者を逮捕しようと努力し、検察官は起訴した被告に関して有罪判決を勝ち取ろうと努力し、裁判官は事件の処理件数を上げようとする。その結果、たまに冤罪が起こってもだれも責任を問われず、咎められない」 「冤罪が生まれるのは偶然じゃない。捜査、起訴、公判、判決、全てを含めた司法構造から必然的に冤罪は生み出されている。この構造がある限り、冤罪被害者は永久になくならない。」 そして一番驚いたのが日本では捜査で見つかった証拠のうち、被告人に有利な証拠は裁判には提出されないという。。本当なら….それで有罪率99.9%って…裁判員制度が復活してもこれでは意味がないと思ってしまう。 冤罪は無いと信じたいがしかし…あるのも事実。 この物語の構成はもちろん「犯罪者」と同じ様に素晴らしいの一言。だがそれ以上に、この物語の母と子、また兄弟の描写が感情移入してしまう。ラストの方で段々と見えてくる事実に涙しそうになる。「犯罪者」は息も付かせぬ展開で夢中になっって読んだが、今回の作品は中々のスピードと人間模様がプラスされたエンターテインメント小説。お勧めです!
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このシリーズを読むごとに、警察が嫌いになっていく。 後半は悲しくて苦しくて辛くて。尚も拓も香苗さんもお父さんも、みんなみんな可哀そうで、やるせない気持ちでいっぱいになった。 前作もそうだったけど、勧善懲悪というか、すぱっと解決してほしんだけどな。こっちの方が現実に近いっていうの...
このシリーズを読むごとに、警察が嫌いになっていく。 後半は悲しくて苦しくて辛くて。尚も拓も香苗さんもお父さんも、みんなみんな可哀そうで、やるせない気持ちでいっぱいになった。 前作もそうだったけど、勧善懲悪というか、すぱっと解決してほしんだけどな。こっちの方が現実に近いっていうのはわかってるけどさ…。 *** 23年前の夏、失踪した親友は何を求め、何を失ったのか―― 「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」毎日が黄金に輝いていたあの夏、同級生に何が起こったのか――少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、現場で奇妙な印を発見し、23年前の苦い記憶を蘇らせる。台風一過の翌日、川岸にランドセルを置いたまま、親友だった同級生は消えた。流木に不思議な印を残して……。少年はどこに消えたのか? 印の意味は? やがて相馬の前に恐るべき罪が浮上してくる。司法の信を問う傑作ミステリー。
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前作「犯罪者」に引き続き、相馬、鑓水、修司の3人が、事件解決に挑む。 今回は「冤罪」を主題として、司法の構造、テレビ報道の在り方という社会派ドラマ仕立てになっている。 23年前の相馬の少年時代の思い出が、鑓水、修司の探偵事務所へ持ち込まれた行方不明の息子の捜索依頼と、今まさに発生...
前作「犯罪者」に引き続き、相馬、鑓水、修司の3人が、事件解決に挑む。 今回は「冤罪」を主題として、司法の構造、テレビ報道の在り方という社会派ドラマ仕立てになっている。 23年前の相馬の少年時代の思い出が、鑓水、修司の探偵事務所へ持ち込まれた行方不明の息子の捜索依頼と、今まさに発生している少女失踪事件を結びつけ、絡み合っていく。 今回もストーリー、登場人物の描写やエピソードが、「映像を見ている」よう。 特に、尚と拓の兄弟と母香苗の人生、相馬少年との夏の思い出は、美しく且つ残酷で物悲しい。 23年前の夏休みの終わりは、次第にセピア色となって読者の脳裏に焼き付く。 やる気ゼロのオヤジが営む弁当屋での出会い 耳の遠い老人宅から聞こえる高校野球の中継 隣の部屋で寝ている友達の母親の白いふくらはぎ 長い石段坂と百日紅の香り、セミの声 3人だけの秘密基地 宿題のエッフェル塔 子供たちだけの台風の夜 「オレの父親はヒトゴロシなんだ…。」 事件は「尚の失踪理由の解明」を中心に進む。 「謎の記号 //=Ⅰ 」の意味と兄弟の絆に涙し、 ラストシーン、窓からのやわらかな陽射しの匂いが、しばらく頭の中に留まる。 だから、読書は楽しい。
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一人の少年が行方不明になった23年後、当時の関係者がかかわる誘拐事件が起こる。冤罪をめぐる司法のあり方に目を向けた、社会派ミステリー。 日本の裁判における有罪率は99%。 その裏には、被告人に有利な証言は警察と検察にもみ消され、過重労働の裁判官は簡単に有罪判決を下すという恐ろし...
一人の少年が行方不明になった23年後、当時の関係者がかかわる誘拐事件が起こる。冤罪をめぐる司法のあり方に目を向けた、社会派ミステリー。 日本の裁判における有罪率は99%。 その裏には、被告人に有利な証言は警察と検察にもみ消され、過重労働の裁判官は簡単に有罪判決を下すという恐ろしい現実があるという。さらに冤罪が生まれる背景には、犯罪者を罰するためには強権の行使を容認するという一般人の願いがある、と作者は説く。 作者はテレビドラマの脚本家だったそうで、そのせいか説明口調の文章は味気なく読みにくい。さらには、登場人物の言動がいまひとつ表面的で魅力に欠け、少年の冷静すぎる行動も非現実的。 というあら探しはさておいて、日本の司法制度の現状を問題視し、冤罪の悲劇を取り上げた意味は大きい。シリーズらしいので、ほかの作品も読んでみたい。
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控えめに言っても、とんでもなく練りに練られたストーリーだ。まさに謎が謎を呼ぶ展開で、物語が矢継ぎ早にどんどん進んでいく。 しかも昔の推理小説のように最後に一気に謎が解き明かされるではなく、読み進めるうちにどんどん謎が解かれていくのに、同様に新たな謎が次々と生まれてくるような内容。...
控えめに言っても、とんでもなく練りに練られたストーリーだ。まさに謎が謎を呼ぶ展開で、物語が矢継ぎ早にどんどん進んでいく。 しかも昔の推理小説のように最後に一気に謎が解き明かされるではなく、読み進めるうちにどんどん謎が解かれていくのに、同様に新たな謎が次々と生まれてくるような内容。半分にも到達しない時点で、すでに通常のミステリー小説1冊分に近い読み応えがあるような作品だった。 ストーリーだけ評価すれば満点に近いが、星4つにしたのは、前作に続いて主役を張る登場人物3人が、いずれも魅力にかけるからだ。3人とも、普通はひとりくらい気に入ったり面白いと感じるキャラクターがいそうなもんだが。。 物語性が抜群なだけに、実にもったいない。
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興信所を営む鑓水のもとに、23年前に失踪した息子を探してほしいと言う依頼がくる。当時12才だった少年・水沢尚は鑓水の友人で刑事の相馬の友達だった。尚の失踪は尚の父・柴谷哲雄が犯したとされた傷害致死事件が全ての発端だ。何故尚は家族や相馬の前から居なくなったのか、大切な母や弟を残し...
興信所を営む鑓水のもとに、23年前に失踪した息子を探してほしいと言う依頼がくる。当時12才だった少年・水沢尚は鑓水の友人で刑事の相馬の友達だった。尚の失踪は尚の父・柴谷哲雄が犯したとされた傷害致死事件が全ての発端だ。何故尚は家族や相馬の前から居なくなったのか、大切な母や弟を残し姿を消した理由を知り、尚が歩んできた人生を思うとひとつ歯車が狂ったことで尚と弟の拓、母の香苗の人生をここまで狂わすのかと読みながら尚に感情移入し辛くなった。その原因を作ったのは警察、検事、裁判官だが、彼らはそんな意識は全くなく、それどころか選民意識か強く、過ちを認めないクズだった。唯一の救いはラスト、大人になった尚と相馬が再会し、かわらぬ友情をお互いに持っていることが感じられたことだ。
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なんてやるせねえんだ!! 地団駄踏みまくりです。 相馬、おまえ結構スタンドバイミーな少年時代だったんだなと思いつつ、君たちがまた再会できるようにと祈るばかりだよ。
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尚と拓と亮介が一緒に過ごしたひと夏はキラキラとしていた。 幸せな夏とその前後の時間ににツタのように巻きつく現実の辛さが切なすぎる。 突然消えた尚も尚を取り巻く全ての人も愛おしい。 愛おしいだけに切ない。 ストーリー展開も最後まで面白いが、それ以上に心を惹きつけるのが、それぞれのあ...
尚と拓と亮介が一緒に過ごしたひと夏はキラキラとしていた。 幸せな夏とその前後の時間ににツタのように巻きつく現実の辛さが切なすぎる。 突然消えた尚も尚を取り巻く全ての人も愛おしい。 愛おしいだけに切ない。 ストーリー展開も最後まで面白いが、それ以上に心を惹きつけるのが、それぞれのあの夏の思い出。 あの夏の日、いつもと同じ日常生活の中での会話や仕草が、終盤になって、その裏にある心情を知り切なくなる。 読み終えて、全てを知った後でもう一度読み返して、あの夏の毎日に触れたくなる。 秀逸の作品。
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「犯罪者」で登場した相馬、鑓水、修司の三人組が、新たな事件に立ち向かう。23年前に不可解な状況で失踪した子供を探して欲しいという依頼を、今になって母親から受けた鑓水。そしてその過去の失踪事件と、現在進行形で起こる失踪・誘拐事件が奇妙な一致を見せながら展開していく。 冤罪や取調べ...
「犯罪者」で登場した相馬、鑓水、修司の三人組が、新たな事件に立ち向かう。23年前に不可解な状況で失踪した子供を探して欲しいという依頼を、今になって母親から受けた鑓水。そしてその過去の失踪事件と、現在進行形で起こる失踪・誘拐事件が奇妙な一致を見せながら展開していく。 冤罪や取調べ体制など、日本の司法制度への問題提起が主なテーマだろう。ただし、一方的に腐すのではなく、それがメリットに場面も多々あることが強調されるのは好印象。 物語としては伏線回収が本当に見事。前作よりもミステリー色強めで良かった。また、最後までハラハラドキドキの展開が続く素晴らしい小説でした。
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想像を超えてスリリングな大作だった。 父親がヒトゴロシなんだ、と友人に告白した夏に行方不明になる少年。 その23年後に起きる少女誘拐事件。 冤罪をテーマに、法のあり方を深く考えさせられる。 10人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ、という刑事裁判の原則、一方で一人の無辜を...
想像を超えてスリリングな大作だった。 父親がヒトゴロシなんだ、と友人に告白した夏に行方不明になる少年。 その23年後に起きる少女誘拐事件。 冤罪をテーマに、法のあり方を深く考えさせられる。 10人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ、という刑事裁判の原則、一方で一人の無辜を守るために10人の真犯人が逃されてもいい社会を人々が望むのか。しかし、その「一人の無辜」とその家族の人生は人権はどうなるのか。やはり人間が人間を裁く以上、納得のいかない歪みは生じてしまうのかもしれないと思うとやり切れない。 事件を追うのは、派手なシャツを着た興信所の所長鑓水と、その部下の修司という破天荒ながら鋭い勘をもつコンビと、鑓水の友人の警察官相馬。ヘビーな題材ながら、興信所コンビがコミックリリーフのような役割を果たしていて、ちょっと息をつくことができる。 それにしても子供が関わる犯罪は読んでいて切ない。 シリーズものになっているとのことなので他の作品も読んでみたい。
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