Aではない君と の商品レビュー
読み応えがとてもある作品。 少年犯罪に向き合い続けた薬丸岳さんだからこそ、 こんなにも渾身の一冊が書けたのだと思う。 心と体、どちらを殺した方が悪いのかーー。 真の更生とはなにかーー。 親として犯罪を犯した子どもとどう向き合うのかーー。 タイトル「Aではない君と」にあるように...
読み応えがとてもある作品。 少年犯罪に向き合い続けた薬丸岳さんだからこそ、 こんなにも渾身の一冊が書けたのだと思う。 心と体、どちらを殺した方が悪いのかーー。 真の更生とはなにかーー。 親として犯罪を犯した子どもとどう向き合うのかーー。 タイトル「Aではない君と」にあるように、 吉永は少年犯罪者としてではなく、1人の人間・息子として翼から目を逸らさず、辛い事実も受け止め寄り添い続けていくという、決心や覚悟が見て取れた結末だった。 私はまだ子どもがいないけれど、 家族で物理的に距離が近いからと言って、 心の距離が近いわけではない。 物理的に近いからこそ、その環境に甘んじて、 本当に大事な存在の心の暗闇を見ることを妥協しないようにしていかなければならないと強く思った。 個人的には、 心と体のどちらを殺した方が悪いのか、の吉永の答えに納得した部分もある。 ただやはり被害者・加害者にとって不幸な出来事であったことには変わらず、 不幸な出来事に至るまでの経緯で、しっかり家族や友人が異変に気付いてあげていたら、違う結末が待っていたのかと思うとやるせない。 この作品は、読んで終わり! という安直なもの終わらせるのでなく、解説にもあるように、 子を持つ親はもちろん、少年にもぜひ読んでいただきたい作品。 そして、真の更生や、犯罪を犯した者との向き合い方を考え続けて、自分なりの答えを見つけなければならない作品。 このように少年犯罪という一つのテーマをつきつめて 読者に問題提起させる薬丸岳さんはすごい方だと改めて思った。 自分に子どもができたら読ませて感想を言い合いたいな。
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自分にも子供がある。家族がある。その立場から様々な事を考えさせられる。 私は本当に家族を子供を信じ、愛しているのだろうか。上辺だけでは無いのだろうか。不安になる。何が正解なのか判断がつかない。悩ましい。
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前から読んでみたかった作者であり題名から少年犯罪が題材と推測していた。終止重たい雰囲気で物語は進んでいく。私は結婚していて子供はいないが主人公である父親の目線で読んでしまう。向き合えていなかった自分を責めながら心を開いてくれない息子に問いかける主人公にひきこまれます。薬丸岳さんの...
前から読んでみたかった作者であり題名から少年犯罪が題材と推測していた。終止重たい雰囲気で物語は進んでいく。私は結婚していて子供はいないが主人公である父親の目線で読んでしまう。向き合えていなかった自分を責めながら心を開いてくれない息子に問いかける主人公にひきこまれます。薬丸岳さんの他の作品も読んでみたくなりました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
デビュー作の「天使のナイフ」に感心した記憶があり、本作も期待して読み始めた。こちらも「天使のナイフ」と同じ少年犯罪を扱っているが、もう一つの大きな主題が父と子の絆の再生にあり、期待に違わぬ仕上がりになっている。 私も一応父親だったので、語り手の父親の感情の動きや葛藤はよく分かる。もしかしたら、自分が同じ立場であったら、主人公のようには向かい合えないかもしれない。子供に正対してなんとか乗り越えたこの父親は強いと思う。 本作品は解説によると、雑誌連載時は第二章までだったらしい。書籍化するときに第三章を書き足したとの事だが、この第三章が加わる事によって、本作品の完成度と深みは格段に増したと思う。 深く重いテーマなので、ミステリー仕立てではあるが色々考えさせられる作品である。
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感想 子供は子供。だが手放しで受け止めてはいけない。何があったかを淡々と聞く。情緒的な判断を挟むのは後からで良い。とりあえず聞く。
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息子が同級生を殺してしまった。この揺るがしようのない事実に茫然自失となりながらも、息子を「もうひとりにはさせない」と決意し奔走する、そんな父親の姿がリアリティをもって迫ってきた。離婚によりなかなか会えずに疎遠となる中、犯罪事件によって父子が向き合う。なぜ息子は人を殺めたのか、真実...
息子が同級生を殺してしまった。この揺るがしようのない事実に茫然自失となりながらも、息子を「もうひとりにはさせない」と決意し奔走する、そんな父親の姿がリアリティをもって迫ってきた。離婚によりなかなか会えずに疎遠となる中、犯罪事件によって父子が向き合う。なぜ息子は人を殺めたのか、真実を求めて、何も話そうとしない息子に辛抱強く対面する父に胸が打たれる。私がこのような立場に立たされたら、どう気持ちを整理したらよいのだろうか。絶望の淵からどう這い上がってこれるのか、少しも想像できない。想像はできないが、殺人者となっても生きていてほしいという子どもに対する慈しみだけは共有できる。「物事のよし悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」という言葉は重い。簡単に得られる救いはどこにもないが、親が子を思うそのシンプルな強さに、感動と希望をもらえた。
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明らかに殺された方も悪いと思うが、それでも殺してしまったらこちらも悪い。 本当にそうなのか。難しい。
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「からだを殺すのとこころを殺すのはどっちが悪いのか」という一節が印象的だった。 客観的に見れば、同級生を殺した犯人という事柄や詳細を話さず反省の色が見えないことで被害者の肩を持つだろうが、加害者側の視点から描かれていたのは新鮮だったし、物事の良し悪しだけでなくそこに至った背景や心...
「からだを殺すのとこころを殺すのはどっちが悪いのか」という一節が印象的だった。 客観的に見れば、同級生を殺した犯人という事柄や詳細を話さず反省の色が見えないことで被害者の肩を持つだろうが、加害者側の視点から描かれていたのは新鮮だったし、物事の良し悪しだけでなくそこに至った背景や心情が見えて、色々な人の立場に立たなきゃなと思った。 もし自分が同じような状況になっても乗り越えられる自信がない。相手との信頼や愛情は偉大だし尊いなと改めて思った。 本を読んだ後に題を読むと、素敵な題だと感じた。
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薬丸岳さんの作品は物語としてというより、その立場にたった時に自分ならどう思うか、考えるか、行動するのかを考えさせられるものが多いです。世の不条理を考える事が多い人にはオススメです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
一気に読み上げてしまった ----------------- どうして動物を殺すことは許されるのに 人を殺すことは許されないの? 心を殺すのは許されるのに どうして からだを殺しちゃいけないの? ----------------- 少年のこの言葉が印象深かった どこかでわかる気持ちがある 読んでいて 翼が愛しくてたまらなくなった この小説を読んだ感想の正解は分からない 感情移入しすぎて 読み終わっても 翼を守ってあげたいと強く思ってしまった それ以上のことは深すぎて重すぎて、私には分からない。
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