英国諜報員アシェンデン の商品レビュー
諜報員が主人公の小説なのですが、サスペンスというよりも、主人公の前に現れる世界中の様々な人たちの描写や、会話の小気味よさが楽しい作品だったと思います。 ウィットに富んだ、あるいはシニカル言い回しだったり、恋に身を焦がす人たちだったり、このあたりの描写はいい意味で日本の作品にはな...
諜報員が主人公の小説なのですが、サスペンスというよりも、主人公の前に現れる世界中の様々な人たちの描写や、会話の小気味よさが楽しい作品だったと思います。 ウィットに富んだ、あるいはシニカル言い回しだったり、恋に身を焦がす人たちだったり、このあたりの描写はいい意味で日本の作品にはない洒脱な雰囲気があります。クラシカルな音楽のかかっているバーで読みたくなる雰囲気とでもいうべきか。 スパイの主人公自身は割と冷めてるというか、一歩身を引いて、同僚たちや関係者とことを進めてる雰囲気があります。それがこの作品のいいところかもしれない。その分、登場人物たちの感情や個性が際立つ。 捜査に来た警官の間の抜けた感じ。容疑者の男を信じ続ける女。お互いに尊重し合う夫婦。安定した身分がありながら、サーカスの女性に恋した男性などなど… 著者自身スパイだったということだけど、世界中で出会ったであろう様々な人物やエピソードが混ざり合ったからこその、この登場人物たちの層の厚さなのかと思います。 人間の恋の感情を描きつつも、一方でスパイらしい、一種の非常さもあって、それが作品の幅を広くしている気がします。 ストーリーの面白さももちろんありますが、登場人物たちそれぞれのエピソードや言葉回しも楽しい一冊でした。
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面白かった。スパイ小説ではあるが謀略や不自然な殺人描写は無い。英国大使の長いモノローグは大きな緊張を持って読み手を離さない。
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Hitchcockの「Secret Agent(間諜最後の日)」の原作、モームの作品。スパイ小説としても、文学作品としても一級で、楽しめる。 英国人の皮肉が、面白い。モームは諜報員としても活躍した作家であり、見識に感嘆する。
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面白い。読みやすく楽しく、味わい深い。名著とよんで差し支えない。 文豪の作品と身構えてしまうが、現代エンタメとしても十分に耐えうる。その上で、この風刺、視線、そして時代。妥当な表現かは分からないが、実にお得な作品だと思う。 さまざまな国籍、職業、身分、性別の人々が登場する。そ...
面白い。読みやすく楽しく、味わい深い。名著とよんで差し支えない。 文豪の作品と身構えてしまうが、現代エンタメとしても十分に耐えうる。その上で、この風刺、視線、そして時代。妥当な表現かは分からないが、実にお得な作品だと思う。 さまざまな国籍、職業、身分、性別の人々が登場する。その一人一人に実に目配りが効いていて、とてもユーモラスな表現で、イメージがありありと浮かぶように描かれる。例えばこんな風に。 「ミス・キングは小柄で老齢で、小さな骨を何本か干からびた皮に詰めたような外見で、顔には深いしわが刻まれている。汚らしい茶色の髪は明らかにかつらで、とても精巧に作られているが、ときどきずれていることがある」(p57) 主人公の英国スパイ・アチェンデンと上司Rとの珍妙な会話も読み所の一つ。 マカロニが好きかと尋ねられたアシェンデンは、なんやかんやと言いながら好きだという趣旨のことを話す。するとRは「それをきいてほっとした。イタリアにいってほしいんだ」(p83) まるで漫画「パタリロ」のような世界だ。ラストシーンは実にシュール!!
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津村記久子さんがお勧めしていたので頑張って読んでみたのだがやっぱり苦手な海外小説、字を追いかけるのが必死でその内容を堪能するまでには至らず。ただこの作家さんの人物描写は確かにユーモア溢れている。懲りずにまた読んでみよう。
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実体験に基づき主役に据えられた諜報員を通し,人間という生き物の核に迫る.立場に依らず人という生き物を一般論で語ることはできないが,しかしモームの目を通した人間達が,いずれもこれまで接することのなかった角度で描かれ,読了後のカタルシスは読む者にだけ与えられる.決して至福とはいえない...
実体験に基づき主役に据えられた諜報員を通し,人間という生き物の核に迫る.立場に依らず人という生き物を一般論で語ることはできないが,しかしモームの目を通した人間達が,いずれもこれまで接することのなかった角度で描かれ,読了後のカタルシスは読む者にだけ与えられる.決して至福とはいえない,このやるせない読了感以上に,モームは様々な思いを体験し,描かざるを得ない気持ちを抱き続けていたに違いない.モームの筆致を損ねることなく邦訳下さった金原瑞人先生の翻訳も素晴らしい.
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
モームが書いたスパイ小説。モーム自身が第一次大戦中英国情報部のスパイとして活動した経歴があり、主人公は作家兼スパイ。面白くないわけがない。 主人公アシェンデンの目を通して語られる短編の積み重ねの形式を取っており、アシェンデンの受ける任務によって舞台となる国や登場する人物が変わる。相変わらずの人物造形の巧みさは見事。特に、ヘアレスメキシカン、英国大使、ハミルトン、アナスタシアは出色。 当然短編なので、エピソード毎に色があるのだが、前半のコメディタッチの話から、大戦を背景とした暗い話へ読み進めていくことでグラデーションが効いているため一貫性を損なうことがない。実際のところは分からないが、特に中後半にロシアに舞台を移してからのエピソードは、モームのスパイとしての経験をより色濃く反映しているように感じた。特に、最後の2つエピソードでアナスタシアが出てくる場面においては、前半その他のモームの短編と同様、主人公はあくまでも観察者としての立位置を固持しキャラクターがぼやかしているところが多かったが、アシェンデンとアナスタシアのロマンスが描かれており、キャラクターが大きく変わりその効果が絶妙で物語への没入が一段階強くなったように感じた。 舞台設定、主人公のキャラクター等、一冊だけではなくて連載して一生ご飯が食べられるような名作だと思うが、モームの才能を持ってすれば他に描くべきものが沢山あったということなのだろう。 読みながら特にロシアの場面なんかは映画になるなと思っていたが、ヒッチコックが原作として採用していることを読後しる。ロシアの場面ではないが、「間諜最後の日」というタイトルらしいので、こちらも是非鑑賞したい。
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イギリスの間諜アシェンデンがかかわる出来事を描いた短編シリーズ。 しかし中心となるのは事件にかかわるさまざまな人物で、主人公のアシェンデンはあくまで狂言回し。
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サマセット・モーム「英国諜報員アシェンデン」再読。スパイといえばやはりイギリス。モーム自身、作家を隠れ蓑に諜報員として各国を渡り歩いていた時期があり、その頃の経過を基にして書かれている。連作短編の形となっており、一つ一つがかなり短い作品もあるが、不思議と心に残る。人物の緻密な描写...
サマセット・モーム「英国諜報員アシェンデン」再読。スパイといえばやはりイギリス。モーム自身、作家を隠れ蓑に諜報員として各国を渡り歩いていた時期があり、その頃の経過を基にして書かれている。連作短編の形となっており、一つ一つがかなり短い作品もあるが、不思議と心に残る。人物の緻密な描写と、ウィットに富んだ会話の力だろう。「若い頃、女は腰を抱け、瓶は首をつかめと教えられたものです」「いいことを教えてもらった。だが、わたしは今まで通り、瓶は腰をつかんで、女には十分な距離を置くことにするよ」
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モームっぽくないけど、戦時下を舞台に探偵役を押し付けられた一般人に毛が生えたソコソコの男が怖い目に遭う話。読みやすくわかりやすい。痴情のもつれが多くて大変だな・・・と思ったw
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