1,800円以上の注文で送料無料

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか の商品レビュー

3.5

16件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2025/03/11

本書の最初に、「人手不足と賃金停滞」に関しての基本データがあり、その最初のデータは、「1990年代以降、実質賃金は横ばい状態が続いている。2000年代半ばと2010年以降、労働需給は逼迫したが、実質賃金は上昇せず、むしろ緩やかな減少傾向すらみられる」ということが、データ・グラフと...

本書の最初に、「人手不足と賃金停滞」に関しての基本データがあり、その最初のデータは、「1990年代以降、実質賃金は横ばい状態が続いている。2000年代半ばと2010年以降、労働需給は逼迫したが、実質賃金は上昇せず、むしろ緩やかな減少傾向すらみられる」ということが、データ・グラフとして示されている。経済学では、需要が供給を上回った場合、財の価格は上昇し、上昇した地点で新たな均衡を得るという説明がなされるが、労働力という財について、それが当てはまっていない、すなわち、題名の通り「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」ということが、大きな疑問として生じる。 本書は、この疑問に、多くの経済学者がそれぞれの立場から説明を試みたものである。例えば、以下のような説明がなされる。 ■期間中、大きく雇用者数を増やしている業界に介護業界がある。しかし、介護業界の場合、事業者が自由に価格を設定することが出来ない。介護保険により、サービスの価格は政府が決め、個々の事業者に価格決定の裁量はない。政府が決定するサービス価格は、実際の需給バランスを反映しておらず、低価格に抑制されているため、この業界の賃金は上がらない ■労働力の需給ギャップはあるが、それが、パート女性や高齢者により、素早く埋められる傾向がある。女性や高齢者の労働市場参加は悪いことではないが、労働市場の受給バランスの緩和に働いた可能性がある ■日本の雇用者の年齢構成が高齢化している一方で、ある程度の年功的な賃金形態は特に正社員では維持されている。高齢化が進んでいる状態では、定年等による退職者が多く発生し、比較的高賃金のその人たちの賃金は、退職によりゼロになるか、あるいは、再雇用により、かなり低くなる。一方で入職してくる若い人たちの賃金は、高齢者に比べると低い。すなわち、高賃金の人たちが退職し、低賃金の人たちが入職してくること、その構成差により全体の平均賃金は計算上、下がる ■期間中、賃金の高い正規労働者の比率が減り続け、一方で、賃金の低い非正規労働者の比率が増え続けた。実は、正規労働者、非正規労働者ともに、個々に見れば賃金は上がっているのであるが、全体で言えば、賃金の低い非正規労働者の比率が増えたため、平均賃金は下がってしまう ■非正規労働者には、通常、教育訓練が行われないか、正規労働者に比べると少ない教育訓練しか行われない。これにより、非正規労働者の人的資本形成がなされず(職務能力の向上がなされず)、賃金が上がらない その他にも、多くの説明がなされている。 ここでは、どれか正解があるわけではなく、賃金が上がらない要因は複合的であることが強調されている。だから、対策も「これさえやっておけば」というものは存在しないはずである。 例えば、非正規労働者に対しては、「同一労働同一賃金原則を適用することにより、正規労働者と同じ仕事をしている非正規労働者の賃金を引き上げる(実際、日本ほど、正規労働者と非正規労働者の賃金格差の大きな国はない)」「いわゆる年収の壁を税・社会保険に対して中立的なものとし、壁近辺で働いている非正規労働者の労働時間を増やし、総所得を上げる」など、色々なことが考えられる。 大事なことは、本書のように、きちんとしたデータを取得し、事実に基づいて、多角的に論理的に原因と対策を考えることだと思う。そういうことがなされている、読み応えのある書籍だった。

Posted byブクログ

2024/01/06

2017年の本なので、現時点(2023年)と世相は少し変わっている。あと、専門家ではないので、細かい議論の妥当性までは理解しきれていない。その前提での印象としては、世の中は複雑なので、単一原因に起結は出来ないのだなあ、という感じ。(当たり前) 中高年以上の正社員の名目賃金は上が...

2017年の本なので、現時点(2023年)と世相は少し変わっている。あと、専門家ではないので、細かい議論の妥当性までは理解しきれていない。その前提での印象としては、世の中は複雑なので、単一原因に起結は出来ないのだなあ、という感じ。(当たり前) 中高年以上の正社員の名目賃金は上がっているが、新卒世代だと採用が絞られ賃金の低い非正規割合が増えているとか、主婦層/高齢者のパートタイマーが増えたことで、日本全体としての統計では賃金が上がっていないように見える、などはありそうなことで、、、 氷河期世代の不憫さが滲み出てる議論には涙が止まらない。。。

Posted byブクログ

2024/02/27

日本の硬化した労働状況が 少しは理解出来た さて!  自分に何ができるか、どうするかだな。と考えさせられた…

Posted byブクログ

2025/05/16

題名に釣られて購入するもののかなり読み応えがある本。 題名に対して「それは会社が契約社員の割合を増やしているから」と答えてしまう我々読者に対して、その一歩先の分析を導き出そうとする。 研究者による経済学に立った分析およびその解説は、経済学の基礎知識が欠けている自分のような読者にと...

題名に釣られて購入するもののかなり読み応えがある本。 題名に対して「それは会社が契約社員の割合を増やしているから」と答えてしまう我々読者に対して、その一歩先の分析を導き出そうとする。 研究者による経済学に立った分析およびその解説は、経済学の基礎知識が欠けている自分のような読者にとって難解な面も大いにある。ただそれ以上に、一つの問いに対して複眼的な分析でアプローチする手法は、なるほど、これは奥が深い。少なくとも、「何もしないで、賃金が上がる」なんてことは夢物語である感想を持った。

Posted byブクログ

2021/05/13

自分はトラックドライバーなのでバス運転手を例えに賃金が上がらない理由(スキルの勤続年数による向上がない、など)を考察した章が印象に残った。

Posted byブクログ

2019/02/16

タイトルの通りだけど、12人あまりの人がそれぞれの切り口で自説を述べるオムニバス方式。色んな切り口があるので面白い。 でもほとんどは忘れてしまった。 実は結構難しくて、用語を調べたり、別のページのグラフと見比べたりする必要があり、電車内で読むには向かない。 わかりやすいのは、...

タイトルの通りだけど、12人あまりの人がそれぞれの切り口で自説を述べるオムニバス方式。色んな切り口があるので面白い。 でもほとんどは忘れてしまった。 実は結構難しくて、用語を調べたり、別のページのグラフと見比べたりする必要があり、電車内で読むには向かない。 わかりやすいのは、失業率も下がっているし、正社員、非正規労働者の給料はそれぞれ上がっているけど、正社員→非正規への人口シフトが起こり、トータル平均だと給料が下がって見える、というもの。

Posted byブクログ

2019/11/10

旬の本だから早めに読まねばと思いつつ、途中で放りだしてながらく積読にしてしまっていた。でもおかげで本書の論考が執筆されたであろう時点から概ね3年が経過した(2019年11月)ので、その後の実質賃金推移を振り返ってみると。。。 ・毎月勤労統計調査 「きまって支給する給与」 201...

旬の本だから早めに読まねばと思いつつ、途中で放りだしてながらく積読にしてしまっていた。でもおかげで本書の論考が執筆されたであろう時点から概ね3年が経過した(2019年11月)ので、その後の実質賃金推移を振り返ってみると。。。 ・毎月勤労統計調査 「きまって支給する給与」 2018年は2015年比で1.6%増、ただし2019年にはいって微減ないし横ばい傾向 ・消費者物価指数 「総合」 2018年は2015年比で単年値を掛け算すれば1.4%増 以上より実質賃金は3年がかりで0.2%増くらいと相変わらずほぼ横ばい。ますます人手不足は言われているように感じるのですがこの状況。なお毎月勤労統計調査は調査方法の誤謬が問題になっているやつ オムニバス形式でいろいろな論考がならんでいるが、響いたのは第1章と第15章。 第1章での、労働需要の賃金弾力性が非常に大きいため「人手不足=労働力に対する超過需要ではない」可能性、との指摘は納得できる。はたらきたい人はいるのだが給料が安すぎて集まってこないために人手不足「感」が生じてしまうというもの。企業に対するアンケートでも、人手不足の理由として事業の拡大よりも離職の増加を上げている企業が多いという裏付けもあるそう。本章で他にも指摘されている介護報酬制度による介護職の賃金抑制も、給与が抑制されてることからくる人手不足ということでは同様の構図になり、人手不足でも好況感がまったくないことになる。 第15章はあらたな発見はないが現実世界の感覚として強烈に腹落ちする。まさに身分としての正規/非正規。もともとの正規/非正規格差は「男性稼ぎ主モデル」による生活保証を日本では企業が担ったことが原点だろうと示唆するが、それが時代とともに変容しつつ、都合の良いロジックで正当化されている。解決の妙案はない感じ。 あと第6章、第7章の人材育成力の低下という指摘も重たい。 全体として賃金の伸び悩みに対する「これぞ」といった処方箋はないのだが、一つありそうなのは第7章で触れられている、女性や高齢者の労働市場への新規参入が落ち着いて現代版「ルイスの転換点」を迎えるかも、というもの。

Posted byブクログ

2021/08/08

 人手不足なのになぜ賃金があがらないのかという問いに対して、様々な角度から解明を試みる。編者は七つのポイントから整理している。 【需給】労働市場の需給変動からの考察 ・市場メカニズムが働いていたとしても、弾力性の高さから、人手不足は主に雇用者数で柔軟に調整される結果、賃金は上が...

 人手不足なのになぜ賃金があがらないのかという問いに対して、様々な角度から解明を試みる。編者は七つのポイントから整理している。 【需給】労働市場の需給変動からの考察 ・市場メカニズムが働いていたとしても、弾力性の高さから、人手不足は主に雇用者数で柔軟に調整される結果、賃金は上がりにくくなる ・需給に応じて賃金がすぐには反応しないことを主張する論文が多かった半面、…継続就業している雇用者に限定し個別に追跡していくと、賃金が上昇している場合も少なくない。 【行動】行動経済学等の観点からの考察 ・賃金の下方硬直性が情報硬直性を生み出す 【制度】賃金制度などの諸制度の影響 ・賃金に関する制度だけでなく、社会保障に関する諸制度も、賃金が上がらない背景となっている 【規制】賃金に対する規制などの影響 ・現在の成長産業である医療・福祉産業では、どんなに人手不足になっても、すぐには賃金が上がりにくい仕組みがある 【正規】正規・非正規問題への注目 ・正規雇用に比べて賃金の低い非正規雇用の割合が増えれば、雇用者全体の平均賃金には、明らかに低下圧力が生まれる。2000年代を中心とする非正規雇用割合の増大が賃金を抑制していた 【能開】能力開発・人材育成への注目 ・人的資源管理論の立場からすれば、人手不足なのに賃金が上がらないのは、一つには企業が高く評価する技能を持つ労働者が少ないから 【年齢】高齢問題や世代問題への注目 ・働き盛りの年齢にある(30代から40代)人々の置くが、まさに賃金停滞の中心にある

Posted byブクログ

2018/07/03

賃金が上がらない理由を、複数の経済学者が書いた16の論文をまとめている。だが、いずれもこれだと言う内容もなく、一部を除き目新しさもない。 理由は様々あると思うが、労組の組織力の低下に伴う労働分配率の低下が大きな要素だと思う。 役員の報酬は上がり続けているのに、労働分配率は低下を続...

賃金が上がらない理由を、複数の経済学者が書いた16の論文をまとめている。だが、いずれもこれだと言う内容もなく、一部を除き目新しさもない。 理由は様々あると思うが、労組の組織力の低下に伴う労働分配率の低下が大きな要素だと思う。 役員の報酬は上がり続けているのに、労働分配率は低下を続けているが、労組は経営参加と言われてその気になって(もしくはそのフリをして)、戦うことを恐れる組織になってしまった。その辺りをもっと問題提起する人が居ないのが残念。

Posted byブクログ

2018/03/04

賃金の下方硬直性ゆえの上方硬直性とか、世代間格差とか、統計的誤謬の可能性とか、非常に示唆に富む内容だった。個人的には産業の新陳代謝を高め、生産性の低い産業から高い産業への労働力の移動があるべきだと思う。

Posted byブクログ