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若冲 の商品レビュー

3.8

48件のお客様レビュー

  1. 5つ

    7

  2. 4つ

    21

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

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2019/04/30

連作短編集?という気もしなくもない。 若冲の隠居の頃から、八十を超す高齢での死の後までが、間歇的に描かれている。 短編間では描かれる時間に少し間があるが、その間何があったのかはわかるように描かれている。 物語の結末は、こう言っちゃ何だが、半ばくらい読んでいくと見えてくる気がする。...

連作短編集?という気もしなくもない。 若冲の隠居の頃から、八十を超す高齢での死の後までが、間歇的に描かれている。 短編間では描かれる時間に少し間があるが、その間何があったのかはわかるように描かれている。 物語の結末は、こう言っちゃ何だが、半ばくらい読んでいくと見えてくる気がする。 けれど、その結末に向かって、じっくり、丁寧に描いていくのがこの作家の特質yのような気がする。 周到な書き方はは「枡屋源左衛門」から「茂右衛門」を経て、「若冲」と呼び方を変えていくことにも表れている。 こういった細かい事実が、説得力を生んでいる。 京都の老舗の野菜問屋の主人であった若冲。 生来の弱気から、母にいびられて自殺に追い込まれた妻を救うこともできない。 妻の弟、弁蔵から激しい怒りを向けられ、若冲の贋作絵師として生涯、彼を追い詰め続ける。 自分の苦しみに沈潜し、固執して作品を描き続ける自身に、やがて若冲は苦しみはじめ…というお話。 生涯にわたる義弟との確執は、恩讐の彼方に、といった感じ。

Posted byブクログ

2019/07/25
  • ネタバレ

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自身の道楽振りに姑達にイビられ自死した嫁を悔いて、ひたすら画業にのめり込む…と孤高を気取ってる割には、市場の縄張り争いとか、結構な俗事に振り回されているような。 義弟から向けられる憎悪を被虐的な程に精進の糧としていたのに、アッサリ降りられて肩透かし…とならなくて良かった。やっぱり主人公でも、他人の人生の主役は張れないよね…って、この下りはフィクションだった。 しかし本当に京都人って、こんなにイケズなんですか? そこかしこに底意地と根性との悪さや計算高さがひしめいているんですけど、このお話。こっわ〜。 2016年の若冲展、320分待ちだったと解説にある。マジか。おいぼいぼ。

Posted byブクログ

2019/02/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

多くが明らかになっていない江戸時代の画家、伊藤若冲の生涯を、独身ではなく妻がいたのではないか仮定して物語られる。 色彩豊かでありながら、テーマや絵の雰囲気になんとなく影があるように語られる理由を、妻がいたこと、その妻が自死したこと、その妻の親族に恨まれること、などを背景に結びつけることで妙に納得させられてしまう作者の筆力に圧倒される。 若冲の主観的な描写でなく、若冲が死ぬまで助手となって働く妹の目線で、それがものすごく客観的に語られることによって、より作品の信ぴょう性を増しているように感じる。 完全なる創作作品でありながらあたかも史実であったかのように錯覚してしまうほどの若冲の背景のテーマにこそ、若冲の絵画作品以上に心を震わせられる。 ただただ、上野でやっていた若冲展、行っておけば良かったとものすごい後悔。

Posted byブクログ

2018/12/10

澤田先生は人の恨みが昇華される過程を描くのが本当に巧み。ラストシーンの弁蔵に胸が詰まった。動植綵絵。。。観に行けばよかった。。。

Posted byブクログ

2018/06/14

澤田さんが謎に満ちた絵師の人生を描いてくれたことにより、絵に込められた思いを想像(妄想)しながら鑑賞するという楽しみが開けました。

Posted byブクログ

2018/03/04

 市井の町人が普段何をして何を思ったかなぞ、何百年後の人間が知る手立てはない(ブログは果たして情報として何百年後も残っているのだろうか?)。  そこに介入できるからこその歴史小説だと解説は言う。  伊藤若冲、没後300年を経た京都の画家について伝わることは少ない。  特徴的な画...

 市井の町人が普段何をして何を思ったかなぞ、何百年後の人間が知る手立てはない(ブログは果たして情報として何百年後も残っているのだろうか?)。  そこに介入できるからこその歴史小説だと解説は言う。  伊藤若冲、没後300年を経た京都の画家について伝わることは少ない。  特徴的な画風がいかにして生まれたのかを、若冲の人生を練り上げられたのが今作だ。  京都錦市場の問屋升源の四代目茂右衛門は、店を継いでから商いには全く興味がなく、部屋にこもって絵ばかり描いている。  妻は嫁ぎ先からの圧力と、生活をまったく顧みない夫に絶望して首を括った。  その死を見つけたのが、茂右衛門だった。  以降、世間を避けるように、より一層絵の世界に没頭していく。  姉は見殺しにされた。  そう言って憎しみをぶつけた義弟は、こんな絵など俺だって描けるといって姿を消した。  数年後、奇矯の絵かきとして持て囃される茂右衛門改め、伊藤若冲の絵に贋作が現れるようになった。  その贋作の裏に、義弟の影を見た若冲は、その贋作よりも前に行かねばならぬと常に焦りを感じる。  齢八十まで行き、絵に狂った男の人生は。  そして、どうして三百年後も残る大作を描けるようになったのか。    ところで若冲の描く白象って、結構不気味じゃね?

Posted byブクログ

2018/02/22

京都の青物問屋に生まれた奇才の絵師・若冲。 彼がどんな人生を歩んできたかは誰も知らない。 でも、その謎めいた彼の人生を色鮮やかに描いた作品がこの小説。 波乱万丈な人生、ライバルの存在、絵に生きた彼が救った錦市場など…面白い展開に目が離せない! この本を読んだ後に若冲の絵を見...

京都の青物問屋に生まれた奇才の絵師・若冲。 彼がどんな人生を歩んできたかは誰も知らない。 でも、その謎めいた彼の人生を色鮮やかに描いた作品がこの小説。 波乱万丈な人生、ライバルの存在、絵に生きた彼が救った錦市場など…面白い展開に目が離せない! この本を読んだ後に若冲の絵を見るとまた違った面白ろさがあります。

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2019/03/28

奇矯な絵で人々を魅了した伊藤若冲。 取憑かれた様に彼を作画にのめり込ませるのは、贖罪の思いなのだろうか。 彼を憎み、贋作を描き続ける義弟・弁蔵に描かせるものは激しい憎悪である。 若冲は弁蔵に追われ、弁蔵は若冲を追い、さながら光と影のように、または撚り合わさった縄のように存在する、...

奇矯な絵で人々を魅了した伊藤若冲。 取憑かれた様に彼を作画にのめり込ませるのは、贖罪の思いなのだろうか。 彼を憎み、贋作を描き続ける義弟・弁蔵に描かせるものは激しい憎悪である。 若冲は弁蔵に追われ、弁蔵は若冲を追い、さながら光と影のように、または撚り合わさった縄のように存在する、二人の絵師と、作品たち。 知らぬ間に、お互いがなくてはならない存在となっていったのではないか。 長い相克の末に、理解に似た境地に至ったのではないか。 影から見つめる、若冲の妹・志乃の視点だが、兄に寄り添い、弁蔵を慕い、「見届ける者」として確かな存在感がある。 若冲を失った弁蔵の慟哭は悲しいが、二人の絵師の長い愛憎を浄化させるものだったかもしれない。

Posted byブクログ

2017/11/22
  • ネタバレ

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歴史文学というものは、史実に近い順からいうと、史伝文学、歴史小説、時代小説という区分になると、前に何かで読んだ記憶がある。 その区分で言うと、この小説は歴史小説の体を取りながら、ほぼ時代小説と言えるのではなかろうか。 *史伝文学、歴史小説、時代小説の区分とは ・史伝文学:吉村昭の小説や司馬遼太郎の一部の小説「坂の上の雲」など。 ・歴史小説:司馬遼太郎の大部分の小説。 ・時代小説:池波正太郎の「鬼平犯科帳」や野村胡堂の「銭形平次捕り物控え」等。 主人公の伊藤若冲の経歴等は比較的残っているようであるが、主要なポイントさえ押さえて、後は作者の自由気ままに物語が展開できたのではないかと思う。 残された資料では、若冲は生涯独身となっているが、小説では「お三輪」が嫁いできて僅か2年にして、土蔵で首つり自殺をしたことから物語の全てが始まる。 小説の展開としては、自死した「お三輪」の弟の弁蔵が生涯に渡り若冲を恨み、その贋作を作ることで復讐し、逆にその事が若冲の奇矯な絵がさらに拍車が掛ると言う設定となるなど、かなり思い切った内容にしている。 また若冲が絵を描くのは、死んだ「お三輪」に対する自分の罪と向き合うためであり、それがきらびやかな絵の中に暗い影を落していると言う作者の若冲の作品に対しての自説を展開している。 また、作者は京都という町の特徴として、若冲のように京都の老舗の出身者には、その先進性を受け入れるが、反対によそ者で出自の卑しい与謝蕪村(土地を持たない水呑百姓の出身)に対しては、陰で軽蔑や差別するなど、京都の土地柄に対して批判的な目で描いている。 全体としては、重厚で面白く出来ているが、歴史小説と思って読むと、少し違和感が残るかも知れない。

Posted byブクログ

2017/08/23

歴史小説家の著者が、その類いまれな想像力で、昨年生誕三百年を記念する展覧会で熱狂的好評を博した若冲を、鮮やかに浮かび上がらせた。 池大雅、丸山応挙、谷文晁や与謝蕪村等々、当時の名だたる画家が登場し、彼の人生に花を添え、一方若冲の妻=姉の仇と憎み若冲の絵の贋作を描き続ける義弟の弁蔵...

歴史小説家の著者が、その類いまれな想像力で、昨年生誕三百年を記念する展覧会で熱狂的好評を博した若冲を、鮮やかに浮かび上がらせた。 池大雅、丸山応挙、谷文晁や与謝蕪村等々、当時の名だたる画家が登場し、彼の人生に花を添え、一方若冲の妻=姉の仇と憎み若冲の絵の贋作を描き続ける義弟の弁蔵が異様な存在感をもたらす。 彼の異母妹の眼を通して語られる画家の生涯が、歴史の闇に隠された史実であるかのように、読者に思わせてしまう時代長編。 作中語られる「若冲はんの絵がもてはやされるんは、他の者には考えもつかん怪っ態さゆえ・・・」「世人は・・・知らず知らずのうちにあの奇矯な絵に、自らでは直視することの出来ぬ己自身の姿を見出していたのだ。」に、現代の展覧会の熱狂の要因を重ね合わせてしまう。

Posted byブクログ