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やめるときも、すこやかなるときも の商品レビュー

3.7

104件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    41

  3. 3つ

    23

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    3

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2017/05/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

家具職人の壱晴は毎年、12月の数日間声が出なくなる。過去のトラウマによるもので、その時期を一人で過ごしたくなくて、行きずりの女と一夜の関係を持つ日々を送っていた。 32歳独身の桜子は、実家の経済的困窮を支える日々。恋の仕方を知らず、男性経験もなくやっと付き合った男性から「なんか重くて・・・」と振られた過去がある。 そんな二人の出会いの行方とは・・・ という話なんだけど、最初のあたりはやや退屈な感じ。正直、桜子には魅力を感じられないし、壱晴が桜子を好きになった心の動きも見えず、それだけに唐突な感じもしてなかなか物語に入り込めなかった。 だけど、壱晴のトラウマとなった過去の出来事が明らかになるにつれ少しずつ面白くなってきて、壱晴が封印していた過去に向き合うあたりは、「傷ついた壱晴の再生物語・・・」などという簡単な言葉では片付けられないほどの質量でそれぞれの家族の様々な問題が突きつけられ、こういうところが窪さんらしいとにやり。 壱晴の過去の彼女真織の家庭の問題、桜子の父親の屈折、壱晴の師匠哲先生の後悔。。。それらが重層的に語られて物語が深みを増していく。 壱晴が桜子の家で父親と対峙するシーン、哲先生に最後の最後で椅子の出来を初めて褒めてもらえたシーンはもう、涙涙だった。 トラウマを抱え、声がでなくなる壱晴のことをまるごと背負っていく覚悟を決めた桜子を最後は応援する気持ちになれたのもよかった。

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2017/05/11

過去の悲しい結果に終わった恋愛をいまだに引きずっている家具職人が、恋愛下手な女性と知り合う。 二人がどう寄り添っていくのか、切々と伝わってくる。 最後に二人は何を乗り越えたのだろうかと余韻のように考えた。 タイトルが深く心に響く。

Posted byブクログ

2017/05/04

窪美澄さんの長編は読み応えがあって良いですね。少し重いくらいが窪美澄さんってカンジ。 過去に大切な人を亡くした壱晴と まともに恋愛をしたことのない桜子の物語。 壱晴の過去に迫って行くまでがいちばん引き込まれました。 ただ、壱晴の桜子への想いの変化が少し唐突で、説得力に欠ける気...

窪美澄さんの長編は読み応えがあって良いですね。少し重いくらいが窪美澄さんってカンジ。 過去に大切な人を亡くした壱晴と まともに恋愛をしたことのない桜子の物語。 壱晴の過去に迫って行くまでがいちばん引き込まれました。 ただ、壱晴の桜子への想いの変化が少し唐突で、説得力に欠ける気がして、そこだけ少し残念でした。 やめるときも、すこやかなる時も人生を共にするというのは、大変だけど素晴らしいことですね。

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2017/04/25

久しぶりの窪美澄作品。 なんていうか、温度感とかスピード感は「クラウドクラスター〜」に少し似ている気がする。 壱晴と桜子、二人の気持ちを丁寧に描きながら物語はゆっくりと進む。 二人の出会い方や再会の仕方は小説ならではという感じだし、ベタな展開もあったりはするけれど、何度か鳥肌が...

久しぶりの窪美澄作品。 なんていうか、温度感とかスピード感は「クラウドクラスター〜」に少し似ている気がする。 壱晴と桜子、二人の気持ちを丁寧に描きながら物語はゆっくりと進む。 二人の出会い方や再会の仕方は小説ならではという感じだし、ベタな展開もあったりはするけれど、何度か鳥肌がたった場面もあった。 こんな二人がいたら素敵だなと思う。 お互いの過去も現在も、いい所も悪い所も隠さず、認め、受け入れようとする姿勢。「自分の考えていること、感じていることをなるべく正確にいちばん自分の気持ちに近い形で伝えたい」…というのも簡単なようで実は難しい。でも相手にそう思うということは、その関係を蔑ろにしたくない、“ちゃんと”したいっていう強い気持ちの表れな気がする。 窪さんの作品を読むと、自分の中で曖昧だった感情に色がつき、形を成していなかった考えにくっきりとした輪郭が浮かび上がる。気付きをもらえる。言葉にするのが難しい感情を表現するのが本当に上手だなと思う。 最後は、みんなが前に進める形で幕を閉じる。 これからの二人を遠くから見守っていたいような気持ちになる。 表紙のような青空の下に咲く桜の花を見ながら、二人には幸せになってほしいと心から願った。 やめるときも、すこやかなるときも きっと二人は大丈夫。

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2017/04/23

 なんとも優しい物語。登場人物みんなが優しくて、そして不器用で、気が付くとそれぞれの人生を応援している自分がいた。    家具職人の壱晴。彼は高校時代、大好きな恋人を目の前で亡くし、それがトラウマとなってそれ以来12月になると1週間くらい声が出なくなる時期があった。そんな彼は不特...

 なんとも優しい物語。登場人物みんなが優しくて、そして不器用で、気が付くとそれぞれの人生を応援している自分がいた。    家具職人の壱晴。彼は高校時代、大好きな恋人を目の前で亡くし、それがトラウマとなってそれ以来12月になると1週間くらい声が出なくなる時期があった。そんな彼は不特定多数の女性と一夜限りの関係を繰り返していた。  また、彼と出会う桜子は32歳にして処女。家庭の事情があってなんとなく恋愛に踏み込むことができないでいる。  そんな2人の恋の行方は・・・    という物語なのだが、不器用な2人を心配しながら読んで、最期にはすっきりとした気持ちになれた。

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2017/04/18

大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。 欠けた心を抱えたふたりが出会い、お互いを知らないまま、少しずつ歩み寄っていく道のり。 家具職人の壱晴は毎年12月の数日間、声が出なくなる。 過去のトラウマによるものだが、原因は隠して生きてきた。制作会社勤務の桜子は困窮す...

大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。 欠けた心を抱えたふたりが出会い、お互いを知らないまま、少しずつ歩み寄っていく道のり。 家具職人の壱晴は毎年12月の数日間、声が出なくなる。 過去のトラウマによるものだが、原因は隠して生きてきた。制作会社勤務の桜子は困窮する実家を経済的に支えていて、恋と縁遠い。 欠けた心を抱えたふたりの出会いの行方とは・・・ 変化し続ける人生のなかで、他者と共に生きることの温かみに触れる長編小説。 なーんつっちゃてますけど、けっこう重いんだよねー、これが。桜子なんて、ちょっとイッちゃっててコワいしww 壱晴だって、なんで桜子なんだか・・・? 死んじゃった彼女と境遇が似てるっぽいってとこがひっかかって、これまたコワイ。。。 桜子のお母さんもけっこうコワイ・・・っつーか、こういう人いるけど、私には無理っっ!!! ま、若い二人が末永く幸せになってくれれば、嬉しいんですけどねーww ってことで、私は、哲先生が一番好きでしたねーw

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2017/04/16

喪失と再生の物語。 震災絡みなのかなと思って読んでましたが、高校生の頃に好きだった女の子を事故で亡くしてしまった家具職人の壱晴と、恋愛の仕方を知らない処女桜子の奇跡のような物語。 人と人との出会いって偶然ではなく必然なのかもしれない。あの事故からある時の一週間、声を失う壱晴は、そ...

喪失と再生の物語。 震災絡みなのかなと思って読んでましたが、高校生の頃に好きだった女の子を事故で亡くしてしまった家具職人の壱晴と、恋愛の仕方を知らない処女桜子の奇跡のような物語。 人と人との出会いって偶然ではなく必然なのかもしれない。あの事故からある時の一週間、声を失う壱晴は、その不安から逃げるように女を抱く。名前も顔も覚える必要のないその場しのぎの女を抱く。桜子との出会いもそうだった。ひどく酔った夜朝目が覚めると知らない女が横たわっていている。それから数日後に仕事で再会し、過去と現在とが入り混じり真剣交際へと発展する。 物語は壱晴と桜子との視点から語られるのだが、壱晴のシーンはとても良い。窪美澄さんはもしかしたら男性視点の物語のがうまいのかもしれない。逆にいうと桜子の視点がどうも好きでなかった。重たすぎて目も当てられないほどに。 だけども、きちんとまとまるから羨ましい。 記念日症候群。初めて聞いたけど、壱晴と桜子がトチノキのテーブルと桜子のために作った椅子とで仲良く生活してくれてると嬉しいなと、強く、思った。

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2017/04/14

大切な人の死を忘れられない男と、まともに恋愛したことがない女の大人の恋愛小説。 家具職人の壱晴は毎年12月になると一時的に声が出なくなる。その原因は高校生の時に好きだった女の子を目の前で失ってしまうと言う衝撃的な出来事をずっと忘れられないでいるから。原因を理解しつつも、なかなか現...

大切な人の死を忘れられない男と、まともに恋愛したことがない女の大人の恋愛小説。 家具職人の壱晴は毎年12月になると一時的に声が出なくなる。その原因は高校生の時に好きだった女の子を目の前で失ってしまうと言う衝撃的な出来事をずっと忘れられないでいるから。原因を理解しつつも、なかなか現実に向き合えずに、32歳になったある日、印刷会社の営業の桜子と出会う。桜子と出会うことで、壱晴は過去と向き合うことを決意する…壱晴の気持ちがすごく良く分かる。その分、最後まで桜子の卑屈な性格が好きになれなかった。桜子がもう少し心にゆとりのある人だったら、タイトルの意味もかなり活きてくるのに・・・あとちょっとな感じが残念。

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2017/04/09

恋愛に不器用な三十路過ぎの男と女のお話。男の心情に共感しまくり。未練がましさやへなちょこロマンチストぶり。生まれた時から人は不平等だけど死は必ずやってくるとか家族や仕事とかいろんな事を感じさせてくれる作品。こんな物語も描くのか。

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2017/04/09

過去に大事な人を失った家具職人と、不器用な女子のラブストーリー…というか、恋愛だけではなく、家族の問題にも踏み込んだ小説。 今までの窪美澄さんの小説とは一味違う内容で、特に桜子のキャラクターは今までいなかったタイプで新鮮。アラサーならではの焦りや家族の縛りなど、環境は違っても共感...

過去に大事な人を失った家具職人と、不器用な女子のラブストーリー…というか、恋愛だけではなく、家族の問題にも踏み込んだ小説。 今までの窪美澄さんの小説とは一味違う内容で、特に桜子のキャラクターは今までいなかったタイプで新鮮。アラサーならではの焦りや家族の縛りなど、環境は違っても共感できる部分のあるキャラでした。 壱晴の話を聞いて、重すぎてちょっと引くくだりとか、リアルでした。 そんな強く、まるっとは受け入れられないですよね… 重要な場所として登場する松江市の風景とともに語られる過去パートには、どこかノスタルジックな雰囲気もあり。 壱晴の桜子への想いが、単なる昔好きだった人の代わりから、本当に大事な存在になった心の変化がちょっとわかりにくかったかなと……。どこが転機だったんだろう? まだ読んだことない人に窪さん作品を読んでもらいたいときに勧めやすい1冊。

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