スペードの3 の商品レビュー
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悪くはないけど「何者」と比べると落ちるかなという評価。「何者」が良すぎてハードル上がっていたというのはある。 どの話の主人公もどこか捻くれていて作者らしさがあり、表題作でのミスリードの誘い方も流石に上手い。 ……んだけれども登場人物の言動に対する説得性や女性の描き方の2点が少し弱いと感じた。 具体的にそれが顕著だったのが「ハートの2」 ①登場人物の言動に対する説得性 むつ美は自身の過去を振り返るなかで、表題作ではむつ美に声をかけていた(はずの)美知代の名前すら出てこず、反対に小学校時代にむつ美に話かけている描写があまりなかった愛季の名前はしっかりと出てきている。 「何者」では二宮拓人が終盤でイタいツイートをしていた情報が開示されて、それまでの印象がひっくり返るという驚きや二面性が面白く、納得させられる部分であったが、本作ではそれがなく表題作でむつ美が美知代にかけた言葉に説得力がなく、逆恨みしているように見えてしまった。 例えば「ハートの2」のなかで「美知代はむつ美に親切にしているつもりだったが、実は他人に親切にしている自分に酔っていた」「美知代はよく打算的な言動をしていた」といった具体的なエピソードがあれば、登場人物の二面性や感情への共感、2つの物語の間で話に厚みが生まれたのではないかと感じた。 ②女性の描き方 登場人物の男女比が同じくらいであれば多分気にならない程度の作者だと思うが、登場人物がほぼ全員女性だとちょっとひっかかる部分があった。 特に表題作の終盤、むつ美が美知代に「愛季と壮太が結婚して子どももいる」と言い攻撃しているシーン。 作者的にこれが美知代への精神攻撃に繋がると思って会話のなかに組み込んだのだろうが、現在の職場に気になる人がいるという美知代の描写をした上でのこれは余計というか、女性的にはダメージを受けないと思われる。(逆に男性はむつ美のこのような言葉でダメージを受けるんでしょうか?) この展開であれば、現在の美知代の好きな人に対して美知代にマウントを取るためだけに、むつ美からアタックをかけたりデートをしたことがあると話したりといった方向に持っていった方が女性読者にとっても臨場感があるのではないかと感じた。なんとなくここのシーンの女性への解像度が低くて冷めてしまった。
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やっぱり朝井リョウは裏切らない。 嫉妬や独占欲、承認欲求などの感情の変化を言語化するのが上手すぎる。女性の感情や機微な人間関係を、なぜ朝井リョウはこんなにも的確にそして面白く書けるのだろう。 すべての注目をかっさらってその場の主人公になっちゃう目障りな人っているよね〜、誰かのため...
やっぱり朝井リョウは裏切らない。 嫉妬や独占欲、承認欲求などの感情の変化を言語化するのが上手すぎる。女性の感情や機微な人間関係を、なぜ朝井リョウはこんなにも的確にそして面白く書けるのだろう。 すべての注目をかっさらってその場の主人公になっちゃう目障りな人っているよね〜、誰かのためっていうフリをしながら実際は全部自分のために行動してるってこと結構あるよね〜、と共感しっぱなし。 そして登場人物たちに共感している自分の性格の悪さを突っつかれているようにも感じた。 朝井リョウの小説を読んでいると、毎度自分の腹黒さや性格の悪さなどを指摘されているようで、「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝罪と反省の言葉ばかり頭に浮かぶけれど、でもそんな読書体験がクセになってむしろ快くも感じられて、もう朝井リョウの世界から抜け出せないんだな、これが。
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何でこの人はこんなにも人の心を言語化するんが上手いのだろうって作品読むたび思う。今回もグサグサ刺さりました。 カタカナの部署は漢字2文字で表記できる仕事をして漢字2文字の部署がカタカナの仕事をするっていうの面白かったな
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自分を変えたいのに変えられないと思ってる人の背中を押してくれるようなストーリーでした。3つの連作で、どれもおもしろかったです。
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あっという間に読めたが、作者が伝えたかったことは何か? 自分は変わらないといけない? 変わらなくてもいい?人それぞれ悩みがある?色々考えさせられた。
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他人を嫉み妬み、それでも自分以外の何者にもなれない女性3人の物語 若いからこそなのか登場人物たちの自我が強すぎるが故の悩みかな
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読んでて心がざわざわした。 女性たちの集団の中での感情ってすでに小学生の頃から方向付けられてる気がして、その中での立ち居振る舞いは大人になった今でも基盤になっているような…。 どうしてもそう振る舞ってしまう、そんな主人公たちのままならない心情が描かれているからか、私の心がぎゅーっ...
読んでて心がざわざわした。 女性たちの集団の中での感情ってすでに小学生の頃から方向付けられてる気がして、その中での立ち居振る舞いは大人になった今でも基盤になっているような…。 どうしてもそう振る舞ってしまう、そんな主人公たちのままならない心情が描かれているからか、私の心がぎゅーっと苦しくなる場面、いくつもありました。 面白いけど時折つらい、またすぐ読み返したい!とは思わないけど魅力的な本です。
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人の負の感情が燻っている様をこんな風に言語化できるのが凄すぎる。朝井リョウさん、人生何周目? 人の“えぐみ”を描く天才ではと思う。 隣の芝生は青いけど、芝生の青さという表面しか実は知り得ない。学級委員の心の内もいつも下を向いてるあの子も技術は高い表現者も。人生の革命を起こす切り...
人の負の感情が燻っている様をこんな風に言語化できるのが凄すぎる。朝井リョウさん、人生何周目? 人の“えぐみ”を描く天才ではと思う。 隣の芝生は青いけど、芝生の青さという表面しか実は知り得ない。学級委員の心の内もいつも下を向いてるあの子も技術は高い表現者も。人生の革命を起こす切り札は自分で見つけるしかないんだよね。
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第1章・第2章も良い意味で度肝を抜かれたが、私はなによりも第3章に心を惹かれた。私はあまり芸能の世界には明るくないが、自分の人生すら切り売りして生きる芸能人も少ないながら知っている。その切り売りされた「物語」が事実なのか虚構なのか、ファンはそれをどちらに捉えているのか私は知らない...
第1章・第2章も良い意味で度肝を抜かれたが、私はなによりも第3章に心を惹かれた。私はあまり芸能の世界には明るくないが、自分の人生すら切り売りして生きる芸能人も少ないながら知っている。その切り売りされた「物語」が事実なのか虚構なのか、ファンはそれをどちらに捉えているのか私は知らない。だが、どっちにしろその「物語」も含めてファンは彼らに惹かれているのだろうし、そうやって彼らを「消費」しているとも言える。そういったやり方は彼らを追い詰めるのか、はたまた栄光を手にする手段となり得るのだろうか? 第3章の主人公・つかさは最終的には自分の人生にファンの心を掴む「物語」がなくとも舞台に立ち続けることを決めた。そういった決断ができるつかさは芸能人としても人間としてもひたすらに強いと言える。「推し活」が叫ばれて久しいこの頃だが、これは「推し活」のあり方を問う小説でもある。少なくとも生身の人間を「消費」するような推し方はしたくない、そう思わせる物語であった。
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自分が自覚したくない、目を背けたくなる心情だったりを三人称の人がドンピシャで淡々と主人公に伝えて、新しいグロテスクかなって感じました。 特にむつみの「どれだけ待ってても、革命なんて起きないよ」はチビります
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