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プロテスタンティズム の商品レビュー

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26件のお客様レビュー

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2018/11/10
  • ネタバレ

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「神聖ローマ帝国」は、ローマ教皇により戴冠された皇帝が支配する帝国、という意味です。 本書では、中世のドイツ、すなわち神聖ローマ帝国が、ローマ教皇により搾取されていたこと。それが、ルターの宗教改革、プロテスタンティズムの誕生を可能とした素地を作っていたことが、歴史的背景からわかりやすく説明されています。 北部ドイツで信者を獲得したプロテスタンティズムはやがて保守化し、今日のドイツではカトリック(主に南部地域)と並び政治と深く結びつき、保守層を形成していきます。 一方、保守化したプロテスタンティズムを嫌ったリベラル派であるピューリタン達は、国家からの信仰の独立と自由を求め、アメリカ合衆国にわたり、政治と宗教の分離を勝ち取ります。 これが、自発性と自由競争を基本理念とする米国の精神として今日でも体現されている、という筆者の視点には説得力があります。 「プロテスタンティズムは、自分自身に拘束されない作法を持っている」すなわち、自分自身からも自由である、というリベラルな考え方の起点と言えます。 昨今よく言われる多様性の重視、といのうのは、ルターが中世にローマカトリックの在り方に疑問を呈した「95か条の提題」から生まれた、とも言えるのでしょうか。

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2018/10/20

プロテスタントの歴史の流れを大掴みで把握できる。古プロテスタント・新プロテスタントを、保守・リベラル、さらに、ヨーロッパ・アメリカに結びつけるのは、枠組みとしては分かりやすい。トレルチの本も読んでみたい。

Posted byブクログ

2018/07/30

トランプ大統領のイスラエル大使館エルサレム移転の判断にはアメリカのプロテスタントの福音派が影響力を発揮したと言われています。彼等は何者か?先ず最初にカトリックローマ教会の贖宥状に疑問を持ったマルチン・ルターの「九十五カ条の提題」から始まりプロテスタント(これはルター派を侮蔑するた...

トランプ大統領のイスラエル大使館エルサレム移転の判断にはアメリカのプロテスタントの福音派が影響力を発揮したと言われています。彼等は何者か?先ず最初にカトリックローマ教会の贖宥状に疑問を持ったマルチン・ルターの「九十五カ条の提題」から始まりプロテスタント(これはルター派を侮蔑するためのローマ教会からの呼び名であり、福音主義者の改革派教会がドイツでの公式な名称らしい…なんと!)という存在が生まれ、そこからスイスではカルビィニズムが新たに派生し、フランスではユグノー、スコットランドでは長老派、そしてイングランドではカトリックから離脱した英国教会がアングリカンと呼ばれ、その中のプロテスタントの影響を受けた一派がピューリタンとなり、彼らがアメリカに渡り、新世界の価値観のグランドデザインに影響を与えながらも、またクェーカーとかバプティストとかまたまた新しい宗派を作り続けたうちのひとつが福音派に繋がるのです。そう、常に抵抗を続けて分裂を繰り返していく存在。「プロテスタント原理は既存のプロテスタンティズムやキリスト教、あるいは宗教にさえも拘束されることに対して抵抗する」まさに信仰のダイバーシティを生み出してきた、まるでキリスト教カンブリア期のきっかけがルターの抵抗だった訳です。でも、ルター本人としてはそんなドラマチックなものではなく、個人的に書いた提題があれよあれよと大事になってしまった感じらしい…不変のカトリック教会という上部組織から離れたことにより基本を聖書に置かざるを得なくなり、したがって自分としての「読み」が派生することがプロテスタンティズムが開けたパンドラの箱。でも近代はそこから始まった、とも言えるし。マックス・ウェバーもそこら辺でかの名著、生み出したし。大使館移転問題に代表されるように現代社会にも影響を与えているとすると、本書は歴史の書ではなく、今を見るための眼鏡として視界良好になる本です。保守の源流としての「古プロテスタンティズム」とリベラルの源流としての「新プロテスタンティズム」とかめちゃわかりやすかったです。

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2018/06/06

ルターの「行動」の結果と現代まで残るその影響についてまとめた一冊。 プロテスタンティズムといえば、おもな登場人物としてルターとウェーバーの2名だけ押さえておけばいい気もしないでもない。その2名のうちのどちらかというとルターの基本的なところは思ったよりもまとまりがあって読みすかっ...

ルターの「行動」の結果と現代まで残るその影響についてまとめた一冊。 プロテスタンティズムといえば、おもな登場人物としてルターとウェーバーの2名だけ押さえておけばいい気もしないでもない。その2名のうちのどちらかというとルターの基本的なところは思ったよりもまとまりがあって読みすかった。 ただ、そのマックス・ウェーバー的な「現代まで残る影響」についてはどちらかというと否定的なところはそれはそれで良いのだけど、「否定的な見方が主流」というその根拠がほとんど示されていない。ウェーバーから入った人は「で?」だと思う。 オビには「保守とリベラルの源流」とあるが、結論として「近代世界の成立への貢献は限定的」と読めなくもないところがちょっと自分には読解できなかった。

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2018/03/24

ドイツ、アメリカ、日本の例を通して、宗教が社会を規定する構図がわかる。 また、宗教組織統治のあり方が示唆的だ。 権威があった方が分派は防げる。しかし、権威的で抑圧的だ。 宗教をまなぶことはなんと実り豊かか、これを著した筆者に感謝したい。

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2018/03/10

プロテスタンティズムの歴史と精神、社会に与えた影響を紹介する。情報量が極めて多い上、門外漢の私にも理解しやすく、名著と言い切って良いのではないだろうか。(この作者の学説が学会でどういう扱いなのかはしらないが。) 中世におけるサクラメントの重要性、神学的な疑義を提示したに過ぎない...

プロテスタンティズムの歴史と精神、社会に与えた影響を紹介する。情報量が極めて多い上、門外漢の私にも理解しやすく、名著と言い切って良いのではないだろうか。(この作者の学説が学会でどういう扱いなのかはしらないが。) 中世におけるサクラメントの重要性、神学的な疑義を提示したに過ぎないルターがバチカンと対立してゆく過程、保守主義やリベラリズムに与えた影響など、本書から学んだことは数多い。政治的な話に重点がおかれるあまり神学的な話題が心なし少ないのが玉に瑕である。

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2018/01/28

2018/1/28読了。2017年が宗教改革から500年という帯に惹かれて購入したが、去年のうちに読めずに積読になっていた。 宗教史が好きなので、キリスト教が様々な教派に分かれていく事にとても興味があった。これはプロテスタントに焦点を当てた内容になっており、ざっくりとプロスタン...

2018/1/28読了。2017年が宗教改革から500年という帯に惹かれて購入したが、去年のうちに読めずに積読になっていた。 宗教史が好きなので、キリスト教が様々な教派に分かれていく事にとても興味があった。これはプロテスタントに焦点を当てた内容になっており、ざっくりとプロスタンティズム史を知るのに役立つ。 さらに、バプテスト派、長老派、洗礼派などの由来も簡単ではあるが説明してあるので、これを読んだ上で関連図などを見てみると理解が早いかもしれない。

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2018/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

カトリックとは何か、プロテスタントとは何か、という事を今まであまり考えてこなかったがゆえに、その認識がいかに曖昧かつ間違っていたものだったかというのを考えさせられた。キリスト教の中でカトリックに対して生まれた新しい派閥がプロテスタント。そしてプロテスタンティズムの先駆者があのルターだった、という解釈で理解していた内容は雑で、プロテスタンティズムもただひとつの勢力であるというわけではなく、その枠組みの中でも常に枝分かれして変化していることが、面白かった。何よりルター自身は自分のことをプロテスタントと思っていたわけでなかく、敬虔なカトリックであったということには驚かされた(知識不足ということもあるが...)。 キリスト教、特に作者の言う「新プロテスタンティズム」はその土地と時代に合わせて変化し続ける。国の支配から逃れ、民営化された教会は自由を生むと思いきや、そこでは新しい支配によって再び縛られる事になる。そうして目まぐるしく変化してきた物が今日存在するプロテスタンティズムなのではないか。そして何よりその変化を受け入れることができるキリスト教という土台が、その宗教の強さを物語っているような気がした。 個人的に一番面白かったのはアメリカにおけるプロテスタンティズムの章だった。彼らの「意識されざる国教」という表し方がとても的を射ているような気がして、興味深かった。

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2017/07/28

宗教改革の立役者と言われるルターだけど、本人は当初、そんなつもりで95ヶ条の提言を発表した訳ではないらしい。印刷技術の普及で思いがけないスピードで広まってしまったという経緯は、今で言うところのブログやツイッターみたいなものかと想像すると面白かった。 その後のプロテスタントと社会、...

宗教改革の立役者と言われるルターだけど、本人は当初、そんなつもりで95ヶ条の提言を発表した訳ではないらしい。印刷技術の普及で思いがけないスピードで広まってしまったという経緯は、今で言うところのブログやツイッターみたいなものかと想像すると面白かった。 その後のプロテスタントと社会、政治との関わり、現代における考え方の相違など若干駆け足で解説されている。自分としては近代〜現代におけるプロテスタントのそれぞれの派閥やカトリックとの関わりなどを、もう少し掘り下げて知りたかったかな。

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2017/07/15

ルターの宗教改革の位置づけから、現代のプロテスタントの流れまでを詳細に記載している。 ルターの宗教改革が新しい宗派設立を目的としたものではなく、あくまでも当時のカトリックが行っていた贖宥状などの腐敗した行いを正すための改革であり、今ではルター派は保守派としての位置づけであること、...

ルターの宗教改革の位置づけから、現代のプロテスタントの流れまでを詳細に記載している。 ルターの宗教改革が新しい宗派設立を目的としたものではなく、あくまでも当時のカトリックが行っていた贖宥状などの腐敗した行いを正すための改革であり、今ではルター派は保守派としての位置づけであること、そして現在のプロテスタントの主流は聖書が全てであり、その正しさは個人が判断するものであるという解釈から成り立っているということであった。またカトリックは国が認めた国教であることから、教会も教区に一つが設立されて公立として運営されている(まさに日本の小学校のようなもの)であるのに対して、プロテスタントは自らが同じ新派を集めて自費で運営しており、そのことを彼らは誇りに思っているのであった。そして彼らはそれを実現するためにイングランドからアメリカに多くのプロテスタントが渡り、現在もその主流を担っているという真実には驚かされた。

Posted byブクログ