テミスの剣 の商品レビュー
ミステリ かかった時間 3時間くらい? テミスの剣とは、司法のモチーフである女神のもつ権力のことだ。女神は剣と天秤をもっていて、剣は権力、天秤は正義を示す。 このお話は冤罪事件に端を発した、警察と司法をめぐるミステリだ。主人公は渡瀬刑事。ふだんは強面の、しかし顔に似合わず切れ...
ミステリ かかった時間 3時間くらい? テミスの剣とは、司法のモチーフである女神のもつ権力のことだ。女神は剣と天秤をもっていて、剣は権力、天秤は正義を示す。 このお話は冤罪事件に端を発した、警察と司法をめぐるミステリだ。主人公は渡瀬刑事。ふだんは強面の、しかし顔に似合わず切れ者の彼の、若き日の過ちの記憶である。いつもの中山七里のように、おもしろいしリーダビリティあふれている。そしてこれもいつものように、他作品にも登場している人物が、作品世界を作っている。 この人のこのシリーズ(埼玉県警・埼玉地検高検・埼玉地裁高裁・弁護士の御子柴・あと解剖医の光崎教授あたりの話)好きだわ、おもしろいわ。 あと、中山七里作品のよいところは、外れないエンタテイメント性に加え、ほかのもう少し気合のいる本を読むためのロイター版的な役割を果たしてくれるところだ。こんだけ読めたから次はアレに挑戦!といモチベーションにもなる。
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正義の女神テミスは、ギリシャ神話に登場する。目隠しをした女性が剣と天秤を持つ姿として描かれ、司法・裁判の公正を表す象徴を裁判所などに像として置かれています。 罪を犯した者に対し天秤は法に照らして公正に量刑を決め、剣は両断の如く裁くのであろう。しかし、これは神話のことで、実際は...
正義の女神テミスは、ギリシャ神話に登場する。目隠しをした女性が剣と天秤を持つ姿として描かれ、司法・裁判の公正を表す象徴を裁判所などに像として置かれています。 罪を犯した者に対し天秤は法に照らして公正に量刑を決め、剣は両断の如く裁くのであろう。しかし、これは神話のことで、実際は生身の警察官が容疑者を逮捕し、調書を検察に送り、必要ならば起訴し裁判となる。 端折るが、もし検事や裁判官の天秤が壊れていたり剣がボロボロに錆びていたらどうなるかは、火を見るより明らかである。 ここまで書いたら容易に察する本書のテーマは「冤罪」です。 主人公の渡瀬と先輩刑事鳴海は、容疑者が不動産屋を営む夫婦を強盗殺人犯として逮捕して犯罪者に仕立て上げる。 刑事は、でっち上げの証拠と拷問の末、自供したら楽になれると甘言し嘘の自供を調書に書き、後は法廷で真実を語れば「君は無実になる」と言ったのだ。しかし、あてがわれた弁護士は国選弁護士で、やる気のない嘘で固められた法廷闘争は高等裁判まで死刑判決が指示された。絶望のうちに確定死刑囚となり刑の執行を待たずに拘置所内で自死したのです。 以上が本書の導入部で、これから物語の本質が明らかになっていくのです。何とも泥臭い物語ですが、アッと驚く結末は必読です。 本書の関連事項で、「無期懲役」って何なんですか。勿論制度としては理解できます。 ある事件を思い出し調べてみた。事件の名称は、平成5年の「甲府信金OL誘拐殺人」です。OLを誘拐して間もなく殺害し、身代金を要求したのです。身代金受取の足手まといになるので先に殺害したのです。何とも残虐非道な事件でした。誘拐された後、マスコミが騒ぎ色々な憶測の報道がメディアを席巻しましたが、結局犯人は自首したが、裁判で自首の有効性について議論された。検察側から死刑を求刑し自首は認められなかったものの、全面自供が評価され、判決は「無期懲役」で終結した。しかし改悛し模範囚を演じたなら、早く出所出来る制度ではないですか?日本の再犯率は60%だそうです。ならば模範囚は、仮出所の評価理由ではないと思う。 この事件は黒澤明監督の映画「天国と地獄」の手法を使ったとウィキに書いていました。 本書の文庫版解説は、俳優の谷原章介氏が書いています。抜粋すると『もし、死刑という制度がなければ、我が子は自死するほどの絶望に至る事は無かったのかもしれない。しかし我が子の死に対して秤でバランスが取れるものは、死以外に何があるのか。そこに死刑という制度の矛盾を感じます。死がさらなる死を求める終わることのない負の連鎖が…。』
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中山七里さんを好きになっきっかけは「御子柴シリーズ」。その作品にも度々出てくる渡瀬警部の話。渡瀬警部の信念がかっこいい。 そしてやはり中山作品、驚きのクライマックス!からの驚きの事実!
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読んで 題名の意味がわかる 深いし 目指すところは高い。 中山七里を読んで、法廷物 なんとなくわかって来た気がする。 渡瀬警部のなりたちがあからさまになる。渡瀬の苦悩 現在の渡瀬を知ってるから納得 冤罪という大きなテーマ 隠蔽体質 組織を護ろうとする大きな力 司法という立ち...
読んで 題名の意味がわかる 深いし 目指すところは高い。 中山七里を読んで、法廷物 なんとなくわかって来た気がする。 渡瀬警部のなりたちがあからさまになる。渡瀬の苦悩 現在の渡瀬を知ってるから納得 冤罪という大きなテーマ 隠蔽体質 組織を護ろうとする大きな力 司法という立ちはだかるもの。 渡瀬にエールをおくる。
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自分の信じる正義と組織のなかでの生存と間での葛藤や決断によって起こる反響や軋轢など、軽重は別にしてもいろいろな形で自分たちの社会生活で迫られる選択について考えさせる重いテーマ。他の作品にも登場する渡瀬を主人公に、読み出したら止まらない質の高い作品にしている。中山作品の真骨頂である...
自分の信じる正義と組織のなかでの生存と間での葛藤や決断によって起こる反響や軋轢など、軽重は別にしてもいろいろな形で自分たちの社会生活で迫られる選択について考えさせる重いテーマ。他の作品にも登場する渡瀬を主人公に、読み出したら止まらない質の高い作品にしている。中山作品の真骨頂であるどんでん返し的なエンディングも見事。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
冤罪がテーマ。 主人公は七里作品ではお馴染みの刑事、渡瀬。 若かりし頃、先輩刑事と共に上げた犯人を結果的に死刑に追いやってしまうが、それは冤罪ということが数年後、彼が上げた他の男が真犯人だと暴くことに。 冤罪で死んでしまった青年とその家族が本当に痛々しく、やりきれない気持ちになる。 ダイナミックな一冊。
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ハサミ男は自分は今ひとつでしたが、こちらは傑作です。どんでん返しのストーリー、登場人物の個性など、読み応えあり。
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カエル男から作者の作品に入り 刑事さんに、それも若き時代に 興味をもつからそりゃ読むよね。 底知れぬ能力と魅力を醸し出すベテランの姿と まだ周りに影響されて流される若手時代の姿と 本人以外は読者しか知りえない重荷、十字架を背負う キャラクターの完成までの道のりを追いながら 罪と...
カエル男から作者の作品に入り 刑事さんに、それも若き時代に 興味をもつからそりゃ読むよね。 底知れぬ能力と魅力を醸し出すベテランの姿と まだ周りに影響されて流される若手時代の姿と 本人以外は読者しか知りえない重荷、十字架を背負う キャラクターの完成までの道のりを追いながら 罪と罰、感情と倫理と権力と正義(という思い込み)、 大衆と報道機関、そういった世の中の清濁や もやもやしたり、やりきれない思い、 真犯人探しのミステリーというだけでなく 俗、下衆な大衆を客観視したり、自らを重ねたり 仕掛けはどんでん返しだけではないと思った。
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冤罪と言う重いテーマ。 昔はこうやって無実の人を追い詰めて行って冤罪が生まれたのかな・・って今も?! 最後のどんでん返しまで飽きずに一気読みでした。
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担当した事件が冤罪であったことを知った刑事が贖罪を込めて事実を追求していく。事件としては救いのない物語になっているが、エピローグがあることで希望のある結末になっていると思う。
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