JR上野駅公園口 の商品レビュー
4.5 読後感がいいわけではないが、魂に響いてくる作品。 途中、作者の知識自慢ないし識者へのリスペクトを示すためだけのくだりでは?と感じるような部分もあったが、私の読み取り不足なのかもしれない。 とにかく描写が上手く、ストーリーを追いながら自然に情景を思い浮かべることができた...
4.5 読後感がいいわけではないが、魂に響いてくる作品。 途中、作者の知識自慢ないし識者へのリスペクトを示すためだけのくだりでは?と感じるような部分もあったが、私の読み取り不足なのかもしれない。 とにかく描写が上手く、ストーリーを追いながら自然に情景を思い浮かべることができた。
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スキャンダラスなイメージが強かった著者。震災後、南相馬市で書店を経営しているのは何となく知っていたが、小説を手にするのは本当に久しぶりだった。 JR上野駅公園口。何度か行ったことがあり、ホームレスの姿も目にしたはずだが、彼らの姿は見えていてもどこか風景の一部のように感じ、一人一...
スキャンダラスなイメージが強かった著者。震災後、南相馬市で書店を経営しているのは何となく知っていたが、小説を手にするのは本当に久しぶりだった。 JR上野駅公園口。何度か行ったことがあり、ホームレスの姿も目にしたはずだが、彼らの姿は見えていてもどこか風景の一部のように感じ、一人一人が背負う家族や生い立ちに思いを馳せることはなかった。 主人公のカズさんは東北出身。高度成長期の日本のインフラやオリンピック施設などを造ってきた労働者。貧しい家に育ち、若い頃から弟妹や妻と2人の子を養うために一年のほとんどを出稼ぎで暮らす。故郷に帰れるのは数日だけ。どん底のような貧しさ。つげ義春の漫画が思い浮かんだ。さらに追い打ちをかけるように息子、そして妻にも先立たれてしまう。何のために生きてきたのか。何のために生きるのか。 カズさんは、故郷には居られなくなり、再び単身上京する。「家族のため」という目的もないのに頑張れるほど日雇い労働はラクではないそうだ。なぜ働かずホームレスになったのかの答えだが、切なすぎる。 終始、暗くて重い。受け止めるのが辛くなり、途中で何度も読むのをやめようかと思った。ラストも衝撃で、さらにもう一度冒頭を読み返して暗然とした。 作者も心身とも不調の中での執筆だったそうだが、あとがきまで読むと、綿密な取材と調査を重ねて誠実に書かれた作品だとわかる。
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某所読書会課題図書:上野公園で生活するホームレスの実態を克明に描写した本だが、出稼ぎ労働者として北海道などにも行ったが最終的に上野公園に落ち着く男の物語だ.多くの子供に恵まれたが、なぜか一人になりたい思考が優先するのだろう.ホームレス仲間ではそれなりに交流があり、ミニ社会を構成し...
某所読書会課題図書:上野公園で生活するホームレスの実態を克明に描写した本だが、出稼ぎ労働者として北海道などにも行ったが最終的に上野公園に落ち着く男の物語だ.多くの子供に恵まれたが、なぜか一人になりたい思考が優先するのだろう.ホームレス仲間ではそれなりに交流があり、ミニ社会を構成しているようで、やはり人はひとりでは生きていけないのだと感じた.長男が死亡し葬儀が営まれたが、昔体験したものとよく似ているのに驚いた.戦後間もないころは、今のように葬儀社が商売として成り立つ前だから.全国で同じように葬儀を行っていたのだろう.
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福島県相馬郡鹿島町(現・相馬市)にて、天皇と同じ日に 生まれた男の壮絶な人生を時代背景を反映しつつ、 平成最大の大天災の日までを描いた物語。 最初は、淡々と主人公の人生が語られていくものと 思って読んでいましたが、 物語が進むにつれ物悲しい展開も幾度となく訪れ、 終盤は、涙なく...
福島県相馬郡鹿島町(現・相馬市)にて、天皇と同じ日に 生まれた男の壮絶な人生を時代背景を反映しつつ、 平成最大の大天災の日までを描いた物語。 最初は、淡々と主人公の人生が語られていくものと 思って読んでいましたが、 物語が進むにつれ物悲しい展開も幾度となく訪れ、 終盤は、涙なくしては読めないって感じでした。 全米図書賞 翻訳部門賞を2020年に受賞したということで、 2020年ってのが、ジャストだったようにも思えますね。 ちょうど、あれが延期なった年で、 さらに言えば、主人公は出稼ぎ労働で、日本を大きく発展させた、 あの祭典に関わってたりもします。 いろいろと背景が取材などを交え反映されていることで、 日本と言う国の昭和から現代の一端を知れる物語としての 見方もできたのではと考えます。
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彼の人生が語られてゆくなかで、彼が上野駅公園口で暮らす理由も分かって来る…。のかと思ったけれど、今一つ理由が掴めなかった。彼の生活を心配してくれていた孫や娘はどんな気持ちだったろうか?残された人たちの気持ちを思うと、何だか身勝手に思えてしまうのですが。
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昭和8年生まれのホームレス男性の生涯が痛ましく、取材によってリアルに著された描写がより男性への同情を引き付けるように感じました。「おめえはつくづく運がねえなぁ」のお母さんの言葉が男性の人生を象徴しているように思えました。
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タイトルは以前から知っていましたが、同じ作者の著書ばかり続けて読む習性から少し離れるため、初めて柳美里さんの小説を読みました。上野は馴染みのある場所なので丁寧な描写で情景は非常に浮かぶのですが、時系列を追うのが難しかったです。感情移入する対象が見つかりませんでした。何冊か読んでみ...
タイトルは以前から知っていましたが、同じ作者の著書ばかり続けて読む習性から少し離れるため、初めて柳美里さんの小説を読みました。上野は馴染みのある場所なので丁寧な描写で情景は非常に浮かぶのですが、時系列を追うのが難しかったです。感情移入する対象が見つかりませんでした。何冊か読んでみると、作風がわかるかもしれないですね。
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「JR上野駅公園口」、私にとって馴染み深い改札口ですw。柳美里さんの著作、2014.3刊行、2017.2文庫。上野恩賜公園には、ホームレスが約500人、東北出身者が多い。食べ物に困ることはないけど、真冬の雨の日は辛い。まして、天皇家が訪れるときの「山狩り」(公園からのホームレスの追い出し)は大変。本書は、67歳から5年間、公園で暮らしている福島県生まれのホームレスを天皇家と対比させながら、その生涯を描いた作品。ホームレスにとっての一番の癒しは猫だったのかもしれません。
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漂泊するホームレスの魂が呟く、己の人生のこと。 これは告白、独白、語り、物語、と言うには、存在が透明にされすぎていると思いました。だから、呟きなのだと感じます。 誰にともなく、呟いている。 彼の人生のことを考えると、胸が詰まり寄る辺ない焦りに苦しくなります。 どんなに遠く関わりのない認識であろうと、日本に暮らす限り、その存在に人生が収斂されていく。"天皇"は彼にとって故郷であったのでしょうか。 本当に故郷と呼べる地域は、祖先が加賀から入植し開拓した土地であり、そして彼は出稼ぎ労働を余儀なくされ、死後は震災によって更地にされ、遂に立ち入り禁止区域となってしまう場所です。 はたして、常に奪われる側の人間というのは在るのだろうかと考えます。 「挑んだり貪ったり彷徨ったりすることを一度も経験したことのない」柔和な眼差しと罪にも恥にも無縁な唇で微笑む、天皇皇后両陛下に対し、それでも彼は手を振ってしまいます。 死すらも彼を解放してくれないのだとしたら、彼は故郷を奪われたまま、そして彼に経を称えて祈ってくれる者を失ったまま、山手線内回りで魂を漂泊させ続けるのかもしれません。
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「全世界が感動した」と記された帯で書店に並んでいるのを見かけたけど、感動ではないやろと思った なんとも言えないやるせなさに苛まれた
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