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人口と日本経済 の商品レビュー

3.6

72件のお客様レビュー

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2024/03/09

日本は少子高齢化により人口が急激に減っている。働き手は減り、地方都市は消滅の危機にある。もはや日本の衰退は不可避ではないかという論調が多いが、そのようなことはない。経済成長をもたらすものはイノベーションであり、人口が減っていくからといって、衰退が避けられないというものではない。以...

日本は少子高齢化により人口が急激に減っている。働き手は減り、地方都市は消滅の危機にある。もはや日本の衰退は不可避ではないかという論調が多いが、そのようなことはない。経済成長をもたらすものはイノベーションであり、人口が減っていくからといって、衰退が避けられないというものではない。以上が、本書の骨子中の骨子だと理解した。 それでは、そもそも経済成長って必要なのか、必要だとすれば何のために必要なのか、という問いも本書は投げかけている。この問いに対しての、私なりの理解を下記したい。 経済成長をもたらすものがイノベーションであるとすれば、イノベーションのないところに経済成長は起きない。では、イノベーションが起これば、どのような良いことが起こるのか。端的で分かりやすい例は、平均寿命の伸長である。平均寿命の伸長には、多くのイノベーションが与っている。それは、例えば、新しい薬の開発であったり、新しい治療方法の開発であったり、あるいは、国民皆保険や乳児に対しての予防接種というような社会システムもイノベーションとして考えても良いかもしれない。これらのイノベーションが平均寿命の伸長という果実をもたらしたのである。経済成長が起こっているということは、どこかの分野で、このようなイノベーションが起こっているということであり、一般的にイノベーションが起これば社会を良くするものである、これが経済成長が必要な理由の一つである。 また、成長か平等か、という議論が別にある。経済成長の結果、世界の多くの国で所得格差が広がっているのではということが言われている。しかし、格差を是正するためには、やはり成長による原資が必要となる。そういった面からも経済成長は必要である。ただし、これは成長した「から」格差が是正されるという関係にはなく、それはそのための対応が必要な事項である。 たしかに、このようなことは言えるとは思うが、事はそれほど簡単ではない気もする。少子高齢化により、高齢者人口が増大したことにより、社会保障費により多くの原資が必要になっている。経済成長により、国の富が増えても、そのうちの多くの部分を、追加の社会保障費に費やさざるを得ない状態が、今の日本の状態ではないだろうか。個人から見れば、折角、給料が増えても社会保険料や税金の増加により、それがなかなか実感できない、そういう状態かと思う。「イノベーションが経済成長をもたらす。従って、必ずしも人口減少は、あまりに悲観的に考える必要はない」という本書の考えは、少し楽観的かな、とも感じる。

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2023/04/28

本書の主題を一言で言えば、経済成長は人口の伸びとは関係ない。ゆえに人口が減少するから経済が必ず縮小するとは限らず、イノベーションによって1人あたり所得が増えれば経済成長も可能である、というものです。  まず理屈としてはそうだろうな、確かに100%衰退するとは限らないだろうなとは...

本書の主題を一言で言えば、経済成長は人口の伸びとは関係ない。ゆえに人口が減少するから経済が必ず縮小するとは限らず、イノベーションによって1人あたり所得が増えれば経済成長も可能である、というものです。  まず理屈としてはそうだろうな、確かに100%衰退するとは限らないだろうなとは思いましたが、本書の説得力があったか、と言われるとそこは微妙でした。まず本書の主張の大前提が過去の経済学の知見であること。ケインズ、シュンペーター、マルサスなどの主張が織り込まれているのですが、実は足元で起こっていることはこれまでの経済学のフレームでは説明できないことかもしれないということです。本書では人口減少だけがトピックになっていますが、AIやIoTといった情報技術の発展が同時に起こっており、これらの現象はわれわれを別の次元の社会に導いているのかもしれません。つまり18世紀の産業革命が近代経済学の生みの親だとすれば、現在の情報通信革命は、今の経済学が前提としている多くの「あたりまえ」を覆し、全く異なる経済学の誕生を望んでいるのかもしれないということです。  産業革命時の英国は、国力を測るのにストックではなくフローで計測すべきだと考えましたが、これは当時画期的な発想で、それまでは国が蓄積している財貨(ストック)の量が国力を表す指標だと考えられていました。現在のわれわれはGDP統計に代表されるフローこそが国力をあらわす指標だと固く信じていますが、100年後の人類からすれば「何を馬鹿なことを」と思われるようなことなのかもしれません。そういう感覚がうっすらとあるものですから、本書のようにいわゆる伝統的な経済学者の論考だけを持ってこられても、(確たる反証はないのですが)どうしても心の底から納得できない自分がいました。

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2022/03/23

まさしく人口と経済の関係性を説いた書。 歴史的に過剰人口が問題だった事に触れ、マルサスの「人口論」やリカードの自由貿易論、ケインズの人口減少による投資・需要減少論、ビクセルの最適人口論、ミュルダールの子育て支援論をあげる。一方日本では人口減少と急速な高齢化によって社会保障・財政...

まさしく人口と経済の関係性を説いた書。 歴史的に過剰人口が問題だった事に触れ、マルサスの「人口論」やリカードの自由貿易論、ケインズの人口減少による投資・需要減少論、ビクセルの最適人口論、ミュルダールの子育て支援論をあげる。一方日本では人口減少と急速な高齢化によって社会保障・財政への負荷や地域社会の消滅(地方消滅)が指摘されている。ただ経済成長に関しては労働生産性(つまり資本蓄積と技術進歩・イノベーション)増加でどうにかなると語る。労働力供給と生産性向上、消費財の普及と人口移動による世帯増加が高度成長の源泉だったことをデータも交えて振り返り、4次産業革命でのAI普及でもイノベーションが鍵になることを述べている。 豊さの中で富裕層の出生率が低下するのはギリシャもそうらしいが、人口の原理とは裏腹に平均所得上昇と出生率低下、平均寿命の延びがセットで来た。平均寿命の話で、都市化の進展が寿命に悪影響であることや戦前日本の所得不平等→乳児死亡率(所得と相関)高→平均寿命短の関係を(寿命)ジニ係数を使って明らかにしたり、戦後日本は所得向上・医療改善・皆保険によって寿命を勝ち得たことを示した。ソ連の話はトッドと関係がありそう。最終章では経済(集団的物資代謝→贅沢によって加速・蜂の寓話)と経済成長(GDPという価値点数的指標の成長)について語る。先進国の成熟経済は需要の飽和(ロジスティクス曲線)に常に晒され、成長率低下圧力がかかっている。 筆者はシュンペーター的なプロダクトイノベーションを推す。ミルのゼロ成長論からの所得平等・定常状態幸福論には、筆者は江戸時代の栄養不足や災害対応を用いて鋭く反論する。最後に筆者は、そのような経済成長も平均寿命の延長に帰着すると主張する。経済成長がいいかどうかはもっと生きたいかという死生観と関わってくるのだろうと結論付けて終わる。 流石東大教授といった感じで文章も分かりやすくデータの繋がりもしっかりしていて読みやすかった。ただ一般向けということでやりにくさは感じた。平均寿命と所得の関係などは非常に興味深かったので詳しい本があれば読んでみたいと思う。戦前日本については戦死者や災害死の割合、そもそも日本を先進国に入れて議論していいのかという話もある。一人当たりの所得などを鑑みずに議論を展開しているのは紙幅の問題もあるだろうが、尽くされていないと感じた。題名通り日本経済と人口に絞って書いても良かったとは思う。 2021/2/6

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2022/01/23

プロダクトイノベーションの重要性。 私見: 人口比によって、イノベーションの頻度が決まると思う。そのためには、教育と多様性の確保が必要なのでは。

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2022/01/21

人口減少は大問題だが、それが経済停滞の言い訳にはならない。国内外問わず需要を創出するイノベーションと生産性向上することで、経済は人口と関係なく成長可能。 経済成長の是非まで言及されており、徹底して客観的な分析姿勢が窺える。そのため、納得感が高い良書であった。

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2021/05/08

過去の日本や欧州、アメリカの過去のデータから分析しているので内容が凝縮されている感じでした。戦前の日本は、平均寿命や寿命のジニ係数(不平等度)から見れば、大いに問題があった等、色んな意見に関してこうだったと調査結果を載せている内容は良かったと思います。 経済成長といっても吉川氏は...

過去の日本や欧州、アメリカの過去のデータから分析しているので内容が凝縮されている感じでした。戦前の日本は、平均寿命や寿命のジニ係数(不平等度)から見れば、大いに問題があった等、色んな意見に関してこうだったと調査結果を載せている内容は良かったと思います。 経済成長といっても吉川氏は何が何でも成長ではなく、成熟した先進国においてもそれぞれの経済に合った経済成長という意見なのも好感がもてましたね。

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2020/11/28

人口と経済は切っても切れない関係だと思うが、労働人口の増加と生産性の劇的な改善により、これを乗り越えるべきだというのは賛成。 具体案がないところが経済学者らしい。

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2020/10/18

人口減少が日本経済の衰退になるか。 これは、難しい問題である。と私自身も感じてきた。 この本によると、人口減少は必ずしも日本の衰退には繋がらないとのこと。 イノベーションを起こすことで、成長も可能とのことだった。 一部賛成するが、やはり人口の維持は必要な気がする。 疲弊する地方、...

人口減少が日本経済の衰退になるか。 これは、難しい問題である。と私自身も感じてきた。 この本によると、人口減少は必ずしも日本の衰退には繋がらないとのこと。 イノベーションを起こすことで、成長も可能とのことだった。 一部賛成するが、やはり人口の維持は必要な気がする。 疲弊する地方、いなくなる人口。経済の分野では必ずしも必要ない部分になるのかもしれないが、私たちは人間である以上、活気が必要だ。人間としての情が必要だ。と感じた一冊。

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2020/05/03

吉川洋 「 人口と日本経済 」経済成長と人口の関係についてのエッセイ。著者の結論は 「経済成長と人口は関係ない」「需要は必ず飽和する」「経済成長するには プロダクトイノベーションが必要」 *マルサス/人は豊かになれば子供をたくさんつくる→食料の供給は 人口増加に追いつかない→人...

吉川洋 「 人口と日本経済 」経済成長と人口の関係についてのエッセイ。著者の結論は 「経済成長と人口は関係ない」「需要は必ず飽和する」「経済成長するには プロダクトイノベーションが必要」 *マルサス/人は豊かになれば子供をたくさんつくる→食料の供給は 人口増加に追いつかない→人口は 食料不足、非婚化により抑制 *ケインズ/投資は人口などにより決まる→人口減少=投資減少=不況→失業。投資に代わり 消費が有効需要を支える必要あり→所得を貯蓄にまわす富裕層から 消費をする一般大衆へ所得配分 目からウロコだったのが *ヴィクセル/最適な人口=1人あたり福祉水準を最大にする人口 *人口知能時代の人の所得=労働所得+AI所有による所得 *GDP=1年間で作り出す価値を価格で評価したもの→人口増加により増えるものではない→豊かさの尺度としては不十分 イノベーション→先進国の経済成長→一人あたりGDPが増加

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2020/04/19

人口問題から経済学を見るなんて面白い発想だなと思って手に取ったのだが、全くの勘違いであった。面白い発想どころか人口問題とは経済学のメインストリームであることを本書で初めて知った。 10年前にベストセラーになった藻谷氏の「デフレの正体」を著者が意識したかどうかはわからないが、経済成...

人口問題から経済学を見るなんて面白い発想だなと思って手に取ったのだが、全くの勘違いであった。面白い発想どころか人口問題とは経済学のメインストリームであることを本書で初めて知った。 10年前にベストセラーになった藻谷氏の「デフレの正体」を著者が意識したかどうかはわからないが、経済成長は人口ではなくイノベーションによって決まる、が本書の主軸だ。確かに直接の因果を突き詰めればそうかも知れぬが、イノベーションは人間がなすものなれば、その数が多いほどイノベーションが生まれる確率も動機も高くなると見るのが自然だろう。さらに言えば経済成長と人口増減の相関を見るなら両者の微分をスケールを標準化して比較しなければ結論を出せないと思うのは理系人間だけ? また国債を日本人が持っているから安心だとの説(今で言うMMT?)に対する反証として、株と外国人株主で喩えているがこれもナンセンスだ。国債を企業活動に例えるなら、社債をその会社の従業員だけで保有している状態を想定すべきだし、その場合は会社は社債を返すために従業員の給料を下げる手段が取れる、という意味で社外の債権者に返済するのとは意味が異なるだろう(それが解決策だとは思わないが、増税で国債を償還するのはそういうことだ)。 このように首をかしげる内容も少なくないのだが、「経済成長の飽和点=ゼロ成長社会」が存在するかどうかの命題は、「これ以上の寿命の延びを望むかどうか」に置き換えられるという説明は納得できる。言われてみれば不自然なテクノロジーで寿命を無理やり延ばす様子は、どうでもよいイノベーションでさして必要のない商品を無意識的に購買させられる姿と重なる。100年前なら葬式で「それは寿命でしたな」と慰められる状態も現在では短命と嘆かれる。つまり「寿命」には生物学的な定義などなく、人々の観念上の概念に過ぎないのだから、「これ以上長生きしなくともよい」との合意が形成されればゼロ成長社会が到来するのかも知れない。ただしその世界は旧共産圏のような色のないものになるだろうが、それも人々の総意なら皆Happyであろう。

Posted byブクログ