光炎の人(下) の商品レビュー
帯文:”すべてを技術開発に捧げた青年は大きなチャンスを手にする。「負けたくない、絶対に誰にも」しかしその情熱は、時代のうねりに巻き込まれていく。” ”技術の光と闇を問う、衝撃のラスト!” ”技術の暴走を加速させているのは誰だ!?豊かさを追求する我々が支払う代償とは?” 目次:第...
帯文:”すべてを技術開発に捧げた青年は大きなチャンスを手にする。「負けたくない、絶対に誰にも」しかしその情熱は、時代のうねりに巻き込まれていく。” ”技術の光と闇を問う、衝撃のラスト!” ”技術の暴走を加速させているのは誰だ!?豊かさを追求する我々が支払う代償とは?” 目次:第五章(承前)、第六章~第九章、謝辞、主要参考文献
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明治の時代、機械に魅せられた、貧しい農家に生まれた音三郎。単純に機械が好きで地元の町工場に勤めることになる。持ち前の忍耐強さと粘りで、自分で外国製に負けない板バネの開発を目指す。 しかし、資金力のなさ、友人の裏切り等でだんだん純粋さひたむきさを失って行く。
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下巻読了。 読み終わった後は、「ああ・・。」と、ため息で本を閉じました。 上巻冒頭に登場した、純粋で働き者の少年が、こんな末路になるとは思わないじゃないですか。 技術開発にひたむきに取り組んでいた・・。それだけだったはずなのに、いつの間にか周りが見えなくなり、人間性を疑うような言動がちらほら出てきた時点で、あれ、歯車が狂いだしたかな・・・と暗い予感。 音三郎が出世していく過程でも、“破滅”の影がひっついているので、読んでてツラかったです。 確かに、バッドエンドでしたが、明治から昭和初期にかけての、混沌とした日本の情勢と絡めて、精緻につづられた秀作だと思います。
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徳島の一少年が機械に憧れ、大阪、東京、そして満州へ出ていくという話。彼が惚れた技術を実現するために日々努力するが、時代の流れに翻弄されていく。 久々に面白い小説に出会ったと感じた。純粋な動機が社会に触れていきだんだん汚されていく様や時代や運命に翻弄され見てられないなぁと思うことも...
徳島の一少年が機械に憧れ、大阪、東京、そして満州へ出ていくという話。彼が惚れた技術を実現するために日々努力するが、時代の流れに翻弄されていく。 久々に面白い小説に出会ったと感じた。純粋な動機が社会に触れていきだんだん汚されていく様や時代や運命に翻弄され見てられないなぁと思うこともあったけど、ひたむきな姿と目標を叶える姿は良い。
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容易く感想を文章化できないでいるのですが、 彼女が現代日本文学の最高峰、至宝であるという評価は 私の中でより揺るがざるものとなりました。 凄まじい作品です。
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女性作家で近代史を織り込みながら、ここまで書ける人をひさびさに見た思いがする。 明治、大正、昭和の時代。農家の三男坊が技術工になるのを夢見て立身出世する希望希あふれた伝記ロマンを期待すると裏切られる。発明で名を成すという野心のため、純朴な工学少年は、故郷を捨て、組織を乗り換え、ついには満州へ。何度も挫折を味わい、老獪な中年となって己の技術が歴史的大事件に関与する段になって、彼は思わぬ展開を迎える。 周囲の人物も魅力的に描かれ、闊達としている。 主人公が野心的でないだけに、自分の背中に冷たい刃を突き付けつけられて半生を振り返ってみたくなるような気分になった。 最後通牒を突き付けたのがかつての同郷の友人だが、歴史の流れを知る側としては、彼も安泰ではない。 あくまで過去の架空人物の生きざまながら、現代に通じる諸問題を投げかけている。主人公がLEDの開発者に重なった。
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ドッカンとお腹に穴を開けられたような気持ち。 少年が電気に魅せられ、知識と技術を身につけ武装し、どんどん視界が狭くなっていく。寄生する叔母には終始苛々して、怒りをぶちまけてやれ!と思っていたけど、いざそうなるとすごく辛かった。 いつになったら優しいトザをまた見れるのか。誰か彼を踏みとどまらせる人間はいないのか。男の野心が大きな歴史の渦に絡めとられていく。 今までの木内さんの温かい滋味あふれる作風とは異なり、涙よりも、叫び出したい悲しさが残る。
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これが、技師の業か性か。 どこまでも自分の技術だけを信じてただひたすら夢だけを追い求めて…と言えば聞こえはいいけど、なんなんだ、まったく。どこまで自分だけ大事なんだよ、トザ! 上へ上へ。いまよりもっと自分の技術を生かせる場所へ。自分の夢のためなら親兄弟も切り捨てる。そんな自分勝手...
これが、技師の業か性か。 どこまでも自分の技術だけを信じてただひたすら夢だけを追い求めて…と言えば聞こえはいいけど、なんなんだ、まったく。どこまで自分だけ大事なんだよ、トザ! 上へ上へ。いまよりもっと自分の技術を生かせる場所へ。自分の夢のためなら親兄弟も切り捨てる。そんな自分勝手なトザを最後まで見守り続けた友との最期の瞬間が頭から離れない。 明治から大正、そして昭和。激動の時代に電気と無線に取りつかれた一人の男の、傲慢で壮絶で、そして哀しい物語。
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