光炎の人(下) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
ただの真面目な農家の三男が時代に翻弄、歪められていく過程が辛いけど読みごたえたっぷりの小説。今も効率や安さが安全や質に優先されかねない時代。登場人物の一人の「技師には次があっても、不良品を使うたがために命を落とした庶民には次はないさけな」という一言は今にもつきささるメッセージ
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読了と同じタイミングで銀座ソニービルの最後のイベント「It's a SONY展」を見てきました。そこで改めてソニーの設立趣意書に触れてきました。 「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」と謳われていてその志に眩しさを感じま...
読了と同じタイミングで銀座ソニービルの最後のイベント「It's a SONY展」を見てきました。そこで改めてソニーの設立趣意書に触れてきました。 「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」と謳われていてその志に眩しさを感じました。そこで輝いているのは技術者魂のサニーサイドだとしたら本書のテーマは技術というものの月の裏側です。戦後の復興と満州事変に突入するという時代の違いではなく科学技術という存在の永遠なる両面性であり最近でも大学の軍事研究をどう考えるか?という目の前の問題があります。ずっと主人公の主観に沿って進んできた物語が最後に冷たく小さく突然に終わる仕掛けの後味の悪さが素晴らしい。主題は時を超えた物語なのですが格差社会ゆえの上昇への欲望がギラギラしていたした明治大正昭和と一億総中流と思っていたら実はものすごい格差分断社会になっていた平成の違いを強く感じました。技術はモノづくりからテクノロジーと呼び名を変えながら我々の生活、社会、そして個人史にこれからも深く影響を与え続けることでしょう。とても新しい小説に出会ったと思いました。。
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立志伝の話かと思ったが、技術者のエゴを表したもの。 最後はまさかの張作霖爆殺事件に関連してくるとは、予想外の展開でした。 でも世相とか技術をキチンと表現をしていて、興味深いものだった。
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木内さんの才能は稀有まれなものだと思っています。 全部読んだわけじゃないけど、全部傑作です。 絶対的な信頼感を持っています。 この本も間違いなく傑作です。 木内さんの渾身の作です。力入ってます。 だって初の上下巻ですよ(多分)。 でもね、残念ながらここまで主人公に魅力がないの...
木内さんの才能は稀有まれなものだと思っています。 全部読んだわけじゃないけど、全部傑作です。 絶対的な信頼感を持っています。 この本も間違いなく傑作です。 木内さんの渾身の作です。力入ってます。 だって初の上下巻ですよ(多分)。 でもね、残念ながらここまで主人公に魅力がないのも珍しい。 全く共感できない。共感どころかむしろ嫌悪。 読むのが辛くて辛くて。 物語は激動の時代を描いてそれなりに読ませるんだけど、読めば読むほどうんざりするの、主人公に。 読者も辛いけれど、作家も辛いと思うの。 ここまでいやな男にずーっと付き合うの大変よね。 いや、まったくの勝手な意見ですけど・・・。 映画化されて松坂桃李あたりが主人公演じたら、違うかな。 そしたら全然違う話になっちゃいそうな気もするけど(笑)
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衝撃のラスト。満州事変に向かっていく不気味な流れの中で,主人公は頑張ったと思うけれど。音三郎から見た音三郎と,利平からみた音三郎の像の違いが描かれている部分はなんだか悲しかった。
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どこで間違ってしまったのだろうか。音三郎に肩入れしたい気持ち、応援したい気持ちは多々あるのに、今はただ、不可解な思いを抱くばかりだ。発生は単純だった。知らないことを知る、そのことが嬉しく、楽しい。そんな想いの末路がこれかと思うと本当にやるせない。
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読み進めて行くうちにどんどん主人公を、応援できなくなって行くけど、最後ははやり悲しかった。 電気、無線のことは難しくてわからなかっが、技術とその活用、応用について考えさせられる。読んで良かった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
【ネタバレ】技術に憧れ、技術と共に生き、技術に囚われ、最後には堕ちてしまった憐れな男の哀しくも切ない物語。最初と最後でここまで印象の変わる主人公も珍しいのではないでしょうか。
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満州事変へと至る背景が,わかりやすく丁寧に書かれていて,そういうことだったのかと歴史をおさらいできたのは良かった.音三郎の技術者としてのプライドと人間として何か欠落した心でがむしゃらに進んでいく姿に,どこかで引き返すことができたのではと,やりきれない気持ちになるとともに.日本が戦...
満州事変へと至る背景が,わかりやすく丁寧に書かれていて,そういうことだったのかと歴史をおさらいできたのは良かった.音三郎の技術者としてのプライドと人間として何か欠落した心でがむしゃらに進んでいく姿に,どこかで引き返すことができたのではと,やりきれない気持ちになるとともに.日本が戦争に向かって引き返せないところに行くのと二重写しになった.
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科学技術はひとを豊かにするために使われるもの、そう信じていた音三郎がなぜだんだんと人間性を失い、歴史に翻弄されていくのか、その過程に、読む方はぞっとする。 歴史大長編なので、木内さんの繊細なことばづかいや感性の描写が薄められてしまった印象は否めないけれど、木内さんが精密な描写と歴...
科学技術はひとを豊かにするために使われるもの、そう信じていた音三郎がなぜだんだんと人間性を失い、歴史に翻弄されていくのか、その過程に、読む方はぞっとする。 歴史大長編なので、木内さんの繊細なことばづかいや感性の描写が薄められてしまった印象は否めないけれど、木内さんが精密な描写と歴史を描ける作家であることが証明されました。短編と、長編と。作家の新しい世界の展開を楽しみに。
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