十年交差点 の商品レビュー
感想を書き忘れたので再読。 「地球に磔にされた男」 クズみたいな主人公が、父の友人である実相寺の死をきっかけにタイムトラベルに巻き込まれる話。 最初は不純な動機で時間を超えた旅を始めるが、そこで並行世界の自分達に出会い改心?していく。 引き込まれる展開に加えて終わり方まで気持ち良...
感想を書き忘れたので再読。 「地球に磔にされた男」 クズみたいな主人公が、父の友人である実相寺の死をきっかけにタイムトラベルに巻き込まれる話。 最初は不純な動機で時間を超えた旅を始めるが、そこで並行世界の自分達に出会い改心?していく。 引き込まれる展開に加えて終わり方まで気持ち良い。 「白紙」 教師の主人公が作文を書かない教え子と向き合うところからスタート。元々真面目な生徒が急にグレたのは何故か。教え子の彼氏の話を巻き込み、しっかり伏線回収されます。バッドエンドかもしれませんが、ちょっと前向きなバッドエンドです。一連の流れで出会った女教師と主人公が最後に未来の話をするおかげで明るい印象に仕上げられています。初めから終わりまで基本的に暗い雰囲気なので、そんな感じの話が好きな人には沁みます。 「ひとつ、ふたつ」 岡崎琢磨さんらしい。病気の主人公が人生と向き合いながらもがき苦しむ話。 小さなハンドメイド店を営む主人公は、売れ筋のイヤリング3種を全て片耳だけ欲しいというお客様に出会う。何故片耳だけなのかという謎はすぐ明かされ、女性の耳たぶが片耳しかないことが判明。みんな色々抱えているけれど、そのままの自分を受け入れてくれる人を信じてみよう、という明るい終わり方。終始温かい雰囲気です。 「君が忘れたとしても」 亡くなった姉の子どもを姉の夫と育ててきた主人公の話。姉の夫の再婚を機に、大事に育ててきた子どもと引き離される。主人公の女性目線で進むので再婚相手の女性が冷酷にも思えるけれど、そちらの視点で考えると仕方ないことだとも思う。ちなみに姉の夫への恋慕などは全く無いので安心して読める。 自分にとっては大切な思い出として残り続けていることも、相手は忘れてしまっているだろうという悲しみ。状況はさておき、この点だけで言えば共感しやすいと思います。 このお話ではハッピーエンドで終わるので読了感良し。 「一つ足りない」 河童の話。時代小説?です。1回目はしっかり読んだのですが、今回再読するにあたりパスしました。完全に好みの問題です、ごめんなさい。
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中田永一さんの小説が読みたくて数年前に購入しました。 SF的な設定が苦手なため、初読では時間跳躍の設定がわかりにくかったものの再読してみると涙があふれてしまいました。 「十年」が交差する「現代」を旅して幸せを望む側から願う側へと変わっていく主人公、再会を切に願う家族の思いと、物語だからこそおこせる現実ではあり得ないと思われる奇跡に涙せずにはいられません。 また作者のご家族を大切に思う気持ちも伝わってくるようで、これからも応援していきたいと思いました。
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「10年」をテーマに五人の作家が物語を書く。 中田永一 地球に磔にされた男 時間を超える懐中時計の様なマシンを手に入れた男の幸せ探し。 白河三兎 白紙 中二女子、生き残るかor一家心中か、最悪の結末に。 岡崎琢磨 ひとつ、ふたつ 欠けたものを持つ人が、幸せに向かって行く物語。 原田ひ香 君が忘れたとしても 幼い甥っ子のために身を引いた女性が、青年になった甥っ子に再び合う物語。 畠中恵 一つ足りない 中国から泳いできた河童達、日本の西に住み着いた。 河童と猿の大合戦に。 普段触れることのない作者を知れたので、楽しかった。
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5人の作家によるアンソロジー。 中田永一 「地球に磔にされた男」 白河三兎 「白紙」 岡崎琢磨 「ひとつ、ふたつ」 原田ひ香 「君が忘れたとしても」 畠中恵 「ひとつ足りない」 一番好きなのは、姉が亡くなった後、残された男の子を育てる女性の話「君が忘れたとしても」 慕って...
5人の作家によるアンソロジー。 中田永一 「地球に磔にされた男」 白河三兎 「白紙」 岡崎琢磨 「ひとつ、ふたつ」 原田ひ香 「君が忘れたとしても」 畠中恵 「ひとつ足りない」 一番好きなのは、姉が亡くなった後、残された男の子を育てる女性の話「君が忘れたとしても」 慕ってくれた甥だったが、姉の夫が再婚したため甥に会うことも叶わなくなった。もう会えないと思っていたが、甥が成人するのを機に会いたいと手紙が来た。 甥は自分のことが分かるだろうか。もし自分を見つけられないようなら・・・
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秀逸なタイトル。 ①中田永一「地球に磔にされた男」が凄く良い話だっただけに、勝手にどの話もハッピーエンドで終わると思ってたら、いきなり②白川三兎「白紙」に唖然。勝手な思い込み、決めつけは良くないと学んだ。 だからこそ、③岡崎琢磨「ひとつ、ふたつ」も④原田ひ香「君が忘れたとしても」も最後の最後まで油断できなかったが、前向きな結末に一安心。最後の⑤畠中恵「一つ足りない」は異色だったが、ラストの九千坊と禰々子(禰豆子じゃないよ)の立ち振る舞いの王道味含め、落語のような雰囲気とオチに魅力を感じた。 良い構成で楽しめた。
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10年をテーマにした短編集。どれも深い味わいがあった。私は原田ひ香氏の「君が忘れたとしても」に涙した。
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どれも面白かったけれど、その中でも“白紙”が1番心に残った。 伏線の張り方が夏目漱石の“こころ”に似てるなと思った。
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「十年」をテーマにした短編集。タイムトラベルもの(厳密にはちょいと違う気もするが)や河童の冒険譚など、読後が良さげなものもあるが、女子生徒と教師の話は背中を急に蹴られた感じで終わってしまった。プロポーズものや亡き姉の子どもとの過ごした歳月とか、生きているといろいろあるよね、としか...
「十年」をテーマにした短編集。タイムトラベルもの(厳密にはちょいと違う気もするが)や河童の冒険譚など、読後が良さげなものもあるが、女子生徒と教師の話は背中を急に蹴られた感じで終わってしまった。プロポーズものや亡き姉の子どもとの過ごした歳月とか、生きているといろいろあるよね、としか言えない。。。
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『地球に磔にされた男』 時間跳躍機構を使って自分の幸せを見つけることができた主人公に安心しました。 『白紙』 「10年」というこの短編集の表題が重くのしかかってくる作品でした。胸が痛くなりました。 『ひとつ、ふたつ』 『春待ち雑貨店 ぷらんたん』を以前読んだことがあったので、「同じじゃん」と驚きました。 『君が忘れたとしても』 母のように子供を大切にしていて、子供も母のように慕っていたとしても、周りの人間がそれを許すかは分かりません。当たり前は当たり前ではないのだから。 『一つ足りない』 最初は、主人公の九千坊は頭ではあってもあまり強くないのかとか失礼ながら思っていたのですが、後半になっていくとどんどん活躍する場が出てくるので、読んでいてわくわくしました。 短編集で少しものたりないかもしれませんが、そんなふうに思う作品があったら妄想するチャンスです。この作品もそんなふうに思える作品に出会えるといいですね。この作品もぜひ、手にとってもらえると嬉しいです。
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ぷらんたんのお話が一番好きでした。岡崎琢磨、確か珈琲ミステリーも書いてたよね?持ってた気がするので今度読み返そう。このアンソロジーの中で一番好きな文体でした。というか新潮文庫nexのアンソロジーは読み応えがある上に全部面白いので本当に読んだ方がいいと思います。
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