刑罰0号 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
いままで読んできた西條作品としてはちょっとアウトコース。でも、科学×未来みたいな観点でいえばゴメスもそうなのかもしれないけど。 うーん。考えさせられるテーマではあった。死刑制度とか、テロ組織とか、いまの誌面を賑わせる要素もキャッチ―にまぶされているし。 でも、うーん。死者の記憶を抽出、とか、被害者の体感を加害者に体験させる、みたいなのは考えたこともなかったからおもしろいとおもったけど。どうなんだろうなあ、まったくおなじ五感の刺激を受けても、感情までセットなもんだろうか。そのときの思いまで、脳が保存してるもんだろうか? かといって、殺すほど恨んでたやつが悶絶の死を迎えたのが確認できるなら、それが罪の償いにもならない気がするし。。。なんてことをぐるぐる考えながら読んでしまった。実際にこういうのが技術的にOKになっても、社会的に容認されるにはハードル高すぎるんだろうけど、でも、刑罰、正義、みたいなものの自分なりの物差しをあらためて考える機会になった。ひとの記憶が辿れるのなら、記憶に価値が生まれたりね。数十年後はそういう世界になってたりして。なんにせよ、考えたこともない世界だから、おもしろかった。です。
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他人の記憶を、視覚と音で脳内で再生できるシステム。 相手の立場になって考えても、その人の経験や思考をまるごと知ることはできない。 同じ体験をして初めて、辛さや苦しみを理解したいと思える心が持てるのではと思った。 H28.12.16読了
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死刑に代わるものとして開発された『刑罰0号』というシステム。そのシステムを扱う者、施された者によって引き起こされる人間ドラマを描く。 いつもの時代小説とは異なり、今作は近未来が舞台。どこまでが虚構で、どこまでが真実なのか、予想外にサスペンスフルな展開で進み、最後まで気が抜けない...
死刑に代わるものとして開発された『刑罰0号』というシステム。そのシステムを扱う者、施された者によって引き起こされる人間ドラマを描く。 いつもの時代小説とは異なり、今作は近未来が舞台。どこまでが虚構で、どこまでが真実なのか、予想外にサスペンスフルな展開で進み、最後まで気が抜けない。そして、これも予想外であったが、ヒロシマ原爆、核廃絶運動にまで話が拡がっていく。普段だったら、ちょっと話、広げ過ぎ、と思ってたかもしれないけれど、偶然にもこの本を読んでいる真っ最中に、日本の現役首相が真珠湾を慰問することが決定という時事ニュースが飛び込んできた。そのせいだろうか、被爆経験者である洋介の父が求めることは加害者の贖罪ではなく、二度と被爆者を出したくない、ただそれだけだ、という言葉が胸に殊更響いた。先だってアメリカ大統領が広島を慰問したが、贖罪という言葉を出さずとも、両国首脳が慰問し合うことに大変な意義があるのだと思うようになった。非常にいいタイミングでこの本を読めて、ラッキーだった。
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死刑に代わる新たな刑罰『0号』。 犯罪被害者の記憶を再生し 加害者に自分が犯した罪を経験させる贖罪のシステム。 開発も被験者も最後は人と人が関わりあって成すもの。 間違いもあり救いもある。 スケールが大きすぎて置いていかれた気もするけれど 西條さんらしい温かさも感じられた。
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絶対にあり得ないことだと思っていても、科学の進歩はすごそこまで迫っているかもしれませんよ。 話がどんどん広がり過ぎる感はありましたが。
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被害者の記憶を加害者に見せるという新しい刑罰。刑罰0号。 最初聞いたとき、清水玲子氏の秘密シリーズに似ていると思ったのだけれど、読んでみると、まるで違うものだった。 もっとSFっぽいというか、加害者に見せる記憶は改ざん可能で、夢のような形になる。若干のリアリティの薄さはある...
被害者の記憶を加害者に見せるという新しい刑罰。刑罰0号。 最初聞いたとき、清水玲子氏の秘密シリーズに似ていると思ったのだけれど、読んでみると、まるで違うものだった。 もっとSFっぽいというか、加害者に見せる記憶は改ざん可能で、夢のような形になる。若干のリアリティの薄さはあるのだけれども、短編連作に登場する人物らが確実に経験を重ねている感がそれを補っている。 面白かった。
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+++ 記憶を抽出して、画像化を行い、他人の脳内で再生するシステム―0号。これを用いて犯罪被害者の記憶―殺された際の恐怖を加害者に経験させる…。もともとは、死刑に代わる新たな刑罰として、法務省から依頼されたプロジェクトであったが、実際は失敗に終わる。0号そのものに瑕疵はなかったが...
+++ 記憶を抽出して、画像化を行い、他人の脳内で再生するシステム―0号。これを用いて犯罪被害者の記憶―殺された際の恐怖を加害者に経験させる…。もともとは、死刑に代わる新たな刑罰として、法務省から依頼されたプロジェクトであったが、実際は失敗に終わる。0号そのものに瑕疵はなかったが、被験者たちの精神が脆く、その負荷に耐えられなかったのだ…。開発者の佐田洋介教授は、それでも不法に実験を強行し、逮捕されてしまう。助手の江波はるかは、さるグローバルIT企業のバックアップのもと、ひそかに研究を続けるが…。0号を施した者、0号を施された者たちの物語は、今、人類の“贖罪”のために捧げられる―。 +++ 罪を犯した者を、心の底から悔い改めさせることのできることができるなら、それは被害者にとっても、もちろん本人にとっても、前を向いて一歩踏み出す大きな助けになるだろうと思う。死刑やその他の刑罰によって、ほんとうにそれが成し得るのかどうか疑問は大きく、ことに被害者感情には納得できない部分が多いだろうと察せられる。刑罰0号は、犯罪者に、被害者の記憶を見せることによって、自分の犯した罪の重さを実感させ、心底から罪を償わせようという狙いで始められたプロジェクトである。しかし、まず被験者とされた犯罪者たちにかかる負荷は予想以上に大きく、プロジェクトは半ばで頓挫することになる。だが、研究者というのは、その程度のことで、はいそうですかと諦められる人種ではないのだろう。水面下で続けられていた研究が、後々想像もしなかった事態を引き起こすことになるのである。辛うじて正気を保ち、成長していく被験者・森田俊と研究者の江波はるかの関わり、俊とそもそもの開発者・佐田行雄の関わり、佐田と息子の洋介との関係。さまざまな人物たちが絡み合い、それぞれの思惑で0号の周囲で動き回っている。ラストは、そもそもの狙いからするとかなり大規模なことになったし、実際にそんなことになったらと思うと身が震えるが、もしかするとこの先、平和が続いてくれるかもしれないという小さな希望もなくはない。良かれと思って考え出したことも、その影響力は留まる事を知らないのだと、改めて考えさせられることが多い一冊でもあった。
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死刑に代わる刑罰として、加害者に被害者が体験した記憶を追体験させることができる機械「0号」。 悲惨な事件を聞く度に、加害者にも同じ体験をさせてやりたいと思うことはある。そのシステムにより巻き起こされる話かと思いきや、途中から壮大な近未来の話になってしまった。 科学者は罪悪感を覚...
死刑に代わる刑罰として、加害者に被害者が体験した記憶を追体験させることができる機械「0号」。 悲惨な事件を聞く度に、加害者にも同じ体験をさせてやりたいと思うことはある。そのシステムにより巻き起こされる話かと思いきや、途中から壮大な近未来の話になってしまった。 科学者は罪悪感を覚えながらも、作ったシステムを使い、その結果を知りたいという誘惑には勝てないのか。 佐田洋介よりも江波はるかに脅威を感じてしまった。
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死刑のかわりとなる刑罰0号。 それは被害者の記憶を辿るという苛烈なものだった。 ぜんぜん違うタイプの話だな! 他人に記憶を共有させる、と言うのがおもしろかったです。
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近未来SF…だろうか。 死刑制度の代わりに研究されていた0号。 被害者の記憶を加害者が追体験する。 例え廃人となろうともいいと思えるけど。 話はそこから予想外の方向に。 【図書館・初読・9月26日読了】
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