刑罰0号 の商品レビュー
人情物の西條奈加と思っていたが、思いもかけないSF小説を書いたものだ。死んだ人間から記憶を取り出し、生きた人間に埋め込んで疑似体験をさせるという話だ。こういうアイデアで、一体どんな話を展開していくのか。悲惨な記憶だったら、どうなってしまうのか。記憶は人格とどう関わって来るのか。最...
人情物の西條奈加と思っていたが、思いもかけないSF小説を書いたものだ。死んだ人間から記憶を取り出し、生きた人間に埋め込んで疑似体験をさせるという話だ。こういうアイデアで、一体どんな話を展開していくのか。悲惨な記憶だったら、どうなってしまうのか。記憶は人格とどう関わって来るのか。最初から、広島の原爆投下が重い影を落としている。イスラム過激派、キリスト教世界の傲慢さ、核の不安などに上手くこのアイデアが直結してくるのだ。こんな目に会いたくないが、しかし目を背けてはいけないのではないか、と考えてしまう。 人物の描き方は、さすがに上手い。それぞれに魅力があるのだ。それにしても、野末眞のことが、ちょっと中途半端なような気がするが。
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筋道立ってて退屈はしなかったけどどうしようもなく夢中になるような魅力は無かったかな。西條さんは多分、よっぽど粗筋とかが気になったりしない限りもう買わないと思われ。
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もし犯罪者に被害者の諸々を体験をさせる事が可能になったとしても、 共感力が低いから歯止めのきかない人達に 反省を促す事には繋がらないように思えてなりません。 実際やってみないと分かりませんけどね。 でももし本当にこの作品に出て来るシステムのようなものが作られたら 犯罪者よりも...
もし犯罪者に被害者の諸々を体験をさせる事が可能になったとしても、 共感力が低いから歯止めのきかない人達に 反省を促す事には繋がらないように思えてなりません。 実際やってみないと分かりませんけどね。 でももし本当にこの作品に出て来るシステムのようなものが作られたら 犯罪者よりも自殺志願者や何らかの理由で生きる事に苦しむ人の為にも使えるように思う。 未来っぽい話は色々想像できる余地があるのが良いな。
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刑罰0号。 死刑囚に被害者の体験を追体験させる。 その発明がらどんどん話がふくらんでいく。 始めの実験で、被験者は自身の罪に暴力的なまでに直面化させられる。そのあまりの重さに耐えられずに、元には戻れなくなる。そういった罪を犯す事自体が弱さの現れであり、自身の罪を認められないが故...
刑罰0号。 死刑囚に被害者の体験を追体験させる。 その発明がらどんどん話がふくらんでいく。 始めの実験で、被験者は自身の罪に暴力的なまでに直面化させられる。そのあまりの重さに耐えられずに、元には戻れなくなる。そういった罪を犯す事自体が弱さの現れであり、自身の罪を認められないが故に逃避している。 贖罪とはなにか 何が正しくて何が間違っているのか 考えさせられる1冊。
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贖罪とは何か、と同時に脳の不思議さを思い知らされた本でした。 加害者への刑罰として被害者の体験を加害者の脳に埋め込むという“0号”。一見良さそうな刑罰に思えたものの問題は多く…、という展開。 何が正解なのかは分かりませんが、いずれこういう未来がくるかもしれないと思うと怖いです。清水玲子さんの『秘密』のように、被害者の記憶を見ることができたり、本小説のように加害者の脳に働きかけることができたり、その使い方が正しいと誰が判断するのか、怖いなぁ。
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近未来のSF的小説。加害者の脳に被害者の記憶を移植して再生させるシステム。被害者の身になるとこうなるという体験ができるのだが、その体験を読んでいくのが何とも虚しくなるときもあった。が、わりとすらすらと読めた。その後このシステムにより話がどんどん広がって世界的になっていくのは予想外...
近未来のSF的小説。加害者の脳に被害者の記憶を移植して再生させるシステム。被害者の身になるとこうなるという体験ができるのだが、その体験を読んでいくのが何とも虚しくなるときもあった。が、わりとすらすらと読めた。その後このシステムにより話がどんどん広がって世界的になっていくのは予想外だったが、最後まで読みごたえのある1冊だった。
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初西條作品。非常に面白く一気読みした。 ハッと夢の中にいるかの様な気分になった。映画にしてみては?戦争の悲惨さをぜひ世界に。ハリウッド映画!
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犯罪が起きたときに、被害者の苦しみを加害者に与える刑罰が刑罰0号。技術的なことは解決している世界で、それを人に適用したらどうなるかが描かれる。最初は、身の回りの小さな出来事の話だった。素直に刑罰の一つとして採用されるのかと思いきや、想像の範囲を越える場所や用途で使われる。物語のス...
犯罪が起きたときに、被害者の苦しみを加害者に与える刑罰が刑罰0号。技術的なことは解決している世界で、それを人に適用したらどうなるかが描かれる。最初は、身の回りの小さな出来事の話だった。素直に刑罰の一つとして採用されるのかと思いきや、想像の範囲を越える場所や用途で使われる。物語のスケールも徐々に大きくなり!最後は地球全体を巻き込む。テクノロジーは使い方次第で人類を幸福にしたり不幸にしたりする。本書も0号システムを適用する場面の多様さが、それを訴える。さして重い物語ではないので、さくさくと読める。こんなテクノロジーがあったら、こんなことやあんなことができるなあが見事に小説になった。楽しく読了した。
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贖罪とはなにか。罪を犯した者に被害者が体験した記憶を追体験させる『刑罰0号』計画が秘密裏に始動した。しかし計画は失敗に終わる。開発者の佐田教授は行方を眩ますが、助手の江波はるかだけは諦めていなかった…。と、日本の刑罰のあり方が問われているのかと思いきや、物語は予想外の結末へ。西條奈加作品初読み。なぜ最初の事件が広島で起きたのか、徐々にスケールが大きくなっていく展開に一気読みでした。読み応えのある一冊だと思います。
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新聞書評を読んで。 オムニバス形式。 特に最初の2篇は何の話か分からない状態なので完全にだまされてしまった…。 終着点がここになるとは思わなかったけれど、なるほどなぁ…となった。一気に読んだ。
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