刑罰0号 の商品レビュー
私は8月の1カ月を戦争について考える月としています。決して忘れてはいけないけれど、いつも思っているのは、辛いから。 この時期はテレビ番組でも、多くの特集が組まれているので自然とそうなりますが。 小説は私にとって、癒しなので普段はあまりに哀しい話とわかっていたり、心が揺さぶられるだ...
私は8月の1カ月を戦争について考える月としています。決して忘れてはいけないけれど、いつも思っているのは、辛いから。 この時期はテレビ番組でも、多くの特集が組まれているので自然とそうなりますが。 小説は私にとって、癒しなので普段はあまりに哀しい話とわかっていたり、心が揺さぶられるだろうものは読まないようにしています。 この本はただ、西條奈加さんの時代物でないものが珍しくて手に取っただけで、そういう意味で借りたのではないけれど、結果戦争の悲惨さを改めて知る本になりました。 死刑より重い罰、それは被害者の記憶を植えられること。それが刑罰0号です。
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市井物時代小説作家のイメージで手にしたこの作品、タイトルからして"時代小説"でないことは分かっていたが……。いま(2023年末)この時期に読んで、あまりにも現在の世界情勢に合っていて、フィクションとは思えないような内容だった。第二次世界大戦末期、広島・長崎に落...
市井物時代小説作家のイメージで手にしたこの作品、タイトルからして"時代小説"でないことは分かっていたが……。いま(2023年末)この時期に読んで、あまりにも現在の世界情勢に合っていて、フィクションとは思えないような内容だった。第二次世界大戦末期、広島・長崎に落とされた"原爆"から始まる物語は、全世界の人々にその悲惨さを体験させる『刑罰0号』の凄さがとても印象に残る作品。私的にはとても印象深く、読み甲斐のある作品だと思った。
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西條奈加がまさかこんな近未来のSFチックな話を書くとはビックリです。 死刑囚の脳にチップを埋め込み被害者の記憶を入れた実験「刑罰0号」は失敗に終わるが、開発者の佐田は個人的な理由である少年に実験をする。 最初こそ犯罪者の抑制、死刑制度廃止だがどんどん話が膨らんでラストは核廃絶ま...
西條奈加がまさかこんな近未来のSFチックな話を書くとはビックリです。 死刑囚の脳にチップを埋め込み被害者の記憶を入れた実験「刑罰0号」は失敗に終わるが、開発者の佐田は個人的な理由である少年に実験をする。 最初こそ犯罪者の抑制、死刑制度廃止だがどんどん話が膨らんでラストは核廃絶までに… 最先端の脳科学とか全く無知なので、こんな近未来ありえるだろうなぁと_φ(・_・ ラストまで面白く読んだし結末も上手く着地となりましたが…やっぱり西條さんは人情ホロリとするような時代物、そんな作品の方が好きかな。
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西條作品といえば時代物という印象が強く、タイトルからしてこれまで読んできたものと毛色が違うなとは思ったけど…ここまでがっつり近未来SFものとは!しかも面白かった! 人の見たものを画像データ化する研究は実際行われてますが、記憶をデータ化し、かつより良く上書きするとか、いかにもできそ...
西條作品といえば時代物という印象が強く、タイトルからしてこれまで読んできたものと毛色が違うなとは思ったけど…ここまでがっつり近未来SFものとは!しかも面白かった! 人の見たものを画像データ化する研究は実際行われてますが、記憶をデータ化し、かつより良く上書きするとか、いかにもできそうな設定がまず面白い。そして死刑に代わる刑罰として始まったシステムのお話が、サイバーテロや国際紛争、核廃絶へと広がっていくのも面白い。重めのテーマではあるけども、最後に希望もあって良い。 そういや『金春屋ゴメス』って厳密には時代物じゃなかった…よな。
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「刑罰0号」 罪を償わせるために。 予定外のことがなく検体も無事であれば、このプロジェクトは素晴らしいものとして世に送り出されていただろうな。 遺族の気持ちを考えると、壊れたとしても寸分狂いのない体験してほしいだろうな。 「疑似脳0号」 実験体になった結果。 自分に都合のいいス...
「刑罰0号」 罪を償わせるために。 予定外のことがなく検体も無事であれば、このプロジェクトは素晴らしいものとして世に送り出されていただろうな。 遺族の気持ちを考えると、壊れたとしても寸分狂いのない体験してほしいだろうな。 「疑似脳0号」 実験体になった結果。 自分に都合のいいストーリーを描くのは自由だが、これだけの被害があったのに見回り強化等はなかったのだろうか。 しっかりと裁かれるべきではあるが、明らかに精神的に異常が認められそうだよな。 「ギニーピッグ」 どんな状況でも必ず。 記憶が融合してしまっているわけでもなく、壊れてしまった自分を探し続け本人を演じているような状態ではないか。 いくら刑期を終えたとしても、一度貼られたレッテルは剥がすことはできないだろ。 「エレクトラ」 襲撃者が狙ったもの。 無差別に選ばれた者たちの夢を一度で書き換えたのではなく、何度も出入りし準備をしてから実行したのだろうな。 依頼内容は奪うことだけであり、その後の攻撃は個人的なものだったのではないか。 「NOVO0号」 壊れないようにした。 話を聞いて作り上げた偽物だからなのかもしれないが、壊れないように手加減すると意味がないのかもしれないよな。 見つかった場所が場所ではあるが、その組織の中で一体何に使うつもりだったのか。 「聖戦」 魂は既に天国にある。 宗教の違いが生んだ思考なのだろうが、最期の瞬間まで恐怖と闘いながらも命を散らすのは見ている方も辛いだろう。 誰でも見れる状態で記憶を見せるのは難しいだろうが、何か意図があるのだろうな。 「グラウンド・ゼロ」 世界一平和な核とは。 外傷はなく無事なように見えたとしても、心に大きな傷を負い壊れてしまいそうになるのであれば立派な武器だろう。 こんなことをした贖罪だというのであれば、前線に立ちケアに務めるべきだろうに。
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今まで読んだのは時代物ばかり。初めての現代(近未来)物…私にとっては荒唐無稽とも思える内容でしたが、読後も頭をグルグルかき回されてる感じで、これからじわじわ滲みてくるでしょう。 以下、ネタバレありです。 記憶って、その持ち主だけのもののはず。それを他の誰かが読み出したり、他の誰か...
今まで読んだのは時代物ばかり。初めての現代(近未来)物…私にとっては荒唐無稽とも思える内容でしたが、読後も頭をグルグルかき回されてる感じで、これからじわじわ滲みてくるでしょう。 以下、ネタバレありです。 記憶って、その持ち主だけのもののはず。それを他の誰かが読み出したり、他の誰かに書き込んだりできるようになったら、自分が自分であることの意味や価値はどうなるのでしょう? 犯罪加害者に被害者の記憶を追体験させることが、死刑の代わりになるでしょうか? 私は否と言いたいです。そんなことしなくても、他者の気持ちを想像することが、人間にはできるはず。贖罪とは、そう言うことだと思います。同じ目に合わせて、「ね? あなたのしたことは、ひどいことなのよ?」と思い知らせても、素直に贖罪の気持ちが生まれるとは思えない。実際、下沢俊もそう描かれています。 私の記憶は私だけのもの。誰にも見られたくないし、誰のも見たくない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
犯罪被害者の脳から記憶データを抽出し、犯罪捜査に役立て、さらには非業の死を加害者に追体験させることで贖罪を促すことを目的に開発されたシステム『0号』をめぐる物語。 『まるまるの毬』から読み始め、人情時代小説の書き手としてとらえていた西條奈加さんのSF?と、期待と不安半々で読んだが、嬉しい事に期待以上に面白かった。 被害者は、遺族は、加害者に何を求めているのか。 現実と妄想、記憶と記憶の上書き、仮想現実。 性善説、性悪説。少年法の是非。 原爆と、同時多発テロ。 宗教や価値観の対立。 テロリストによる支配は、正当化されうるのか。 すぐそこにある現実に直結した様々な問いかけを、『0号』で繋いで、ぐいぐい読ませる。 開発途上で研究が中止となっても、応用や改善で粘り強く研究を続ける江波と、その助手二人、殊に金色のソフトクリーム頭のサルくんがいい味。 脳から記憶を抽出する、データを上書きするといったアイディアは特に目新しいものではない。 けれど、それを贖罪に使うというのは、もっとソフトに使えたら、“相手の身になって考える”システム? もしかして、イジメを無くしたり、差別を無くしたり出来るかも…と妄想。 もっと昔から妄想しているのは、お医者さんが患者の苦痛をポチッと接続できたら、乳幼児や意思疎通の出来ない人の診察でも『この痛みは尋常じゃない』とか『ココが苦しいんだ、辛いんだ』と体感して、患者本位の心のこもった治療が出来るのではないかということ。 誤診で見当違いの薬を処方されて、症状が悪化して痛みにのたうちまわった経験を、ろくに患者の顔も見ずに対応したあの医者に経験させてやりたいものだ。 いや〜、そんな仕事になったら、医師のなり手がいなくなるか…
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妻が面白いと言っていたので読んでみた。 加害者に被害者の記憶を体験させる刑罰、というのはとても面白いと思った。 途中、読んでいて中だるみしたけど、最後の使い方までの伏線なんだな、と納得。 刑罰としての0号をもっといろいろなケースで読んでみたかったな、とも思った。
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以前に読んだことがある西條さんの作品は「猫の傀儡」。図書館の西條さんの棚に並ぶのは主に時代物。なのでてっきり時代物作家さんだと思っていたら、何ですかこれは。バリバリの近未来SFじゃないですか。びっくりしたなぁもう。 発想と展開が面白くて飽きさせない。わりとハードな設定なのに、登場...
以前に読んだことがある西條さんの作品は「猫の傀儡」。図書館の西條さんの棚に並ぶのは主に時代物。なのでてっきり時代物作家さんだと思っていたら、何ですかこれは。バリバリの近未来SFじゃないですか。びっくりしたなぁもう。 発想と展開が面白くて飽きさせない。わりとハードな設定なのに、登場人物がみなどこか柔らかな印象なので、そのアンバランスさが好みの分かれるところかもしれませんね。記憶=想い、記憶=感情。もしも他人の記憶の再生が実現できるなら、確かにもしかしたら刑罰にもなり得るのだろうし、もしかしたらうんと優しい社会にもなり得るのかもしれない。殺伐とした要素をたくさん含みながらも、読後感はとても良い。 でもよく考えたら、小説を読むという行為は、他人の記憶を再生しているのと、実はとってもよく似ているんじゃないかのな?
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私的に人情物の作家さんと言うイメージを覆すSF的な短編連作。本当に近未来にありそう。人物の書き分けがしっかりしててさっと読めた。
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