スタッキング可能 の商品レビュー
揃いの個性を積み重ねる。 似た者同士を積み重ねる。 世間は属する僕らを括り、振られる配役は猫も杓子も端役ばかり。 でもまあ、B田さんこのあと一杯付き合ってくださいよ。 とあるオフィスビルの各フロアで何処にでもいる個性的な端役が繰り広げるシュールな日常。 エレベーターで行き来する...
揃いの個性を積み重ねる。 似た者同士を積み重ねる。 世間は属する僕らを括り、振られる配役は猫も杓子も端役ばかり。 でもまあ、B田さんこのあと一杯付き合ってくださいよ。 とあるオフィスビルの各フロアで何処にでもいる個性的な端役が繰り広げるシュールな日常。 エレベーターで行き来する、オフィスではたらくエトセトラ、な表題作を含むシュールな物語×5。 『男』という枠に押し込め『女』というレッテルを貼っつけ、お互いのほっぺにぐりぐり理想を押し付け合う様など その空気を、葛藤を、怒りを、シュールと名付けた表現で切り取る。 皮肉の効いたつっこみで。
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なんだこの逆転ホームランみたいな読書体験。(笑) http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-1110.html
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サラリーマンやOL。この量産品たるサラリーマンやOLは、もちろんスタックし得る仕様になってしまっていることは避け得ない。 ただ、そのそれぞれがそれぞれに自らのうちにスタックしてきたものは、それぞれに積み上げられたバリケードであったり、アジールの砦でもあったりする。 それで、よかれ...
サラリーマンやOL。この量産品たるサラリーマンやOLは、もちろんスタックし得る仕様になってしまっていることは避け得ない。 ただ、そのそれぞれがそれぞれに自らのうちにスタックしてきたものは、それぞれに積み上げられたバリケードであったり、アジールの砦でもあったりする。 それで、よかれあしかれそれに囚われてしまうこともないではないだろうけれども、結局アジール的なそれ自体はそれこそやはり大事な気がして。 そして、そんな風に気づかせてくれるこの小説は、読み手の気持ちを少し軽くしてくれる気もする。
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同調圧力や「普通」との戦いにまつわる小説。戦いというのが大げさだとしても、この小説は、自分たちを縛りつける「普通」を正視し抗おうとしている。 たとえば、男同士でよくやる女の噂話が嫌いな男性社員が出てくる。「あいつは女の話をしないからゲイだ」という決め付けに憤っている。まさに自分が...
同調圧力や「普通」との戦いにまつわる小説。戦いというのが大げさだとしても、この小説は、自分たちを縛りつける「普通」を正視し抗おうとしている。 たとえば、男同士でよくやる女の噂話が嫌いな男性社員が出てくる。「あいつは女の話をしないからゲイだ」という決め付けに憤っている。まさに自分がそれと同じだったから、なんだか頼もしい気分になった。 なぜか罷り通ってしまう根拠のない「普通」に対して、それってホントに「普通」なの?と一緒に立ち止まってくれる人がこの小説の中にはいる。それだけで、こちらの気持ちはだいぶ楽になる。 間に挟み込まれる戯曲?コント?風の「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」は声に出して読みたい日本語のオンパレード。いろいろあるけど、「土偶ぐらい長生きしてから言ってみろ」とか。
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全編を通してあるのが、「匿名性」というキーワードだろう。 匿名であることの空虚さ(のようなもの)。そのせいで生まれるややこしさ。特に「もうすぐ結婚する女」はもう、語り手が誰で、語られ手が誰で、それがどういう関係で、何人居て、ということが、一読しただけでは分からない。というか再読し...
全編を通してあるのが、「匿名性」というキーワードだろう。 匿名であることの空虚さ(のようなもの)。そのせいで生まれるややこしさ。特に「もうすぐ結婚する女」はもう、語り手が誰で、語られ手が誰で、それがどういう関係で、何人居て、ということが、一読しただけでは分からない。というか再読しても分からないし、人物相関図を書いてみても分からないと思う。だって、この人とこの人が同一人物である、という保証がないのだから。名前が存在しない所為で。 表題作の「スタッキング可能」では人物に名前が与えられてはいるけれど、「付けられている」というより「振られている」というだけみたいな名前だから余計ややこしい。「A田」と「A村」、「B野」と「B山」のような同じアルファベットを持つ名前は、果たして同一人物なのだろうか? 「入れ換え可能」なのだろうか? これこそ、一度図表にして整理してみるべきだろう。 それらの人たちが積み重ねられたビルの中で、唯一の存在感を持つのが、最後の章で唐突に現れる『わたし』である。 この『わたし』とは誰なのか? おそらく、著者本人の視点そのものだろう。その『わたし』が、世界を作るということ。『わたし』が作ったビルの中に、匿名の人々の、入れ替え可能な幾つものエピソードを整然と積み上げていくということ。それはすなわち、「小説を書く」という行為そのものなのではないだろうか。 小説を書く世界では、この『わたし』は誰とも交換され得ない。だって、書き手の『わたし』が存在しなければ、小説が書かれることはないのだから。 世界を視て、それを書き記す『わたし』だけは、誰とも交換されない。失われようがない。 「我思う、ゆえに我在り」なのだ。 というのは、深読みしすぎだろうか。
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MONKEYの文章はとても良かったが…一般世間に馴染めない私っていうのを全面売り出せるのってある程度までじゃないかなと思う。あなたが斜に見てる彼らも彼らで誰しも年食えばあなたとは違った悩みと常識がそれぞれみんなあるわけで、自分だけ特別ってことはないんだと。
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やー笑った。文章も好きだった。フェミニストって、見ていて面白いんだけど、その面白さが十全に発揮されていた。 嘘ばっかり!嘘ばっかり!落ちないマスカラ嘘ばっかり!
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文庫化。単行本が出たときに話題になっていたので購入。 言語感覚がユニークで、変なテンションの高さがある短編だった。次作も読んでみたい。
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