ミッドナイト・ジャーナル の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
★ざっくりとしたあらすじ チームを組んでいた新聞記者が誤報を出してしまい、人命や被害者家族の気持ちなどを考えていないと世の中から叩かれ、事実上左遷されチームはばらばらになる。 主要記者だった主人公の豪太郎が誤報と言われた記事の中にあった犯人は2人組かもしれないという記載が、とある事件を気に正しかったのではないかと思い始め行動を起こし始める。 過去に協力して記事を作った仲間がいつのまにか集まり、事件の真実を突き詰めてゆく。 新聞記者の仕事ぶりもよくわかる、記者魂の熱い一冊。 ★感想 私の思う新聞と新聞記者へのイメージが、偏見や誤解なんだと本書を読んで知り、とても衝撃でした。 本書を読むまでは、新聞というと、事件記事の扱いが大きく内容もセンセーショナルで、人の不幸が際立って目に入る読み物という印象でした。 記事も警察発表などの事実を文字にしただけのベタ記事で、各社記事の内容の差もほとんどなく感じていたので、新聞記者は、いち早く事件を知る必要があるものの、警察発表を待っていればいいだけの楽な仕事だと思っていました。 情報もネットの素人を追いかけるように出るので、新聞記事になったときには古さを感じます。 本書を読み始めるまでは、そんな悪い印象ばかりでした。 しかし、本書を読み、新聞記者の細かい仕事ぶりに驚きました。 事件の警察発表後に、細部や被害者家族が黙っていて欲しいと警察にお願いした裏事情まで入手して、全体を見据えたうえで重要な箇所を記事にするとは意外な事実で驚きました。 マスコミにはいいイメージがなかったので、ちゃんと仕事しているんだ! と変に関心してしまいました。 情報を入手するための警察官との駆け引き、記者や警察に情報を流して相手の動きを即したり、様子をみたりする巧妙な心理作戦にドキドキしました。 本書では、女児誘拐強姦殺人という極悪非道な事件を扱っているので、悲惨な内容を最後まで読めるか不安でしたが、主人公の豪太郎記者の執念強い仕事ぶりにいつしか感情移入して読みふけっている自分がいました。 記事が注意喚起になり、次の事件を抑止できる、そのために取材し続ける記者たちにハッとさせられました。 私は新聞やマスメディアは、人の不幸でご飯を食べている嫌な仕事だと否定的でしたが、ミッドナイト・ジャーナルを読んでこの考えが一変しました。 被害者の気持ちを考えずに取材し記事にしていると、他人事で済ましている自分に気がついたのです。新聞記事には記者の個人的な思いが綴られることはないですが、信念は感じることができるんだと、記事の本来の意味合いをミッドナイト・ジャーナルを読んで初めて理解できた気がします。 お話としてもとても面白かったです。 次作があるならば、くせのある押しの強い豪太郎恋愛を見てみたいと思いました。
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ずーとむかし、大学新聞を作っていた。そのとき、「理論をこねくり回す前に足で書け」と教えられた。闇に埋れている事実を明るみに出す。この作品で言えば、微かな犯人の痕跡や沈黙する権力から真実を明るみに出す。言うは易く行うは難し。この本には、その難きことが詳細に述べられている。勿論、趣味...
ずーとむかし、大学新聞を作っていた。そのとき、「理論をこねくり回す前に足で書け」と教えられた。闇に埋れている事実を明るみに出す。この作品で言えば、微かな犯人の痕跡や沈黙する権力から真実を明るみに出す。言うは易く行うは難し。この本には、その難きことが詳細に述べられている。勿論、趣味半分の学生の仕事とはレベルが違う。新聞作りは記事のみが大切なのではない。どういう割付をするかも、重要な新聞つくりである。何を選びどう見出しを作るか。だから、マツパクの仕事は書かれなければならなかった。最終的に事件の背景までも明らかにするのは、新聞でしか出来ないことだから、調査報道を書いた祐里の仕事は更に重要だ。そこに至るまでの綿密な仕事と言う意味で、豪太郎のスクープに至るまでの取材過程を描いたこの小説は大きな意味があると思う。 ただ、学生新聞でもう一つ最も大切なことを学んだ。現場にある無数の事実の中から、一番主張したい事実を拾い上げ、その事実を磨き上げることだ。そのためには、自分がどういう「視点」を持つかが必要になる。今回は、幼児誘拐・殺害という最もわかりやすい「正義」があった。次回は「公益か、個人か」等々、もっと記者が迷うような事件を期待する。
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スクープと誤報は紙一重。ネットでは即時でニュースが流れる。早さが命ではあるけれどそこに付きまとうのは誤報という大きな「罪」 新聞記者に必要なのは疑う事。どんなささいな事件事故であっても紙面に載せる前に必ず疑ってかかること、そこにこそ記者としての意地とプライドと矜持がみえる。
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