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やがて海へと届く の商品レビュー

3.7

89件のお客様レビュー

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2016/03/15

3年前の震災で親友が行方不明になり、その事実を受け止めきれない主人公・真奈。 事実との向き合い方も親や恋人、それぞれ異なり、それぞれの苦悩や辛さがひしひしと伝わってくる。すみれの章も読んでいて辛い。 身近な人が亡くなっても、関わりの中で生まれたものは自分の中に何かしらの形で残り、...

3年前の震災で親友が行方不明になり、その事実を受け止めきれない主人公・真奈。 事実との向き合い方も親や恋人、それぞれ異なり、それぞれの苦悩や辛さがひしひしと伝わってくる。すみれの章も読んでいて辛い。 身近な人が亡くなっても、関わりの中で生まれたものは自分の中に何かしらの形で残り、日常に溶け込んでいく。 静謐でじんわり沁み渡る物語。

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2016/03/09

唐突に、理不尽に、大切な人を失った人の気持ちは、同じように失った人にしかわからないだろう。こうして親友や恋人を失った作中人物の心に寄り添ったところで、それは表面的なものでしかないのだと思う。けれど誰もがきっと祈らずにはいられない。大切な人を思う気持ちが、海へ、どこかで眠るその人に...

唐突に、理不尽に、大切な人を失った人の気持ちは、同じように失った人にしかわからないだろう。こうして親友や恋人を失った作中人物の心に寄り添ったところで、それは表面的なものでしかないのだと思う。けれど誰もがきっと祈らずにはいられない。大切な人を思う気持ちが、海へ、どこかで眠るその人に届くことを。その思いを胸に、生きている者は今日を生きていかなければならない。

Posted byブクログ

2016/03/08

震災で親友が行方不明になった女性の物語。親友は既に亡くなっているのだろうが、それを受け止めきれずに毎日を過ごす主人公の再生と、自分は死んでしまったのだという事実を理解できずに彷徨う親友の成仏を丁寧に描いている。親友の語る場面は少し抽象的で2度読みしてようやく理解できた。震災関連の...

震災で親友が行方不明になった女性の物語。親友は既に亡くなっているのだろうが、それを受け止めきれずに毎日を過ごす主人公の再生と、自分は死んでしまったのだという事実を理解できずに彷徨う親友の成仏を丁寧に描いている。親友の語る場面は少し抽象的で2度読みしてようやく理解できた。震災関連の本はいろいろ読んできたが一番死者の心に寄り添ったものだったと思う。

Posted byブクログ

2016/03/06

愛する人の死を受け入れるまでの葛藤、合間に亡くなった人の葛藤が入り、生々しく辛かった。 自然災害で奪われていった命の理不尽さを受けとめるのは本当に辛い。 忘れる事は見捨てる事になるのでは、の気持ちが本当に辛い。情景、気持ちの描写が上手いなぁと感服。 東日本震災からもうすぐ丸5年...

愛する人の死を受け入れるまでの葛藤、合間に亡くなった人の葛藤が入り、生々しく辛かった。 自然災害で奪われていった命の理不尽さを受けとめるのは本当に辛い。 忘れる事は見捨てる事になるのでは、の気持ちが本当に辛い。情景、気持ちの描写が上手いなぁと感服。 東日本震災からもうすぐ丸5年。 この時に読んだせいか、読み終わってドキドキした。 どうぞ、どうぞ安らかにと願うばかりだ。

Posted byブクログ

2016/03/05

とても繊細で素敵な表現の文章を書かれるお気に入りの作家さんの新作は、キャッチコピーにあるとおり、「死と喪失と再生」をテーマにした物語。震災による友人の死を引きずる女性が、ゆるやかにその死と向かい合い、立ち上がってゆくまでを幻想味ある場面も交えながら描いています。 心の「ウロ」と向...

とても繊細で素敵な表現の文章を書かれるお気に入りの作家さんの新作は、キャッチコピーにあるとおり、「死と喪失と再生」をテーマにした物語。震災による友人の死を引きずる女性が、ゆるやかにその死と向かい合い、立ち上がってゆくまでを幻想味ある場面も交えながら描いています。 心の「ウロ」と向かいあうのは、自分でも気づきたくない、忘れたくない「事実」に向かいあうことでもあります。忘れたいこと、悲しいこと、怒りを抱いていたこと。それらをぐっと心の奥底へ押し込むことは向かいあうよりも簡単だけれど、それでは人は歩み出せない。その困難な一歩一歩を歩む様子を、丁寧に細やかに描かれているので、だんだんと解き放たれてゆくという心象に共鳴するような想いをも抱けました。 ほんとうにしんと静かな空気をまとった、どこか静謐なものをたたえた物語だと思いました。人の心の奥底にしっかりと寄り添っているから、そのように感じたのかもしれません。

Posted byブクログ

2016/03/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

綾瀬さん初読み。ひとつひとつの表現が丁寧でクセになる。死という重いテーマのはずなのに、スラスラと読めるから不思議た。 確かに自分も真奈と同じ立場に置かれていたら忘れることなんてできないだろう。けれどやっぱりいつまでもそうして感傷に浸っていてもどうにもならないし、それはまるで自分を許すために痛みを忘れないようにしているんじゃないかと途中から思った。忘れるというのは決して悪いことじゃないし、人間は永遠に忘れない機能なんて持ち合わせてない。それでも忘れていた事をふと思い出して、幸せだったなぁと思えるならそれで十分だと思う。そうして忘れるという罪から解放された最後の夢は好きだった。 あと個人的にはキノコちゃんとカエルちゃんが好きだった。すごく現代の子達の戦争に対する感情を代弁しているようで、でもちゃんと納得できる説明をしていたところがよかった。

Posted byブクログ

2016/03/02

東日本大震災を経験した著者が筆をとった物語はあまりにも大きすぎるテーマだった。 震災から三年後が舞台。三年ってたった三年か、もう三年かはその人次第なんだよね。 語彙が足りなすぎてこの小説の感想を書くのが憚れるのですが、難しいんだよな。 喪ったもの、それを乗り越えるものが大きすぎて...

東日本大震災を経験した著者が筆をとった物語はあまりにも大きすぎるテーマだった。 震災から三年後が舞台。三年ってたった三年か、もう三年かはその人次第なんだよね。 語彙が足りなすぎてこの小説の感想を書くのが憚れるのですが、難しいんだよな。 喪ったもの、それを乗り越えるものが大きすぎて。 途中のキノコちゃんとカエルちゃんの会話が好き。忘れちゃいけないってこと。戦争のこと、震災のこと、忘れちゃいけないっていうけど、それは何を忘れちゃいけないの。戦争はよくないってこと、怖いってこと、愚かだってこと、悲しい想いしたってこと? 震災を風化させてはならない、じゃあなにを覚えてればいいの? っていう会話、結構わたしには響いた。

Posted byブクログ

2016/02/28

やっぱり東日本大震災は終わっていない。 ご自分で旅行先で被災して大変な思いをされた綾瀬さん。 これは綾瀬さんの鎮魂歌なのだと思う。 生き残った主人公も、でもやっと呪縛から解かれて(心から友人を弔い) 彼女のスタートが切れたこと、よかった。 途中で「WALKING TOUR(htt...

やっぱり東日本大震災は終わっていない。 ご自分で旅行先で被災して大変な思いをされた綾瀬さん。 これは綾瀬さんの鎮魂歌なのだと思う。 生き残った主人公も、でもやっと呪縛から解かれて(心から友人を弔い) 彼女のスタートが切れたこと、よかった。 途中で「WALKING TOUR(http://booklog.jp/item/1/4054032141)」を思い出して動画を見ていたから、こんな風に思ったのかもしれない(不思議と「想像ラジオ」の時は思い起こさなかった)。 読めて良かった。ありがとうございました。

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2016/02/28

震災で行方不明になった親友を想い続ける主人公の喪失と再生の物語。大切な人を失った事への様々な想いとそれを受けとめて前を向いて歩こうとする想いが繊細な筆致で語られていく。実際に震災を体験した著者だから描けるお話。深い余韻ある一冊。

Posted byブクログ

2016/07/16

「死」というものに直面したら 本人も、その周囲にいる人々も、どんな場合でも その状況に納得しているなんてあり得ない。 後悔だって、言いたいことだっていっぱいあり 昨日までの連続した自分の場所に 戻りたくてたまらなくなるんだろうと 特に私のような成長しきれてない人間は その思いが...

「死」というものに直面したら 本人も、その周囲にいる人々も、どんな場合でも その状況に納得しているなんてあり得ない。 後悔だって、言いたいことだっていっぱいあり 昨日までの連続した自分の場所に 戻りたくてたまらなくなるんだろうと 特に私のような成長しきれてない人間は その思いが人一倍強く出るんだろうと思っている。 ある日突然、元の場所に永遠に帰れなくなったすみれと すみれの友人の真奈の物語。 祈るように読み進める。 自分の状況がよくのみこめず、歩き回るすみれ。 少しずつ忘れてなかったものにならないよう 痛みと一緒にすみれに寄り添うことをやめない真奈。 死ぬとは。生きるとは。信じるとは。 未熟な私がこの本から確実に小さな火を頂きました。 その大切な火が消えないようにと、 今感じたこと以上のものを発見するために 再読必須の一冊です。 これを読んだらますます、東日本大震災の時を 書いたまるさんのノンフィクション。 手に取ることが出来なくなりました。 きっとそちらの本は まだ私が受け取れる時期ではないのでしょう。 まるさんの見つめている先が遠すぎて、 まだまだ私は辿りつけそうもありませんが 後ろをついて行かなければいけない人だということは この作品ではっきりしましたね。 忘れ、薄れゆくこと。 そのことを罪悪と思って苦しんでいる人に この作品が届くといいなと思います。

Posted byブクログ