眠る盃 新装版 の商品レビュー
向田邦子の何がすごいかというと、つかみの文章がうまいというのもあるけれど、この人間観察力と独特な自己分析だろう。 普段小説などはあまり読まないが、読んだとしてもSFか歴史小説が多いので、こういう人の心の機微をとらえた文章をたまに読むと新鮮だ。
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読みやすくて面白くてあっという間に読めてしまった。向田邦子さんの文章は無理なく親しみやすい印象があって好みだ。 愛情深い人だなと感じるのはやはり動物に対する描写のせいかな。湿っぽくないギリギリのところで感情を表すのがうまい。 昭和ってこういう時代だったのだと伝わってくる。時代が変わっても人間は変わっていないと感じる部分もあり、それが温かい。 芸術の話や食レポだって面白いし、二年間住んだだけという鹿児島の思い出なんかは何年分の厚みがあるか。読めばみんな好きになってしまうんじゃないかな。
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面白すぎて、ページをめくる手が止められませんでした。 自分が生まれる前と後の昭和の時代を、鮮やかに、コミカルに、時に厳しく、たくさん見せて下さる── それはもう本当に向田さんと同じ時に同じ場所から「見てきた」気がするのです。 図書館で借りたので、古い初版本ならではの、黄ばんだ紙や...
面白すぎて、ページをめくる手が止められませんでした。 自分が生まれる前と後の昭和の時代を、鮮やかに、コミカルに、時に厳しく、たくさん見せて下さる── それはもう本当に向田さんと同じ時に同じ場所から「見てきた」気がするのです。 図書館で借りたので、古い初版本ならではの、黄ばんだ紙や、壊れそうな背表紙、長い間書庫にあったという匂いがなおさら、懐かしいような、未知のような世界に誘ってくれました。 短いいくつもの章から成り立っている随筆集です。 松浦弥太郎のエッセイであらすじを読んだ時に涙が溢れ、実際に全容を読んでまた泣けた(何度でも泣ける)「字のない葉書」、三浦しをんの「舟を編む」で言葉の大海ならぬ辞書の沼にハマっている私に深く響いた「国語辞典」、いつの時代の女性もそうだな~「パックの心理学」、驚きの連続「中野のライオン」「新宿のライオン」、そして飼い猫とのエピソードも皮肉と愛情にあふれ、読み手を和ませてくれますよ。
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『父の詫び状』に続くエッセイ集。涙を誘うような話、ビックリするような逸話、観察眼に感心するような話など、様々な文章が綴られている。
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「水羊羹」 水羊羹を食べるときかける音楽「スプリングイズヒア」が紹介されていたのでユーチューブで検索してみたら、コメント欄もこのエッセイから来た私と同じ人ばかりでほっこりした。
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向田邦子エッセイ集。今読んでいても全然色あせることがない。向田邦子さんの人となりも、すけてみえてきて、ますます向田邦子ファンになってしまいます。 今の日本人は変わってしまったのだろうか。この一冊の中には、よく言われる古き良き日本人が詰まっています。
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向田邦子さん、改めて素敵な女性であると認識しました。リズム感のある文章だから、さらっと読めてしまうのだけど、はっとすることが随所にありました。
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『小説は書き出し、随筆は最後の一行』。 そんな言われも向田邦子に限ってはどこ吹く風で、書き出しから読み手の関心をたちどころにつかむ。 例えば、〈うちの電話はベルを鳴らす前に肩で息をする〉。今から何を語り出そうとするのか凡そ見当のつかない未知の世界へと誘う書き出し。その瞬間から引...
『小説は書き出し、随筆は最後の一行』。 そんな言われも向田邦子に限ってはどこ吹く風で、書き出しから読み手の関心をたちどころにつかむ。 例えば、〈うちの電話はベルを鳴らす前に肩で息をする〉。今から何を語り出そうとするのか凡そ見当のつかない未知の世界へと誘う書き出し。その瞬間から引き込まれずにはいられない。 書き出しはその他にも、見識を短い言葉に落とし込んだ歯切れのよい表現は真理を突いた箴言めき、小気味よく静かに突き刺さる。 辛口で鳴らしたコラムニスト 山本夏彦が『向田邦子は突然あらわれてほとんど名人』と褒め上げたのも大いに頷ける。 今回再読し、面白かったのは『考察』の妙。 ◉味醂干し ベッタリと濃い焦茶色に漬かった大きな目のイワシが作法通り9匹ならんでいるのだが、包み紙にじっとり漬け汁が滲み出るほど濡れている。包み紙も、派手派手しい赤や青で、あまり上品とは申しかねる図柄なのも嬉しかった。味醂干しはこれなのだ。見るからに安そうで気のおけないところが身上なのだ。 ◉水羊羹 水羊羹の命は切り口と角であります。水羊羹が一年中あればいいという人もいますが、私はそうはおもいません。水羊羹は冷やし中華やアイスクリームとは違います。新茶の出る頃から店にならび、うちわを仕舞う頃にはひっそりと姿を消す、その短い命がいいのです。 ◉女 特に若い女は、どうして痩せた男が好きなんだろう。ボブディランを聴く時に、隣にポテンと肥えたボーイフレンドが寄り添っていたのでは落ち着きが悪いのかもしれない。苦心して選んだスカーフや、腕がだるくなるほど研究した最新のお化粧を引き立たせるのも、極太の男より中細や極細の男たちなのだろう。ハムレットが北の湖の肉体を持っていたらあの悲劇は起こらなかったろう。 ◉アマゾン川 アマゾン川はとてつもなく大きな、おみおつけ色の帯であった。しかも、木の根のようにおびただしい数の支流がある。その色がまたさまざまで、濃いめの赤だし色あり、淡目の仙台味噌ありという具合ですべてがたくましく、生々しい。山紫水明に縁遠いたたずまいであった。 ◉旅の終わり 帰り道は旅のお釣り。残り少なくなった小銭をポケットの底で未練がましく鳴らすように、『ああ終わってしまったなぁ』軽い疲れとむなしさ、わずらわしい日常へ戻ってゆくうっとうしさ。それでいて、住み慣れたぬるま湯へまた漬かってゆくほっとした感じがある。 ユーモアと機知。話に挟み込まれる自身の記憶のエピソード。陳腐を承知で使えば、結局『センス』という言葉に収斂されていく。 今回の再読は巻末に収められた『消しゴム』から読み始めた。ショートショートの様な創作色を帯びたエッセイ。〈軀の上に大きな消しゴムが乗っかっている〉から始まる意表をつく書き出し。過不足ない情景説明とスリリングな展開。そこに巧妙に挿入される心理描写。サゲは卓抜なエンディングを用意。 志ん朝の落語は〈郭噺を語り出す高座に行灯が灯り、下町噺では高座に焼き魚の煙が漂ってくる〉と評された。向田邦子のエッセイもしかり。ラジオドラマの脚本経験の影響もあるのかと思うが、自身の記憶と昭和の生活風景の絡め方がとにかく絶妙。ゆえに いずれの話も具体的に鮮明に読み手の中に浮かび上がり、いつか見た光景となって強い共感を覚える。 沢木耕太郎の向田邦子論を読んで久々に開いた本書。何度となく、陶然となりながら名人芸を玩読。しばらく向田熱に冒されるのは必至でありますな。
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向田邦子さんの二冊目のエッセイ集。 人の世話をやくのに夢中になって自分のことをついつい後回しにしてしまう自身の性格を、子供の頃の思い出話を通して描いた『潰れた鶴』、“暴君であったが、反面テレ性でもあった(p.46)”向田さんのお父さんが、末娘の学童疎開に際して子供思いなところ...
向田邦子さんの二冊目のエッセイ集。 人の世話をやくのに夢中になって自分のことをついつい後回しにしてしまう自身の性格を、子供の頃の思い出話を通して描いた『潰れた鶴』、“暴君であったが、反面テレ性でもあった(p.46)”向田さんのお父さんが、末娘の学童疎開に際して子供思いなところを見せた『字のない葉書』が印象に残った。 もちろん悪くはないのだが、前作『父の詫び状』がもう抜群に素晴らしかったので、それと比べるとどうしても少し見劣りしてしまう、というのが正直な感想である。
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とても、面白かった〜! 時々、難しい表現や漢字(自分の勉強不足ですが)があったりしますが。 真っ当な感覚をもちながら、思いがけない出来事をユーモアたっぷりに捉えることのできる素敵な方だなぁと思いました。 その対比がとても面白かったです。 「今」のエッセイがよみたかったなぁと心か...
とても、面白かった〜! 時々、難しい表現や漢字(自分の勉強不足ですが)があったりしますが。 真っ当な感覚をもちながら、思いがけない出来事をユーモアたっぷりに捉えることのできる素敵な方だなぁと思いました。 その対比がとても面白かったです。 「今」のエッセイがよみたかったなぁと心から思いました。
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