きょうの日はさようなら の商品レビュー
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17歳の夏休み、双子の明日子と日々人は、父から唐突にいとこ・今日子の存在を知らされ、居候として明日から一緒に暮らすことを告げられる。おさげ頭にセーラー服姿の今日子、実は彼女は火事で生き残り低温保存の“冬眠”から目覚めたばかりの30年前の女子高生だったーー。スマホ世代とポケベル世代。言葉や文化に戸惑いながらも明るく前向きに生きようとする普通の女子高生・今日子を、二人は少しずつと好きになっていく。しかし今日子の過去には、本人すらも知らないある悲しい秘密があった…。時代を超えた若者たちが心で通じ合う、不思議で切ないひと夏の奇跡の物語。 気がついたら、作中の人物たちと一緒に笑って、心配して、泣いていた。登場人物たち全員が愛おしい。こんな気持ちにさせてくれる作品は久しくなかったなぁ。 朝起きたら、自分以外は30歳としをとっていて、自分だけ取り残されていたらどう思うだろう。孤独、喪失、絶望…今日子の置かれた状況をリアルに考えてみると、明日子や日々人の存在にどれだけ今日子が救われたかを感じることができる。 反対に、明日子と日々人の二人が今日子との出会いによって成長し変わっていく様子も鮮やかに描かれている。不仲だった父親と和解していく場面では、スーパーファミコンが憎い役割を果たす。便利になりすぎた現代社会を客観的に見つめる今日子の言葉は、スマホ世代の二人に心に変化をもたらす。 若者が成長する姿って、どうしてこんなに美しく輝いているのだろう。未熟さを隠すように膨張した自意識の殻が、一枚一枚剥がされ成熟へと向かっていく。一穂ミチさんはその過程を、なんとも鮮やかに切ない色のスポットライトを当てながら描き出す。
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『スモール・ワールズ』で知った作家一穂ミチさんの長編小説。 フォロワーさんに教えていただきました。ありがとうございます。 時は2025年。高校二年生の夏休み。 明日子と双子の弟の日々人と父親が暮らす家にいとこの今日子が居候としてやってきます。 実は彼女は冷凍睡眠から目覚めたばか...
『スモール・ワールズ』で知った作家一穂ミチさんの長編小説。 フォロワーさんに教えていただきました。ありがとうございます。 時は2025年。高校二年生の夏休み。 明日子と双子の弟の日々人と父親が暮らす家にいとこの今日子が居候としてやってきます。 実は彼女は冷凍睡眠から目覚めたばかりの三十年前の女子高生でした。 家族は火事で全員亡くなり、ただ一人生き残ったのだと説明を受けますが…。 三十年前(二十八年前)の高校生を彷彿とさせるアイテムがたくさん登場します。 ポケベル、ソックタッチ、ガングロなどの言葉も飛び出してやっぱりあの頃の特徴といえば女子高生だな~と思いました。 そして今日子は二十八年前ちょっと好きになりかけていた沖津くんという同級生がいました。 明日子たちは沖津くんが今、何をしているか探し出してあげて、今日子は高校の制服姿で沖津くんの働いている姿を勤務先のデパートに見に行きます。だけどただそれだけです。 そしてまた、明日子たちは今日子の家族が亡くなった理由が火事ではなく無理心中だったことを知ってしまいます。今日子の家系には無理心中を図るような重大な秘密がありました。 一方沖津くんの方もセーラー服姿の今日子に気が付いて昔のことを懐かしく思い出します。だけどやっぱりただそれだけです。 そして日々人は今日子に本気で恋をします。でも今日子はまた、未来へと旅立ってしまいます。 ひと夏のちょっと不思議なキュンとする物語でしたが、たしかに堂上今日子はそこにいたのだと思いました。
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薦められたのはBL作品だったけど目に止まったのでこちらを。2025年の夏休み。明日子と日々人の元に突然父が姉の子の今日子を連れて来た。なんと彼女は30年間の冷凍冬眠から目覚めたばかりの同世代の女子高生。現代に戸惑いながらも意外とすんなり馴染む今日子。漫画やゲーム等の世代のギャップ...
薦められたのはBL作品だったけど目に止まったのでこちらを。2025年の夏休み。明日子と日々人の元に突然父が姉の子の今日子を連れて来た。なんと彼女は30年間の冷凍冬眠から目覚めたばかりの同世代の女子高生。現代に戸惑いながらも意外とすんなり馴染む今日子。漫画やゲーム等の世代のギャップの話題がコミカルだがちょっと叙情的。30年前=1995年に高校生前後の今日子と同世代なら色々刺さると思う。彼女が軸になって明日子家族のわだかまりが解かれていく展開はしみじみいい。その分後半冷凍冬眠に纏わるSFな秘密が明かされてからの展開はそれしかないと納得しても胸に来る。最後まで読むとタイトルの前後にある歌詞を思い浮かべて泣けてきたよ…
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30年の冷凍睡眠から目が覚めたら、全く世界は変わっていた。というやつ。未来で治療法が確立されていることを願って自分の生きていたきょうを置いていくか、そのまま死か。 自分だけで判断できたらいいけど、その周りも助けようとする。生きていて欲しいから。もちろん本人も死にたくない。 でも、目覚めた世界は自分の知るきょうじゃない。 辛いです!でも、面白いです!
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長い眠りから目覚めた女子高生、今日子と、そのいとこである明日子と日々人のひと夏の話。 コールドスリープ、とはいえ強くSF感はないのだな…と読み進めるうちに、捻じ曲げられている情報や、少しだけ未来の世界の管理・統制社会の仕組みが三人の前を立ち塞ぐ。 三十年という時間の経過につい...
長い眠りから目覚めた女子高生、今日子と、そのいとこである明日子と日々人のひと夏の話。 コールドスリープ、とはいえ強くSF感はないのだな…と読み進めるうちに、捻じ曲げられている情報や、少しだけ未来の世界の管理・統制社会の仕組みが三人の前を立ち塞ぐ。 三十年という時間の経過について、自分自身が今日子の少し下の歳で、彼女が飛び越えた三十年をまさに生きてきたので、カルチャーギャップがわかるなぁと感じながら読んでいた。いくつもの機械を使っていたのに、スマホ一つで何役、何十役もこなせてしまう現在をすごく便利なものだと思うけれど、確かにこの三十年くらいってフルモデルチェンジよりもマイナーチェンジの世界だったのかも。何年かおきにカバーされる名曲がいくつも頭に浮かんで、復刻版を有難がって。いつまでも愛されてる気がしていたけど、半端に残ってるというのがすとんと腑に落ちる。 今日子という新しい刺激に対して、明日子が内心で抱える感情や日々人の変化。一穂作品に出てくる人は皆、正直で率直で、それでいてとてもやさしいのがこの作品でもそうであることが嬉しかった。 家族というもの、病、十七歳の繊細さ、夏休みという特別な時間といった感情的なものと、時代装置が上手く噛み合った不思議で特別なSFストーリーになっていた。
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学生時代の夏休みの無敵感と少しの切なさの予感、そこに30年の時を超えたSF(すこし不思議)が加わって、すごく面白かった。
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今日子は次いつ起きるんだろうとか 何回これを繰り返すんだろうとか いつまで高校生をやるんだろうとか、思った 次起きたらまた夏休み また発展した世界たちに驚いたりして、明日子も日々人もいくつかな 何かちょっと切ないよね
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今から何年か先の未来の話なのだが、今と世界があまり変わっていなくて、確かにスマホの登場以降それほど劇的な変化はもうないと見込んでのこの設定だったのかもしれない。ネットと携帯が改めて我々の世界を一変させていることを痛感した。30歳年上の同級生みたいな変な感覚で、その時間軸のずれが切なくて感動して涙出た。 冷凍睡眠の女の子の家が一家心中するのだが、その理由が非常に無難で、どこにも悪意がないのが肩透かしだった。収まりがよすぎて出来すぎだ。 主人公が双子の兄妹の女の子で、一応三人称で描かれているのだが、半一人称とでも言うほど彼女に寄り添った三人称だった。こんなのありなんだ、と思った。 女の子がかつて好きだった同級生の男の子が主人公のエピローグ的な章がとても切なかった。過去を過去として心に抱きながらおじさんとして生きている未来みたいな、それに対して女の子は過去からダイレクトに未来にやってきてしまったみたいな、うまく言葉にできないけどそのギャップというか、無常みたいなこと。 ジャンプの漫画やゲームなどタイトルは明記しないけど、なんとなく想像できるような表現となっていたのだが、それは権利的な配慮なのだろうか。タイトルを書いてもらった方がちゃんと思い描けていいと思うのだが、なじみのない世代はこのようにぼやかした表現の方がいいのだろうか。 ちょうど夏休みの終わりに読んでよかった。
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おそらくBL小説での方が著名な方だとは思うのですが、一般向け小説もなかなか読み応えのあるものを書かれるのですね。 「おお~…」と唸らされました、SFあり青春あり。 文体としてはあえてかもしれんが、ちょっとドライで突き放す語り口でしたね。
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高2の夏、明日子と日々人はそれまで知らなかった従姉・今日子の存在と、彼女を引き取ることを父から告げられ、戸惑う。しかも、今日子は30年前にコールドスリープに入って目覚めてしばらくたったところだと言う。 ノストラダムスの大予言が騒がれていた時代に生きていた少女が、現代よりもさらに進...
高2の夏、明日子と日々人はそれまで知らなかった従姉・今日子の存在と、彼女を引き取ることを父から告げられ、戸惑う。しかも、今日子は30年前にコールドスリープに入って目覚めてしばらくたったところだと言う。 ノストラダムスの大予言が騒がれていた時代に生きていた少女が、現代よりもさらに進んだ近未来に目覚めて、自分が生きる意味を必死で考える様が痛々しくなく、描かれている。 語り口は軽いのに、テーマは重い。読み進むうち、テーマはさらに深まっていく。
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