キャロル の商品レビュー
パトリシア・ハイスミスはミステリーの作家さんだというイメージが強かったのですが、恋愛小説も書いたのですね。 描かれている人々の生活ぶりが自分の住む世界とあまりにかけ離れていすぎて現実感が薄かった。現在よりも比べ物にならないくらい同性の恋愛への偏見の酷さを考えると希望のある終わり方...
パトリシア・ハイスミスはミステリーの作家さんだというイメージが強かったのですが、恋愛小説も書いたのですね。 描かれている人々の生活ぶりが自分の住む世界とあまりにかけ離れていすぎて現実感が薄かった。現在よりも比べ物にならないくらい同性の恋愛への偏見の酷さを考えると希望のある終わり方。 幸福感の描写がとても美しい。 「テレーズの中で幸福感が緑の蔓のように広がり、細い巻きひげを伸ばして全身に花を咲かせていく。…」 読みながら主人公の恍惚に私も一緒になって陶酔した。
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クリスマスも近づいて参りましたので、「キャロル」を。 実は映画化された当時に購入したまま、積読となっておりました。 イヤミス(嫌なミステリー:読後感が良くない)の祖と呼ばれるパトリシア・ハイスミスの作品ですが、今作は異例の恋愛小説だそうで。 主題としてはNYに住む女性二人の恋愛...
クリスマスも近づいて参りましたので、「キャロル」を。 実は映画化された当時に購入したまま、積読となっておりました。 イヤミス(嫌なミステリー:読後感が良くない)の祖と呼ばれるパトリシア・ハイスミスの作品ですが、今作は異例の恋愛小説だそうで。 主題としてはNYに住む女性二人の恋愛模様と紆余曲折……と言ったところでしょうか。 この作品の時代背景と詳しい経緯については「あとがき」や他の方のレビューにもある通りなので割愛させていただくこととして、途中で中だるみというか、読んでいてつまらないなと(個人的にですが)思える箇所を少しずつ挟みながらも、やはり最初とクライマックスから最後までは一気に引き込まれる文章の熱量を感じました。 私自身はあとがきを読むまで知らなかったのですが、キャロルとテレーズの邂逅はハイスミス女史の実体験が元になっていたんですね。そりゃ、リアルで熱量があるわけだ、と納得しました。 世間的には同性愛者というのは「異常」であるとみなされていた世界で、キャロルは同性を愛することによって手ひどい仕打ちに遭うことになってしまいます。 それこそが、この時代の「歪み」であり、現代と比べてみても分かりやすい「差別」なのですが、そのことに当時の人たちが気づくわけもなく。「自分が正義だ、お前は間違ってる」となったときの(特にアメリカの)人の恐ろしさといったらありませんね。相手を軽蔑するだけでは飽き足らず、罪人ではない人間から何もかもを取り上げてしまおうとする、そんな恐ろしさがあります。 (そこの辺り、ハイスミス女史は巧みに描いています) 多様性と多数決は別次元で行われるもの、とはいえ実際の社会では「皆がこうなのになぜお前は違うんだ。それは異常だ」という考え方がまだまだ残っているなぁと感じずにはいられませんでした。 実際、同性愛は「(当人が)選べるもの」と認知されていたり、「何らかの外的圧力によって異性を愛せなくなった人間の逃げ」とされることもあるようです。 私自身は「他人を愛すること」から学ばねばならないのでそう詳しいことは分かりませんし、分かった気で話しちゃいけないのだと思いますが、「この人(相手)を好きという感情には理由なんてない……それが同性だったら違うのか?」というのが命題でしょう。 当時珍しかった(とされている)「お話の終わり方」にも注目の一冊です。
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※このレビューにはネタバレを含みます
レズビアンへの差別や社会風刺が、とかよりもまず、単純に恋愛ものとしてとても刺激的。 物語は終始テレーズ視点で進むが、上品で魅力的で思わせぶりなキャロルの態度にはらはらさせられる。 そして、そんなキャロルがついに囁く「私の天使」という言葉! テレーズが夢中になってしまうのもわけはない人物だと思わせられる。 運命というものは存在するし、どこにも転がってる。ただ、何もかもを捨ててそれに飛び込む勇気が普通の人には無いんだと思う。でもこの「キャロル」のテレーズは、最後はきっとうまく飛び込めた。
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恋愛小説 デパート働くテレーズはお客のキャロルに一目で恋に落ちる。夫と子供がいるキャロルとの交際はテレーズに多くの葛藤をもたらす。一度はキャロルとの別離を決意し、仕事を選ぶテレーズだが、やはりキャロルのもとへ。 先に映画を見たのだけど、セリフが少なく表情や背景で心情を折っていか...
恋愛小説 デパート働くテレーズはお客のキャロルに一目で恋に落ちる。夫と子供がいるキャロルとの交際はテレーズに多くの葛藤をもたらす。一度はキャロルとの別離を決意し、仕事を選ぶテレーズだが、やはりキャロルのもとへ。 先に映画を見たのだけど、セリフが少なく表情や背景で心情を折っていかなければならないので、彼女たちの気持ちがわからなかった。 小説はテレーズの視点で描かれる。人を恋い慕い欲する心情が丁寧に書かれている。 アメリカを車で旅するって疲れそう。
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人並みに嫉妬したり、恋に思い悩むテレーズが愛おしくなった。 キャロルに対する評価が定まるのは、中盤以降。実はテレーズへの愛に溢れていて、そして人間臭いところがたまらない。 愛すべき二人が車でアメリカ横断旅行(?)に出るって、すごく映画的と言うか、おしゃれだなと思ってしまった。 ...
人並みに嫉妬したり、恋に思い悩むテレーズが愛おしくなった。 キャロルに対する評価が定まるのは、中盤以降。実はテレーズへの愛に溢れていて、そして人間臭いところがたまらない。 愛すべき二人が車でアメリカ横断旅行(?)に出るって、すごく映画的と言うか、おしゃれだなと思ってしまった。 単なる恋愛小説ではないのは、テレーズには男性のお相手がいて、キャロルには元夫と娘がいたことかもしれない。いわゆるLの世界的な「イケてるビアン達の都会ライフ」とは全く違うお話になっているw テレーズとキャロルの関係が監視されて、娘の親権争いに利用されるのは、ゲイとしては非常に苦しい気持ちになってしまった。 子どもの幸福が大人の勝手な都合と司法によって損なわれるのは、同じLGBTというくくりだと「チョコレートドーナツ」という映画を思い出した。
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とんでもなくよかった。控えめに言って最高。 映画を見て、次の日に原作を購入した。 映画では描かれていなかったテレーズの想いが書かれていてすごく共感した、キャロルと出会った時のテレーズと同い年の私。 最後キャロルの同棲の話を断った後のパーティで、美人な女優さんに好意を抱かれてい...
とんでもなくよかった。控えめに言って最高。 映画を見て、次の日に原作を購入した。 映画では描かれていなかったテレーズの想いが書かれていてすごく共感した、キャロルと出会った時のテレーズと同い年の私。 最後キャロルの同棲の話を断った後のパーティで、美人な女優さんに好意を抱かれているのを見てやっぱりテレーズは相当美人なんだなと思ったし、映画のキャストさんであるルーニーマーラで当てはめると、そりゃあモテる…と思った。テンション上がる。今でさえそうなんだから昔はかなりLGBTへの差別がキツくて、相当辛かっただろうし葛藤しただろうなと思う。今でさえ、同性で付き合うってなった時に間違ってるとか言わせてしまうのだから。それなのに、自分達の気持ちをしっかりと持って人を愛するなんてすごいなと思うし感動しかない。 性別が違うから愛せる、それが正しいんだという考えから人が人として人を愛するという考えに代わってほしいなと思う。
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パトリシアハイスミスの作品にはイヤミスというか丑の刻参りというか黒い憎悪を想像しがちですが、これは普通に恋愛物でした。舞台美術の仕事に進もうとしてる若い女性と、魅力的な主婦を巡る話。この二人が自分の気持ちに素直で後ろめたさを感じていない。 さすがに会話などは洗練されてる。 「古...
パトリシアハイスミスの作品にはイヤミスというか丑の刻参りというか黒い憎悪を想像しがちですが、これは普通に恋愛物でした。舞台美術の仕事に進もうとしてる若い女性と、魅力的な主婦を巡る話。この二人が自分の気持ちに素直で後ろめたさを感じていない。 さすがに会話などは洗練されてる。 「古典になる条件って何だと思う?「時代を超越した業を描く物だと思います」「人は得てして別の方法で探した方がずっと見つけやすい物をセックスを通じて見つけようとする」 かなり若い頃に書かれた作品のようだが、さすが巨匠になる人は違う。
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映画を見てから読んだので配役は頭の中で決まってしまっていたが、これ以上ないくらいぴったりなキャスティングなので問題なかった。 序文やあとがきによるとハイスミス作品はミステリーが多く『キャロル』はむしろ異色な作品だということだが、繊細で細かい描写からその片鱗は伺える。まだ未読なので...
映画を見てから読んだので配役は頭の中で決まってしまっていたが、これ以上ないくらいぴったりなキャスティングなので問題なかった。 序文やあとがきによるとハイスミス作品はミステリーが多く『キャロル』はむしろ異色な作品だということだが、繊細で細かい描写からその片鱗は伺える。まだ未読なので『見知らぬ乗客』など読んでみたいと思った。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
彼女は白黒の世界に生きていた 無味乾燥な毎日 婚約しているけど愛情のない関係 私はこの生活を 果たして自ら望んだのだろうか 彼女は日々自問自答する やりたいことがある 夢がある でもそれは遥かに遠い 現実の先に夢が繋がっているとは考えられない そんな日常で 彼女は色づいた一人の女性を見つけた 白黒の世界に色彩が訪れ 光と影が舞い降りる 喜びの分だけ悲しみを知った 温もりの分だけ寂しさを知った 彼女にとって その人は女神のように 映ったかもしれない しかしその女神は 彼女のことは地上におりてきた天使だと言った
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一月。 一月にはすべてがある。一月は頑丈な扉のような個である。その寒さは灰色のカプセルのなかに街のすべてを封印している。 一月は一瞬一瞬であり、一年の始まり。一月は無数の瞬間となって降り注ぎ、テレーズはそれらすべての瞬間を凍りつかせて記憶に閉じ込めた。(p.212) 3日位か...
一月。 一月にはすべてがある。一月は頑丈な扉のような個である。その寒さは灰色のカプセルのなかに街のすべてを封印している。 一月は一瞬一瞬であり、一年の始まり。一月は無数の瞬間となって降り注ぎ、テレーズはそれらすべての瞬間を凍りつかせて記憶に閉じ込めた。(p.212) 3日位かけて読了。 徹夜してでも読んでしまいたいと思ったくらい、引き込まれたし、テンポの良い、疾走感のある文書だった。 だけど、読んでいる最中、何度も何度も息が止まりそうになる時があったため、チビチビ味わう。(持病とか具合が悪いとかじゃない) 息を呑む瞬間は、 キャロルの魅力やテレーズの真面目さ、 美しさを感じた時に訪れた。 静かな物語から繰り出される美しさの攻撃に、感情はガクガク揺れた。 このままだと心臓が持たない。 本を閉じて、テレーズと一緒になって、そっと溜息をつく。また読み進める。 パトリシア・ハイスミス只者じゃない。 あとがきを読んで知ったが、彼女はイヤミス(イヤーなミステリー)の書き手らしい。 優れた心理描写があったからこその、感情がガクガクだったのかと納得! 他の作品も読みたくなった(o^^o)
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