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コドモノセカイ の商品レビュー

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36件のお客様レビュー

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2016/02/26

子供の頃、やたらと夢をみたような気がする。やたらとぼんやりしていたし、意味の解らないことだらけの世の中を見てはどうして大人は単純な善し悪しが解らないんだろう、としょっちゅう思っていた気もする。ちょっとませた子のひねくれた問いの立て方が好きじゃなかったし、謎なぞや駄洒落の意味もほん...

子供の頃、やたらと夢をみたような気がする。やたらとぼんやりしていたし、意味の解らないことだらけの世の中を見てはどうして大人は単純な善し悪しが解らないんだろう、としょっちゅう思っていた気もする。ちょっとませた子のひねくれた問いの立て方が好きじゃなかったし、謎なぞや駄洒落の意味もほんとうはよく解らなかったけど知らないと言うのが嫌だったから借りた謎なぞの本を丸々覚えたりしたし。そすりゃあ、少しはそういう(ずるい)やり方なのね、と理解出来ることもあったけど、1足す1は2、というやり方の方が全然カッコいいと思っていたし、理由もなく年号を覚えたり、解りきったいい子の話を聞かされる時間とかやっぱり苦手だったし、そういうものをまあなんとなくやり過ごせる子が不思議だったし。今よりずっと世の中が面倒くさいものだと感じつつ子供だから世の中に頼って毎日生きなきゃならないし、子供にとっての子供の情景ってどっかの作曲家が作ったようなマシュマロみたいなものでは全然なかったなと思うのだ。 もちろん、世の中の本当に面倒くさいことなんてちっとも分かってなかったから、そりゃあ所詮は子供の理屈だろうけど、子供にとってはそれが知る限りの全ての世界で、それがこんなにひどいものなのかと思ってしまうということはなんて絶望的なことなんだってことは薄々気付いていたし。それを忘れていられるためにゲームしたりテレビを観たりしていたんだなって後知恵で考えたりするけど、今でもはっきりと覚えているのは新しい学年が始まる度に、あとこれと同じような一日を何日過ごすのかなって考えていたこと。もっともその感覚は今でも時々頭の片隅を過ることもあるけれど。つまりは、子供の世界は生きにくいということ。それを久々に思い出した。 もっとも大人になったからと言ってなにもかにもが解決した訳ではないというのも当たり前のことで、ただ大人は大人の妄想の中で生きていけるけど子供は子供にとって都合のいい妄想の中で生きていくことは許されていないという違いがあるだけ。あるいは大人は大人の妄想をコントロールすることができるけれど子供は子供の妄想の中で溺れてしまうということかも。大人が大人でいられるためには我慢が必要ということだね。あるいは我慢を我慢と感じないようになるということか。とは言え今でも世の中が生きにくいと思ってしまうということは、全然成長していないということの証明なんだろうね。

Posted byブクログ

2015/12/31

十二篇のアンソロジー。 岸本佐知子編訳、なんと個性的な。 心の蓋を少し開け、風を通すと、懐かしみで胸が一杯になる。

Posted byブクログ

2022/06/09

岸本佐知子編訳による、「子ども」をテーマにした短篇小説のアンソロジー。十一人の作家による十二篇の作品が集められている。どれも、独特の味があり、読書にかかる時間の割りには読後の余韻が長く残る。編訳者の好みによるのだろうが、通常「子ども」と聞いたときに思い浮かべる世間一般的な、愛くる...

岸本佐知子編訳による、「子ども」をテーマにした短篇小説のアンソロジー。十一人の作家による十二篇の作品が集められている。どれも、独特の味があり、読書にかかる時間の割りには読後の余韻が長く残る。編訳者の好みによるのだろうが、通常「子ども」と聞いたときに思い浮かべる世間一般的な、愛くるしく、天真爛漫な、誰もが頬っぺたにキスしたくなるような、そんな子どもは登場しない。人によって、好きな作品が分かれるだろうから、個人的な感想になるが、心に残った作品をいくつか紹介しておこう。 まずは、エトガル・ケシット作『ブタを割る』。バート・シンプソン人形が欲しいとせがむ「ぼく」に、父さんは陶器のブタの貯金箱を渡し、コインを貯めてそれで買えという。「ぼく」は、ブタに名前をつけ、友達のように話しかけ、日を過ごすのだった。やがて、やがてその日がやってくる。ブタを割って、人形を買え、という父さんに一日の猶予をもらった「ぼく」がしたこととは。遠い日々を思い出し、鼻の奥のほうがつんとなった。 同じ作家からもう一篇。日本にも原爆記念館などには語り部と男ばれる老人がいて、忘れてはいけない悲惨な過去を語ってくれるが、主人公の少年はユダヤ人。ユダヤ記念館でナチスの蛮行を怒りをこめて語る老人から、ドイツ製品は「どんなに外側はきれいに見えても、中の部品や管のひとつひとつは、殺されたユダヤ人の骨と皮と肉でできているのだ」と聞かされる。ところが家に帰ると、旅行から帰ってきた両親の土産はアディダスのサッカーシューズだった。少年の感じる居心地の悪さが、それを履いてサッカーに興じるうちに変容を遂げる。イノセントな少年の揺れ動く心理を描いて秀逸。 悼尾を飾るエレン・クレイジャズ作「七人の司書の館」は、中篇といっていい長さで、短い作品が多いアンソロジーに喰い足りない思いを感じる読者にとって何よりのプレゼント。コミュニティ・センターとショッピングモールの傍にできた新しい図書館の開館の陰で閉館に追いやられた図書館の話。どこかの国にありそうな話だが、これはそんな生々しい話ではなく、タイトルから知れる通り、白雪姫のパスティーシュ。閉じられた図書館で暮らす七人の司書のところに、ある日バスケットが届く。中に入っていたのは延滞料の代わりの可愛らしい女の赤ちゃん。その子ディンジーは、映画『汚れなき悪戯』のように、七人の司書によって育てられる。司書たちは、成長したディンジーを自分たちの仲間にしたいと思うのだったが…。図書館がでてくる話は、どれも大好きなのだが、なかでもこれは、小人ならぬ七人の司書たちの個性の描き分けが上出来で、お気に入りの一篇になった。 アンソロジーのお楽しみは、これで終わるのでなく、ここから始まる新しい作家、作品との出会いがあることだろう。自分の好みは、少々感傷的であっても、後味のいい作品らしい。もっととんがったものがお好きな人にも喜んでもらえる作品も数多く揃っている。立ち読みでも読める程度の長さの作品がいくつもある。手にとって見る価値はあると思う。

Posted byブクログ

2015/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

子どもをテーマに書かれた11人の作家による12話からなる短編集。 リッキー・デュコーネイの「まじない」が一番好き。子どもの頃にありがちな自分ルールが懐かしくもあり、哀しくもある。 エレン・クレイジャズの「七人の司書の娘」も、ファンタジーだけど良かった。

Posted byブクログ

2015/11/08

11人の作家による、子どもが描かれた短編集。 子どもが主題というと、甘く懐かしい、輝かしき子ども時代を想像するかもしれないけれど、そこは岸本佐知子編訳。変で、どちらかというと辛くて、でも確かに子どもの時に感じていたようなことで満ちている。

Posted byブクログ

2015/10/31

『子供』をテーマにしたアンソロジー。編訳は岸本佐知子。 岸本佐知子編訳のアンソロジーは、講談社の『変愛小説集』や、角川書店の『居心地の悪い部屋』もそうだったが、ちょっと『変』な短編が多い。本作は『子供』がテーマだが、『変』レベルもかなり高かった。フィクションの中に登場する『子供』...

『子供』をテーマにしたアンソロジー。編訳は岸本佐知子。 岸本佐知子編訳のアンソロジーは、講談社の『変愛小説集』や、角川書店の『居心地の悪い部屋』もそうだったが、ちょっと『変』な短編が多い。本作は『子供』がテーマだが、『変』レベルもかなり高かった。フィクションの中に登場する『子供』にはある程度のパターンがあると思うのだが、そういう類型的な子供は、本作には登場しない。 何とも言えない読後感のアリ・スミス『子供』、ステイシー・レヴィーン『弟』の2作、ちょっと伊藤潤二の漫画のワンシーンを思わせるベン・ルーリー『トンネル』、小川洋子的な世界が広がるエレン・クレイジャズ『七人の司書の娘』が良かった。

Posted byブクログ