深夜百太郎 出口 の商品レビュー
100話ともそこまで長くないが,どれも不満を感じることなくしっかりと作られていてとて,とても楽しめました.
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100作品も舞城王太郎を味わえるというなんとも贅沢な短編集だった。 意味がわかると怖い話的なひねりはない。ホラー小説ではあまり見かけないような一風変わった落とし所のお話も多いが、どれも素直な語り口になっている。 100作品も読むとだんだん舞城王太郎のホラー小説観が見えてくるよう...
100作品も舞城王太郎を味わえるというなんとも贅沢な短編集だった。 意味がわかると怖い話的なひねりはない。ホラー小説ではあまり見かけないような一風変わった落とし所のお話も多いが、どれも素直な語り口になっている。 100作品も読むとだんだん舞城王太郎のホラー小説観が見えてくるような気もして、「あなたはあなたなのか?私は私なのか?」といった人間の同一性をテーマにした作品がとても多い。さらに、「ソレはあなたではなかったけれど、それでもあなたとの関係が不可逆に変化してしまう」という話が多い。また、「私は"私"ではなかったけれど感情は偽れない」といった話も多い。それはつまり、「人間と非人間の境界線は"想い"の前には揺らいでしまう」といったテーマとしてまとめることも出来るはずだ。そういった観点から見るとホラーという舞台であっても、いつもの舞城とブレない一貫した関心が潜んでいるようにも思われる。 ホラーとしてもしっかり怖いが、そういった作家性の強さもあり後半はどうしても似通った話が多くなってくる。したがって、「沢山のお話を通して、舞城のことをもっと知りたい!」という舞城のファン向けの短編集の側面もややあるかなと思う。
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幽霊や不可解な出来事は寓話的に読めるけど、人の悪意が加わった怪談は怖い。 次の瞬間、目の前の人が違う人格になっていたりするのかもね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
私はまず、死んだことを謝らなければ、と思い、それは最後の最後に言わなきゃいけない最も大事な台詞じゃないのだけれど、知ってるけれども、でも本当に言いたい言葉は恥ずかしくて言えなくて、それも申し訳なくて、つい、そんな言葉になる。 五十九太郎 駐車場の私の車 より 木の幹の目の前に立ち、葉に覆われて隠されている木の内側世界をそっと見上げると、そこには百匹以上のカラスが音もなく佇んでいる。 そしてそいつらが皆俺のことを見下ろしている。 六十一太郎 カラスの神 より 電気は……、僕は真っ暗じゃないと寝れない派なのだが、とりあえず今夜だけ試しにつけておく。 六十二太郎 空き部屋禁止 喋れるのか。 喋りかけてきたりするのか。 八十太郎 橋の下 より 入口に引き続き50話楽しく読了。こういう短編はこの作者の本領のようにも感じました。ときにひんやり、ときにくすりとさせる軽やかないつもの文体ながらも、しっかりホラーしています。吹き出した次の文章で生唾を飲ませる感じはなかなかできない。文章だけで笑わせたり怖がらせたりするのって、かなり高度な技術が必要な気がしますがどうなのでしょうか。 入口のときも思いましたが、福井サイドの、こういうありそうでなさそうな民俗史的なものにどこか惹かれる気持ちがあります。都会より絶対怖い。 五十九と百太郎はもろ『自由意志と決定論』的なテーマも入っていて面白かったです。『死』は時間を超越するという大前提。それがないと成立しない問題だと個人的には思っていて、舞城王太郎さんのSFとか読んでみたいなと思う今日この頃です。
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『入口』は手元にあるが、『出口』は図書館で借りたので先に読了。 やっぱり、私は舞城王太郎が描く世界が好きだと胸を張る。 本当に短いお話が50話。どれもこれも短い話に広がりがあり、 悲しみも怖さも愛もじわーっと心の深いところに 染みわたっていく感じが良い。 私にとって、これは手元に...
『入口』は手元にあるが、『出口』は図書館で借りたので先に読了。 やっぱり、私は舞城王太郎が描く世界が好きだと胸を張る。 本当に短いお話が50話。どれもこれも短い話に広がりがあり、 悲しみも怖さも愛もじわーっと心の深いところに 染みわたっていく感じが良い。 私にとって、これは手元に常においておくべき本だな。と。 ただのホラー短編集では無いなと。 愛する人を守るとか、家族を守るとか、こんな言葉にすると陳腐だけど 舞城王太郎の世界の底辺、根っこではないのかしら。 まあ、まだ2冊しか読んでいないけれど。
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軽妙な語り口と不条理具合、人が怖い系は少なめの「入口」を引き継ぎながら、入り口よりはやや明るい話が多かった印象。「友達案山子」が好み。
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上巻下巻通じて、不条理な絶望が蔓延している。 一太郎(一話目)と百太郎(百話目)の繋がりは、 一見、円環を為すようでいて、その実、どこにも着地しない。 せめて恐怖にも理由があれば読者は安心できるのに、 そう簡単に解放してはくれない。 世界は閉じず野放図に広がっていく。 しかしそ...
上巻下巻通じて、不条理な絶望が蔓延している。 一太郎(一話目)と百太郎(百話目)の繋がりは、 一見、円環を為すようでいて、その実、どこにも着地しない。 せめて恐怖にも理由があれば読者は安心できるのに、 そう簡単に解放してはくれない。 世界は閉じず野放図に広がっていく。 しかしそれはたとえば、九十太郎『友達案山子』や九十一太郎『迷子の守護者』において (いつもの舞城よりは少し控えめに) 歌い上げられる人間存在の美しさも同様で、 つまり不条理さにも、美しさにも終わりはなく、 人は生きている限り、それに付き合うしかないということなのかもしれない。 出口の先にはすぐに別の入り口がある。 そしてそれでいいと、 きっとそういうことなのだろうと思う。 百もの恐怖小説の短々編が続くのに、 妙に静かな読後感が漂うような不思議な作品。
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『負けないで、だ。 負けないで。頑張って。 私がついているから、泣かないで。頑張って。』 『私の彼が死んだのだ、今。それを知らせる私の声を聴いて欲しい。彼がどんなに美しい男の子だったか、私には教える方法がないけれど、この声の大きさが私の愛だ。』 『私は私の母乳に意識と気持ちと...
『負けないで、だ。 負けないで。頑張って。 私がついているから、泣かないで。頑張って。』 『私の彼が死んだのだ、今。それを知らせる私の声を聴いて欲しい。彼がどんなに美しい男の子だったか、私には教える方法がないけれど、この声の大きさが私の愛だ。』 『私は私の母乳に意識と気持ちと全身全霊を込める。私という暗い気持ちを抱えた、駄目なところも嫌なところもある人間の、その全ての邪な部分が白い母乳を黒く染めますように。そしてその乳を吸う無垢な赤ん坊がぶち壊れて、他人の乳を奪うクソ母親に報いがありすよう。 母親の愛情と同じようにわ恨みだって乳を伝うはずだ。』 『俺は阿呆だが、阿呆さのおかげで救われることもある。』 『人は優しく、困難には救いがあり、綺麗な女の人たちは親切で、世界は温かい。』
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五十一太郎、五十九太郎、六十一太郎、六十七太郎、七十太郎、七十三太郎、七十四太郎、八十二太郎が面白い。宮部氏のお勧めとかぶったり、ずれていたり。それもまた面白い。
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舞城版百物語、その下巻。面白かった。優しさも憎しみもないまぜの感情が描かれていて、そういういろんな感情の境界のなさみたいなものを、分けてとらえるんじゃなくて、境界のないままの姿で受け容れるような描写が好きだ。その部分もそうだし、あまり意識していなかったけれど、同時期に発売された「...
舞城版百物語、その下巻。面白かった。優しさも憎しみもないまぜの感情が描かれていて、そういういろんな感情の境界のなさみたいなものを、分けてとらえるんじゃなくて、境界のないままの姿で受け容れるような描写が好きだ。その部分もそうだし、あまり意識していなかったけれど、同時期に発売された「淵の王」と明らかにテーマ的な連関を意識して書かれているようなエピソードもあった。あと○○○○○も。それも読まないとだ。
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