晴れたらいいね の商品レビュー
[墨田区に予約中] 江東区図書館の「ぶっくなび(2019年3月)」にて紹介。 入れ替わり×タイムスリップという舞台設定の上でマニラでの日赤経験(目線)から戦争について書かれた本。 既に上記のコンセプトを知った上で読み始めた本だったので、さほど感銘を受けない、"よくあ...
[墨田区に予約中] 江東区図書館の「ぶっくなび(2019年3月)」にて紹介。 入れ替わり×タイムスリップという舞台設定の上でマニラでの日赤経験(目線)から戦争について書かれた本。 既に上記のコンセプトを知った上で読み始めた本だったので、さほど感銘を受けない、"よくある"内容の本だろうと思って読み始めた。あとはその入れ替わり時の話や文章と、元に戻るのかどうかの件で講評が決まるのだろうと。ちょうど早く読みたい事情もあり、軽く読み流せる内容なら飛ばし読みが可能だろうか、それとも途中でもういいや、、と短い時間で読むことを強く意識して開いたとはいえ、ともすれば読み切ることをあきらめても惜しくなく思える本だろうか、とも考えていたのに、読み始めてからは飛ばし読みをする気にもなれず、一気に約2.5Hで読み切ってしまった。 私の拙い文力や自覚に乏しい感覚では、読む前から内容が透けていてほぼ予想がついていたこの本の、何がどう良かったのかをはっきりと認識することが出来なかったが、私の胸を打ったのは、単に戦争に対する私個人の感情や、古き良き/悪き昭和に対する感慨がなかったとしても存在していると思う。 読み終わって、何とも言えない感想と、それを具現化できないもどかしさから、とりあえず巻末見返しの筆者紹介を読んでみた。すると、これまた何がどう、とも言えないが少し納得した気になった。さほど私と歳が違わないのに写真ではともすると年下にすら見える溌溂とした、白い衣服をまとった筆者近影が目に新鮮に映り、更に目をみはる異色の経歴。文学部卒業後、新聞社を経て海外大学に留学し、慈恵看護専門学校卒業とある。筆者は何を経験して、何を思い、どう決断してこの経歴を積んだのだろう。 そこで紹介された他の書籍も、看護学校を舞台にしていたり、産婦人科病院を舞台にしていたり、恐らく看護系を舞台にしつつ、女性の半生について描いた作品もあるという。更に別途巻末で紹介された数冊の書籍の概要を読んでみると、どれも何らかの"事件(出来事)"はあるのかもしれないが、主人公は特異な人ではなく、平凡な普通の人で、その普通の暮らしの中で突然直面し、そこで瑞々しく、"生きて"行く話のように思えた。悲しいことや寂しいこと、いたたまれないこともきっとあるんだろうし、今回の話のように多少非現実的な設定もあるんだろうけれど、どれも状況としては地に足がついた、すぐ隣で繰り広げられているだろう現実世界のあるシーンを、"女性"目線で綴り、体験させてくれる本。そんな感じだ。単に読み切った直後はこの筆者を好きになったとだけ自認して、ただそれがこの本だけに限ったことなのかどうかだけ気にしていたが、恐らくここまで類書の概説を読んでみれば流石に分かる。この方の綴る文章は恐らく私にとって心地よく、そして穏やかに自分に追体験をさせてくれる本なんだろう。半ば実体験や自分の気持ちと、現実的だけれど自分が出会っていない、出会わない現実と。ただ、読みだせば一気に読んでしまうかもしれないが、読み始めるまでには心構えをする少しのエネルギーが必要かも。さあ、次は何を試してみようか。久々に、読んでみたいと思う作家が増えた。 最後に1つ。 後でこの歌を調べてみよう。 ⇒ドリカムの晴れたらいいねだった。 漠然と何となくこの曲を思い出していたような気もするけど、実はこれまで歌詞をしっかりと知らなかったからメロディの分からない文章を読んでも分からなかったんだな。そして改めて聞いてみて、最後のあの核となる一文のフレーズをやっと耳に。やぱり作家は文(説明)が上手なだけでも、感情を理解できるだけでも、それを何かに例える術があるとないとでは人に届く際に違いが出ると思う。たまたまだったとしても、やっぱりこういう、"知っていること"をどれだけ効果的に結び付けられるかで、私たち読者への伝わり方は変わってくるんだろうな。 山へ行こう 次の日曜 昔みたいに 雨が降れば 川底に沈む橋越えて 胸まである 草分けて ぐんぐん進む背中を 追いかけていた 見失わないように 晴れたらいいね 晴れたらいいね 晴れたらいいね
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小学生(高学年)から中学生に向けて、戦争の悲惨さを伝えることができる作品だと思います。 「従軍看護婦」の視点から描かれている小説、という点も珍しいですし、現代の看護師が戦時中のマニラにタイムスリップし、平成の感性で戦場での治療行為にあたる、ということも、主人公が感じる率直な疑問も...
小学生(高学年)から中学生に向けて、戦争の悲惨さを伝えることができる作品だと思います。 「従軍看護婦」の視点から描かれている小説、という点も珍しいですし、現代の看護師が戦時中のマニラにタイムスリップし、平成の感性で戦場での治療行為にあたる、ということも、主人公が感じる率直な疑問も、YA作品としての読みやすさ・わかりやすさにつながっていると思います。 もちろん、フィクション作品ですから(読後感の良さも含めて)ラストシーンの描かれ方は納得できはするものの、もう少し「リアル」に描いても良かったのかな、とも思います。 救いのない、戦争という歴史を描いたにしては、すこし「キレイ」な終わらせ方すぎるかもしれません。
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時代は平成、東京の総合病院の看護師高橋紗穂は、病棟巡回中に地震に遭遇した折りタイムスリップ。そこは、戦時中の昭和20年のマニラの病院。従軍看護婦として壮絶な体験をする。医療品、医薬品、食料も不足する状況下、重篤な兵士が次々と送られてきて、その死とも向き合う。絶対に誰が起こしたかわ...
時代は平成、東京の総合病院の看護師高橋紗穂は、病棟巡回中に地震に遭遇した折りタイムスリップ。そこは、戦時中の昭和20年のマニラの病院。従軍看護婦として壮絶な体験をする。医療品、医薬品、食料も不足する状況下、重篤な兵士が次々と送られてきて、その死とも向き合う。絶対に誰が起こしたかわからない戦争なんかで死なない。日本に帰るんです。紗穂の望みと強い意志に感動した。そして、再びタイムスリップが起き平成に戻り、紗穂はサエの仏前に参る。遺品の写真と従軍手帳を手にした紗穂、ホロッとするものを感じた。
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サエさんが亡くなった後で、サエさんと紗穂がどのように入れ替わり交差していたか、などな疑問はいくつもあるが、概ね読んで良かったと思える作品であった。 特に、戦争の悲惨さは、まるで自分がそのさなかに放り込まれたかのような臨場感を持って体感できる。 怖かった。 ありふれた言葉になる...
サエさんが亡くなった後で、サエさんと紗穂がどのように入れ替わり交差していたか、などな疑問はいくつもあるが、概ね読んで良かったと思える作品であった。 特に、戦争の悲惨さは、まるで自分がそのさなかに放り込まれたかのような臨場感を持って体感できる。 怖かった。 ありふれた言葉になるが、自分は今の時代に生まれて幸せだ。
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太平洋戦争末期の南方戦線へタイムスリップしてしまった看護師の話です。 戦場に投げ込まれた非戦闘員である看護婦が、どのように日常を過ごし、死んでいく人々を見送り、いつ果てるとも分からない戦争を駆け抜けて行ったのか、息苦しくなる思いで読みました。 いつ戦争が終わるのか分かっている状態...
太平洋戦争末期の南方戦線へタイムスリップしてしまった看護師の話です。 戦場に投げ込まれた非戦闘員である看護婦が、どのように日常を過ごし、死んでいく人々を見送り、いつ果てるとも分からない戦争を駆け抜けて行ったのか、息苦しくなる思いで読みました。 いつ戦争が終わるのか分かっている状態で読んでいるので、早く終われーと思いながら読んでいましたが、当時の人々はこれがあと何年続くのか分からない状態だったんだから、なんともやりきれないです。 詳細に資料を読み込んで紙面に反映しているのでしょう、なんとも言えないやるせない気持ちになりました。普通の人々が政府の愚策で死地に追いやられて行った現実。これは本当に忘れてはならない歴史です。 主人公がもたらす明るさのようなものが、少しでも当時に有あったならば救いです。
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内容はよかったんだけど、そもそもタイムスリップとか、ありえない系の話は苦手。 現代の東京で地震が起き、患者のおばあさんと入れ替わり、戦時中のマニラでナースとして目を覚ます、という設定。 言葉遣いとか、これはないなぁという場面もいくつかあり、 フツーに、この時代を描けばよかった...
内容はよかったんだけど、そもそもタイムスリップとか、ありえない系の話は苦手。 現代の東京で地震が起き、患者のおばあさんと入れ替わり、戦時中のマニラでナースとして目を覚ます、という設定。 言葉遣いとか、これはないなぁという場面もいくつかあり、 フツーに、この時代を描けばよかったのでは?と思った。 ラストがよかっただけに残念。
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話の展開が、最初から読めたし、戦争の悲惨さを伝えようとしているが、緊迫感にかけた。 地震が起きて、患者の過去の記憶にタイムスリップ?患者が何を伝えたかったのか、わからない!
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現代の看護師が戦時中の従軍看護婦へタイムスリップするという物語。『晴れたらいいね』と前向きな歌を口ずさんでいるものの、実際は戦時中の凄惨な戦場と、隊員救出に捧げる看護婦の思い、過酷な現場を見た看護婦の心情など内容は重いものだと感じる。看護婦や戦場の隊員らの人間模様が映し出されてい...
現代の看護師が戦時中の従軍看護婦へタイムスリップするという物語。『晴れたらいいね』と前向きな歌を口ずさんでいるものの、実際は戦時中の凄惨な戦場と、隊員救出に捧げる看護婦の思い、過酷な現場を見た看護婦の心情など内容は重いものだと感じる。看護婦や戦場の隊員らの人間模様が映し出されていて、双方の辛い気持ちや戦争の凄まじさ、戦争は2度とあってはならない思いなどがひしひしと伝わるものであった。凄惨な戦場での救出劇から伝わる命の尊さに感動ものだった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今の日本人の平和ボケはなんぞ!と自分含めて叫びたくなる作品。生きたい、と願いながらも口には出せずに散っていった命の上にある私達なのに。過酷な戦場での看護。これも戦争を語る重要なファクター。このまま戦争のない世界を(実際にはあるけど)続けていけるように思えない昨今。賢い政治家さん達に何とか頑張ってもらわねば。過酷な戦禍を潜り抜けて長らえた命の尊さに最後は涙でした。
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現代の看護師がタイムスリップして戦時下のマニラに赴任する従軍看護婦の体に乗り移った。 その事実に戸惑いながら、戦争をその身体で体験していく紗穂。 戦場にいる人は皆お国のためにと言うが、現代を生きる紗穂には、どんなことをしても生き延びるという強い気持ち、命を大事にする気持ちが根付い...
現代の看護師がタイムスリップして戦時下のマニラに赴任する従軍看護婦の体に乗り移った。 その事実に戸惑いながら、戦争をその身体で体験していく紗穂。 戦場にいる人は皆お国のためにと言うが、現代を生きる紗穂には、どんなことをしても生き延びるという強い気持ち、命を大事にする気持ちが根付いている。 終戦間際に共に行軍することになった班員達にもその気持ちは通じ、生き延びるための彼女達の決死の日々が続くことになる。 タイムスリップと従軍看護婦?と思っていましたが、著者の思いの詰まった素晴らしい本でした。 2度と起こしてはいけない悲劇。 多くの人が読むべき本だと思いました。
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