意識はいつ生まれるのか の商品レビュー
分割脳に芽生える二つの意識、小脳よりも少ない細胞数で意識を生じさせている大脳の謎、それらの事実から導かれる結論に納得させられた。
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意識を説明する理論として、統合情報理論というものが提唱される。 「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある」というもので、これ自体は目新しいものではなく、前半はやや退屈。 後半はとたんに面白くなってくる。 この理論の一つ、重要な点は定量化を可能にしている点で、系の複雑さがΦ(ファイ)として測られる。Φの具体的な計算法は「難しすぎるから」ということで説明されていないが、経路の情報を含んだ組み合わせの數のようだ。なので、小脳のようにニューロンの数こそ多いが、小脳皮質間の連絡線維というものはなく、独立したモジュールが集まったような系では低くなる。また、モジュール間の連結が多ければいいというものではなく、全てのモジュールが同じように繋がった系では、結局はどのモジュールが興奮しても全てのモジュールにそれが伝播するだけなのでやはりΦは小さくなる。ある程度のランダムさをもった結合の系でΦは大きくなるようで、脳のように層化していたり半球にわかれている方が値が大きくなる。 もう一つは、実際に理論を確かめているところで、TMSによる刺激後の脳波をとり、意識がある場合はその棘波が脳全体に複雑な形で広がるのに対し、意識がない(睡眠、昏睡)の場合は同じ波形が広がっていくだけであることを確認している。これもΦの値が小さい系(睡眠・昏睡)では同じ波形が伝播するだけで、理論とよく合っている。 また、われわれがコンピューターに意識がないと考える根拠は、われわれ自身がそれを組み立てたから、ということにすぎない。その動作の秘密を知り尽くしているからだ、というのもナルホド、という感じ。やはり意識は何らかの創発性によって生み出されるもので、そのためにはよく分からない部分が残っていないとダメなんだろう
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「意識」とは何か。何が「意識」をつくるのか。「意識」と「無意識」の違いは何か。世界的な脳科学者が「意識」の正体を解き明かすサイエンス・ノンフィクション。 著者が提唱する「統合情報理論」によると、「意識」とは、主に大脳において、高度に専門化したニューロンが相互作用により無数の...
「意識」とは何か。何が「意識」をつくるのか。「意識」と「無意識」の違いは何か。世界的な脳科学者が「意識」の正体を解き明かすサイエンス・ノンフィクション。 著者が提唱する「統合情報理論」によると、「意識」とは、主に大脳において、高度に専門化したニューロンが相互作用により無数の選択肢を組み合わせたり排除したりして、最終的には統合された情報として認識することをいう。例えば暗闇にいる人は、「明るい」だけでなく、「赤い」「星空」「音」など、膨大な数の「闇ではないもの」を情報処理している。逆に小脳のニューロンは連携せず、単独で特定の処理のみを行う。これにより、例えば瞬きなどの習慣化された「無意識の行動」が可能となる。 200億個のニューロンによる「多様な相互作用と統合」の「奇跡的なバランス」がもたらす「選択肢の広さ」を「φ(ファイ)」という情報量の単位であらわし、この値が大きければ、たとえ「植物状態」で身体反応がない人であっても、「意識がある」可能性が高いことが実証されている。専門書ではなく、一般読者向けに平易に書かれており、読み物として純粋に楽しめる。何より、脳というシステムが、極めて優れた組織行動によって機能していることに驚かされる。知的好奇心が刺激される一冊。
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冒頭に「『意識とは何か』という哲学的な問いには答えない」とあるように、「意識」が発生するための必要条件について考察する本。なぜその条件が整うと「意識」が発生するのか、や「意識」が発生する過程といった内容については触れられないため、「意識」の持つ神秘性に興味を持ってこの本を手に取っ...
冒頭に「『意識とは何か』という哲学的な問いには答えない」とあるように、「意識」が発生するための必要条件について考察する本。なぜその条件が整うと「意識」が発生するのか、や「意識」が発生する過程といった内容については触れられないため、「意識」の持つ神秘性に興味を持ってこの本を手に取ったとすれば、肩すかしを食うかも知れない。 しかしこれまでは可視化できなかった「意識があるかないか」を外部から観察できるようにする手法は見事というほかなく、この方向で研究が進めば今回この本で触れられなかった上記の内容についてもいずれ明らかになるのではないか、という希望は充分に持てる内容だった。 著者の今後の著作にも注目していきたい。
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素人には難解な内容を『潜水服は蝶の夢を見る』での閉じ込め症候群や、ネーゲルの『コウモリであるとはどのようなことか』などを例にあげるなど、人文学的アプローチで著者は軽快に解説してくれている。訳の日本語は柔らかくて優しい。どうやら翻訳者はタブッキの研究者のようだ。
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統合情報理論と聞いてもピンとこないかもしれないけれど、人にあってコンピュータにはないと言われる「意識」について、わかりやすく解説している。 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 この本を読むと自分なりの答えが見つかるかも。
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医学的な臨床事例などから意識を考察し、数々の臨床における脳波の動きと情報理論を結びつけ、意識とは「多様性があって、統合のある」として考察を続けるも結論的には哲学なども引用し、やや曖昧な形で終わる。脳の謎が完全に解明されるのはまだまだ先のようです。
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