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黒い迷宮 の商品レビュー

4.1

37件のお客様レビュー

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2015/07/26

余りにもミステリ小説じみていて、現実の事件だったとは思えないほど。海外ジャーナリストならではの、日本では出てこない情報や視点、優れた筆力によってグイグイ読ませる。典型的なサイコパスの言動と、彼らの犯罪に対する警察の脆弱性。在日外国人への搾取と、筆者ですら踏み込めない闇。未だ解決ど...

余りにもミステリ小説じみていて、現実の事件だったとは思えないほど。海外ジャーナリストならではの、日本では出てこない情報や視点、優れた筆力によってグイグイ読ませる。典型的なサイコパスの言動と、彼らの犯罪に対する警察の脆弱性。在日外国人への搾取と、筆者ですら踏み込めない闇。未だ解決どころか改善も見えないこれらの問題に、読後感はずっしり重たい。

Posted byブクログ

2015/07/15

あのルーシー・ブラックマン事件。私は家族で並んで記者会見している図を覚えていて、父親が頑張っているのだなと。 その父親の、行動力が無ければわからなかった事実、警官があれだけ動かなかっただろうし、ブレア首相まで事件解決を日本に要請することも無かったのだろう。その類まれな行動力と、...

あのルーシー・ブラックマン事件。私は家族で並んで記者会見している図を覚えていて、父親が頑張っているのだなと。 その父親の、行動力が無ければわからなかった事実、警官があれだけ動かなかっただろうし、ブレア首相まで事件解決を日本に要請することも無かったのだろう。その類まれな行動力と、一方で、到底品行方正とは言えない日本での行動、犯人の男から多額の賠償額をもらい、クルーザーを買ってしまう非倫理的といえるようなことをしつつも、第2のルーシーを作らないためのNPOを成功させてもいる。えらい複雑な人格にくらくらとしてくること必定。 裁判結審まで10年以上かかっていたとは知らなかった。 関係者全ての状況がその間に変わり、それぞれが自立と再生の道を歩んでもいる。 犯人の性癖は恐ろしいもので、発覚していないレイプ・殺人があるとしか思えない。ただそれを産んだ日本社会にも一端の責任があるのだろう。

Posted byブクログ

2015/07/09

多義的な、なんと多義的な。 人間とか正義とか差別とか。 私の今知っているだけの世界の、banaliteの裏の複雑さよ。 そして織原の、過剰なbanaliteよ。

Posted byブクログ

2015/06/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

英国人女性ルーシー・ブラックマンが日本で殺された事件の顛末を巡るノンフィクション。ノンフィクションでありながらミステリーのような物語形式で語られる。自分自身あきれることだが、容疑者である織原の写真が出てくるまで、同じく英国人女性が千葉県市川市で殺された事件と混同していたくらい、この事件の事実を知らなかったので、本当に結末がわからないミステリーのように読むことができた。(イギリスでも、市川市の事件とルーシーの事件を混同している人が多いという記載がこの本の中にも出てくるのだが) 著者は「The Times」の東京支局長。2000年夏の事件なので15年も前になる。裁判自体も一審の結審まで6年かかっているが、著者がこの本をまとめるのにも10年以上を費やしている。それほど奇妙な事件であった、ということがこの本を読むとわかる。また、同時に著者の興味を強く引く特別な事件であったこともわかる。立場の違う人が絡み合い、いくつもの奇妙なサブストーリーが紡がれる。すでに離婚をしていたルーシーの父親と母親、家族、一緒に日本に来た友人、犯人と目される織原、多くの女性被害者、そしてルーシー自身。著者はイギリス人であるが、日本の習慣や風俗についての理解は正確だ。その情報が正確であるがゆえ、その言葉がまずは日本以外の読者に向けて発信されていることを意識すると、改めて普段は意識しない日本の特殊性ともいえる様相が浮き上がってくる。六本木という街や、クラブというシステム、そこで働くホステス。それらを日本人でない人に伝えるといった途端にそれがとても奇妙なものであるように思えてくる。また、織原が一代で莫大な資産を遺した在日韓国人の息子であったことも、彼の性癖や事件発覚後の奇異な行動にある種の色を落している。著者は、この事件を通してもっとも奇妙なこととして織原に中学高校時代を通して友人と呼べるものが皆無であったことを挙げている。彼の人生を通してあるべき親密な人間関係が存在した形跡がないというのだ。著者は残念なことに直接織原と話すことはできないままであった。もし、話す機会ができたとしたら、何が聞かれることになったのだろうか。 著者は、日本の裁判制度についても奇妙なものに連なるものとして記述しているように感じられる。起訴後の有罪率が99.85%にも上り、起訴された時点でほぼ犯人と同様に扱われることや、裁判官がそのキャリアで裁判官しか経験していないことなどの日本の裁判の課題について正確に把握し、批判している。出版後のインタビューの中で、事件が長期化した原因として一番大きな影響を与えたものは何かという一種誘導質問に対して、明確に「司法制度、裁判の仕組み」と答えている。 http://honz.jp/articles/-/41526 日本語版へのあとがきでも「警察改革が喫緊の課題」と主張している。重くとらえるべき人が、重くとらえるべき課題であろう。 織原の弁護士や探偵を使った法廷戦術や法廷外でのアピール、1億円をルーシーの父親に渡したこと、そして何よりルーシー殺害の件については無罪となったこと。それ以外の準強姦罪および準強姦致死罪により無期懲役刑となったこと。織原が逮捕された第五部以降が、この本の本題なのかもしれない。 ミステリー形式であっても事実であることを知っているので、読後などまったくさわやかな気分になれない。ただ、ストーリーとしても成立しているし、考えるべきことも多く与えてくれる本だと思う。

Posted byブクログ

2015/06/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺人事件。 犯人の情報。 犯人は韓国系日本人、金聖鐘(キム・ソンジョン)。 父親は日本に渡り、戦後のわずか10年で大阪の最も裕福な男になった。 駐車場・タクシー・パチンコとすべて「土地」が必要な商売ばかりで成功。 一家は星山という通名を使っていた。 学生時代には黒板に日本や日本人への怒りをあらわにした政治的なスローガンをよく書いていた。 目の一重を二重に手術したことを「交通事故にあって目を縫った」とウソをついていた。 有り余るカネで他の学生の比ではない生活をしていた。 昭和44年(1969年)から女性に睡眠薬を飲ませて強姦していた。ちなみにこの時は童貞だったので性交できなかった。 要するに30年間以上にわたり、連れ込んだ女性に睡眠薬を飲ませて、意識を失っている状態の彼女たちをレイプする行為を繰り返し続けていた本物の強姦魔。 ビデオによると女性が意識を取り戻しそうになったら、布に湿らせたクロロホルムを女性の鼻の先に差し出して、また意識を失わせた。そして何時間もレイプし続けた。 数えきれないほどのたくさんの偽名を使っていた。 70台分のプリペイド式携帯電話をまとめて購入したことがあった。 裁判ではルーシー・ブラックマンの準強姦致死罪では有罪にはできなかった。 しかしオーストラリア人女性カリタ・リッジウェイへの準強姦致死罪で有罪となった。 裁判中に自己破産。 ブラックマンの父親に1億円の「見舞金」を支払っている。出どころは不明。 リッジウェイ家にも同様に1億円。 無期懲役刑で現在、刑務所。 最後にルーシー・ブラックマンさんとカリタ・リッジウェイさんのご冥福をお祈りします。

Posted byブクログ

2015/06/14

作者の思想にちょっとカチンとくるけど、その他はまあまあ興味深く読んだ。ミネットウォルターズ絶賛みたいな煽りがあって、ミステリ好きだから読んだけど実際にあった事件をミステリ小説風に書くのは少し悪趣味に感じてしまった。海外では流行ってるのかな。

Posted byブクログ

2015/06/12

[大都会の沼地に、足を取られて]「六本木でホステスとして働く元英国航空の客室乗務員のイギリス人女性が、突如謎の失踪ーー」。世紀末を控えた日本でスキャンダラスに報じられたルーシー・ブラックマン事件の内幕と関係者の心の内を探ったノンフィクション作品。一次資料や関係者の資料を基にしなが...

[大都会の沼地に、足を取られて]「六本木でホステスとして働く元英国航空の客室乗務員のイギリス人女性が、突如謎の失踪ーー」。世紀末を控えた日本でスキャンダラスに報じられたルーシー・ブラックマン事件の内幕と関係者の心の内を探ったノンフィクション作品。一次資料や関係者の資料を基にしながら、事件に潜む数々の謎に迫った一冊です。著者は、「ザ・タイムズ」紙のアジア編集長・東京支局長を務めたリチャード・ロイド・パリー。訳者は、ときに涙しながら本書の翻訳作業を完成させたという濱野大道。原題は、『People Who Eat Darkness-The True Story of a Young Woman Who Vanished from the Streets of Tokyo – and the Evil That Swallowed Her Up』。 今年読んだ本の中でも間違いなくトップクラスに入ってくる一作。加害者の闇、被害者の闇、それぞれの家族や関係者の闇、そして東京の闇……。著者の筆によりずるずると音を立てて引きずり出される漆黒の数々に、ページを繰る手が止まりませんでした。この事件のことを聞いたことがないという方を含めてぜひ一読をオススメしたいです。 20年以上に及ぶ日本における滞在歴があったからこそ書けるであろう著者の日本社会を見つめる眼差しにも感銘を受けました。絶え間ない興味や深い親近感と同時に、一歩その社会からは足を引く絶妙な間の取り方を知ることができるだけでも、本書を購入する価値があるかと。そして何より、著者のたどり着く下記の結論(それはそこだけ切り取ると奇妙に無色透明になってしまうのですが)に胸震わされました。 〜彼女は決して軽率でも愚かでもなかった。ルーシーは--安全ではあるが複雑なこの社会で--きわめて運が悪かったのだ。〜 こういう作品に会うために数々の本を読んでるんですよね☆5つ

Posted byブクログ