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黒い迷宮 の商品レビュー

4.1

37件のお客様レビュー

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2015/11/29

ルーシー・ブラックマン事件のレポート。 単純な「在日の犯罪」では片づけられない闇の部分がこれほどあったことに驚かされた。 被害者家族の複雑な事情、理解が難しい父親の行動原理、日本警察の限界、そして在日の異常性。 安全な日本で凶悪犯に遭遇する不運さ、通常の犯罪取り締まりには有...

ルーシー・ブラックマン事件のレポート。 単純な「在日の犯罪」では片づけられない闇の部分がこれほどあったことに驚かされた。 被害者家族の複雑な事情、理解が難しい父親の行動原理、日本警察の限界、そして在日の異常性。 安全な日本で凶悪犯に遭遇する不運さ、通常の犯罪取り締まりには有能だが、凶悪犯には無力な日本警察、在日につきまとう出所不明な大金と恫喝、潜在的な差別。 ひとつひとつの題材を丹念に調査し、組み合わせた著者の分析力と文章力には脱帽する。 全体的には公正な立場で記述されているのだが、日本における在日への「差別」について、在日のねつ造がそのまま採用されていたのが瑕瑾。女性の権利について福島瑞穂に取材したのがハズレだったかも。

Posted byブクログ

2015/11/26

 2000年7月、東京・六本木のナイトクラブで働いていたイギリス人のルーシー・ブラックマンが行方不明となり、翌年2月に最悪の結末を迎えた。同年10月、別の複数の女性への準強制わいせつ容疑で逮捕された織原城二が容疑者として浮かび上がり、事件は収束に向かったが、織原は本事件では無罪と...

 2000年7月、東京・六本木のナイトクラブで働いていたイギリス人のルーシー・ブラックマンが行方不明となり、翌年2月に最悪の結末を迎えた。同年10月、別の複数の女性への準強制わいせつ容疑で逮捕された織原城二が容疑者として浮かび上がり、事件は収束に向かったが、織原は本事件では無罪となり、他の罪状により無期懲役刑が下された。  そんな中で、本事件の複雑さ、不明瞭さに惹かれて10余年にわたる取材を続け、本書を書き上げたのが、在日20年の「タイムズ」の記者である著者だ。本書は、事件そのものだけでなく、両親などの親族、友人、ジャーナリスト、そして警察官までを含めた膨大な人数の関係者からの証言で構成しており、ダイナミックな仕上がりとなっている。  なぜルーシーは日本で死ななければならなかったのか、そしてなぜ、織原は猟奇的な事件を起こし続けたのか。本書はそうした犯罪の背景をジャーナリスティクな手法で深堀りし、その結果、主にマスコミと警察とで描いたこの事件のストーリーに、まったく別の様相を描き出すことに成功している。  ルーシーをはじめとする被害者女性たちへのレクイエムが、本書のあらゆる行間から聞こえてくる。

Posted byブクログ

2015/11/16

この事件のことは憶えている。犯人が捕まった後に聞こえてきた事件のおぞましさ。悪魔の所業に吐き気がしたが、何となく自分には関わりのない別世界の事と考えていたような気がする。 でも、本当にそうだったのか?この本を読むと 今もなお残る謎、ある意味平凡な人間が陥ってしまった闇の世界の存在...

この事件のことは憶えている。犯人が捕まった後に聞こえてきた事件のおぞましさ。悪魔の所業に吐き気がしたが、何となく自分には関わりのない別世界の事と考えていたような気がする。 でも、本当にそうだったのか?この本を読むと 今もなお残る謎、ある意味平凡な人間が陥ってしまった闇の世界の存在にただ戦慄する。 あとがきにもあるように、イギリス人記者の丹念な取材、構成力による読み応えのあるノンフィクション。まさに「事実は小説より奇なり」日本語訳も素晴らしい。

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2015/11/05

 これに星5を付けることに、心理的な抵抗がある。  英国から日本に来た若い女性が行方不明になり、家族がやってきて探してくれるように訴える。  やがて捜査が進み、女性は遺体で発見される。  この、実際に起きた事件が特異なのは、家族が、事件解決に向けて戦略的な動きを見せた、というこ...

 これに星5を付けることに、心理的な抵抗がある。  英国から日本に来た若い女性が行方不明になり、家族がやってきて探してくれるように訴える。  やがて捜査が進み、女性は遺体で発見される。  この、実際に起きた事件が特異なのは、家族が、事件解決に向けて戦略的な動きを見せた、ということのように思える。よくテレビや報道で見るのは、被害者の家族は、うなだれ悲しみ、涙を流しながら訴える姿である。しかし、被害者の父親は、日本の警察の捜査状況に不安を感じ、どうやったらメディアがこの事件を取り上げるかを計算し、行動した。  だからこそ、この事件は大きく取り上げられ、当時のイギリスのブレア首相から日本に申し入れが行われ、日本の警察も捜査に本腰を入れ、その結果解決したように思う。  けれど。  死んだ人は帰ってこないのだ。  このノンフィクションは、事件がなぜ起きたのか、犯人はどうしてこのような事件を起こしたのか、を主軸としていない。今生きている家族らが事件とどのように向き合ったのかを丁寧に描いている。  ホントに小説かと言う位のドラマティックさだ。  ……それを、作品として楽しむ自分が居て、それは、いいことなのか、すごく迷いがある。  著者の視点の明快さと優しさがあるから救われた本。

Posted byブクログ

2015/10/20

事件ノンフィクションには、しばしば下世話なのぞき見趣味を刺激するものがあって、読んでる自分が嫌になってくることもしばしばだが、これは違っていた。被害者と加害者の双方、本人はもちろん家族や関係者のプライバシーにかなり踏み込んでいるけれど、興味本位に暴き立てる感じがなく、こういうのっ...

事件ノンフィクションには、しばしば下世話なのぞき見趣味を刺激するものがあって、読んでる自分が嫌になってくることもしばしばだが、これは違っていた。被害者と加害者の双方、本人はもちろん家族や関係者のプライバシーにかなり踏み込んでいるけれど、興味本位に暴き立てる感じがなく、こういうのって非常に珍しいと思う。 著者は、英国「ザ・タイムズ」紙アジア編集長および東京支局長で、滞日20年だそうだ。さすがに日本のことをよく知っているなあと思わされる。繰り返し言及されている、日本の「水商売」のありようとか、警察の捜査や司法制度についての疑問・批判には、若干西欧中心的な感じがあるものの、なるほど「外」からはそう見えるのかと納得するところもある。事件について、「特異な犯人の冷酷な犯罪」という側面にとどまらず、日本社会の一面をあぶり出していく書き方になっていて、そこが優れていると思った。 これはかなり騒がれた事件だったと思うが、詳しいことは知らなかったので、まずそのドラマティックな展開に驚かされた。犯罪小説そこのけ。でも、ここに登場する人たちは誰一人型どおりではない。特に被害者の父親が、「期待される被害者遺族像」からかけ離れていて、そういえば当時もバッシングの対象となっていた記憶がある。このティム・ブラックマンがもっとも印象的だが、どの人にも、どの家族にも、傍目には窺い知ることのできないそれぞれの「生」がある。多くの人に知られるはずもなかったその姿が、非道な犯罪によってさらけ出されてしまう。二重の恐ろしさを感じた。

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2015/10/19

ひとつの事件から日本社会の矛盾点をこんなにもつまびらかにできるとは。調査報道にはまだまだ可能性が死ぬほどある。

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2015/08/30

性交渉を持った女性2百名余を記録しているというのも異常ですね。頭脳がずば抜けて良く、大金持ちで、身内を介した人脈を持っているにも関わらず、それらを自分の異常性欲の処理や保身に使ってしまった人生です。ルーシーのケースは残念ですが、本件を契機に露見した犯罪で無期懲役。手強い相手や周辺...

性交渉を持った女性2百名余を記録しているというのも異常ですね。頭脳がずば抜けて良く、大金持ちで、身内を介した人脈を持っているにも関わらず、それらを自分の異常性欲の処理や保身に使ってしまった人生です。ルーシーのケースは残念ですが、本件を契機に露見した犯罪で無期懲役。手強い相手や周辺の取材を尽くし、人生模様をあぶり出す筆者のタフな記者魂に感心しました。一方、在日だと扱いをオブラートに包む日本のマスコミは感心できませんね。

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2015/08/25

父親が何回も記者会見をしていた事件としか記憶していなかったし、周りの人は事件を覚えてもいなかった。風化って怖い。 イギリスの新聞の東京支局長が海外の読者に向けて、日本の水商売や日本人男性の心理などを分かりやすく解説していて、日本人の私でもなるほどと感じた。 被害者の家族が詐欺に引...

父親が何回も記者会見をしていた事件としか記憶していなかったし、周りの人は事件を覚えてもいなかった。風化って怖い。 イギリスの新聞の東京支局長が海外の読者に向けて、日本の水商売や日本人男性の心理などを分かりやすく解説していて、日本人の私でもなるほどと感じた。 被害者の家族が詐欺に引っかかっても、それすら救いのように感じるぐらいの心境というのは、想像を絶する。

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2015/08/07

ルーシー・ブラックマン事件のことは覚えているつもりだったが、来日した家族の活動とか、ブレア首相が森総理に協力要請したとか、知らないことが多かった。 本書は「タイムズ」記者による綿密かつ詳細なルポであり、ルーシーの家族関係、犯人である織原の深い謎、日本の警察と治安といった様々な点に...

ルーシー・ブラックマン事件のことは覚えているつもりだったが、来日した家族の活動とか、ブレア首相が森総理に協力要請したとか、知らないことが多かった。 本書は「タイムズ」記者による綿密かつ詳細なルポであり、ルーシーの家族関係、犯人である織原の深い謎、日本の警察と治安といった様々な点について切り込んでいる。特に、被害者やその家族との長期にわたる関係は、英語を母語とする英国人記者ならではという気がする。かといって、日本人相手の取材にも不備がないのがすごい。 この事件、あるいは織原の犯罪を、日本人男性による西洋人女性に対する蛮行といった人種的ステレオタイプな一見分かりやすい説明にしてしまうことなく、深く考察されているところが秀逸。

Posted byブクログ

2015/07/31

六本木のクラブで働いていたイギリス人女性が行方不明になり、三浦半島で遺体となって発見された事件。今となっては、この程度の記憶しかなく犯人の名前すらすぐに思い出せない。 犯人は在日韓国人の織原城二。在日韓国人であることを日本のマスコミが報じたかどうかも記憶が曖昧だ。 事件は、20...

六本木のクラブで働いていたイギリス人女性が行方不明になり、三浦半島で遺体となって発見された事件。今となっては、この程度の記憶しかなく犯人の名前すらすぐに思い出せない。 犯人は在日韓国人の織原城二。在日韓国人であることを日本のマスコミが報じたかどうかも記憶が曖昧だ。 事件は、2000年に起きているが、2007年に市橋達也がイギリス人英語教師リンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害した事件と混同しがちである。 本書は被害者となったルーシー・ブラックマンさんの親の生い立ちまで遡り、家族関係も綿密に取材している。犯人の織原城二についても詳細な取材をしていて日本のジャーナリズムとの違いを見せつけられた感がある。 日本の警察が組織を過剰に重視する特殊性にも言及している。日本の警察の検挙率が高いのは、警察が優秀なのではなく、日本国民のモラルが高いからとの指摘があった。確かに、前例のない犯罪に対して、日本の警察が右往左往している姿はよく見かけるし、国民のモラルが下がりつつある昨今は警察の威信も下がってきているように感じる。 日本がグローバル化するということは、警察、マスコミ、国民も国外からの視点による本書の様な考察に多く触れるということではないだろうか。 グローバルスタンダードを積極的に受け入れる必要があることを啓発してくれる良書である。

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