目の見えない人は世界をどう見ているのか の商品レビュー
私は強度の近視なので、自分がいつか視覚障害者になってしまうのではと心配になり、怖くなるときがある。老いればもっと悪く弱くなるだろう。 視覚障害の人たちの世界は他人事ではなく、切実な思いで読み始めた。 情報過多な今を生きることに対して、見えない世界は情報量がとても少ないと語ってい...
私は強度の近視なので、自分がいつか視覚障害者になってしまうのではと心配になり、怖くなるときがある。老いればもっと悪く弱くなるだろう。 視覚障害の人たちの世界は他人事ではなく、切実な思いで読み始めた。 情報過多な今を生きることに対して、見えない世界は情報量がとても少ないと語っている。 それは視覚刺激からの情報に踊らされない安らかさと、俯瞰的に物事を捉えられる、豊かな世界である。 美術館にて鑑賞をする試み ー 見えるひとにガイドしてもらう。そこにはお互い、新しい気付きが生じたり、さまざまな解釈ができるライブ感が楽しいという。 著者が提示する、障害の使い道をもっともっと開いていく必要がある、創造を繋げる、という言葉に、目が開かれる思いだった。
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筆者は美学や現代アートが専門なのだという。 そんな人が、なんだって視覚障害についての本を?と不思議だったのだが、そもそもの入り口が、視覚障害者の芸術鑑賞の事例に触れたことだったのだそうだ。 さて、そんな筆者だからこそ切り口はとても新鮮で、福祉の立場からはこうだ、こうしなければなら...
筆者は美学や現代アートが専門なのだという。 そんな人が、なんだって視覚障害についての本を?と不思議だったのだが、そもそもの入り口が、視覚障害者の芸術鑑賞の事例に触れたことだったのだそうだ。 さて、そんな筆者だからこそ切り口はとても新鮮で、福祉の立場からはこうだ、こうしなければならないといった固定的な物言いが少なく、障害者にかかわる様々な問題や福祉の知識があまりなくてもすんなりと読み理解することができる。 何より、見えないからこそ死角がない、見える情報に縛られない、という筆者の発言に、私の健常者の立場からしか物事を捉えていなかった傲慢な考え方が打ちのめされた。目から鱗の思いだ。 仕事がら視覚障害者と接することもあり、障害者と接する機会のない人ほどは必要以上の特別視などしていないつもりだし、こちらが助ける立場だ、などという余計な構えなど持っていないつもりでもいたが、全くもって私などまだまだだったのだ。 見えてないということは、視覚情報がないということだから、かえって余計な情報から自由でいられるということ。 視覚障害者は、広くて奥行きがある世界に、晴眼者よりずっと自由で柔軟で豊かで創造的な世界に生きている。むしろ晴眼であるからこその不自由、盲目もある。 障害があるからこそのプラスが確かに存在している。 だからこそ障害というものを触媒にして、健常者も障害者も、同じように世界を感じ、切り開いていく。 上下とか導き導かれとかの関係でなく、ともに刺激しあいながら創り上げていく、そんな社会こそが、健常者も障害者も等しく幸せに生きていける社会であり、目指すべき社会であるはずだ、と結ばれている。 視覚障害のみならず、身体でも精神でも老人介護でも、福祉に少しでも関わることがある人は必読! もちろんそうでない人も、こんなにも豊かな障害の世界を知らないなんて損でしょう。是非。
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見えない人の空間の捉え方は三次元であり、ある意味死角がない。見える人は見えている部分だけを認識するので二次元の捉え方をする。物音の反響や足の裏、お尻の下まですべての感覚で捉えている。お化粧しながら会話している声だと聞き分けることが出来る。なるほどと気付きが多い本でした。先日、夜に...
見えない人の空間の捉え方は三次元であり、ある意味死角がない。見える人は見えている部分だけを認識するので二次元の捉え方をする。物音の反響や足の裏、お尻の下まですべての感覚で捉えている。お化粧しながら会話している声だと聞き分けることが出来る。なるほどと気付きが多い本でした。先日、夜に濃霧が発生したとき、いつもよりぐっと視界が狭まり、足下しか見えない状態でした。急にふっと見えて来る自転車とすれ違い、普段は何も感じていませんでしたが、駅からの道は少しだけ下っており、遠くの信号機は思っていたより視線の下でぼんやり点灯していました。見たいように見るというより、見える・感じる範囲で予測する人間の能力を考える機会になりました。
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見えないという障害を欠落ととらえず、別の身体感覚をもった別の世界とみる。それは外国語の世界、異文化の世界を知ることと似ている。多様な身体感覚を知ることはこれからの福祉や高齢化や異文化共生の社会の礎となる体験であり、具体的な「そちらの世界」を知ることは知的におもしろく、読みすすむう...
見えないという障害を欠落ととらえず、別の身体感覚をもった別の世界とみる。それは外国語の世界、異文化の世界を知ることと似ている。多様な身体感覚を知ることはこれからの福祉や高齢化や異文化共生の社会の礎となる体験であり、具体的な「そちらの世界」を知ることは知的におもしろく、読みすすむうちに、目の見えない人だけでなく、ほかのいろいろな違った世界をのぞいてみたくなる。 ブラインドサッカーや「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は聞いたことがあったが、美術作品をともにみる「ソーシャル・ビュー」ははじめて知り、興味深い試みだと思った。
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目が見えていない人は視点がない だから、表裏、中と外が等価になる 当たり前に思ってる器官と感覚の組み合わせは実はそうでないかもしれない 目で聞いて鼻で食べて、、。 自立とは依存先を増やすことである
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視覚に支配されたわたしたちの認知の特徴に気づかされる。 器の内側を表面ととらえるというエピソードが最も印象的だった。 指が届かないほど狭い隙間などは、視覚を使わない人たちの死角になりうるのだろうか。 特にソーシャルビューの話題では、視覚障害に留まらず、一般的なミュージアム初心者に...
視覚に支配されたわたしたちの認知の特徴に気づかされる。 器の内側を表面ととらえるというエピソードが最も印象的だった。 指が届かないほど狭い隙間などは、視覚を使わない人たちの死角になりうるのだろうか。 特にソーシャルビューの話題では、視覚障害に留まらず、一般的なミュージアム初心者に勧めたい鑑賞のヒントともなった。
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自分の中の立ち位置を変えるのにもってこいの著書であった。 目でとらえた世界が全てだと思い込んでいる。 耳でとらえた世界や手でとらえた世界があってもよい。 指先の感覚がすごくますと言ったことではない。あくまでも指でとらえた感覚を、理解しようと日々しているだけ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
まずタイトルが目を惹いた。 五感のなかでも、失うことが想像もできないのが視覚だと思う。どんな障害でも健常者には想像もできない苦労があることはもちろんのことだが、視覚が奪われた世界というのは、もう一種の恐怖さえ感じるほど、私たちの日常生活は視覚情報に強く依存している。 本書はとても分かりやすい説明でエピソードを紹介しているので、新聞記事のコラムを読む感覚でサラッと読めた。 欲を言えば、もっと詳しく知りたいと思ったけれど、それはこの本が広まれば生まれると思うのでそれに期待したい。 オリバー・サックス先生が好きな人は多少物足りなさは感じると思うが、好みのトピックなはず。 以下、へぇと感じたところ。 ・見えない人は「視覚」がないので「死角」もない (そもそも背後という感覚がないので、前後ろもない。) ・足の裏をサーチライトのようにしてその場を把握している (だから地形の高低差にも敏感で、地名(例:大岡山)で丘の上にあると納得するが、視覚情報に頼っている我々は場所を点と点で結ぶ線として認識しがちである) 個人的には最近折りたたみ自転車を使うようになって、地形の感覚というのが、びっくりするほど変わった。規模としては小さいながらも、生活圏は自分のリアルな「世界」を形成しているのだから、そこへの土地勘が変われば自分の「世界観」もじわじわと更新されそうな気配を感じていて、本書のエピソードを読んで、そのあたりが腑に落ちた気がする。 ・目の見えない人の世界は3Dなので、富士山も立体的。見える人は2Dで把握している ・メモをとるなどの外部記憶に制限があるため、たくさんの状況の変化を感じ取ろうと「風がこちらから強く吹いているから向かいは道路」などと周囲の環境を感じ取っている ・著者は目の見えない人とコミュニケーションするときは、見える人と接するときとキャラクターが変わる(おしゃべりになる) 異文化コミュニケーションと似ているなと感じた。言葉は人格の一つの要素だと思うので、私自身も日本語より英語、英語よりスペイン語でコミュニケーションするほうがよりオープンになる印象がある。だから目の見えない世界という「異文化」と捉えることもできるんじゃないかと。 ・目の見えない人の美術鑑賞、ソーシャルビューという方法 (見える人複数人と見えない人で作品を前に感想を言い合う。印象派の絵で「草原です」と最初に言ったのが少ししたら「あ、湖です」と変わった話はとても好い例) 「見えて」いても「見えて」いない私たち。そのことに光を当てて見せてくれる本ではないか。
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タイトルにあるような話題はほとんどなく、あってもどこかで見聞きしたような内容。 4章が著者の専門分野なので読んでいて楽しかったけど、他の章はそこまで書けていない印象。 もっと範囲を絞ってもらったほうがよかったと思う。 もしくは若者向けとして、タイトル、装幀を替えれば現状でもいける...
タイトルにあるような話題はほとんどなく、あってもどこかで見聞きしたような内容。 4章が著者の専門分野なので読んでいて楽しかったけど、他の章はそこまで書けていない印象。 もっと範囲を絞ってもらったほうがよかったと思う。 もしくは若者向けとして、タイトル、装幀を替えれば現状でもいけるかな。
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視覚障害者の実態(もちろん全てでないが)が記載されており、非常に興味深かった。 健常者とは違う障害者の世界があり、そこには芸術もユーモアもあり、健常者だから幸せとか、障害者だから不幸だという固定観念を良い意味で崩された。
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