さいごの色街飛田 の商品レビュー
もはや歴史になりつつある赤線(青線)地帯に興味を持ち手に取ったが、飛田とその周辺を紐解くのと同じくらい著者の苦労が描かれていて若干期待はずれに終わった。飛田という特殊な地域を描くにはその独特さを取材の経緯で表現するというのは分かるが、それ故か単純に読了時の満足度の低さがあった。男...
もはや歴史になりつつある赤線(青線)地帯に興味を持ち手に取ったが、飛田とその周辺を紐解くのと同じくらい著者の苦労が描かれていて若干期待はずれに終わった。飛田という特殊な地域を描くにはその独特さを取材の経緯で表現するというのは分かるが、それ故か単純に読了時の満足度の低さがあった。男女の目線の違いもあるかもしれない。
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数年前、わたくしの仲間数人が何を考へたか「飛田ツアー」を企画いたしました。わたくしも勧誘されましたが、清廉潔白にして公明正大な自分としては、やんわりお断りしました。といふのは嘘で、単に予定が塞がつてゐたからなんですが。 しかし好奇心も強く、やはり行けば良かつたか喃とも思想しま...
数年前、わたくしの仲間数人が何を考へたか「飛田ツアー」を企画いたしました。わたくしも勧誘されましたが、清廉潔白にして公明正大な自分としては、やんわりお断りしました。といふのは嘘で、単に予定が塞がつてゐたからなんですが。 しかし好奇心も強く、やはり行けば良かつたか喃とも思想しました。そんな訳でもありませんが、せめてこんな本を読んでみやうかと。 実は発売当時から話題になつてゐたので、その存在は知つてゐました。文庫化の際に購入もしました。しかし評判がイマイチで、上から目線だとか、取材が雑だとか、構成力がないとか、そもそも執筆趣旨が不明だとかで、何となく今日まで放擲してゐたのであります。 第一章の「飛田へ行きましたか」で、飛田で遊んだことのある男性にインタヴューしてゐます。その動機や「中」の様子、女の子の特徴、行つた感想など。インタヴュアーが女性だからか、中中取材に応じる人がゐないやうです。 第二章「飛田を歩く」で現在の飛田の概観を井上節で綴ります。しかし「中」の人たちは質問しても口が重い。といふか、完全なる拒否であります。この町のことはヨソモンがなぶつてくるな、何も話すことはないぞ。そんな時に出会つた飛田のヌシ、「原田さん」と出合ふ幸運に恵まれます。 「飛田新地料理組合」にも取材を申し込みますが、完全に拒否モード。粘り強く交渉するうちに相手も少し軟化してきて、何とか話を聞けるまでになりました。 第三章は「飛田のはじまり」。飛田の立ち上がりから現在に至る歴史であります。「あいりん地区」の命名が、警察側によるものだとは知りませんでした。 第四章「住めば天国、出たら地獄」では、飛田のシステムといふかメカニズムについて述べます。女の子はどんな境遇の子が多く、どんな経緯で飛田へ来て、どんな人々が支配してゐるのか。彼女らは大概借金を抱へてやつて来ます。貧困の負のサイクルを断ち切らないと、人身売買だの売買春はいかんとか叫んでも詮無いものです。搾取する側は、寧ろ女の子たちを救つてやつてゐると嘯くのです。 第五章は「飛田に生きる」。実際に著者が求人に応募して、どんな感じか探るのが面白い。かういふ世界で、暴力団が関与してゐない筈はないと調べるが、飛田の組合は全力で文字通り暴力団を排除してゐたさうです。しかも警察とさへタッグを組んでゐるフシがあります。うーむ。 第六章は「飛田で働く人たち」。友達付き合ひになつた「原田さん」が、突然飛田から去つてゐたといふ事に、著者は衝撃を受けます。「まゆ美ママ」の哲学はとてもついていけないが、飛田で生きる上での処世術なのでせう。我々の善悪の尺度は通用しません。 著者はかかる世界を、戸惑ひながらも否定はしません。無論人権上の問題などに目を瞑る訳ではないが、表面上の事象のみを見てあれこれ論評するのは無意味であるからでせう。 レヴューの中には、著者は心の底では飛田を馬鹿にしてゐるので、愛情が感じられぬといふのがありましたが、わたくしは十分に「愛」を感じました。単にこの人は極端な天然なのだらうと思ひます。 また、取材時に嘘を言つて話を聞くのが怪しからんとの声も聞きますが、何が問題なのかと思ひます。目的を果す為には、誰だつて様々な手段を講じるだらうに。その昔鎌田慧さんが『自動車絶望工場』を発表した時、工場の内実を探る為に自ら期間工に応募し働いて、その体験を書いた事に批判があつたのを思ひ出しました。 個人的には、飛田の雰囲気を伝へてくれる良い一冊だと感じましたよ。 デハ御機嫌やう。
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女性筆者から見た飛田。歴史、社会構造などとヒアリングに基づく人間の心情に迫っていてとても興味深かった。
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何だか想像していたのと違う感じのルポだった。飛田だけを追っていたわけじゃないだろうけど、足かけ10年以上の取材で関係をつくり果敢に飛び込んで色街だけじゃない飛田の姿が記されている。 色街でない飛田とは、いろんな意味での貧困や障害を抱えた人たちが生きている街だという一面。女の子から...
何だか想像していたのと違う感じのルポだった。飛田だけを追っていたわけじゃないだろうけど、足かけ10年以上の取材で関係をつくり果敢に飛び込んで色街だけじゃない飛田の姿が記されている。 色街でない飛田とは、いろんな意味での貧困や障害を抱えた人たちが生きている街だという一面。女の子からおばちゃんになった人が「満足度0%」と話したり、店をもつママさんが「楽しかったことなんてない」と言ったり、そんな人たちがいることをどこかでわかっていながら、ここで満足しながら働いている人も、割り切って働いている人もいると思いたい、そういう文章を読みたいと思いながら、結局そんな話はまったくなかった。飛田のみんなで底なしの井の中の蛙のように生きているイメージ。そこがやっぱり10年通ったからこそだろう。考えずに、あるいは考えながら飛び込んでいって、後で何となくわかってきたといった感じの書きぶりで、著者が飛田を知る過程につき合いながら素人目線で飛田のいろんな面を見ていける。お上手にまとまったルポより正直で素直……っぽい感じがする。 とはいえ、文庫版あとがきでは取材時、執筆時とはだいぶ変わった飛田の姿が少しだけ紹介されている。少しだけなのにだいぶ変わっている様子。飛田も変わっていないようで変わっているのだなと思った。著者が通ってた10年より、上梓前後から文庫化までの数年のほうがドラスチックに変わった感じ。いろんな意味で飛田って予想や想像が追っつかない街に思える。
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あの町の雰囲気は、やはり実際に足を踏み入れないと理解できないのかもしれない。 ただ、情報が少ないなかで、中の人たちの声が聞けるのは貴重だ。 (108)
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12年にもわたり、飛田を取材した著者に拍手。 同じ女性として、ときに嫌悪を、ときに情けをにじませて語る文章から飛田の現実が炙り出されてくる。 自由恋愛が発生する、それは見事な屁理屈。法律も警察も、利害のもとでいたちごっこをしていて、遊廓は完全につぶされはしない。 なぜそうまで...
12年にもわたり、飛田を取材した著者に拍手。 同じ女性として、ときに嫌悪を、ときに情けをにじませて語る文章から飛田の現実が炙り出されてくる。 自由恋愛が発生する、それは見事な屁理屈。法律も警察も、利害のもとでいたちごっこをしていて、遊廓は完全につぶされはしない。 なぜそうまでして、存在する必要があるのか。 納得はできないが、簡単に性商売を断罪できないワケを見た。
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社員旅行で大阪に行ったとき、専務が「大人の社会見学だ」とか言って、タクシーで流してもらったことがある。4年前くらいかな。 もともと吉原とかに興味のあった私は、映画さながらの風景にそれはもう大興奮で、窓から身を乗り出す勢い。そうしたら「見んなや!」と、遣り手ばばぁに一喝された。 ...
社員旅行で大阪に行ったとき、専務が「大人の社会見学だ」とか言って、タクシーで流してもらったことがある。4年前くらいかな。 もともと吉原とかに興味のあった私は、映画さながらの風景にそれはもう大興奮で、窓から身を乗り出す勢い。そうしたら「見んなや!」と、遣り手ばばぁに一喝された。 女である以上、客として店に行くことはできないし、どうしても中を覗きたければ店に立つしかない。 とはいえ、さすがに働く勇気もなく、それでもあの風景は頭の中に焼き付いて離れなかった。 そんな私にはうってつけの本。 私にとって飛田は、そこにあるものすべてが非日常で、だからこそ、その内情が知りたくなる。 賛否両論あるのでしょうが。
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あくまで自由恋愛、パチンコヤミ金、ホストクラブの存在意義、はじめて知ったなんやそれな仕組み。 自由恋愛やからこその、スレてない女の子が少なく態度が良い接客になるんか、効率的に稼げるから質の高い女の子が集まるんか、と納得。 飲食にしても小売にしても飛田にしても、サービスの質やホス...
あくまで自由恋愛、パチンコヤミ金、ホストクラブの存在意義、はじめて知ったなんやそれな仕組み。 自由恋愛やからこその、スレてない女の子が少なく態度が良い接客になるんか、効率的に稼げるから質の高い女の子が集まるんか、と納得。 飲食にしても小売にしても飛田にしても、サービスの質やホスピタリティで差別化しないと生き残れないんやな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
結局著者は飛田の何を伝えたかったんだろう? 飛田のことを肯定しているのか否定しているのかすらはっきりしない。 取材にしても「いい話が聞けなかった」「いい人が捕まらなかった」 というような言い訳めいたことばかり書いているけれど 良い話を聞きだす技量もライターには必要では? おまけに他の人が書いた文章の引用ばかりなのにも飽き飽き。 他人のブログなのに、よく書けてるのでそのまま載せますとか、ちょっとないわー。 著者は普通に幸せな人生を送ってきたお嬢さんなんでしょうね。 ちょっと変わったところに首突っ込めてウキウキしてる様子がよくわかります。 最初に飛田を冷やかしに行ったとき怒られた時点で、 普通はもう邪魔しないようにしようと思うもんだと思いますけどね。 女性が、しかも部外者が、飛田のことを書くのはあまりよくないかもしれないですね。
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1955年奈良市生まれ、人物ルポや旅、酒場をテーマに執筆されてる井上理津子さん、今回は「さいごの色街 飛田」、2015.2発行です。2000年から2011年まで12年間にわたる取材をもとにした力作です。女性の取材、なかなか難しいと言いますか、実態に迫るのは難儀だったと思います。昔...
1955年奈良市生まれ、人物ルポや旅、酒場をテーマに執筆されてる井上理津子さん、今回は「さいごの色街 飛田」、2015.2発行です。2000年から2011年まで12年間にわたる取材をもとにした力作です。女性の取材、なかなか難しいと言いますか、実態に迫るのは難儀だったと思います。昔の遊郭のような雰囲気、今の日本に江戸時代が。飛田は1918年(大正7年)から歴史を刻んでいるそうです。700m北には「新世界」、300m西には西成署。飛田は売春防止法の前も後も、「素人」の女性と一期一会の「恋愛」をする場所」だとw
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