ワン・モア の商品レビュー
問題を起こして僻地に出向になった医師。母の理想になることを求めすぎて大切な人を失った医師。彼氏にDVを受けた元バイトを匿う店長。患者からの告白に淡い期待をしてしまうベテラン看護師。経済的理由で医学部進学を諦めたことを引け目に感じ続ける技師。それぞれの人生の綻びを紡ぎ直す話。
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人間の生と死とそして性は繋がっている 登場人物それぞれのドラマの中で綴られて繋がる 後悔するような出来事があっても 人はそこからもう一度歩き出すことができる 人間は意外と強い生き物
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スキャンダルを起こした禊ぎとして離島の診療所に派遣された医師の美和。島民の好奇の目に晒されながらも淡々と業務をこなす美和の元に、医師仲間の鈴音からある知らせがもたらされる…。 連作短編集のかたちをとり、美和の周辺の人物たちにそれぞれスポットを当て、物語が進んでいく。 冒頭の「十六夜」は桜木作品らしく、離島に生きる人々の鬱屈した空気と美和のやるせない諦念のようなものがゾクゾクするくらい読み手を引き込む。 続く作品もやさしい雰囲気を意外に感じつつも読後感は好きだったのだが、ラストの「ワン・モア」のそのまたラスト部分はちょっといらなかったのでは、と思う。その後の物語は読者に預けて欲しかった。
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何故か読む度に好きになってしまうのですよ、桜木紫乃さんの世界を♡ ハナマル急上昇中の彼女の作品、次は何を読もうか時間をじっくり掛けて吟味した結果『ワン・モア』に決定 期待した通りとても味わい深い時間を堪能させていただきました 本書は大人の恋愛、それぞれの人生が 色濃く描かれた連...
何故か読む度に好きになってしまうのですよ、桜木紫乃さんの世界を♡ ハナマル急上昇中の彼女の作品、次は何を読もうか時間をじっくり掛けて吟味した結果『ワン・モア』に決定 期待した通りとても味わい深い時間を堪能させていただきました 本書は大人の恋愛、それぞれの人生が 色濃く描かれた連作長編です 一話目の『十六夜』は主人公の柿崎美和のやるせない桜木紫乃さんらしい話ですが、二話目以降は趣きが変わって行き、それぞれ語り手が変わります 嬉しい事にどの話にもどっぷりしっかり浸わせてもらい、人間臭いドラマに夢中になってしまいました 解説にもあるのですが、本書の中で心の内が語られていない柿崎美和 多くを語らない美和ですが、自分の信念だけは曲げない彼女の生き方が格好良いのです 謎めいた彼女の存在を仕上げた著者の上手さに感銘を受けました しかし、最終話最後のエピローグ的な五頁は欲しくなかったです 賛否両論だと思いますが、今までどの話も読み応えがあったのに、最後にあの全て良しのノリはらしくない、あくまでも個人的な希望です ですので評価はマイナスしちゃうのですが、元々☆5以上だったので☆5のままです 笑 次何読もうか吟味Time楽しみです♪
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桜木紫乃作品にしては暗い重い気持ちにならずに、読後はあったかい気持ちになった。 短編だけど登場人物がみんな繋がっているタイプで、そこは桜木紫乃さんらしいなぁと。 「おでん」の終わり方は、ああこれ店長の自信のなさ、自分が傷つきたくないから押せないってことでしょ?ってがっかりしたのに、最後に夫婦になっててウルッとした。 赤沢さんに会う時になぜか結婚指輪をしちゃう寿美子の気持ちはわからなかったけど、それを会った途端に絆創膏で隠しちゃうとことか、赤沢さんががっかりしちゃうとこ、否定しないとこに胸が苦しくなった。こちらも最後幸せでよかった…。 登場人物の関係性を書き出して整理したいな。笑
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読み始めはずーっと曇天。曇っていて今にも雨が降り出しそうで…そこから雲ひとつない青空に向かっていく、そんな連作だったように思う。 医療に携わる人びとと、命。 うまくいきそうでいかない、素直になれない、それでも前を向いて歩いていく。 桜木紫乃さんの他の本も読んでみたいと思った。
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静かに話が進む連作短編集。人の生命が物語の中心ななるので、特に大きな出来事などがなくても、内容に深みがあり素敵なお話だと思いました。一話ごとでは余韻を持たせる終わりかたでしたが、最終話で綺麗にまとめてあるので、そこもよかったです。星4にちかい3です。
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医療関係の3人の同級生。 鈴音は真面目に生き、親から続く開業医で余命宣告を受け、元旦那と過ごす。主人公は安楽死させたことで離島へ左遷、そこで既婚の元水泳オリンピアと関係に。金メダルを期待されていたが、ドーピングスキャンダルで一線を退き地元に戻っていた。鈴音からの病院を任せたいと呼び出され戻ることとなるが、そこで彼は海の中に消え行方不明に。主人公は悪気なく巻き込まれている。 もう1人の八木は2人ほどの学力がなく経済力もなかったことから、医者を諦め、放射線技師になる。当時から片想いしていた鈴音に同じ病院で働こうと言われたからだ。鈴音は元旦那と余生を過ごし、治療する。近所のスーパー店長が幸せになる話と鈴音が引き抜いたベテラン看護師が幸せになる話も盛り込まれている。 話の内容が想像出来るので1だけど、ほんわかするので嫌いではない。
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主人公を変えつつ、それぞれの恋愛模様描く連作短編。 訳アリで島に流れて来た女医と挫折した五輪候補選手の漁師の「業」を感じさせるような出だし。いつもの桜木さんです。 ところがこの作品は少しづつ柔らかくなって行きます。いやDVの話もあるから、いつもと比較すればというレベルで、他の人に...
主人公を変えつつ、それぞれの恋愛模様描く連作短編。 訳アリで島に流れて来た女医と挫折した五輪候補選手の漁師の「業」を感じさせるような出だし。いつもの桜木さんです。 ところがこの作品は少しづつ柔らかくなって行きます。いやDVの話もあるから、いつもと比較すればというレベルで、他の人に比べたらやはり全体に暗調で閉塞感は有りますが。しかし1話1話が少し明かりが見えたような終わり方です。 そして大団円。 本当に桜木さん?と聞きたくなるようなAll Happy。特に不穏な終わり方だった短編「おでん」のさとうしおさんを登場させたのは良かったなぁ。 対比的な二人の女医と放射線技師の男と言う同級生トリオが粋ですね。映像化したら面白そうです
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無表情で読み切ったけど、心は打ち震えた。これぞ大人の恋愛小説。恋愛のみならず友情、信頼、生と死…こよりのように細くても強い絆を感じさせた。安楽死事件を起こし離島に左遷された孤高の女性医師、美和。余命半年余りと宣告された美和の同僚医師、鈴音。美和は鈴音の病気をきっかけに島を出る決意...
無表情で読み切ったけど、心は打ち震えた。これぞ大人の恋愛小説。恋愛のみならず友情、信頼、生と死…こよりのように細くても強い絆を感じさせた。安楽死事件を起こし離島に左遷された孤高の女性医師、美和。余命半年余りと宣告された美和の同僚医師、鈴音。美和は鈴音の病気をきっかけに島を出る決意をする。不器用な登場人物たちに共感しているわけではない。でも心がねじ切れるような気持ちにさせられるのはなぜだろう。そして想像以上に穏やかな最終章を迎え『ワン・モア』という題名が胸に沁みわたる。文字を嚙みしめるようにして読んだ。
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