それをお金で買いますか の商品レビュー
市場を持ち込んでもいい場所、そうでない場所を日々考える必要性を感じた。 民主主義は、完全な平等を求めないが、経済力や育った環境の違うものが出会い、差異を実感しつつも、共通の「善」を見出すことが必要である。この点に、私たちが求めるべき未来の形が表現されているとおもう。 また、...
市場を持ち込んでもいい場所、そうでない場所を日々考える必要性を感じた。 民主主義は、完全な平等を求めないが、経済力や育った環境の違うものが出会い、差異を実感しつつも、共通の「善」を見出すことが必要である。この点に、私たちが求めるべき未来の形が表現されているとおもう。 また、本の構成として、親しみやすい内容からはいって、ヘビーな議題や専門性のある内容を取り扱ったあと、また親しみやすい内容へとシフトして話をうまくまとめるといった構成が見受けられた。 個人的にそう感じただけかもしれないが、こういった話の進め方も勉強になったし、とても良い本に出会えたと思う。
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面白かった。市場主義って、止まらないんだろうなぁ。道徳・倫理は市場主義により腐敗・堕落して世界中を巻き込んで格差社会が進むのかと思うと暗い気持ちになっちゃいました。
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ただ流し読むことを許されず、少し読むごとに自ら考えることを求められるような語り口で、読み切るのにすごく労力が必要だった。訳に時折違和感を覚えるところもあったけれど、それでもこれを日本語で読めるのは良い環境なのだと思う。 全体としての主張は分かりにくいけれど、あらゆるコトに市場化の...
ただ流し読むことを許されず、少し読むごとに自ら考えることを求められるような語り口で、読み切るのにすごく労力が必要だった。訳に時折違和感を覚えるところもあったけれど、それでもこれを日本語で読めるのは良い環境なのだと思う。 全体としての主張は分かりにくいけれど、あらゆるコトに市場化の波が押し寄せている中で、公正さと道徳的に許されるのかの観点から、市場化の是非を議論すべき、というものだと理解した。 糸口にはなり得る。 180902
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市場主義と道徳についての考察が具体的なエピソードを多数織り交ぜて語られている。 売買することで腐敗を招くという考えは、直感的には感じていたが意識したことがなかったことで新鮮だった。どのエピソードも興味深かったが、特に保育所がお迎えに遅刻すると罰金を科すようにしたら遅刻が増えた(罰金ではなく料金となり罪の意識が減った)という話が印象的だった。 妻は延長料を払えば子供を預けられるのに無理をしてでも早く帰るようにしていたことを思い出した。「お金では買えない」彼女の崇高な母性に気づき、敬意を払えたことを本書に感謝したい。
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サンデル教授の経済活動と道徳(モラル)の境界線についての考察。 今まで経済学の勉強ではアダムスミス以来、経済活動は物の価値と配置を最適化すると習ってきたが、確かに最近の経済活動、特に金融工学が発生以後は、まるでゲームのようにあらゆる分野でモラルなき経済活動が行われている。 日常の生活で、これあり?と思うような経済活動に対してサンデル教授が、そう思うこちらの心理の真相と、どこまでが折り合いを付けられるかに分かりやすく切り込んでくれて、普段感じてる違和感の正体が分かった。 とはいえ、話自体は例題を豊富に示してくれているので分かりやすく、同時にユーモアもあり楽しく読むことが出来た。 やっぱり、あの異常に高いUSJのファストチケットは納得出来ない!と思うのは正常なんだ。
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読んでみて、そういえば確かにそうだと思うことがたくさんあった。知らぬ間に商品化されている身近なものがあることに気づいていなかった。その全てが悪というわけではないが、それによって失われる何かがあることはきちんと理解しておくべきだと思った。
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久しぶりにサンデル先生の本を読んだ。市場化によって腐敗してしまうものがあるというのは非常にしっくりきた。
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私自身、資本主義経済や株式制度に疑問をもっています。ですが、経済や経営などの難しい話はわからない上に、そんな疑問を解決に至る方法などの本を見つけることはできずにいます。いろいろと歯がゆい思いを抱いていました。経済の仕組みや市場の在り方など、経済学者が触れたがらない点にもふれ、理不...
私自身、資本主義経済や株式制度に疑問をもっています。ですが、経済や経営などの難しい話はわからない上に、そんな疑問を解決に至る方法などの本を見つけることはできずにいます。いろいろと歯がゆい思いを抱いていました。経済の仕組みや市場の在り方など、経済学者が触れたがらない点にもふれ、理不尽ともいえるいろいろなことが起こる理由もわかるし市場主義に関しても詳しく話してくれています。世界の人々いやアメリカの人々の価値観がよく表れている事例も多いので大変興味深い本です。
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マイケルサンデルの作品を読むのは二作目だ。 今回は市場における道徳的規範についての話だ。 お金を中心に回っている人間社会では、合理性を追求していくことが重要になってくる。 そこでストップをかけるのが道徳心だ。 あらゆるものに市場が参入してしまうと、本来、守るべき人間性や誠実さ、本...
マイケルサンデルの作品を読むのは二作目だ。 今回は市場における道徳的規範についての話だ。 お金を中心に回っている人間社会では、合理性を追求していくことが重要になってくる。 そこでストップをかけるのが道徳心だ。 あらゆるものに市場が参入してしまうと、本来、守るべき人間性や誠実さ、本質、真髄が消えていってしまう。 人間は他の動物とは違って、熟考することができる。 機械とも違って、頭だけで行動するわけではない。 人間には自分の名誉や主義主張を大事にしたいという性質がある。 どこまで市場に踏み込ませていいかは一人一人が考えなければならない。
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2014年(底本2012年)刊。著者はハーバード大学政治哲学教授。◆道徳や倫理が、市場・貨幣という数値に浸食される実態をあらゆる例・調査結果を提示して開示。◇日本でも散見される球場命名権、各種罰金・金銭的行政罰制度、ファストパス、行列の並び屋、CO₂排出権取引などの一方、海外特有の事象、例えば、縁組希望の養子の価格付け、遅刻への罰金、学生の成績向上に対する報奨金(学費無償でなく現金給付というのがミソ)、生命保険の第三者転売と当該債権譲渡の市場化、血液を含む臓器売買、出産制限ある社会での子供の出産権など。 ◆ここでの問題点は、つまり道徳や倫理が侵食される意味は、①「生命」「子」など単一基準での価格形成・数値化が不可能ないし非難されたものを、単一基準で数値化すること。また②倫理的非難を構成した罰則や損害賠償金が、それを払うと許容されるとの数値基準に転化し(例えば、100万円払えば浮気ができる、駐禁切符代で駐車場を探さずに済む)、同一の倫理的非難であったはずなのに、それを払える人と払えない人との間の格差を生んでしまう。③成績向上の金銭給付や献血など、インセンティブでは良結果が得られないデータがある。 あるいは、その可能性の如何を調査しないままで済ます。しかるに、あたかもインセンティブが万能かのような制度設計をする点などか。◆医師の優先的診療権(テーマパークのファストパスなら笑って済ませられるかもしれないが)等々、全体になかなか含蓄ある叙述で、読みふけってしまった。再読不可避だが、脳の報酬系が金銭では反応せず、褒める言葉かけや愛情表現で活性化する知見を想起させる書でもある。◆cf.TPPによる米国サービス産業の国内参入とも絡めて…。
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