まるまるの毬 の商品レビュー
江戸で小さな和菓子店『南星屋』を営む親子三代 店主“治兵衛”、娘“お永”、孫“お君”の家族を描く時代小説連作短編集 実はさる御方のご落胤の治兵衛 訳あって武士をやめ菓子屋になったのは、子供の頃父から届けられた様々の「おかし」の想い出…などエピソードが語られます 憂いや幸せ、人...
江戸で小さな和菓子店『南星屋』を営む親子三代 店主“治兵衛”、娘“お永”、孫“お君”の家族を描く時代小説連作短編集 実はさる御方のご落胤の治兵衛 訳あって武士をやめ菓子屋になったのは、子供の頃父から届けられた様々の「おかし」の想い出…などエピソードが語られます 憂いや幸せ、人の想いを西條先生のやわらかな文章で和菓子と一緒に丁寧に掬いあげ綴った心満たされる作品です (お腹も満たされたい…) 次作『亥子ころころ』と併せて読むのもお勧めです 自分はこのお話が好きで即二度読みしてしまいました 和菓子が食べたくなります
Posted by
好きですねぇ。大好きです。初めて西條奈加さんの作品を読みましたがとても幸せな気持ちにさせてくれる話でした。 諸国の菓子屋で修行したのち、江戸で南星屋を開いた治兵衛とその娘お永、お永の子供のお君と、治兵衛を幼き頃から支えてきた弟の石海。 家族の愛や人情だけではなく、菓子作りの言葉...
好きですねぇ。大好きです。初めて西條奈加さんの作品を読みましたがとても幸せな気持ちにさせてくれる話でした。 諸国の菓子屋で修行したのち、江戸で南星屋を開いた治兵衛とその娘お永、お永の子供のお君と、治兵衛を幼き頃から支えてきた弟の石海。 家族の愛や人情だけではなく、菓子作りの言葉の美しさには惚れました。当時の日本の春夏秋冬それぞれの情景が浮かぶようで、日本語ってとても美しいですね。 カスドース、若みどり、まるまるの毬、大鶉、梅枝、松の風、南天月と七話それぞれの落ちが落語のさげみたいでとても気分がいい!
Posted by
同じ著者の「心淋し川」を読み、別の本もどの様な物語りを綴ってくれるのかと手に取りました。 高田郁の「澪つくし」や「あきない世傳」にも似た味わいの中に祖父と孫、祖父とその娘、祖父とその弟、その思いや心模様に共感しつつ、菓子職人や主人公の出自から巻き起こる騒ぎに味つけられた心温まる物...
同じ著者の「心淋し川」を読み、別の本もどの様な物語りを綴ってくれるのかと手に取りました。 高田郁の「澪つくし」や「あきない世傳」にも似た味わいの中に祖父と孫、祖父とその娘、祖父とその弟、その思いや心模様に共感しつつ、菓子職人や主人公の出自から巻き起こる騒ぎに味つけられた心温まる物語りに引き込まれ、また、和菓子を自分の口で味わっている様な心持ちにもなりながら、楽しい読書の時間を過ごすことが出来ました。
Posted by
江戸麹町の小さな菓子屋「南星屋」は、日替わりで各地の名物の菓子を出し、ちょっとした《行列の出来る店》だった。 主・治兵衛は、武家の出身で、実は、十一代将軍家斉の御落胤であったが、それを隠し、出戻り娘のお永と孫娘のお君と親子三代で店を営み、慎ましく暮らしていた。 治兵衛の弟は、...
江戸麹町の小さな菓子屋「南星屋」は、日替わりで各地の名物の菓子を出し、ちょっとした《行列の出来る店》だった。 主・治兵衛は、武家の出身で、実は、十一代将軍家斉の御落胤であったが、それを隠し、出戻り娘のお永と孫娘のお君と親子三代で店を営み、慎ましく暮らしていた。 治兵衛の弟は、四ツ谷の大刹・相典寺の大僧正・石海。 貧しい身なりで、こっそりと寺を抜けて「南星屋」の菓子を腹一杯食べるのが、何よりの楽しみである。 平戸藩松浦家の門外不出とされるお留め菓子を作ったと奉行所に捕らえられたり 御先手同士の嫡男が、治兵衛の弟子になりたいと言ってきたり 女を作ってお永とお君を捨てた、お永の元亭主が江戸に戻って来たり 平戸藩松浦家の賄方・河路金吾とお君の縁談が決まり、治兵衛の実家に、行儀見習いに行くお君。 そして、その縁談が壊れたり。 自分の幸せより、家族の幸せを願う、心温まる話。 とにかく、読後感が優しい。
Posted by
元は武士の菓子店主、菓子の百科事典のような出戻り娘、明るく店を盛り立てる孫娘。3人が営む「南星屋」の物語。個性的な菓子の数々につばを飲み込み、丁寧に描かれる人の心にしんみり。1冊で終えるのはもったいない!ああ、和菓子食べたい!
Posted by
続編が出ているのを知り、久しぶりの再読。詳細を忘れていたので新鮮な気持ちで読めた。 麹町六丁目裏通りにある菓子屋〈南星(なんぼし)屋〉。 治兵衛とその一人娘・お永、さらにその一人娘・お君の親子三代三人家族で菓子作りから商いまでやっている、その小さな店はお昼に開店し菓子が売り切れ...
続編が出ているのを知り、久しぶりの再読。詳細を忘れていたので新鮮な気持ちで読めた。 麹町六丁目裏通りにある菓子屋〈南星(なんぼし)屋〉。 治兵衛とその一人娘・お永、さらにその一人娘・お君の親子三代三人家族で菓子作りから商いまでやっている、その小さな店はお昼に開店し菓子が売り切れれば閉店する。 そこには看板となる菓子はなく、毎日二、三品の菓子を日替わりで出している。しかもその菓子は店主・治兵衛が修行中に全国を旅した先で習った、江戸では食べられないもの。それらを庶民的な値段で出しているのだから毎日繁盛していたのだが…。 様々なトラブルや困り事をお菓子で解決!という連作集なのだが、第一話はそのお菓子で厄介事が持ち上がる。 〈南星屋〉で出した「印籠カステラ」が平戸藩松浦家で門外不出とされている「カスドース」にそっくりだという訴えがあり、治兵衛が作り方を盗んだという疑いを掛けられたのだった。 この第一話で治兵衛一家の複雑な事情が明らかになっていく。 まずは治兵衛。彼は家禄五百石の旗本・岡本家の次男だったのだが家を出て菓子職人となった。同じく三男の五郎は格の高い寺の大住職・石海(こっかい)となった。 いくら大身旗本とは言え嫡男以外は自分で生きる道を探すしかないからそうしたのかと思えば、治兵衛には大変な事情があり五郎が僧となったのも治兵衛を助けるためだった。 そのことが、門外不出の「カスドース」の味を再現できた理由に繋がるのだが、さらに治兵衛がどうやってこのピンチを切り抜けるのか興味が湧いてくる。 この治兵衛の秘密は全編に渡って絡んでいく。 実家である岡本家の現当主で治兵衛にとっては甥に当たる慶栄のうかつさに繋がったり、御用菓子屋の一方的なライバル心を煽ったり、孫娘・お君の思わぬ縁談とその結末であったり。 治兵衛からすれば大切な家族を守るために決断し菓子職人として生きてきたことが逆に家族を苦しめるという皮肉な展開に戸惑うばかり。 しかし終盤の最大の困難もまた菓子作りと家族の絆で乗り越えていく。 治兵衛は職人だが頑固さや偏屈さはなく、娘や孫を見守ったり戸惑ったりの良き父であり祖父。五郎も格の高い寺の大住職だが偉そうなところは全くなくお菓子大好きな親しみやすいおじさん。しかも治兵衛一家のピンチとなればその身分を利用して助けてくれたりもする頼れる人間でもある。 娘のお永は口数は少ないが家事から商いの切り盛りをきっちりやってくれるし、孫のお君は逆に姦しくて家事は苦手だが接客は得意。良いバランスの家族だ。 関係する武家たちも高圧的な者はいない。 嫌なのは御用菓子屋くらい。安心して読んでいたのだが、最後にこの菓子屋が最大のピンチを引き起こすことになる。 岡本家は元々西の丸御納戸役を勤めていたとあり、小早川涼さんの包丁人侍シリーズを思い出した。読み進めるとなんとあのお方の名前が。治兵衛の秘密は思ったより大変なものだった。 しかしこの作品で描かれるあのお方も優しい。 この困難を乗り越えた先で、ついに〈南星屋〉はオリジナルの菓子を作り出す。 「南天月」と名付けた看板菓子と共に〈南星屋〉はどう歩んでいくのか。 お永と元夫・修蔵との関係、お君の今後も気になる。そちらは続編で描かれるだろうか。 だが御用菓子屋が言うように治兵衛は家族を失ったわけではない。それこそが幸せなことだと思う。
Posted by
真面目に生きているだけなのに、勝手に恨まれて家族を不幸にさせられる。理不尽な人生でも菓子を通してささやかな幸せを届ける。
Posted by
和菓子屋を舞台にした時代小説。 美味しそうな和菓子がたくさん出てきて食べたくなってしょうがなかったです。 菓子職人になる前の兄弟のエピソードが特に良かったです。和菓子をめぐる人情物かと思いきや、治兵衛の出自がからんで事態が大きくなって…。お君ちゃんの心の傷が早く癒えると良いです。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
一日に商う和菓子はニ、三品に限定。品書きも仕入れ具合や天気、主人の気分次第で毎日変わる。 こんな職人気質な主人が商う菓子屋が身近にあったなら、日替りで出される和菓子をぜひ食べ比べしてみたい。 江戸の庶民の舌を喜ばす「南星屋」。 渡り職人として、主人が国中を旅して知り得たレシピを元に丹精込めて創れる和菓子の数々は、私でも聞いたこと、食べたことのあるものが登場し、読んでいてわくわくする。聞いたことのない和菓子の画像を検索してみたり、と読み物だけでない楽しみ方もできた。 個人的には、地元の生姜糖が出てきたり(実はちょっと苦手だったりして…)、きな粉を使ったうぐいす餅(他の地方では抹茶を使うなんて初めて知った)など、嬉しい発見も多々あった。 福岡は太宰府にある梅ヶ枝餅。聞いたことはあっても食べたことはない。これは一度食べてみたい。 すったもんだあったけれど、ひたむきな職人としての気骨が長年染み付いた主人の真摯な姿勢と、その周囲を固める家族の信頼関係に勝るものはない。 主人と孫娘が共に創る新作菓子に、ますます期待が高まる。 人情話に美味しそうな和菓子。これら最強アイテムてんこ盛りの「南星屋」にまた来店したい。 菓子は甘いが、人生はそんなに甘くはないよ。 甘い菓子の中にぴりりとした刺激もそっと忍ばせる。 西條さんの、冷静かつ穏やかなメッセージが込められた物語だった。
Posted by
ふんだんに砂糖を使い日替わりの菓子を作る江戸時代の菓子屋 とても裕福でお上の御用達菓子店ではと思う一方 店主が大工や左官屋のような言葉使いで とても違和感がありました 作者の作った理想の江戸庶民あったかい人情噺でした
Posted by