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こちらあみ子 の商品レビュー

3.9

459件のお客様レビュー

  1. 5つ

    107

  2. 4つ

    172

  3. 3つ

    119

  4. 2つ

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  5. 1つ

    5

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2017/05/11

とても胸が切なくなるお話でした。 何も分からないあみ子と、それを受け入れようとしても受け入れきれない周囲。 なんとも言えない気持ちになりましたが、共感できる部分が絶対にあると思います。

Posted byブクログ

2017/03/26

名状しがたい不穏さともやもやをかかえながら読んだ。この不穏感(不安感というよりも)は、「あひる」と共通していて、だから今村夏子特有のものなのかも。だれひとりとして、激しくののしったり、激しく対峙したり(のりくんはあみ子のことを殴るけど)しないのに、とてつもなく追いつめられていく感...

名状しがたい不穏さともやもやをかかえながら読んだ。この不穏感(不安感というよりも)は、「あひる」と共通していて、だから今村夏子特有のものなのかも。だれひとりとして、激しくののしったり、激しく対峙したり(のりくんはあみ子のことを殴るけど)しないのに、とてつもなく追いつめられていく感じ。町田康の解説が秀逸でまさに「解題」でした。「一途に愛するためには、世間の外側にいなければならない」「一途に愛する物は、この世に居場所がない人間でなければならないのである」「一途なものは、それ自体が力であるので……一途な愛を受ける者も当然、それに耐えられるものではなく、次第に追い詰められていく」 いや~、まさしく。そういうことなんだな。そういう状況を、一見、へたすると「ほのぼの」とも見えるくらいの筆致で再構成していくっていうの、やっぱりすごいのかも。ここらへんは書き手じゃないからイマイチわからないのだけど。……あー、だから実作者に受けるのかな。

Posted byブクログ

2017/02/26

3編からなる短編集。どの作品も印象深いが、中でも表題の「こちらあみ子」が秀逸。あみこが悪い訳じゃない。なのに純粋で一途な彼女が傷つく様は胸が痛い。どことなくアルジャーノンを思い出す作品でした。 あらすじ(背表紙より) あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてく...

3編からなる短編集。どの作品も印象深いが、中でも表題の「こちらあみ子」が秀逸。あみこが悪い訳じゃない。なのに純粋で一途な彼女が傷つく様は胸が痛い。どことなくアルジャーノンを思い出す作品でした。 あらすじ(背表紙より) あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。

Posted byブクログ

2017/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

周りの人との間に大きなズレを抱えている あみ子が、家族や、好きな男子との間で色々あって、 その度、あみ子は何も問題を感じてなくて、 でも周りにとっては大問題だったりして、 うまく歯車が噛み合わなくなって。 あみ子は、周りの価値観的には「不幸」とされる境遇で、 それを感じずにガハハって笑っている。 同時収録の「ピクニック」の方が、私には心に残って、 一読めは、理解あるハートフルストーリーに思えたのに、 二読めは、えげつない集団イジメの話にも受け取れて。 この本の面白いところは、読み手の数だけ解釈があるっぽいとこだと思います。

Posted byブクログ

2016/12/27

人間関係というこんがらがった糸の中を構わずスルスルと生きているあみ子。クラスメートも、親でさえも、その世界を理解することはできない。あみ子も自分の世界から出ることは出来ない。だから会話はいつも一方通行で、まるで向こう側に誰もいないトランシーバーに話しかけているよう。 成長したあ...

人間関係というこんがらがった糸の中を構わずスルスルと生きているあみ子。クラスメートも、親でさえも、その世界を理解することはできない。あみ子も自分の世界から出ることは出来ない。だから会話はいつも一方通行で、まるで向こう側に誰もいないトランシーバーに話しかけているよう。 成長したあみ子はきっと、時々昔のことを思い出して突然物事の辻褄が合い、人々が怒ったり泣いたりしていた理由を理解するのかもしれない。でもそれも一瞬の事で、すぐに思考の向こうへ流れていってしまうのだろう。悲しみや後悔が長続きしないあみ子の世界は幸せなのかもしれない。 どうにもやり切れない物語だったけれど、あみ子のお兄さんと、あみ子をありのまま受け入れて大らかに対応してくれる坊主頭のクラスメートの存在は救いだった。 読後は重く寂しい気持ちがしばらく続いたけれど、読みやすいし記憶に残るいい作品だと思う。 表紙の白く可愛らしい四足の生き物とあみ子のイメージが重なった。

Posted byブクログ

2016/12/23

太宰治賞と三島由紀夫賞をダブル受賞した表題作と、「ピクニック」「チズさん」を合わせた短編集。 3つとも全部、読んでいてざわざわした。何とも言えない読後感。 ざわざわ具合ではこないだ読んだ川上弘美さんの短編集と負けず劣らず。 風変わりな女の子・あみ子は、かつて家族から愛されていた...

太宰治賞と三島由紀夫賞をダブル受賞した表題作と、「ピクニック」「チズさん」を合わせた短編集。 3つとも全部、読んでいてざわざわした。何とも言えない読後感。 ざわざわ具合ではこないだ読んだ川上弘美さんの短編集と負けず劣らず。 風変わりな女の子・あみ子は、かつて家族から愛されていた。優しい父、一緒に登下校してくれる兄。そして書道教室の先生をしている母のお腹には赤ちゃんがいた。 純粋無垢すぎるあみ子の行動は、周囲の人々を否応なしに変えてゆき、いつの間にかあみ子はひとりぼっちになってしまう。 主人公のあみ子は恐らく、何かの障害を抱えているのだろうと思う(作中にそういった記述はないが)。 純粋すぎるからこそ、どういう言動が人を傷つけたり、嫌われる原因になるのかが分からない。だから思ったままに行動してしまい、それが周囲を傷つけたり煩わせたりして、学校でもあっという間に孤立する。 物語だと分かっていてもぎょっとする場面もある。 だけど…物語だから、なのかも知れないけれど、最初から最後まであみ子のことは憎めないし、そもそもそれを受け入れない社会の仕組みや常識が100%正しいと言えるのか、ということを考えてしまう。 子どもの頃にプレゼントされた、壊れたトランシーバーを大切にし続けるあみ子。「こちらあみ子、応答せよ」 応えて欲しい人は誰も応えてくれない。でもあみ子は気づかなくても、実はそっと応えてくれる人も存在していたりする。 孤立していることにも気づかないあみ子はとても切ない。でもそれと同時に、自分の世界を完全に確立してその中で自分らしく生きているあみ子は、彼女的には不幸ではないのかもしれない。 導入部とラストが繋がるとやはり切ないけれど…でも不思議な爽やかさも残る。 “自分らしく生きること”の極みを見せつけられるような作品。 帯の絶賛具合は嘘じゃなかった。 ざわざわ具合で言うと個人的には「ピクニック」はさらに上をいく。 淡々と進み、どこまでが本気?と思いながら読んだ。現実感を呼び寄せる登場人物がたった1人だけ、というのが何とも。1人しかいないからその人がやたらと冷たく映ってしまうのだけど、その1人がまともなのだということに気づくとはっとする。 これがデビュー作みたいだからまだそんなにたくさん作品は出していないのだろうけど、アメトーークの読書芸人の回で「あひる」という作品が紹介されていた気がする。 この空気感があるのなら、読んでみたい。

Posted byブクログ

2016/12/22

すごい力を感じる(パワーのほう)小説だった。圧倒された。最初の2ページで確実に好きだなと思った。ストーリーはやるせないけど。

Posted byブクログ

2017/05/21

久しぶりに体に強く残る小説を読んだ。 あみ子の言動や行動は、周りの人間たちを不安にさせ苛つかせる。それは行動の奇抜さよりも、世間に縛られない純粋な感情表現に対する嫉妬や憧れから湧いてくる感情だと思う。 誰もが少なからず「あみ子的な純粋さ」を持っていて、本作品は純粋さを揺さぶる触媒...

久しぶりに体に強く残る小説を読んだ。 あみ子の言動や行動は、周りの人間たちを不安にさせ苛つかせる。それは行動の奇抜さよりも、世間に縛られない純粋な感情表現に対する嫉妬や憧れから湧いてくる感情だと思う。 誰もが少なからず「あみ子的な純粋さ」を持っていて、本作品は純粋さを揺さぶる触媒として強く作用している。

Posted byブクログ

2016/11/28

『こちらあみ子』 自意識がない状態とはこういうことなのか。全く想像だにしない世界を覗いてしまったようで衝撃だった。自意識なんてなくなればいいのにと、自意識過剰でたびたび苦しむ私は思っているところがあるが、そんな考えは吹っ飛んでしまった。自意識、大切。適度な自意識は双方向的な対話に...

『こちらあみ子』 自意識がない状態とはこういうことなのか。全く想像だにしない世界を覗いてしまったようで衝撃だった。自意識なんてなくなればいいのにと、自意識過剰でたびたび苦しむ私は思っているところがあるが、そんな考えは吹っ飛んでしまった。自意識、大切。適度な自意識は双方向的な対話に必須。そのことを理屈を超えたレベルで確信した。無垢さとは自己を認識できないことの裏返しなんだなあ。悲しい現実だ。 『ピクニック』 人称が「ルミたち」というように複数形になっていて、1人の変わり者vs主力派グループという構図が否応なく刷り込まれる。その構図から私なんかはすぐにいじめを連想するが、むしろ逆に贔屓される展開が予想外に長く続いて困惑してしまう。そのような自分の現実認識と物語で起きていることの齟齬による違和感と、いついじめに転落してもおかしくないという緊張感のせいか、不穏な印象が強く残った。この話が浮き彫りにしているのは、異端者が集団に包摂されるときの避けがたい不自然さだろうか。それとも集団から見た個々の変わり者に対する関心の移ろい方が、流行の芸能人と同じであることだろうか。ちょっと掴みきれないが、原因不明の地響きを聞いてしまったような読後感。 『チズさん』 この短編自体は短すぎて、なんとなく脱獄したみたいな解放感が気持ちいいというくらいの感想。社会に疎外されている人を一風変わったやる方で切り取る作風はなかなか面白い。今後の作品にも期待。

Posted byブクログ

2016/11/21

知的障害のある子供を描いた小説はいくつもあるが、この書き方は特殊だ。 この突き放しようには衝撃を受ける。 愛そう、理解しようと努力し、それが報われたと感じられなければ、急速に冷める、誠意とやさしさのあるごく普通の大人である継母、自分や妹を守るために暴力で身を固めるしかない兄、普段...

知的障害のある子供を描いた小説はいくつもあるが、この書き方は特殊だ。 この突き放しようには衝撃を受ける。 愛そう、理解しようと努力し、それが報われたと感じられなければ、急速に冷める、誠意とやさしさのあるごく普通の大人である継母、自分や妹を守るために暴力で身を固めるしかない兄、普段からあみ子に深く関わろうとせず、逃げ腰の父。いじめとからかいで発散するクラスメイト。そのあたりをきちんと描きながらも、あみ子の思いも伝わり、安易なハッピーエンドにもしない。 あみ子に思いを寄せられてしまった男の子が、ぶち切れてしまうクッキーの話はうまい。第三者としては、丸坊主の男の子みたいにいられればいいのだな、とお手本もある。  町田康の解説がとてもよかった。 「ピクニック」も、半ば嘘だとわかっていながら、信じることで毎日をやりすごそうとする語り手たちが切ない。七瀬さんのような人は実際にはストーカー行為をしているわけではないし、自分の脳内おとぎ話がなければ生きていけない人なんだから、社会は大目に見てほしい。批判的な女の子の姿も印象的。彼女も決して生きたいように生きてはいない。  なんというか、わかりやすく共感・納得できる物語は、脳内でわりとすぐその存在が薄くなってしまうけれど、これは消化できないままずっと残りそう。  今村夏子、期待します。

Posted byブクログ