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こちらあみ子 の商品レビュー

3.9

459件のお客様レビュー

  1. 5つ

    107

  2. 4つ

    172

  3. 3つ

    119

  4. 2つ

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  5. 1つ

    5

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2018/12/12

ほんの少しの悪意の欠片だってなく、ただ純粋さからの言動だと頭では理解していたとして、それでも傷付きその痛みをやり過ごすことができなかったら、どうすればいいのだろう?その傷をもたらした相手を責め、遠ざけようとせずにいられるだろうか?あみ子の邪気のない振る舞いは読んでいて痛ましい。(...

ほんの少しの悪意の欠片だってなく、ただ純粋さからの言動だと頭では理解していたとして、それでも傷付きその痛みをやり過ごすことができなかったら、どうすればいいのだろう?その傷をもたらした相手を責め、遠ざけようとせずにいられるだろうか?あみ子の邪気のない振る舞いは読んでいて痛ましい。(そんなものはこちらからの同情に過ぎないのだけれど。)あみ子の呼び掛けに応えてくれていた(筈の)人の心は離れていってしまう。雑音しか聞こえてこなかったトランシーバーがやっと応えてくれたと思ったのに、結果は無残なものに終わる。今はあみ子を好いてくれている(筈の)さきちゃんは、いつまであみ子に会いに来てくれるのだろう。家の中からあみ子の名を呼ぶ祖母の声は、ずっと変わらずにあみ子を呼び続けていて欲しいと思った。

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2020/04/17

「こちらあみ子」読了。あみ子は善である。優しくおっとりと尊く清い善だ。真っ白だ。白すぎて白さに周囲が勝手に傷ついたりする。浮いてしまう。白を汚そうとしたりする。あみ子の白さに触れるには強靱な意志とあみ子ばりの優しさが必要なのだ。 他に「ピクニック」コワイ。「チズさん」コワイ。 ...

「こちらあみ子」読了。あみ子は善である。優しくおっとりと尊く清い善だ。真っ白だ。白すぎて白さに周囲が勝手に傷ついたりする。浮いてしまう。白を汚そうとしたりする。あみ子の白さに触れるには強靱な意志とあみ子ばりの優しさが必要なのだ。 他に「ピクニック」コワイ。「チズさん」コワイ。 第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作

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2018/11/18

どちらかと言うと、ワタシは結末がクリアな小説よりも、むしろ曖昧なまま終わる小説を好む。一件落着よりも、この後はどうなるのかと想像したり、なんであそこでこうなるのかと考えたりすることが楽しい。 その意味においては、表題作を含む三篇が収められたこの一冊も、十分楽しい部類に入る。周囲と...

どちらかと言うと、ワタシは結末がクリアな小説よりも、むしろ曖昧なまま終わる小説を好む。一件落着よりも、この後はどうなるのかと想像したり、なんであそこでこうなるのかと考えたりすることが楽しい。 その意味においては、表題作を含む三篇が収められたこの一冊も、十分楽しい部類に入る。周囲とは違う感性を持ち、かつ、それを少しも失わずに成長しているあみ子。これからあみ子はどうなるのか、と思わずにはいられない。 ただ、あみ子を見ていると何か物悲しさを覚える。あみ子は救われているのか。これから救われるのか。著者は何かを問題提起したくてこの小説を書いたのか。これが救いの物語だとしたらあまりに空しい。

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2018/10/28

純粋であることと暴力的であることは表裏一体なのだとつくづく思った。研ぎ澄まされているのに透明な薄い膜の中を覗いているような感覚で、怖いです。

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2018/09/25

悲しくてやさしくて切なくて。 飾らないまっすぐな思いは、再出発のきざしや相手の心をまでも打ち砕いてしまう。 そして痛かった。 現実のあみ子が眼の前にいると考えた時、深く関わることを避けようとする自分が浮かぶのだ。 あみ子、元気でいるだろか。 『もしもし、聞こえとったよ』

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2018/07/12

ハードカバーには載ってない『チズさん』が読みたくて文庫版も購入。ここ数年で、一番おもしろい小説だと思う。小説はこうでなくっちゃ!と思っちゃう。何度読んでもいい。『ピクニック』の序盤のエピソードだけでも満たされる。

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2018/06/28

周りから見ると、とても変わっている。 でも、当人は至ってまじめ。 自分が変わっているなんて、つゆほども思っていない。 その落差に、おかしみが生じる。 昔から、そんなキャラクターに心惹かれます。 古くは織田作之助「六白金星」の楢雄、ごく最近だと村田沙耶香「コンビニ人間」の古倉恵子、...

周りから見ると、とても変わっている。 でも、当人は至ってまじめ。 自分が変わっているなんて、つゆほども思っていない。 その落差に、おかしみが生じる。 昔から、そんなキャラクターに心惹かれます。 古くは織田作之助「六白金星」の楢雄、ごく最近だと村田沙耶香「コンビニ人間」の古倉恵子、惜しくも亡くなりましたが赤染晶子「初子さん」の初子さんも、そんな人物でした。 そして、あみ子―。 あみ子は相当に変わっている。 給食のカレーライスを手で食べる。 どうやら風呂にもほとんど入らない。 下駄箱に上履きがないからと言って、裸足で授業を受ける。 というか、ほとんど授業には出ず、保健室で過ごしている。 今度生まれて来る弟と遊ぼうと、トランシーバーを手に入れる。 その弟が流産して死んでしまうと、小さなお墓を作る。 金魚の墓の隣に…。 あみ子は、同級生の男の子ののり君に恋をしている。 だが、そんなあみ子だから、愛情の伝え方がとても不器用だ。 ある日、保健室でのり君と2人きりになる。 あみ子は「好きじゃ」と告白する。 のり君は「殺す」と言う。 あみ子は火がついたように「好きじゃ」を繰り返す。 のり君も負けじと、「殺す」を繰り返すが、どうやらこちらの方が分が悪いようだ。 あみ子は、のり君にぶん殴られる。 そこの描写がすごい。 「のり君が目玉を真っ赤に煮えたぎらせながら、こぶしで顔面を殴ってくれたとき、あみ子はようやく一息つく思いだった」 あみ子は相当に変わっている。 だが、これが人の本来の在り方ではないかと思わせる、強い何かがある。 強い何かは作品全体に漂っている。 読者は強い何かに背中を押され、次へ次へとページを捲る。 そして、読み終わった時、何だかそわそわして居ても立ってもいられなくなる。 これは恐らく長く読み継がれるであろう傑作だ。 脱帽。

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2018/02/04

思考のズレを柔らかな容器で満たした作品。 表題作「こちらあみ子」はマイノリティから見たマジョリティ、 「ピクニック」ではマジョリティからマイノリティ を表現しているとも言えなくもないが、 もっと違った愛とか、絆をテーマにしているようでもある。 作者からの一方通行ではなく、 読...

思考のズレを柔らかな容器で満たした作品。 表題作「こちらあみ子」はマイノリティから見たマジョリティ、 「ピクニック」ではマジョリティからマイノリティ を表現しているとも言えなくもないが、 もっと違った愛とか、絆をテーマにしているようでもある。 作者からの一方通行ではなく、 読者の感情で様々な解釈が思い浮かぶのは キャラクター(特にあみ子)の描き方が すこぶる異形だからなのかもしれない。 常人とはかけ離れた人物の切り取り方が この作品、この作者の魅力の源なのかな。

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2018/01/21

主人公あみこが、どこまでも自分の中で確立している道理に基づいて行動しており、ひたむきささえ感じる。その道理は外の世界には受け入れられにくいものなのだけど。その様が肯定的にも否定的にも描かれていないところがこの作品の魅力だと感じました。

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2017/12/24

『チズさん』が好きです。 →https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12328243841.html

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