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こちらあみ子 の商品レビュー

3.9

459件のお客様レビュー

  1. 5つ

    107

  2. 4つ

    172

  3. 3つ

    119

  4. 2つ

    13

  5. 1つ

    5

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2024/07/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読み終えてこんなに嫌な気分になるのはすごい。3編とも良かったが、「こちらあみ子」「ピクニック」が衝撃的だった。 「こちらあみ子」 あみ子に翻弄され、疲弊していく人々がリアルに描かれていた。みんな悪い人ではないけれど、あみ子から離れていく。ラストはとくに本当につらい。「こちらあみ子」というタイトルによって、あみ子の呼びかけに応答するものがいないことが表されているようで、なんとも虚しく響くことば。 「ピクニック」 女の集団が生む嫌な関係がうまく描かれていると思った。ルミたちは七瀬さんの味方のようで、単なる傍観者。ピクニックってもっとほっこりするものだと思っていたけれど、ルミたち集団のお気楽さがまさにピクニックだった。

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2024/06/30

なるほど、太宰ですね 昭和初期の太宰の時代より 今はもっと陰湿な時代になったのか... そんな風に思う作品 僕は表題作より 「ピクニック」が良かったです 新人までもが仲間入りするラストは なかなか迫力がありました 七瀬さんの ドブ掃除のくだりは面白かった

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2024/07/06

あみ子の隣の席の男の子がいい。 その男の子とあみ子のやりとりを、ぜんぶここに書いておきたいくらい。ニュートラルな感じがとてもいい。こうありたい。

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2024/06/28

小説→映画の順で見ました。 今村夏子さんの作品は、「むらさきのスカートの女」「星の子」にひきつづき三作目ですが、本当に「“この人”に見えている世界」をテーマにした作品作りの作家さんだなあと感じさせられます。 「こちらあみ子」は主人公・あみ子から見た世界を描いた作品であり、今村...

小説→映画の順で見ました。 今村夏子さんの作品は、「むらさきのスカートの女」「星の子」にひきつづき三作目ですが、本当に「“この人”に見えている世界」をテーマにした作品作りの作家さんだなあと感じさせられます。 「こちらあみ子」は主人公・あみ子から見た世界を描いた作品であり、今村さんの他の作品と同様に「主観で見た世界を描く」ことが中心になっています。 それは、とりもなおさず、「我々は主観でしか物事を見ることができない」ということなのです。 文庫本に同時収録された「ピクニック」「チズさん」も同じテーマだと思います。違和感を抱かせつつも、最後まで核心やネタばらしはしない。それでも、読者に訴えたいメッセージ性を強く感じるのが、今村夏子さんの著書。 私はいまのところ、そういう印象を抱いています。 あみ子にとって、字が上手な「のり君」が興味の中心であって、それ以外に目が向かないのは、あみ子の注意不足なのではなく、それが普通のことなのです。 金魚とトムと、その次に失われた命。それぞれの命はあみ子の中で、当たり前のように等しい重さでしたし、そこに疑問を持つことができなかったから、その後に起こったことを上手く解釈できなかったのでしょう。 第三者(読者)から見て「ああだったら上手くいったのに」「こうしていたら、ああはならなかったのに」といったことは、あみ子にとってはどうでもいいこと。 だから、あみ子は何かを後悔したり、或いは他人に嫉妬したりせずに、ただただ一心に「あみ子」を生きるのです。 しかし、読者とは読書中に本編からはそれで別の考え事をしてしまう生き物で(私はそう)、あみ子が「天真爛漫」「波乱万丈」「不思議ちゃん」「いじめられっ子」「野生児」「発達障害児」のように語られるのは、それが「世間の物差しで見たあみ子」だからなのだと考えました。 一方で、恐らく父親の事なかれ主義や、母親の精神的疾患が、あみ子とその兄、両方にとって苦しい状況であり、改善の余地があるとしたらここしかないだろうなと感じました。 映画では結構リアルな雰囲気(間合い)が良く分かるのですが、父はあみ子のことを見ているようで、全く見ていないんですよね。 母は初めから「あみ子さん」とさん付けであみ子のことを呼んでいるかと思えば、好きな食べ物をメモしてみたり(物凄い距離感と親近感が交互に来る)、(読み込めば理由がわかる)この二人の養育環境が良くなかったからこそ、あみ子はある意味、本来なら悲観するような状況すら、自分の居場所として受け止め、そこでの人生を謳歌していたのではないか、と思いました。 両親どちらも自分のことを全く見てくれないと悟ったとき、一方は(相手がどんな存在であれ)受け入れてくれる者のところへと身を移し(=兄)、もう一方はそれでも構わずに自分自身を自分自身として生き続ける(=あみ子)。 これは単なる不思議ちゃんの物語でも、育児放棄された子供の記録でも、発達障害児の日常でも、いじめられっ子の悲劇でもなく、純粋に「あみ子の物語」なのです。 あるいは、前述の全てでありつつも同時にやはり「あみ子の物語」だと私は感じるのです。

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2024/06/27

3年ぶりに読んだ! 3年前は本を読み出したばっかりで、こんな作品もあるのか…っていう感想だったけど、この数年で300冊くらいの本を読んだ今、この本を読んでも、やっぱりこの作品は独特で新鮮なんだって実感した。あみ子もピクニックも、最初はなんだかちょっとほのぼの?してて、あみ子も七瀬...

3年ぶりに読んだ! 3年前は本を読み出したばっかりで、こんな作品もあるのか…っていう感想だったけど、この数年で300冊くらいの本を読んだ今、この本を読んでも、やっぱりこの作品は独特で新鮮なんだって実感した。あみ子もピクニックも、最初はなんだかちょっとほのぼの?してて、あみ子も七瀬さんも純粋でまっすぐで自由に見える。でも読み進めていくと、あみ子の許容できないはみ出し加減や、七瀬さんへの違和感、そして周りのルミたちの悪意にじわじわじわじわ気づいていって、その日常が何も改善されないまま話がスパって終わる。救われるとか救われないとかじゃなくて、ただ、人間の嫌なところとか、汚いのに汚くないように笑って生きてるところとか、はみ出してる人たちのどうしようもないはみ出し具合を見せつけられて終わる。だからすごく怖い、ざわざわする。救われる話じゃなくて、これどういう状況か分かりますよね?って提示されて、あなたもこういう気持ち分かるんじゃないの?ってなって終わる。あみ子にも七瀬さんにも、その周りの人にも、誰に共感できても正直きつい。 この短編で、ここまで嫌な気持ちにさせる、心をザラザラさせる今村夏子すごいなと思う。 あみ子じゃなくて、のりくんかわいそうだと思ってしまう。のりくんの方に同情してしまう。 ルミたちが必死に七瀬さんのストーリーを考えてる様子は本当にこわい。

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2024/06/26

やはり今村夏子さんのこの世界観、大好き。あっという間に読み終えた。 あみ子、 私の中学生時代にも同じような扱いの子がいた事を思い出して。 ただ私はそれを傍観しているだけで、咎める事も何もできなかった、、教師も見て見ぬふりだったし。 今、自分も子供を持ち、あの頃の自分の態度を後...

やはり今村夏子さんのこの世界観、大好き。あっという間に読み終えた。 あみ子、 私の中学生時代にも同じような扱いの子がいた事を思い出して。 ただ私はそれを傍観しているだけで、咎める事も何もできなかった、、教師も見て見ぬふりだったし。 今、自分も子供を持ち、あの頃の自分の態度を後悔している。 今なら発達障害などの理解や対処法も少しは進んでいるのだろうか。 いや、そう期待したい。 ただ、あみ子自身はその特性ゆえに、自由奔放で決して辛さや生き辛さは感じてないだろう。それがせめてもの救い。 物語はここで終わったが、祖母が存命中は良いけれど、その後のあみ子はどうなるのか、、、、心配、、、

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2024/06/08

読後心に澱のような何かが残るのだが、それがまだ何なのかがわからないでいる。 あみ子に自分を見出し幸せを願う反面、読み進めていくうちに自分の視点が同級生やあみ子の家族に移っていく。 あみ子はのり君以外の人間を忘れてしまうが、私はあみ子を忘れられないだろう。

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2024/06/02

あらすじに「純粋」と書いてある時ほど怖いものは無い 純粋ならなんでも許されるわけではない。けど許されるにはどうしたらいいのか。そもそも目に見えないルールが多すぎて、私たちは綱渡りしながら渡ってる あみ子は怪物だろうか。それとも、私たちが怪物だろうか。私は全員が怖かったよ

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2024/09/21

チョコレートのくだりが衝撃的すぎて、ひーってなった。 なんで殴られたんだろ、と思いながら読んでたけど、これは!!! 生理的ななんともいえない感情(嫌悪感とか恐怖にも近い)を呼び起こすという意味でものすごい。なんだろ、認識の誤差が耐えられなくなってくる感覚というか…。(しかも、そ...

チョコレートのくだりが衝撃的すぎて、ひーってなった。 なんで殴られたんだろ、と思いながら読んでたけど、これは!!! 生理的ななんともいえない感情(嫌悪感とか恐怖にも近い)を呼び起こすという意味でものすごい。なんだろ、認識の誤差が耐えられなくなってくる感覚というか…。(しかも、その差異が一律ではなく、微妙なズラしがまた気持ち悪い) けど、声出して笑ってしまう箇所もあるんよ。 (むらさきのスカートの女とかピクニックなんて、怪談だよね。) という感想は、感性の乏しい人なんだね、 とか言われちゃいそうな、読む人を選ぶ作品。 でも、今村夏子の中では一番読みやすい気がする。

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2024/05/15

 本作は今村夏子さんのデビュー作にして、太宰治賞・三島由紀夫賞をW受賞した記念碑的作品です。読了の、"悲壮感を伴わない切なさ"や"モヤモヤ"が、心の底に沈澱する感覚は何なのでしょう?  今は祖母と暮らすあみ子。両親や兄と暮らしていた小学生...

 本作は今村夏子さんのデビュー作にして、太宰治賞・三島由紀夫賞をW受賞した記念碑的作品です。読了の、"悲壮感を伴わない切なさ"や"モヤモヤ"が、心の底に沈澱する感覚は何なのでしょう?  今は祖母と暮らすあみ子。両親や兄と暮らしていた小学生時代へ時間を遡り、物語が綴られます。  何にでも敏感に反応し、自由奔放なあみ子。真っ直ぐで感情をそのまま表すが故、対人的な危うさや残酷な場面が出てきます。読み手は自ずと、あみ子が特別な支援を要する子だろうと自認します。  しかし、そんなあみ子の世界が、あみ子の目を通してだけ描かれるのです。あみ子が発達障害とか、周囲が苛立っているとか、直接的な説明がない分、読み手は、無垢なあみ子側か崩壊に向かう家族側か、立ち位置を葛藤してしまいます。この誘発要因は、おそらく著者の余白の残し方の凄さでしょう。  自分の気持ちを上手く表現できない、周囲に理解されない、悪気はないのに人を傷つけてしまう、それでも誰かと繋がろうとする‥、そんなあみ子。  壊れたトランシーバーで、「おーとーせよ。こちらあみ子」と呼びかけられたら、どう応える? 究極の問いが脳裏にこびり付き、何度も反響します。  他の2篇も含めて、視点の置き方や構成と展開が巧みで、心揺さぶられるデビュー作でした。  ブクログにレビューを書き始める以前に、今村夏子さんの作品『星の子』『あひる』を読了済みでした。当時、私にはあまり響かず、内容の記憶も薄れていますが、深く読み込めていなかったのか‥。再読する必要があるのかもしれません。

Posted byブクログ