超常現象を本気で科学する の商品レビュー
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タイトルのとおり、本書では超常現象を本気で科学的に考えていきます。幽霊から始まり、超能力へと移っていきますが、とっかえひっかえするようにトピックを渡り歩くのではなくて、幽霊現象をしっかり考え抜いたうえでそこからの繋がりとして超能力現象へ移り(19世紀末にあらわれた心霊研究の流れを汲むものが20世紀アメリカの超能力研究でした)、そこで得た知見をもちいて再び幽霊現象と超能力現象を眺めるとそこに通低している原理と推測されるものがわかっていく。 本書は「超常現象」と呼ばれるものを科学的に見ていくだけにとどまりません。まず、「幽霊はいるのか」ではなく「幽霊はなんの役に立つか」という実用性の視点から見ていきます。つまり、従来の超常現象観を発展的に捉えなおしているのです。「幽霊はなんの役に立つか」と考えていくことは、超常現象にまとわりつく迷信や無益な不安、恐怖の感覚をはぎとって、現象そのもののエッセンス・本質に近づくことになります。ここまでが本書の中身の半分です。残りの半分は、議論の旅の果てにたどりついた場所で知る「なんの役に立つのか」の解答を論じていくような中身になっています。そこがとてもエキサイティングでした。 交感神経(意識)と副交感神経(無意識)は、お互いに抑制し合いながら、どちらかが優位なときにはどちらかが不活性状態になるというかたちでバランスがとられています。覚醒状態、睡眠状態、夢見状態が知られますが、神経科学等の研究者たちは「第四の精神性」と呼ばれる交感神経系(意識)と副交感神経系(無意識)が両方とも活性化した状態があることを指摘し、超心理学の研究者たちは透視などの超能力現象が「第四の精神性」のときに生じやすいことを主張しているそうです(超心理学とは厳密な科学的手法に則ったやりかたで透視やテレパシーを研究する学問領域です)。 そういったところから考えていくと、どうやら「無意識」が幽霊も超能力も、そしてシンクロニシティやセレンディピティをも生じさせているようだ、とわかっていく。そして、最後に辿り着くのは創造性です。クリエイティブな能力は、どうやら無意識が担当している。そして、社会性つまり社会のいろいろな面を知ること、言い換えれば現実世界そのものの在り様を意識上でしっかり理解していることを前提として、優れたアイデアが無意識からどうやら生まれるのだ、という結論に至っていく。もう「超常現象」を科学する本だとだけ思いながら読んでいましたが、びっくりするような飛躍をしました。裏テーマが「クリエイティブ論」ですから。とはいいながら、そういった展開をしてくれたほうが僕にとってはありがたい読書でした。すごく興味のある分野でしたから。 さて、ここまでで一気に本書の中身を貫いた形になりました。最後におもしろかったトピックをひとつ紹介します。人付き合いにおいてまめに連絡をとったりなど関係を維持し続けることには、気苦労が多くなったりして短期的にみれば損だけれども、長期的にみれば自分の助けになる、という見方がされていました。人生をギャンブルとして見る人の考え方にのっかって論じた話のなかでです。このあたり、乱数や確率の話でもあって僕なんかには身を持ってよくわかる話でおもしろかったです。それに、近頃ではよく、人とのつながりは大事だよなあと思うようになって、これは背中を押してくれる考え方なのでした。 と、そんなところですが、新書タイプの本ですし200ページくらいなのでさくさく読めること請け合いです。超常現象と創造性のどちらにも興味がある方ならば、とても好い読書時間になると思います。また、「無意識」を知りたい人にとってはかなりよく知ることができる入門編でもあると思います。おすすめです。
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超常現象を科学的に解明する本。 はん幽霊論というキーワードを基に、反・半・汎に分けて解説。具体的な超常現象を解明するよりも、超常現象の科学的な捉え方を示唆する。個人的は具体的な超常現象をもっと解説してほしかった。 幽霊=人間には「見た」と錯覚するメカニズムがある 金縛り=カギは...
超常現象を科学的に解明する本。 はん幽霊論というキーワードを基に、反・半・汎に分けて解説。具体的な超常現象を解明するよりも、超常現象の科学的な捉え方を示唆する。個人的は具体的な超常現象をもっと解説してほしかった。 幽霊=人間には「見た」と錯覚するメカニズムがある 金縛り=カギは睡眠時の肉体コントロールの誤作動 お守り=「効いた」のは統計上の偏りに過ぎなかった テレパシー=「何か」による作用は認められるが… 透視=米軍も実用化を研究していた? 予知=それは人の無意識がもたらしている?
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科学の視点から、心霊現象や超能力を理解する本。 心霊現象や超能力を全否定するのではなく「役に立つか立たないか」という視点で解説しているのが面白い。 宇宙人誘拐=金縛り、には驚いたけれど、読むと腑に落ちる。 学生の頃、石川先生の講義が毎週楽しみだったのを思い出した。
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文字通り「超常現象」を科学の世界から丹念に解きほぐそうとする一冊。 陰謀論みたいにわかりやすい結論があるわけではないし、現在も解明されてない部分もあるが、それ故に真摯にアプローチしているように思えた。
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簡単に言うと超常現象を超常的現象として科学サイドからプラグマティックに捉える試み。と言ったらいいように思う。面白い試みだと思うしキライな連中を炙り出すのにも有用なように思うし、非科学的な態度として全面的に退けられていたり課題にならなかったことに建設的に取り組んでいて面白いなと思っ...
簡単に言うと超常現象を超常的現象として科学サイドからプラグマティックに捉える試み。と言ったらいいように思う。面白い試みだと思うしキライな連中を炙り出すのにも有用なように思うし、非科学的な態度として全面的に退けられていたり課題にならなかったことに建設的に取り組んでいて面白いなと思った。
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現時点で著者が超心理学という科学の視点から、心霊や超能力を考えるものだった。現在の科学では解明されないものがあり、万能ではないのだから頭ごなしに心霊・超能力現象は否定されるべきではないという至極当然な考えに立脚しているのが好印象。怖い幽霊から役に立つ幽霊なんて面白い考えだ。ポルタ...
現時点で著者が超心理学という科学の視点から、心霊や超能力を考えるものだった。現在の科学では解明されないものがあり、万能ではないのだから頭ごなしに心霊・超能力現象は否定されるべきではないという至極当然な考えに立脚しているのが好印象。怖い幽霊から役に立つ幽霊なんて面白い考えだ。ポルターガイストと念力が同根であるという仮説も妙に納得できる。全ての超常現象に対し考察を加えるものではないので、幽霊の映像であるとか、念力の真偽を解説しているわけではないので、これから読む人は注意が必要だ。
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迷信が産まれる原因の一つに、人間は原因を求めたがる心理があるというこたがある。良い結果が出たのは偶然だったのだが、その原因を求める時にとんでもない事でも理由にしてしまう。宝くじが当たったのは買う前に黒猫が前を横切ったからだということさえ原因にしてしまう。ギャンブルでツイテいるやスランプなのも何回もやるゲームでは必ず現れる現象でそこに神も運も関係していない。これは参考になった。
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とんでもないな、この本は。 本当に大学で認知関係の仕事をしているのかと何度も経歴を見直した。 超常現象や霊現象を、あるかないかでなく、有益かどうかで切ろう、まあそれが科学者として正しいかどうかは別として、切り口としてどう持っていくのかと興味持っていたのだが。 まず、超常現象をあ...
とんでもないな、この本は。 本当に大学で認知関係の仕事をしているのかと何度も経歴を見直した。 超常現象や霊現象を、あるかないかでなく、有益かどうかで切ろう、まあそれが科学者として正しいかどうかは別として、切り口としてどう持っていくのかと興味持っていたのだが。 まず、超常現象をあるという前提で、と語るところからおかしくなる。 無意識の作用ってところは共感できるが、無意識による情報処理のエラーと考えればいいんじゃないのか。 本気で主張してるのか、ぼくが全くその趣旨を読み取れなかったかどちらかだ。
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科学で証明できる超常現象もあれば、今の科学で説明できない部分をもったものもあり、それらについての説明を面白く読んだけど、本書の肝はその超常現象はあるかないかではなく、社会性のある創造となりうるかどうかにある。超常現象には人の無意識の関係が強いらしく、その無意識が生み出しうる創造...
科学で証明できる超常現象もあれば、今の科学で説明できない部分をもったものもあり、それらについての説明を面白く読んだけど、本書の肝はその超常現象はあるかないかではなく、社会性のある創造となりうるかどうかにある。超常現象には人の無意識の関係が強いらしく、その無意識が生み出しうる創造を社会や個人に活かすことを考えるという視点が、オカルトを扱った本を初めて読む私には新鮮に感じられ、とても面白かった。創造的な挑戦の姿勢が無意識の生む可能性を拡げるということを心に留めておこうと思う。
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超常現象の解説そのものよりも、その解説のために紹介されている、いろいろな認知科学・脳科学の知見をまとめておさらいすることができる、という意味でとても面白った。 「無意識」にスポットをあてるため、認知科学の先生にしては、ユングをはじめ、深層心理学をちょっと重んじ過ぎてないかな…とい...
超常現象の解説そのものよりも、その解説のために紹介されている、いろいろな認知科学・脳科学の知見をまとめておさらいすることができる、という意味でとても面白った。 「無意識」にスポットをあてるため、認知科学の先生にしては、ユングをはじめ、深層心理学をちょっと重んじ過ぎてないかな…という気もしなくはなかったが、でも確かに、まだよくわかっていない「無意識」をこれからどんどん解明していくに当たって、やっぱりユングは避けて通れないところはあるだろうし。 なお、先生がこの本を書くきっかけは、北野武監督との対談だったとか。ホント多才だね、北野監督。
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