夜の写本師 の商品レビュー
自然と書物。 それをいとおしむ心。 感じる心。 全体的に感じた印象を表すとこれかなあ。 羊皮紙とかインクとか封蝋とか そういったひとつひとつ手間暇かけられているものに 一種の美しさを感じるし 自然の引き起こす情景や 魔術と連動した自然の表現が なんともいえず素敵だった。 ...
自然と書物。 それをいとおしむ心。 感じる心。 全体的に感じた印象を表すとこれかなあ。 羊皮紙とかインクとか封蝋とか そういったひとつひとつ手間暇かけられているものに 一種の美しさを感じるし 自然の引き起こす情景や 魔術と連動した自然の表現が なんともいえず素敵だった。 ジュブナイルのように、読みやすくイメージしやすく、 というよりも、言葉の持つ美しさや 思いもよらない比喩や表現に豊かな気持ちにさせられた。 読書をした、活字に触れたな、っていう満足感。 すごく時間はかかったけど。 カリュドウという過去を背負った少年の生まれ育ち、 彼と彼の前世を伴った旅に寄り添い、 最後に出てきた老いた彼の涙に、 人間への愛を感じて私も涙ぐんだ。 素敵な文章に触れられてよかったなあと思う作品でした。
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最初の数ページで一気に引き込まれたものの、100ページ越えないあたりで読むのに疲れてしまった。描写は重厚だし生活感も伝わってくるのだが、いかんせん本筋がわかりづらく物語に入り込めず。情報量の多さにかえって惑わされているような気がした。
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一行目:右手に月石 壮大なファンタジー。 いーんだけど、おもしろいんだけど、うーん。 このレベルだと他にもおもしろいファンタジーたくさんあるしなあ…
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硬派で格調高い大人向けのハイ・ファンタジー。 千年にわたる生まれ変わりと復讐の物語を、最低限度の濃密な描写で一冊におさめているので、だらだらと日をまたいで読むよりは一気読みがおすすめ。 文体が格調高すぎてたまに読みづらい感じがあるけど(「全けき」とか)、それで退屈になったり内容が...
硬派で格調高い大人向けのハイ・ファンタジー。 千年にわたる生まれ変わりと復讐の物語を、最低限度の濃密な描写で一冊におさめているので、だらだらと日をまたいで読むよりは一気読みがおすすめ。 文体が格調高すぎてたまに読みづらい感じがあるけど(「全けき」とか)、それで退屈になったり内容がダレることもなく、展開についていけなくなることもなく(登場人物の名前は何度か確認しましたが)、描写が説明的でうるさく感じることもなく、魔法の系統や各国の雰囲気の違いもすんなり頭に入ってくる。構成・設定がしっかりしていて、かつ抑制がきいているからだと思う。 写本師という設定が絶妙で、この世界観をもっと楽しみたいと思える一冊だった。
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タイトルに惹かれて購入~。ど派手で容赦のない魔法の顕現や何種類もの魔術の手法や修行についての詳細な描写が面白くて、どんどん読み進められました。 物語では主人公のカリュドウと三人の魔女、そして大魔道師アンジストの千年にわたる宿命が明らかにされていきます。 「書物の魔法」…本そのもの...
タイトルに惹かれて購入~。ど派手で容赦のない魔法の顕現や何種類もの魔術の手法や修行についての詳細な描写が面白くて、どんどん読み進められました。 物語では主人公のカリュドウと三人の魔女、そして大魔道師アンジストの千年にわたる宿命が明らかにされていきます。 「書物の魔法」…本そのものやページの紙片や書かれた文章が魔力を持つなんて、とても魅力的ですね。
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久々にファンタジーらしい、ハイファンタイジーを読んだような気がした。文化風土が違うから無理なんだろうなと思っていたタニス・リー的なファンタジーを日本人が書けるようになったんやなぁ。 井辻朱美が解説2本を掲載するぐらいの気合の入れよう、それに合いふさわしいボディのしっかりした内容。 写本と魔術の関わりとか、ところどころ疑問符付くところもあるし、途中で人間関係(特に生まれ変わりの因果関係)が分かりづらい難点はあるものの、冒頭の登場人物紹介を都度見開けば思い出すレベル。 ボディがしっかりしてる分、ボーッと読んでると置いてかれる感じがあるので、読むのに少々の集中力が必要だけど、しっかり読めば読んだ分の手ごたえは感じられる。この作者このシリーズ要注目だなこりゃ。
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スタートは気分が乗らなくて、途中から急に読む気が起きた。 ファンタジーは好きなのだけど、ドラゴンとか出てくる方が好きなので地味な印象は受けた。 しかしながら、写本師という職業にとても魅力を感じた。なので、写本師たちの仕事ぶりが描かれているところをもっと読みたいな、と思った。 スピ...
スタートは気分が乗らなくて、途中から急に読む気が起きた。 ファンタジーは好きなのだけど、ドラゴンとか出てくる方が好きなので地味な印象は受けた。 しかしながら、写本師という職業にとても魅力を感じた。なので、写本師たちの仕事ぶりが描かれているところをもっと読みたいな、と思った。 スピンオフで写本師たちだけの物語も読みたい。 隠し文字を入れたり、写本師によって印が違うところもときめきポイントが高かった!
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めちゃくちゃ面白かったです。 読み終わったときに肌が粟立ちました。 こんなに上質なファンタジーを書ける実力者を知れてうれしいです。 日本だと、上橋菜穂子さんや荻原規子さんが取り沙汰されますが、ベクトルは違うものの、まったく負けてません。 ただ、この人の場合は「ファンタジー」に対して真摯に向き合ってはいるものの、「児童文学」とは遠いところにいる気がします。 主人公はカリュドウという少年なのですが、彼は右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠を持って生まれてきます。 キーナの村で魔女エイリャに引き取られ幸せに暮らしていたものの、大魔導師アンジストの魔女狩りによってエイリャと同胞のフィンを惨殺されます。 雪豹に慰められながら、カリュドウは復讐を命の灯と決め、その身を闇に染めます。 カリュドウが<夜の写本師>になるまでの成長を描く筆致が実に見事で、エイリャを失って最初に弟子入りしたガエルクのもとで、カリュドウは力を付ける一方で傲慢さも身に着けていきます。 先輩にあたる女魔導師セフィヤをその傲慢により死に至らしめた、その瞬間から、カリュドウは頭を殴られたようにはっきりと外界を識別します。 優しく温厚なだけだと思っていた先輩弟子ふたりが、自分が思っていたのとはまったく違っていたことに気付く。この描写がすぐれている。 はじめカリュドウの主観で描かれる人物の描写は抽象的で、これがこの作家さんの特徴なのかと思っていましたが、それが復讐にとらわれ周りを知覚していなかったが故の表現だと気付いたとき、溜息が洩れました。 それから彼は<夜の写本師>として修業を積むこととなります。 そこからは冷徹に目的を遂行するために突き進んでいくのみ、なのですが、章の展開の方法もここから変わってきます。 カリュドウは<月の書>をひらくことに成功し、月と闇と海の魔女とアンジストとの因縁が語られます。 女だけがもつ力をねたみ、恐れ、シルヴァインを裏切ったアンジストへの復讐をとげようとして殺された魔女たち。その因縁を持って自分が存在することを知ったカリュドウは、文字通り「いままで奪われたすべて」を使ってアンジストと対峙します。 決着のあと、語られるのはアンジストその人の物語で、アンジストからシルヴァインに向けられていたものはやはり愛情だったのだということが明らかになります。 そしてそれを理解したカリュドウが、後継者にアンジストの本質たる紫水晶を含めてすべてを伝えようとするところで物語が終わる、クロージングまで含めて完璧に美しい。 電子書籍で買ってしまったことが悔やまれます。 紙で買い直そうかな。 純粋に素晴らしい本と作家さんに出会えたことが嬉しくてたまらないです。
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ファンタジーはほとんど読まないので、世界観に入っていくのが難しいかと思っていたけど、文体(というか『語られ方』)そのものが自分の好みに合わなかった。 技巧や装飾の多い文章が続き、物語を展開するための出来事だけ描写しているので、淡々とした印象。 正直、読みづらく分かりづらかった。 ...
ファンタジーはほとんど読まないので、世界観に入っていくのが難しいかと思っていたけど、文体(というか『語られ方』)そのものが自分の好みに合わなかった。 技巧や装飾の多い文章が続き、物語を展開するための出来事だけ描写しているので、淡々とした印象。 正直、読みづらく分かりづらかった。 作中で主人公の大切な人が死んでも、仲が深まっていく過程が描かれないし、性格も価値観も伝わってこないのでストーリーのために殺されたように感じてしまう。 読者が安易に世界に入り込んで浸れるような「甘さ」を作者が意図的に排除したのかもしれない。 けれど、自分にはこういった世界観を楽しむファンタジーを味わうのは難しかった。登場人物に手を引いてもらえないとその世界に入り込めない。 ……解説に「魔法が真に浸潤する世界は、そのような文体によってのみつづられねばならない」と書かれていた。 つまり、すき間無く均一に、タペストリーのように織られた文体でなければ真のファンタジーではない、と。厳しい。 私は、美しく均一に編まれたタペストリーに目を凝らして魔法を読み解くよりも、緩急やメリハリのきいた、登場人物たちに魅力を感じるお話を読みたい。 でもこの美しいタペストリーが、欲しいと望む人に届けばいいな、とも思う。
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