満願 の商品レビュー
やっぱり、米澤先生の作品は暗い。確かにミステリーって基本殺人等の犯罪扱う物語だから暗いは当たり前なんだけど、この人の描く世界は背景に貧困やら人間のエゴイズムみたいなものがあるから余計に暗い。今回は短編集ということで、色んな物語が詰め込んであるんだが、どの作品も前述したように暗かっ...
やっぱり、米澤先生の作品は暗い。確かにミステリーって基本殺人等の犯罪扱う物語だから暗いは当たり前なんだけど、この人の描く世界は背景に貧困やら人間のエゴイズムみたいなものがあるから余計に暗い。今回は短編集ということで、色んな物語が詰め込んであるんだが、どの作品も前述したように暗かった。その暗さが米澤先生のいい所でもあるんだけど、短編集なんだからもうちょっとSFテイストであったり、コメディタッチな作品を入れてほしかった。何遍も暗いお話ばかり読んだら気持ちが重たくなる(笑)。
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さりげない描写の中に潜ませた伏線が 物語の後半、驚きとともに回収されるという 短編ミステリーの醍醐味が味わえる6篇の短篇集。 短編としての構成力、癖のある人間を描いた描写力、 物語としての面白さ、鮮やかな伏線回収。 どれもが素晴らしくよく出来ていて 米澤穂信という作家はこんな短...
さりげない描写の中に潜ませた伏線が 物語の後半、驚きとともに回収されるという 短編ミステリーの醍醐味が味わえる6篇の短篇集。 短編としての構成力、癖のある人間を描いた描写力、 物語としての面白さ、鮮やかな伏線回収。 どれもが素晴らしくよく出来ていて 米澤穂信という作家はこんな短編も書けるのかという うれしい驚きに満ちた傑作でした。 本作は、作中の短編「満願」から名付けられた 独立した短篇集ではあるのだけど、 短篇集全体として作者が描きたかったテーマは 人が何かコトを起こすときの「動機」を描く ということなのかなと読み終わって感じた。 短編はどれも色の濃さは濃淡あるもののミステリー短編として仕上がっているが ミステリーで付き物の「Why Do It(なぜそんなことをしたのか)」を 精緻な人間描写とともに追求したのが本作でやりたかったことなのかなと。 タイトルである「満願」はもちろん表題作としての短編の名前でもあるけれど 満願(強い願い)=動機の物語として読むべきものなのだと思う。 「夜警」は川藤巡査の動機の物語 「柘榴」は夕子の動機の物語 「万灯」は伊丹室長の動機の物語 「関守」はドライブインのおばあさんの動機の物語 「満願」は妙子さんの動機の物語 として読むことができる。 ※作中、個人的には一番好きでミステリー色が最も強いと思われる「死人宿」は この枠組みの中に入らない気がしているが ある者は自分を守る保身のために行い、ある者は奪うために行う。 ある者は理想のために行い、ある者は自分の過ちを隠すために罪を重ね、 あるいは自分の誇りのために罪を行うものもいる。 ミステリーを描く際にトリックやハウダニット、事件そのものの残虐性 パッと見の目新しさ・派手さを追求するのではなく、 なぜそんなことをしたのかという動機を深堀りして人間を描くという試みは なんとなく米澤穂信の作家としての気概を見たようで嬉しくなった。
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すごく面白かった! 古典部シリーズや小市民シリーズとはまた別物。 最近は、米澤さんの書くこういうブラックなミステリの方が好きです。 後味が悪く、徹底的に打ちのめされるようなラスト。 特に「柘榴」の衝撃度はハンパなかった。 学校でも評判だった美女と、ろくでもないけどモテる男。 ...
すごく面白かった! 古典部シリーズや小市民シリーズとはまた別物。 最近は、米澤さんの書くこういうブラックなミステリの方が好きです。 後味が悪く、徹底的に打ちのめされるようなラスト。 特に「柘榴」の衝撃度はハンパなかった。 学校でも評判だった美女と、ろくでもないけどモテる男。 やがて二人の娘が生まれ、母親は彼女達を溺愛する。 歳をとっても一向に容姿の衰えぬ母。美しく成長した姉妹は… ラストは思わず「えぇーっ!」となる事必至。 「関守」の結末にも仰天。 伊豆半島南部にある峠では、近年奇妙な事故が多発しているという。 いずれも峠道から崖の下に転落するという死亡事故。 その事を取材に来たライターは、峠の前に建つドライブインに寄る。 ライターはお店のお婆さんから話を聞く事になるが… 怖い。人間って怖い! 表題作「満願」は、地味ながらもよく練られたお話。 読んでいて唯一柔らかい感じのミステリーだと思ったけれど、 ラスト加害者の殺人の意図が分かった時には鳥肌が立ちました。 女性は、強い。
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50頁程度の短編が6つ載っている短編集です. オチが読めない良作揃いで良かったです.おおむね, 人の死に関わる話でしたが,この話は米澤氏のでは なく○○氏の作では,と思うような,系統の違う作品 が一つありました.その話も好きですが.
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「満願」米澤穂信◆殺人罪で逮捕された妻は、夫が亡くなった途端に控訴を取り下げると言い始めた。彼女の秘めた意図とは(表題作)。終盤に真相が明らかになり、悲しみや驚き、ぞわりとする恐怖など様々な余韻を残す6編。いずれの話も読み進めるうちに各話のタイトルの意味が見えてきて味わい深い。
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ノンシリーズの短編集。米澤穂信らしく、ダークで、時にホラー要素も入ったミステリ。関守の怖さと、タイトルでもある満願のなんともいえない終わり方がよかった。
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短編集 あまり雑誌は読まないのだけれど 何故か、読んだことのある作品がほとんどだった 新しい作品が読めるかと思っていたので その点ではちょっと残念
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穂信さんの本というだけで、何も予備情報もなく読んだので、最初の短編は衝撃だった。 それから数日、気持ちが鬱になりました。調子の悪い時に、小暗い小説を読むものではないね。 体調が回復してから、残りも少しずつ読んだ。どれも悪くなかったし、穂信さんならではのオリジナリティーを強く感じた...
穂信さんの本というだけで、何も予備情報もなく読んだので、最初の短編は衝撃だった。 それから数日、気持ちが鬱になりました。調子の悪い時に、小暗い小説を読むものではないね。 体調が回復してから、残りも少しずつ読んだ。どれも悪くなかったし、穂信さんならではのオリジナリティーを強く感じたけれど、やはり最初の短編(夜警)が一番重かった。自分自身が小心者だという意識があるからだろう。
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練り込まれた伏線と、普通に見える人が暗黒面にスッと入る恐怖感。陽の古典部シリーズに対してのブラック米澤節、クセになる面白さ。ますます簡潔でキレのある文章とロジカルな心理描写に冴えが見られます。上手い役者さんでドラマ化して欲しいな。
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最初から2作はイマイチ乗り切れず、このまま入り込めず斜め読みで終わるかなと思いきや3作目の「柘榴」以降は生きてる人間の怖さが面白く読めました。
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